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30億だけ持たされた私の異世界生活。  作者: 夢寺ゆう
第3章 王都にお呼ばれ
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16.しばらく使用禁止


「おはよう……」

「おはよう、ございます……」


 ハルが客間で朝食を取っていると、ルルとリリィが寝起きの顔でやって来る。


「おはよう2人とも。何か眠そうだね」


「ええ。顔は洗ったんだけど……眠気がとれないわ」


「なるほど、でしたらこちらをどうぞ」


 ゾイスタは席に着いた2人の前に黒い液体の入ったカップを置く。


「「いただきます……」」


 何の疑いもなく、半分寝ぼけたままその液体を一気に口に含む。



「「……!!!! ~~~~~~~っっっ!!」」



 物凄い反応だ。

 カッと目を見開いた後、両手で口を押さえながら足をバタバタさせている。

 ここで吹き出さないのは偉いと言っていいだろう。

 カイなんかだと遠慮なく吹き出しそうだ。


「何飲ませたんです?」


「陛下がまだ大事な仕事が残っているのに、どうしても眠くなってしまったときに飲まれる、この城で一番苦いコーヒーでございます」


「そりゃ眠気も吹き飛ぶ」


「吹き飛ばし過ぎよ!」


 ルルが涙目で訴える。

 その横では未だリリィがケホケホと可愛らしく咳き込んでいる。


「まあまあ、目が覚めたならよかったじゃん」


「そういう問題じゃ……って、ハル? 貴女起きてたの?」


「いや、さっきおはようって言ったじゃん」


 どうやらリリィもルル同様今気づいたようで、涙目のまま驚いている。


「コホッ……コホッ……身体は、大丈夫なんです、コホッ、か?」


「うん、まずは自分の心配をしようか」


 ハルは水の入ったコップをリリィに渡す。


「あ、ありがとう、ございます。…………ふぅ、それで、ハルさんの方は……」


「大丈夫大丈夫。この通りピンピンだよ」


 肩を回して元気アピールをする。

 

 その姿が空元気に見えたのか、ルルもリリィも微妙な表情でハルを見つめる。


「……? その左目はどうかしたの?」


「あー、うん。多分皆訊いてくるだろうから、皆が揃ってからでいいかな?」


「ん。わかったわ」


 ルルに続いてリリィも頷いた。

 





