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終焉世界の探索者  作者: 雷炎
4章:第一次人魔大戦
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知者嘲るは愚なる者 其の五

筆が進まず遅れました。ごめんなさい。

『眷魔術が第三階梯|《王環刃》』


 土壇場で覚醒した【愚者】はこの領域の効果を無視して魔術を放ってくる。今放たれたのは魔術で生成された複数の光輪の半径を超拡大して周囲を切り刻む魔術だった。なんとか躱せたが、少しでも遅れてたら現実世界なら腕の一本は飛んでいただろう。


「何でお前此処で術が使えんだよ! お前がここでの術使用を制限してるだろうが!」


『答えても何の問題も無い故に答えよう。我はHPの減少によって封印されていた第四から第六までの特殊能力(スキル)が解禁された。そして貴様を殺す為に行った討滅宣誓により、我が特殊能力(スキル)抹消能力(エリミネイト)へと昇華した』


「エリミネイト?」


『ただ一人定めた対象を魂すら残さず三千世界より消滅せしめる能力。それが抹消能力(エリミネイト)である。そして我が第五の抹消能力(エリミネイト)の名は『賢人』。パッシブ能力にしてその効果は“術系統使用制限完全無効”である』


「ざっけんな!」


 俺達にクソ面倒なルールを科しておきながら自分は自由に破れるとかふざけんな。

 確かに奴の言葉通り五つ目のリキャストゲージは特殊能力(スキル)発動の瞬間の輝いた状態で留まっている。パッシブ能力ってのは本当だろう。嘘をつく理由も無いし、わかったところでどうしようもない類の事だから言ってることは本当だろう。

 そしてエリミネイトに関する話が全て本当なら、その対象はまず間違いなく俺だ。なんでそこまで嫌われてんのかと聞きたいが、俺が【英雄】であることが気に食わないらしい。確かに【英雄】は強力な人間兵器の様なものだが、それは一個人の強さの範疇に収まる。【覇王】や【魔王】とはとても比較にならないのに何故そこまで憎むのか。


『お喋りは此処までだ。では死んで逝け』


「吾輩は死なぬ! 『四尺玉』!」


 さっきの『三尺玉』より更に火力のある猪鹿さんの恩寵能力(ギフテッド)三発同時に放たれる。生成された四尺玉は不規則な軌道を描いて【愚者】に飛来する。三方向からの同時爆破。いかにレイドボスでも多少はダメージを負うだろう。


『はっ!』


 だが、飛来する四尺玉が爆発する直前、【愚者】が嘲笑った。そして今まで遠距離攻撃避けに使っていた特殊能力(スキル)のリキャストタイムゲージが輝いた。


『■■■■■■■■■■!』


 超高速発動宣言によって【愚者】の能力行使が宣言された直後、不自然なことが起きた。突如として【愚者】を中心に竜巻が発生し、爆発直前だった『四尺玉』が吹き飛ばされ、見当はずれの場所で爆発を起こしたのだ。


「む? 軌道反らしはこんな技では無かった筈だが?」


 猪鹿さんが疑問に思うのも無理は無い。確かにあいつのあの能力は攻撃の軌道を変更するものだったが、ここまで露骨なものでは無かった。

 そして、今度は聞き逃していない。瞬刻思考と『無限思考』によって体感時間を極限まで引き伸ばされた俺の耳は確かに聴き取っていた。『バタフライエフェクト』と。

 バタフライエフェクト。名前から察するに自分にとって都合のいい現象を引き起こす能力って辺りだろう。だが、流石に乱用は出来ないのか、HPが半分を割る前に比べてリキャストタイムが三倍程に伸びている。

 リキャストタイムが伸びる代わりに全ての能力が超強化されたのだとしたらかなり厄介だ。いち早く残りの能力も暴かないと致命的な問題が起こりかねない。


「猪鹿さん。霊力は四割位残してそれ以外がは全部攻撃に回す。他の奴等が復帰するまでに出来るだけコイツの能力を暴く」


「承知した!」


「さあ、行くぜ! 『無窮歩法(タキオンステップ)・Ⅱ』!」


 改めて説明すると『無窮歩法(タキオンステップ)』という特殊能力(スキル)は要は一歩毎にスピードが乗算される特殊能力(スキル)だ。普通こういった特殊能力(スキル)の弱点はスピードに動体視が付いていかない事。そして動体視力や、思考速度を増加する特殊能力(スキル)の弱点は、加速した世界の中で身体が思考についていけない事。ならばこれら二つを組み合わせればどうなるか。答えは簡単。


 身体も世界も加速する。一歩歩けば音より早く、二歩歩けば光より早く。特殊能力(スキル)自体の効果で時間遡航などのデメリットは一切起きず、唯々速くなる。そして常世思金神(オモイカネ)特製の瞬刻思考は光速を超えた世界にすらも対応する! 


