覚悟
SIDE:赤月陽菜
羞恥心
それこそが私が第二階梯以上の霊術を使いたくない理由だった。私の霊術属性《魔法少女》は絶大な力の対価に私にすこぶる恥ずかしいことを求めてくる。たかが恥ずかしいことかと思うかも知れないが、私にとってはとてもキツイ。何せ私が挑んでいるダンジョン【電脳仮想領域 インターネット】に内包される小ダンジョン【言霊弾幕方形 ニコニコ】ではダンジョン攻略の映像が全世界にリアルタイムで配信される。そんな状況下であんなのをやるのは二度と御免被りたい。
…そう考えていた。
でもさっきの話を聞いてしまってはそうも言っていられない。死なないと思っていたからこそ此処に拘っていたのだ。そうでないというのなら私は何のためにこんな所に拘っているのか分からなくなってしまう。
もう一度考えてみよう。私は何の為にダンジョンに潜っている?
金…確かにそれが一番だが、別に大金を稼いでどうこうしたいとは考えていない。
名誉…要らない。
マジックアイテム…特にこれといってほしいのは…APPの上がる薬…
色々考えてみても私がダンジョンに拘る理由は(APPの上がる薬を除いて)これと言ってない。
「あれ?私なんでダンジョンに挑んでるの?」
「今このタイミングでその疑問に陥らないでくれませんかねぇ!?」
改造ベイブレードと三度目のせめぎ合いをしている鈴木さんが何か言っているけど無視だ、無視。
思い返すのは初めてダンジョンに潜ったあの日。
〜〜〜
モンスターの群れに驚いて咄嗟にその時私が出せる最高火力の霊術を解き放って吹き飛ぶスライムやジャグラスを見て私は思わず声に出していた。
「あは♪」
〜〜〜
………あれ?
「私もしかしてバトルジャンキー?」
「どうしてそうなった!?」
私がダンジョンに挑んだ理由。それは…戦うのが楽しいから?
「──あーそう言えば私昔から喧嘩とかノリノリで吹っ掛けてましたね。」
あれ?もしや私の友達がみっちゃん以外全然出来なかったのってそのせい?
いやまあ、体罰教師を殴り倒したりナンパしてきたチンピラ殴り倒したりしてきたけども…
「あーもうっ!」
なんだか色々と馬鹿らしくなってきちゃった。要は敵を潰して私がスッキリすればいいということね。理解した。
…じゃあ別に羞恥心で力を制限する必要無くない?
「私も社会の歯車として順応していたのね」
「お、おう」
「じゃあ久し振りにはっちゃけますか!」
第三階梯霊術《質量無視の小鞄》によって変身状態の時に常時ドレスの脇にくっ付いているポーチからポーチの口より五倍ほど大きな紅い水晶球を取り出す。
「まて、それどっから取り出した」
いやだなぁ鈴木さん。魔法少女がどう考えても質量保存の法則を無視した物を取り出すなんて常識じゃないですか。
“ガッシャーン!!”
取り出したバスケットボール程サイズの紅い水晶を地面に叩きつける。
すると、地面にはあの人には凄く見覚えのあるだろう魔法陣が描かれる。
「おまっ、この場で英霊召喚する気か!?」
「ヤダなぁそんなわけ無いですよ。」
そして私は魔法陣の真ん中に立って詠唱を開始する。
SIDE:鈴木亮一郎
「祖に我が血と肉。──」
それは初めから英霊を呼ぶのとはまるで違う詠唱だった。
「──礎に魂と契約の大公。」
「──降り立つ風には壁を。」
「──四方の門は閉じ、現世より出で、輪廻に至る三叉路は循環せよ。」
「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。」
「繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」
「────告げる。」
その英霊召喚とはまるで違う術式は確かな力を持って発動している。
「汝の身は我が身なりて、我が命運は汝の未来に!」
「星の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ!」
「誓いを此処に!」
「我は常世総ての善と成らず、常世総ての悪を敷かぬ唯人なり。」
「汝言霊を纏わぬ七天」
「星巡る大輪廻の輪より来たれ、未だ天秤に届かぬ者よ!」
収束した霊力が形を成し、人型となる。
そしてそこに現れ出たのは
「…赤月?」
そこには赤月に寄り添う様にもう一人の赤月が佇んでいた。
「これが私の第四階梯霊術《生霊召喚》です。」
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【TIPS】
かつてその絶大な能力により英雄となった者達を喚び出す『英霊召喚』には莫大な量と質の対価を要求される。だが、もし喚び出そうとしている霊が英霊に満たぬ誰かであればそれを呼び出すのに必要とされる対価は英霊のそれに比べて数分の一となる。
【TIPS2】
没案:職業【VTuber】
・この職業は任意で手放すことが出来る。
・この職業を持つ限り保有者は【電脳仮想領域 インターネット】以外のダンジョンへの入場権限を剥奪される。
・【VTuber】専用の【特殊能力】『電脳偽体』を獲得する。
・『電脳偽体』:【電脳仮想領域 インターネット】における死亡時の魂へのフィードバックを無くす。
没理由:推しが無双しそうなのとキャラを掴みきれないから。




