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30億だけ持たされた私の異世界生活。  作者: 夢寺ゆう
第3章 王都にお呼ばれ
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20.ごめんなさい。やりすぎました

お久しぶりです。

自分でも1話から見直さなければ思い出せないほど長い期間が空いてしまいました。

覚えてないけどしゃーねーからまた読んでやるよ、と思ってくれる仏のような方がいらっしゃれば、嬉しいことこの上ありません。


「む、気配がするな……」


 そう呟いたシュナが刀に手を添え、足を止める。

 スンスンと鼻を鳴らし、犬の獣人らしい索敵を行う。


「前方の木の上に隠れてるわ。数は……これは、多いわね。えっと……」


 これまた索敵に長けたルルが長いウサ耳をピコピコと動かしながら隠れている敵の数を数えようとして――



「12だね」


 

 ルルが数え切る前に眼帯を外して露わになった左目を紅く輝かせながら放たれた雷の矢により、前方に広がる木々が一瞬で丸焦げになった。


「…………やり過ぎた」


 目の前に広がる大山火事にハルは頬をひきつらせ、冷や汗を流す。王都から帰ってから毎晩寝る前に右手首の魔道具に魔力を貯め込んでいた。しかも毎回魔力切れを起こす程の量をだ。

 故に今この魔道具に嵌め込まれた魔石には、溢れんばかりの魔力が貯まっている。


 困難になっている魔力制御を試す意味も込めて皆で街の近くの山に来たはいいが、早速現れたモンスターを隠れている木ごと超破壊力電圧で焼き払ってしまった。

 これほどの魔法を撃ってもハルがピンピンしているのは、あくまでも今使った魔法は右手首の魔石の分の魔力しか使っていないからだ。


 本当は牽制になるくらいの威力に抑えるつもりだったのだが、やはり思ったようにはいかないようだ。


「ちょっ! 水! 水!」


「お、おい。あっという間に火が燃え広がっていくぞ!!」


「ハル! 水の魔法を!」


 カイ、シュナ、ルルがハルに詰め寄り、水の魔法で火を消すよう促す。しかし――


「あ、ごめん。今ので魔石の魔力が切れた」


「「「馬鹿ー!!」」」


 結局、シュナに限界手前まで魔力を分けてもらい、ロイドの魔法を模倣した水牢魔法で燃えた木々を全て覆うことで火を鎮火することに成功した。


「いやー、やっぱりまだ魔力制御が全然だね。流石は師匠の魔力」


 まるで反省していないハルにカイとルルが物凄い形相で詰め寄る。


「あ、あれ……? どしたの2人とも……」


 2人のただならぬ表情にハルもたははー……と苦笑いを浮かべる。

 2人はすぅっと息を大きく吸い、呼吸を合わせて怒鳴りつける。


「「正座!!」」


「……うす」


「は、はは…………」


 大量の魔力消費で立てないほどに体力が消耗してしまったシュナを膝枕で休ませながら、ガーガーと2人のお叱りを受けるハルを見て苦笑いを浮かべるリリィであった。





        ×  ×  ×





「まったく! 一体何を考えているんですか!!」


「いやあの、お叱りなら現場で仲間達に十分受けたので、もう勘弁してください……」


 魔道具に貯めてあった魔力もシュナの体力も限界だったため、あの後すぐに街へと戻った一行だったが、ギルドの前を通りがかったハル達の前にはアランカのギルドマスターであるシルシが仁王立ちで待っていた。


 シュナをカイたちに任せ、今回の山火事の原因であるハルだけがギルドの2階にある会議室へと連行された。


「この街からも山が燃えていくのが見えて大騒ぎになったんですよ? すぐに大きな水の膜で火は消し抑えられたものの、恐らくあの一帯の薬草や木の実なんかは全焼です」


「ほんと、ごめんなさい……」


「……はぁ、それで? 一体何をしてあんなことになったのですか?」


 あまりこの左目のことや魔力制御のことを言って回るつもりはないのだが、流石にあんな放火まがいのことを起こしておいて隠しておくのは無理があるというものだ。

 それに事実上この街で一番偉いとも言える彼女に事情を話しておくのも、これからのことを考えるといいかもしれない。


「―――、つまり……あの日、サクバ様は無理をして街を守った代償として魔力を極限まで失い、今は身体のほとんどが他の人の魔力に侵されているため、魔力制御ができず、無意識下でその左目の魔眼が発現した、と。……申し訳ありません。サクバ様が現在そのような状態になっているなど、考えもしませんでした……」


 目を伏せ、本当に申し訳なさそうに頭を下げるシルシにハルは慌てて手を振る。


「いやいやいや! それでも山火事を起こしてしまったのは私の不注意ですし、それこそ制御の練習なら自分の敷地でやればよかったのにモンスター相手に試してみたいと言ったのも私ですから! 今回の件は全面的に私が悪いんですし、頭を上げてください!」

 

