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終焉世界の探索者  作者: 雷炎
3章:電脳仮想領域 インターネット
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改造ベイブレード

あり得ない速度で回転しながら落ちてくるベイブレードを見て思う。


「案外下からって見ることないからレアだよな。」


「現実逃避してないで逃げましょうよ!?」


「んなこと言ってもここからどうやって逃げるんだよ?」


周囲は完全に閉塞しており、出入り口は何処にもない。


「あれ、霊術で壊せませんか?」


「あんな質量の物をそう簡単に壊せるとは思わないが削れないかかやってみよう。」


虚霊術が第四階梯


「《虚空門》!」


開かれたるは虚無への大門。だがそこに触れた超巨大な駒は一ミリたりとも欠けることなく門に弾かれあらぬ方向へと飛んで行く。


「駄目だ!霊力への耐性が高すぎて俺の霊術じゃ弾くのが精々だ!」


こんな時にムラクモでもあれば簡単に真っ二つに出来たかもしれないと言う物だが、生憎エクステンペスト討伐後に国に回収されてしまっている。


「恐らくここでのこの戦闘?の終了条件は二つ。あの馬鹿でかい独楽をどうにかして止めるか俺たちが死ぬかだ。」


「あんなのどうやって止めろと言うんですか。」


「無理に止める必要は無い、なんとか重心を傾けて地面と接する面積を増やせばそれだけで勢いを和らげられる筈だ。俺の霊術は基本的に質量を伴わないから無理だがお前の霊術には何か無いか?」


「…あります。」


「そりゃ好都合だ。なら頼む。」


「…嫌です。」


「あ?」


「嫌です。私は霊術を使いません。」


「おいおい、さっきも言ってたがそんなこと言ってる場合じゃ無いだろ。このままじゃ二人ともお陀仏だぞ?」


「死にません。どうせここでの死は仮初めの物ですから…」


「…そうかよ。」


確かにここでの死は仮初めだ。それは既に何千何万という数の人がその身を以て証明している。まさしく此処は死なない世界(インターネット)、言葉のナイフで心を病む人がいてもそれは物理的な死因になり得ることは一切無い。だがなあ赤月、お前は分かっているのか?此処での死は永続する物では無いが別に苦痛の無い物では無いということを。…多分知らないのだろう。赤月はそれだけの力がある。


「お前は分かっていない。」


「…何がですか。」


「生き返る苦痛を、だ。」


闘技場の掘り下げられた中央部分に留まる事なく執拗に俺たち目掛けて突っ込んでくるあの独楽は恐らく時間経過では止まらない。止まるにしても物凄く時間がかかるだろう。だったら時間経過で止まるかもしれないという僅かな希望に縋るのでは無く、力尽くで止めるべきだ。


「小手調べだ。」


亜空庫(インベントリ)》から取り出した《炎》属性の霊術で作った爆弾を投げつける。


“ドオォォォン!”


「効果なし、と。」


並みのモンスターなら倒せなくともそれなりのダメージを与えられる火力はあるのに小揺るぎもしない。


「次」


亜空庫(インベントリ)》から油を取り出して改造ベイブレードの足元付近にばら撒く。これでスリップしてくれれば楽なのだが…


“ボゥッ”


油に改造ベイブレードが触れた瞬間に摩擦熱で発火した。改造ベイブレードが滑っている気配はない。


「駄目か。」


ここまで手応えがないと他の方法も効果的では無さそうだ。


ならば思い付く残された手段は唯一つ。


【簒奪竜刀 チギリ】を抜き放ち構える。


「鈴木さん。何を…」


何をするのかって?決まってんだろ。


「力尽くで止める!」


無窮歩法(タキオンステップ)』発動。


刹那の世界を駆け、それでも高速で回転しているのが見て取れる改造ベイブレードの下に入り込み、軸と地面と接している部分にチギリを差し込みテコの原理を用いて思いっきり力を込めて持ち上げる。


