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終焉世界の探索者  作者: 雷炎
4章:第一次人魔大戦
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知者嘲るは愚なる者 其の六

なんか忘れてんなと思ったらこれ投稿するの忘れてました。

 常世思金神(オモイカネ)のお蔭で勝ち筋は明確に見えた。後は俺がこれを実行に移すだけだ。


「『無窮歩法(タキオンステップ)・Ⅱ』」


 音より速く、光より速く駆けるこの『無窮歩法(タキオンステップ)』だが弱点が無い訳じゃない。一つ目は純粋に速過ぎる所為で人や障害物の多い場所や狭い空間では碌に使えない事。もう一つは攻撃の瞬間だけはそれなりに速度を落とさないと武器が持たずに崩壊する事だ。『無窮歩法(タキオンステップ)』の副次効果に速度を上げすぎると発生する問題を一切合切無視出来るという物があるがそれは同時にソニックブームなんかが一切効果を発揮しないという事だ。最後にこれは移動距離が増すに連れて恐ろしく燃費が悪くなる。それこそ光速で移動しよう物なら一秒と持たない。故に俺は無限思考を利用する事でゼロコンマ一秒未満に発動と終了を幾重にも重ねる事で擬似的な光速移動を実現している。要は直線移動を重ねまくってそれっぽく動いているだけだ。

 だからこそ【愚者】の『封印』が大きなネックになる。発動者を中心に最も近い場所にいる人間が発動中のスキルをランダムで一つ使用不可能にする。それが『封印』の効果だ。『封印』のリキャストタイムが切れる前に【愚者】を倒す。それが出来なければ霊力切れで俺が捕まり殺されジ・エンドだ。


 光速移動でゴリゴリ削れる霊力の残量を気にしながら【愚者】を斬りつける。一回、二回、三回! 全部当たってるけどハズレ! 最終的に運ゲーとか本当に現実はクソだな! 


『狙いは知らんが貴様の霊力が高速で減少しているのは見えている。霊力の切れ目が己が死に目と理解せよ』


「んなこたぁわかってるよ!」


 ジークフリートは出せない。今はちょっとでも霊力を消費するのが惜しい。神格に頼って特攻を仕掛けてもいいが討滅宣誓なんてえよくわからん物までされてんだ。神格貫通の即死攻撃とか撃たれたらたまったもんじゃない。


『そこだ!』


「ちぃ!」


 攻撃の瞬間だけスピードが落ちるのはとっくにバレてる。相手の動きもこっちに対応し始めてやがる。早急に決めにかからないと死ぬなこりゃ。

 ……方法はある。が、これは無理な気がする。


「やるしかねえか」


『そろそろ諦めたら……なんだその珍妙な姿は』


ほへはっへほうほほう(俺だってそう思う)


 両手に一本ずつ、更に口に一本刀を咥えた()()()。世界で一番有名な海賊一味の剣士の真似だ。


『……そのふざけたナリで我を倒すつもりか』


【愚者】の口がわなわなと震えている。まあ、おちょくってる様にしか見えんから仕方なし。


「|ふぁあふぃふぇふぉっふぇ《まあ見てろって》」


 右手に握るはいつかの北綾瀬駅攻略で使った【深月夜刀 上弦】。左に握るはその相方である【浅月夜刀 下弦】。口に咥えたるは我が愛刀【簒奪竜刀 チギリ】。


「|ほいはいひひへ、はほはふふっひほはひほひ《“宵闇に消え、惑わす月の闇より”》|『ひんへふふほはふふぇ』《『新月雲隠れ』》」


 特殊領域:否定されし叡智の塔が宵闇に包まれる。


『む、何処だ!』


 視界に移らなければ流石の【愚者】も捉えられまい。


 ~~~


 光速移動は使わず闇の中を駆ける。時折不意打ちでナイフを投げるが簡単に躱されて投げた位置に魔術が飛んでくる。


『そこか!』


 だが、こちらの位置は捉え切れていない。何度もフェイントをかけ巧妙に位置を惑わし一気に【愚者】の背後へと回り込み両手の刃を振り下ろす。【愚者】は未だ正面を向いたまま。こちらには一切気付いていない。


「貰った」


『掛かったな馬鹿め!』


 あり得ない位置から魔術の刃が飛び出だし腹を貫き地面に縫い付けられる。途端に【愚者】の姿が朧げになり、直後先程までとは一八〇度逆を向いた【愚者】の姿が現れる。


『第六抹消能力(エリミネイト)『虚飾』により我は自在に姿を惑わす。さあ、終わりだ英雄!』


「すまない」


『は?』


「俺は英雄らしいがお前の求める英雄では無い」


 俺に掛けられた術式が効果を失い鈴木亮一郎(マスター)の姿がブレる。


『誰だお前は!?』


「ジークフリート」


 全く、マスターの命令とは言え姿を騙して不意打ちなど嫌な物だ。


『な、なぁ!?』


 “ザシュ! ”

 俺の腹を貫いた先程とは逆に今度は【愚者】

 の腹部から刃が生えている。


「ふう。流石にこんだけ深く刺せば確率も上がって決まるか」


 やってやったぜみたいな顔をしているが俺は後で文句を言うぞマスター。