『な!? 消え……』


「後ろだ馬鹿」


 光速一閃。避けれる筈も無く、【愚者】に俺の一撃は届いた。何で今まで使わなかったのかと聞かれれば、人や物なんかの障害物の多い場所で扱うのは、制御が非常に面倒だからだ。ぶつからない様に止まって軌道は変えられるが、すり足一つで衝突が起きそうになるのは非常に面倒だ。故に、このダンジョンの様に周囲に何もなくてだだっ広く、なおかつ人が居ない場所でなければあまり有効に使えないのだ。


「ぶっちゃけ周りに誰も居ない方が俺は強いんだよ」


『貴様!』


【愚者】がなんかほざいているが、既に俺は奴の遥か後方に移動し、猪鹿さんに射線を開けている。


「『猪突進』! 『三寸玉』」


 猪鹿さんが俺よりは遅いがそれでもかなりの速度で【愚者】との距離を詰め、威力特化型の小型花火玉を生み出し、自分諸共爆ぜる。だが、あの花火玉は術者には一切のダメージを与えない。自爆特攻に持ってこいの技だ。

 煙りが晴れると当然の様に無傷の猪鹿さんと怒りに顔を歪めた【愚者】が居た。

 総HP量からすれば大したことの無いダメージ量でもたかが二人に翻弄されたのが許せないのだろう。


『許さん』


【愚者】が猪鹿さんに近づき右手を翳した。


『『栄枯盛衰』』


「ぬうっ!」


「猪鹿さん!」


 輝いたリキャストゲージは三つ目。さっき喰らった奴らのHPが1%になった凶悪特殊能力(スキル)だ。


「引け! 後は俺がやる!」


「くっ……すまん! 『猪突進』」


『逃がさん』


「逃がせよ!」


『猪突進』の高速移動で猪鹿さんに逃げて貰い、その進路に俺が立ち塞がって妨害する。


『ふんっ! まあいい今は貴様を殺すのが優先だ』


「やれるものならやってみな!」


 光速移動で背後へ回り刀を振る。


『貴様は死角を狙いすぎだ』


 首狙いの一振りを読んでいた【愚者】が屈んで躱し、俺に触れた。


『『封印』』


 第三リキャストゲージが発光。『無限思考』が使えなくなった。


「能力封印かよ!」


『その通り。抹消能力(エリミネイト)に昇華された事で我が死ぬまで対象の能力を一つ恒久的に封印出来る様になった。最も発動中の物に限るという制約は消えなかったがな』


「それでも十分厄介だよ畜生め!」


 今俺が発動中の特殊能力(スキル)は『無窮歩法(タキオンステップ)』、『無限思考』、『啓示板(オラクルチャンネル)』の三つだ。瞬刻思考は奥義の類だから封じられる事は無いが、残りの二つはどちらが封じられてもかなりきつい。『無窮歩法(タキオンステップ)』は言わずもがな『啓示板(オラクルチャンネル)』による神の俯瞰的な視点情報も光速移動の制御にかなり利用している。他の奴等が復帰するまでまだ掛かる。このペースだと『封印』のリキャストタイムが明ける方が早い。奴は霊術による遠距離攻撃も行えるのに対して俺は近距離攻撃オンリー、スピードで射程の差を無理やりなかったことにして漸く渡り合えているのだ。何とかして次の『封印』発動までにこいつを倒さなければ俺はこいつに殺される。エリミネイトとやらの説明を聞く限り、こいつにだけは殺されるわけにはいかない。何か、手はないか? 『無限思考』が封じられた事で思考が直ぐにドン詰まる。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 721 常世思金神(オモイカネ)

 何言ってるんだい亮君


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 常世思金神(オモイカネ)? 


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 722 常世思金神(オモイカネ)

 既に勝ち筋は見えている。後はそれを実行するだけだろ? 


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 何だ? 一体どんな手があるってんだよ。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 723 常世思金神(オモイカネ)

 え~? 本当に分からないの? 『無限思考』に頼りすぎなんじゃない? しょうがないな~。じゃあ教えてあげるよそれはね……


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 俺は常世思金神(オモイカネ)の言う勝ち筋を聞いた。それは正しく天啓オラクルだった。さっきまでうじうじ考えてたのは何だったのかと言いたくなる程に単純明快で素晴らしい物だった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 728 常世思金神(オモイカネ)

 さあ亮君やっちゃいな! 


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ああ、そうだな。他の奴等が来る前に、俺一人でこいつを倒す。


────────────────────

【TIPS】

 抹消能力(エリミネイト)

 全ての【魔王】に付き従う二十二種の【眷族】の内、同一の名を冠する【眷族】の中で一体のみが行使できる永久空位型の覚醒能力。同系統の物に三体のみが行使できる火力上昇型の破壊能力デストロイと二体のみが行使できる魂魄破壊型の殲滅能力ターミネートがある。

 抹消能力(エリミネイト)の討滅宣誓によって指定された対象が発動者に殺された場合。あらゆる法則を無視して対象の死を確定させ、その魂魄を完全破壊し、死後の國へ逝くことも禁止する。これに加えて対象の就いている役職(亮一郎の場合『第一英雄』)を永久空位状態とし、補充や代替えとなる物を設定する事が禁止される。


 それは人を滅ぼすモンスター達にとって最終手段の一つ。絶対に討つべき対象が現れた時、同胞の可能性を全て閉ざして開かれる禁忌。当然の様にその代価は重く、発動者は討滅を成しえようが成しえまいが、討滅対象が死した時と同じ末路が約束される。

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