「んがあああああっ!!」


だが巨大ベイブレードは一ミリたりとも浮かび上がらない。


「うわっ!」


力が抜けた瞬間に回転に巻き込まれ吹っ飛ばされる


「まだまだあっ!」


死んでたまるかってんだ。



SIDE:赤月陽菜


何故彼はああも必死なのだろうか。


今も最初と変わらず高速回転を続けるあの改造ベイブレードなるものに向かって何度も突っ込んでいく男を見て疑問を覚える。


ここは所詮仮初めの世界。いかにも惨たらしい死に方をしたところで実際に死ぬことは無い。だからああも必死になる必要など無い。


…ない筈なのにあの男は今も鬼気迫る迫力で巨大な独楽へと突き進んでいく。


何で?どうして?今の貴方にあれを止める力なんて無いでしょ?その努力は実らないのでしょ?そんな必死こいて足掻くより死んでやり直す方が楽で簡単でしょ?だからどうして…


「…どうして貴方はそこまで必死なんですか?」


「あぁ?んなもん死にたく無いからに決まってるだろ。」


「でも、このダンジョンでは死ななくて…」


「おい赤月。」


「なんですか?」


「お前さっきから死ねば良い死ねば良いと何度も言うが死んだことはあるのか?」


「…ありません。私はいつも同じ場所しか行かないから。安全マージンは充分取っているから。」


「なら、なんで大丈夫って言えるんだよ。」


「だから、ここはそういう場所だから…」


「他人の言葉を鵜呑みにしてばかりでいるな!唯のネット情報で済むならまだしもここじゃそれが命に直結するんだぞ?」


「何を言って…」


「このダンジョンの死者蘇生システムに関してネット上でもあまり知られていない事が一つある。」


「え?」


「確かにこのダンジョンで死んだ人間は例外なく入場した地点で蘇生する。だが、その蘇生の過程を聞いたことがあるか?」


「…ありません。」


「いいか。このダンジョンで死んだ人間は蘇生の過程で仮称『魂』の再構築が行われる。そしてその再構築は死亡者の肉体の損壊レベルに応じて過酷になる。」


「…」


知らない。そんな話は聞いたことが無い。


「以前マイクラダンジョンでマグマダイブして死んだ男が居た。その男は肉体を完全喪失した状態で蘇生が行われ、無事蘇生はしたもののその場で発狂してショック死したそうだ。」


「知りません。そんな話。」


「さて、ここでクイズだ。俺たちに迫り来るあの巨大な独楽、あれに轢かれて死んだ場合、俺たちの肉体はどの程度無事な状態で残るでしょうか?」


「…あっ」


「答えは言うまでも無いだろ。…お前がどんな理由で第二階梯以降の霊術の使用を嫌がっているのかは知らん。だがそれがちっぽけなプライドとかから来てるもんなら今すぐ捨てろ。死ななくてもここは正しく現実(・・)なんだからな。」


「…」


………


SIDE:鈴木亮一郎


言いたいことは言い切った。ここで動かずに死ぬならその程度の覚悟のやつなんだろう。そうならば俺一人でも何としても生き残る。だが、もしも今の話を噛み締めて変わってくれるのなら…


────────────────────

【TIPS】

【電脳仮想領域 インターネット】の有する死者蘇生システムにはいくつかの制約が存在する。


一つ、内部で老衰によって死亡した者は例外的に蘇生を行うことが出来ない。


二つ、ダンジョンに入場する前の時点で有していた疾患や損傷は、ダンジョン内で治癒した物を除いて入場前の状態で蘇生される。


三つ、神器によって発生した傷は、蘇生しても修復されない。


四つ、魂と肉体の紐付きに基き肉体の再構築の際には損壊具合に応じたフィードバックが魂に対して(・・・・・)発生する。


五つ、神器【No.015 ■■■■杖 ■■■■■■■】の奉納が行われた場合、二つ目から五つ目の制約は消失し、以下の制約が追加される。


二つ、先天的な疾患等は修復されない。

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新作です

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