 その後、シュナは朝の鍛練とやらが終わり、朝食を取りに客間までやって来て、最後にカイが起きてきた。


 カイに左目のことを訊かれたところでハルは先程ライン王子とロイドから聞いた話をそのままカイ達にも話した。



「魔法が発動し続けてるって、それどうするんだよ」


「さっき王子とロイドと一緒に色々調べてみたら、左目を瞑ってれば多分魔法は発動されないんだよね。だから何か案が出るまではこのままかな」


 あの後色々と実験をし、左目が開いていることが魔法の発動条件であることがわかった。

 つまり、魔力を消費したくなければ左目を瞑っていればいい。


 しかし、当然不便な点もある。


 ずっと片目を瞑っているというのは意外と疲れる。

 それに加え、片目だけでは距離感というものを掴むのが難しい。

 まだ試してはいないが、恐らくクロスボウを狙ったところに撃つのも一苦労だろう。


 とにかく、早く慣れなければならない。



「あ、それと、今日アランカに帰るから」



 え? と4人の声が重なる。


 これはもう決定事項だ。流石に長居し過ぎた。

 今までは魔力過多のせいで身体が怠く、しかもハル自身原因がわかっていなかったのでまたいつ倒れるか分からず、国王陛下やライン王子のご厚意に甘えていた。


 しかし、原因が分かり、昨日の魔力切れのおかげで身体も軽くなった今日ならもう帰っても大丈夫だろう。

 これ以上の長居は無用だ。


「と、いうわけで、準備しておいてね」




 解散した後は各々でここ2週間弱お世話になった人達にお礼を言いに行った。


 シュナはここ最近ずっと稽古をつけてもらっていた騎士団団長のゴドウィンに挨拶をしに行き、カイは一応師匠であるカナタの元へ。

 ルルとリリィは料理をたまに教えてくれた執事長のゾイスタの所へ行き、そしてハルはもちろん――



「今日までお世話になりましたー」


「うわー適当ー」


 ロイドとたまたま一緒にいたライン王子の元へと来ていた。


「それにしても急だね。何も今日出発しなくても」


「いえ、もう色々と分かった以上ここにいる意味も特にありませんので」


「でもその左目のことや脅威的な魔力の回復力、それに魔力制御のことについても何1つ解決してないよね?」


「いえ? 原因が分かれば解決策はすぐに見つかりますよ」


 ハルの言葉に珍しく2人が驚く。


「いや、根本的な解決策は王子の言う通り何1つ思い付いてはないんですけど、とりあえず応急措置的なことは考えてあります」


「へぇ、聞かせてもらっても?」


 ハルは一度頷いた後、人差し指を立てる。


「まず、ロイドの魔力の回復力。これはそもそもどうしようもないわけで、肉体のキャパを越える前に放出しないといけない」


「うん。そうだね」


「そうなるとこの左目はちょうどいいんですよ。魔力制御が出来ない今、無闇に魔力を放出しようとすると魔力切れで倒れる恐れがある。でもこの左目は勝手に発動していることもあってか、魔力の消費量は一定です。それなら、魔力が増えて身体が怠くなってきたら左目を開くだけであら不思議。あっという間にちょうどいい魔力量に」


「確かにその左目がある限りはもう魔力が増えすぎるってこともなさそうだね」


 ただやはり一番の問題は解決策が見当たらない。

 

 魔力制御。こればっかりは一朝一夕でどうにかなるものではない。


 ハルの身体は魔力の放出だけが思うようにできなくなったわけではない。

 前兆は確かにあったのだ。


 ハルはクロスボウの矢に魔法を付与する際にも上手く魔力を制御できなくなっているのだ。


 クロスボウによる魔法は一見手首の魔道具が魔力を魔法に変換しているだけのように見えるが、実際は使用する者の魔力回路を利用している。


 いわばあの魔道具は1人では自転車に乗れない子供が使う補助輪のようなものだ。

 まあ、補助輪にしてはいささかやり過ぎな気もしないでもないのだが。


 補助輪だけでは当然自転車は進まない。

 人の漕ぐ力があって初めて自転車は進む。


 つまりあの魔道具も、使用者が発動することでその使用者の魔力回路を補助して魔法を発現させている。


 しかし、今のハルはその魔力回路がぐちゃぐちゃになっており、例え補助輪が付いていたとしても、正確な量の魔力を魔法に変換することが出来ないのだ。


 だからライン王子との勝負のときの最初の煙幕魔法も、自分が思っていたよりも多い魔力量を消費してしまい、その分より広範囲で濃度の濃い煙幕が発生してしまった。



「今の私は魔石に魔力を補充するだけでも危険だし、この魔道具を使うときも最悪の場合、その気はなくても1回の使用で魔石の中の魔力を使いきっちゃう程の魔法が発射される可能性があると」


「そうだね……何度も繰り返し訓練すればもしかしたら少し位は制御できるかもしれないけど、訓練する度に被害が凄いことになりそうだしね」


「しばらくは無理せず様子を見た方が得策だと思うよ」


「……わかった」


 とにかく、1人でいるときに魔力を使うようなことは避けた方がいいということだろう。


 それに最近は魔法に頼ってばかりで忘れがちだが、そもそもクロスボウというのはこれだけで十分殺傷能力のある武器である。


 その辺の弱いモンスターなら魔法を使わずとも死角から一発で仕留める自信はある。


 久しぶりに初心に帰るのも悪くないだろう。


 そんなことを考えている自分を自嘲気味に笑う。

 殺傷能力だの、モンスターを死角から仕留めるだの、知らない間に随分と異世界に染まってしまったようだ。


 そんなハルを見て首を傾げるロイドとライン王子。

 本当にライン王子もいつも読心魔法を使っている訳ではないようだ。


 昼過ぎにはロイドの転移魔法でアランカまで送ってもらう約束をし、ハルは国王陛下にお礼を帰ることを告げるためにカイ達と合流しに客間へと戻るのであった。






次回帰還です。


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