 ~~~


「よお、待抜け面してんな」


『貴様、いつの間に』


「お前が俺達の知らんうちに外見化かしてたんだからこっちだって同じことやってもおかしくないだろ」


『いつ気付いたのだ。我が『虚飾』に!』


「別に気付いてた訳じゃねえよ。単に俺はお前の抹消能力(エリミネイト)を恐れてただけだ。だからジークフリートを囮に確実に攻撃を決めたって訳だ」


 本来の予定ではジークフリートが背後から一発入れて動揺したところに正面からざっくりの予定だったが思わぬ収穫を得たもんだ。


『……成るほど。まんまと罠にハマった訳だ。だがこれからどうする? 貴様一人では我のHPは削り切れないその前に『封印』のリキャストタイムが終わり貴様は死ぬ。討滅宣誓により貴様は我が領域から出る事も叶わない。仲間たちの元へと逃げても良いが死ぬ順番が前後するだけだ』


 ああ、全くもってその通りだろう。だがな、一つだけ俺にはお前を殺す手段があるんだよ。


「なあ、クリティカル攻撃って知ってるか?」


『藪から棒になんだ』


「クリティカル、会心の一撃、痛恨の一撃或いは絶命の一撃なんてのもあるか。要は相手の生命活動維持に重大な影響を与える攻撃だ。どんな生物だって脳を潰されれば死ぬし心臓を貫かれれば死ぬ」


『そうか。だが我はこの電脳世界の存在だ。潰されて困る脳も貫かれて困る心臓も持ち合わせていない』


「ああ、このダンジョンのモンスターはその手の即死攻撃がほぼ効かない。だが例外もある。……首だよ」


 そう、何故かは知らないが人型範疇のモンスターは如何なる例外も無く首が弱点になる。それはあのラブマシーンですら変わらないだろう。


『それで? どうやって我が首を刎ねる? 確かに貴様の武器は強力だ。だがレイドボスたる我が首を斬り落とせる程の硬さも鋭さも無い』


「あるさ。それなら今手に入れた」


『……何?』


 光速移動で【愚者】とかなりの距離を取る。


「俺の光速移動さ、武器がもたなくて攻撃には使えねえんだよ」


『知っている』


「なら壊れてもいい武器を使えばいいって話だけど光速で叩き付けられた武器が壊れた時に発生する影響は特殊能力(スキル)が守ってくれないんだよ。だから使い捨て武器攻撃をすると腕が吹っ飛ぶ」


『それが何だと言うのだ』


「そこで俺の霊術だ。全てを虚無へと消す霊術。この一つにある《虚空纏》を施した武器は外界からの影響を全て虚無へと消し去る。つまり武器自身は一切損耗なくその切れ味をもった虚空で斬ってるんだ」


『だからそれが何だと。大体貴様らは今術の一切が使えないであろうが』


「本当にそうか?」


『何?』


「この空間で霊術を使う条件。それは抹消能力(エリミネイト)『賢人』を持っている事」


『そうだ。だからこそ我はこうして眷魔術を……まて! まてまてまて!』


 今更気付いた様だな自分の抹消能力(エリミネイト)が一つ使えなくなっている事に。


「俺の愛刀【簒奪竜刀 チギリ】。その【武装技能(ウェポンスキル)】は『簒奪ノ牙(グリードバイト)』。斬った相手の能力を確率で一個一時的に奪える能力だ」


 さあ、話を続けて霊力のチャージは十分だ。残りの霊力の内『無窮歩法(タキオンステップ)』に必要な分以外全てくれてやるよ。


『まっ……』


 敵に待ったは通用しねえよ! 


「疾っ!」


 今度こそ文句なしに光速の一撃。


『あ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?!?!?』


【愚者】の首が宙を舞う。


「じゃあな。お前の主様にはよろしく言っとくぜ」


『おのれ、おのれぇぇぇぇぇ!! 鈴木亮一郎ぅぅぅ!!』


《人類側サブターゲット:【愚者】Unknown Copy αが討伐されました》

《【大戦(レギオンレイド)】の終了時、勝敗に関わらずMVPに【No.096 天啓接界柱 オラクル】を授与します》

《【大戦(レギオンレイド)】の終了時、勝敗に関わらず終焉の宴エンドレススタンピートまでのタイムリミットを3年増加します》


 ────────────────────

【TIPS】

【愚者】の抹消能力(エリミネイト)一覧


 ・『バタフライエフェクト』

 自分にとっても都合のいい現象を引き寄せる


 ・『封印』

【愚者】を中心に最も近い場所にいる人間が発動中のスキルをランダムで一つ使用不可能にする


 ・『栄枯盛衰』

 自身を中心とした半径三メートルの空間内で自身に最も近い五人のHPを1%にする


 ・『過福複禍』

 自身と敵対する者の中でバフの強さが最も高い十人に割合ダメージを与える。若しくは神格を発動した人間を即死させる。


 ・『賢人』

 特殊領域:如何なる状況下に於いても術の行使が制限されない。


 ・『虚飾』

 自信に関わるあらゆるものの中から一つを選択し、内容を好きな様に誤魔化せる。


※実は『虚飾』によって【愚者】の全てのリキャストタイムが誤魔化されており、最後の問答の時点で【愚者】は『封印』と『栄枯盛衰』と『過福複禍』を使った即死コンボの発動が可能となっていた。が、亮一郎が減速無しの光速攻撃を放った為、発動することなく死亡した。

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