 悪いのは明らかにハルの方なのに謝らせてしまったことに罪悪感を覚える。

 彼女とはこれからも良い関係でいたいと思っているため、これ以上変な空気にするわけにはいかないとハルはすぐに話題転換を試みる。


「そ、それよりも。ギルドの前で私達を待ってたのはこれ以外にも何かあったんじゃないんですか?」


「あ、そうでした。では気を取り直して。実は先程王都の方から連絡がありまして、学校を運営するにあたっての資金の予算案が送られてきました」


 シルシから数枚の羊皮紙を受け取る。

 そこには学校を運営するにあたって国がどこまで支援可能かが記されていた。


「……! 校舎や訓練施設は国が全面的に資金を割り振る……!?」


 正直初めの校舎および訓練所設営はハルがポケットマネーをはたくつもりでいた。

 それなりの額になると覚悟はしていたが、後で半分でも国王に請求してやろうと厭らしく策略していたのだが、それを初めから全面的に援助と言われると汚れた自分の心が恥ずかしく思えてくる。


 しかも施設系にお金がいらないと分かれば、金銭面で入学できないという子供はかなり少なくなるだろう。実質、必要になるのは講師をしてくれる冒険者への給料くらいだ。座学で必要となる椅子や机、訓練で必要となるであろう木刀や魔法の杖なども備品ということで国に出してもらおう、とこの際だから甘えられるだけ甘えようという考えに切り替えることにした。


 学校の紹介や勧誘はギルドを通してやればいいし、本当にあとは講師役の冒険者を探すだけで――


「しかも見てください。ここに講師役の冒険者2名(剣士と魔法使い1名ずつ)も派遣すると書いてありますよ」


「……!」


 国王直々に推薦する講師ということは当然実力者であると同時に、非獣人迫害主義者であることも間違いない。最もネックであると考えられる人間と獣人の共存生活も、教える先生が全く差別しなければ問題なくなる。怖いのはモンスターペアレントくらいだが、国の後ろ盾があるという事実が生徒の親たちにも安心感を与えるだろう。


「これは……本格的に実現が見えてきましたね」


「はい。むしろここまで国に全面協力という形を取ってもらうと、絶対に成功させなければなりませんね。名前なども考えなければならないのでは?」


 シルシに言われ考えてみる。

 名前、名前、学校の名前……

 ここまで国の援助があるのだから、頭に王立という単語は付けるべきだろう。


 そんでもって、これから説明するであろう子供の親達にも一発でどんな場所か分かるような、そんなわかりやす名前にするには――


 うん。あまりこういうのを考えるのは得意じゃない。


「……初めてな訳ですし、直球でいいと思うんですよね」


「と、言いますと?」


「例えば……王立冒険者育成学校、とか」


「なるほど……本当にそのままですね。ですが、冒険者を育成する場所自体この国にはないわけですし、分かりやすくて私は良いと思いますが」


「ホントですか? じゃあ決まりで」


 こんなにもあっさりと決めてしまって良いのかと思わないでもないが、ハルはどちらかといえばこういったシンプルな名前の方が好きなので全然オッケーだ。シンプルイズベストという言葉もあるくらいだし。


「ではそのように宣伝紙を作っておきます。実は建設会社にも話は通してあるんです」


「……! その建設会社って、魔法使いの大工さんがいる?」


「ええ。ご存知なのですか?」 


「はい。以前たった1日で研究所を作ってもらったことがあるので」


 どうやらシルシが頼んでいるという建設会社は、以前ヒーラの研究所を1日で完成してしまった魔法使いの大工さんがいる会社らしい。

 彼の腕はハルも見込んでいるので安心して任すことができるだろう。


「そこで提案なのですが、サクバ様」


「……? はい?」


「当分の間はこの学校運営に力を入れてもらえませんか?」


 いまいち言っている意味が分からない。

 言われなくとも学校運営には力を入れるつもりなのだが。


「サクバ様はこの街の住民の恩人でもあります。本来なら今のサクバ様はそう簡単に出歩いていい身体じゃないはずです」


「…………」


 その話に戻るのか、と微妙な表情になるハル。

 その表情からハルの気持ちを感じ取ったのか、シルシは呆れたような笑みを作る。


「サクバ様の性格上、ジッと安静にしているというのは無理かもしれません。ですが、せめて学校ができるまでは無理せずご自愛ください」


 確かにハルの性格上、ジッとしているのも、面白そうなことに首を突っ込まないのも無理な話だ。だが、まだ出会ってひと月も経っていない彼女に自分がどういう人間なのかが分かられているというのも変な話である。そこまで自分は分かりやすいのかと自分でも呆れてしまう。


「分かってますよ。私には頼れる仲間もいますし、当分は学校設立に重点を置くことにします」


 そう言い残し、ハルは会議室を出る。


 階段の踊り場で一度足を止め、己の胸に手を当てる。



 ―――わかっている。生命活動に必要な魔力は回復しないということくらい。ロイドもライン王子もそう言っていた。


「分かってるって……! 大丈夫、だいじょうぶ……」




 加減を知らぬが如く体内で増え続けるロイドの魔力。

 それに比例して、まるで居場所を追いやられるかのように、まるで押しつぶされるかのように、たった一か所で静かに小さく燃える炎。



 ―――分かっている。わかっているのだ。



 きっと、咲場 春の先が――そう長くはないことくらい……





改めて、長い間投稿できずに申し訳ありませんでした。

作者である私自身1話から読み直して「こんなシーンあったっけ?」と思い出せないほどでした。

よろしければ数話前からとかでも読み直していただけたら思い出してもらえるかもです

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