知者嘲るは愚なる者 其の三
事前打ち合わせで遊撃班に配属されていた俺は【愚者】の謎の特殊能力を食らって昏倒した奴らを医療系霊術が使用可能な奴等のいるところまで運んだ。俺達にもHPバーが表示されて分かったことだが、どうやらあの特殊能力は対象のHPを1%にまで削るというイかれた特殊能力だったみたいだ。
【愚者】を中心とした一定範囲内に展開されている否定されし叡智の塔とやらを抜けると俺達に表示されたHPバーは消失し、霊術の仕様も解禁された。
そして負傷者達を救護班に預けてまた戻ってくると戦況は一変していた。
「半即死まであと10秒!前衛班下がれ、後衛火力上げろ!」
火力班が苛烈に攻撃を仕掛けダメージを稼ぎ、防御班が【愚者】からの攻撃を受け持ちダメージを限界まで減らす。さっきの負傷者達を壊滅へと追いやった範囲割合ダメージ攻撃のリキャストタイムの終わりが近づけばすぐさま火力班が離脱して防御班がそのアシストをする。だが、あれでは防御班が大ダメージを受けて戦線が崩れる。そう思った時だ
『『ガガガガガガガ』』
「『治癒一投』!」
「『ジャグリングショット』!」
治療班のメンバーがHPが1%となり動きを止めた防御班目掛けて大量のポーションを投擲すした。
防御班の面々に次々と命中したポーションの瓶が砕け中身がぶちまけられる。すると防御班のHPがみるみると回復し始めたのだ。
「はあ!?」
「遊撃班戻ったか。では攻撃に参加してくれ。動きは今のを見てたらわかるな」
「いや、いやいやいやちょっと待てや。今のおかしいだろ。あんな速度でポーションぶつけられたら回復以前にダメージが発生するだろ。それに何であいつら装備に当たっただけのポーションでも回復してるんだよ」
「なにを言っている。さっきも言っただろう。これはゲーム、レイドバトルと思えと」
「だから?」
「こういうことだ」
《雑賀妙斗からレイドパーティーに招待されました》
《参加しますか?Yes/No》
《※同パーティー内においてフレンドリーファイアは無効となります》
「これに加えてHPバーなんてものが出てきた所為で対象に当たりさえすれば回復するなんて益々ゲーム染みた物になったって訳だ。イかれてるだろ?」
「寧ろこんなものに即時順応したお前たちも大概だと思うんだが」
「神々が啓示板でレスバしている時点で大概だろ?」
「………それもそうだな」
あいつら年がら年中暇なのか依り代自慢大会とか変な催しばっかやってるからな。
「状況は理解した。行くぞお前ら!せっかく遊撃班なんだ。目一杯ひっかきまわしてやろうぜ!」
「「「「「おおおおお!!!」」」」」
いま判明している【愚者】の特殊能力は一つ目の攻撃対象変更特殊能力、二つ目の特殊能力封印特殊能力、そして三つ目の広域割合ダメージ特殊能力だ。まだ判明していないのがあと三つあるからそれに警戒しつつ攻撃を仕掛ける。
「『無窮歩法』…おらぁっ!」
「ガガッ」
超加速して試しに一撃ぶちあてて見たがHPバーは殆ど変動していない。流石は【眷族】ってところか。
「削れ削れ!奴に特殊能力行使の隙を与えるな!」
「カカレェ、カカレェイ……!」
「こんな状況で柴田勝家ロールしてんじゃねえ!誰だ今の!」
「ちくわ大明神『スラッシュ』!」
「誰だ今の!?」
「あーもうグダグダだよ」
クソ!共闘するだけで力が抜けるとか何でこいつら広域デバフばら撒いてんだよ!
と、その時【愚者】の最初の特殊能力のリキャストタイムが終わった。
「散開!」
即座に全員が離脱し後衛組が弓を射かけて特殊能力を使わせ、それが終わると即座に攻撃に舞い戻る。
「お前らそれ出来んならもっとまじめにやれよ!」
「鈴木さんがぶちぎれた!」
「お、良いのかそんなこと言って?なあ、俺よりDPS低い鈴木さんよぉ?」
「あ゛?」
いいだろう。メトロ九傑とか言うクソダサい称号の実力見せてやるよ。
「『無窮歩法』瞬刻思考『無限思考』『啓示板』」
『啓示板』」
日本国神格群と話せる掲示板。本来はそれ以外にこれといった用途は無く、神々が降臨しているこのタイミングで使う意味は無い。…俺を除いて。
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【僕らの】個人用啓示板・常世思金神【愛の巣】
673鈴木亮一郎
てなわけで今回も頼む
674 常世思金神
勿論任せなよ!この僕にね!
675鈴木亮一郎
あの【愚者】に弱点部位は?
676 常世思金神
無い。強いて言えば首だけどこれは全生物共通だね
677鈴木亮一郎
なら有効武器や属性は?
678 常世思金神
これも無いかな。このルールのお蔭で何時もより詳しく知れるけど全属性ダメージ等倍だね
679鈴木亮一郎
面倒だな。なら取り敢えずいつも通りの補助を頼む
680 常世思金神
了解!
681鈴木亮一郎
あとスレタイ何とかしろ
682 常世思金神
(´・ω・`)そんなー
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『啓示板』は神と対話出来る。そして神はそれぞれの依り代の周囲を俯瞰的に観測できるらしい。これに俺の瞬刻思考と『無限思考』を組み合わせるとふざけたコンボが出来る。
「ふっ!」
『無窮歩法』で急速接近した俺の振り下ろしに合わせて【愚者】が回避行動を取る。
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683 常世思金神
そこ右つま先伸ばして間合い2センチ確保。遠心力に任せて柄持つ手を緩めて更に1センチ伸ばす。そのまま左足で地面を強く蹴って『無窮歩法』で前1回転
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俺は右足のつま先を伸ばして間合いを2センチ確保し、柄を持つ手を緩めて更に1センチ間合いを伸ばす。そのまま左足で地面を強く蹴って『無窮歩法』の歩数カウントを増やし更なる加速で1回転して切り込む。
「ガッ!?」
完璧に避けた筈が一瞬で切られれば流石に動揺はするか。
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684 常世思金神
そこ右手を地面について回し蹴り
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得物を左手に持ち替え、右手を地面について回し蹴りを放つ。
「吹っ飛べ」
「ガアッ!?」
俺の回し蹴りを食らった【愚者】が勢いよく吹っ飛ぶ。どうやらちゃんとノックバックは受けるらしい。
超高速思考による音より速い情報伝達がこんな馬鹿げた技を可能としている。
「すっげえ。流石メトロ九傑(笑)」
「おいてめえ、さっきから言いたい放題言いやがって。後で覚えとけよ?」
「ヒエッ」
「おら、お前らぼさっとすんな!俺よりDPS稼いで見せろや!」
「言われっぱなしでいられるか!鈴木さんに続け!」
「カカレェ、カカレェイ……!」
「「「「「それはもういい!」」」」」
「…すいません」
さあ、余りにもグダグダなレイドバトルを続けよう。
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【TIPS】
このレイドバトルに於いて死亡とは終わりではない。蘇生猶予時間があり、それが過ぎると|このダンジョン《【電脳仮想領域 インターネット】》における最低レベルの負荷を受け、ダンジョン外に排除される。




