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30億だけ持たされた私の異世界生活。  作者: 夢寺ゆう
第3章 王都にお呼ばれ
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8.王子の意外な性格


「はぁ~、何か面倒なことになっちゃったなー」


 玉座の間から退室したハル達一行は、客間となる部屋へ通されていた。


「まず獣人専属大使ってなんだ? 何する役割なんだ?」


「さぁ? でもとりあえずは名前だけで、当分は特にすることもないだろうとか言ってたけど……」


「つまりまだしばらくはいつも通りってことか?」


「そうなるのかな」


 ズズッと2人してのんびりと出されたお茶を啜るハルとカイ。


「それで、アタシ達はこれからどうするの? もう帰るの?」


「せっかくだし王都を見て回ってもいいけど……できればロイドかカナタに案内してもらいたいよねー」


 王都の門番兵士の反応を見る限り、ハル達だけで王都の街に出ると色々と面倒なことになりそうだ。


 特にカイやシュナが喧嘩騒ぎを起こしかねない。

 しかし、それらの問題もロイドかカナタがいれば一発解決だ。


 王都に入ってから王城に行くまでの道中でも、ロイドとカナタは歩くだけで注目を浴びていた。


 それはもう大人から子供まで。


 改めて有名な冒険者なのだと教えられた感じだ。


「それなら僕が案内しようか?」


「え?」


 部屋の入り口から聞こえたその声に振り返ってみると、そこには高貴な服に身を包み、ニコニコと温厚そうな顔立ちをした青年が立っていた。


「えっと……ライン王子、ですよね? 何で王子がここに?」


 そう。先程玉座の間で国王陛下の後ろに立っていたこの国の第1王子であるライン王子がそこにはいた。


「部屋の前を通り掛かったらたまたま声が聞こえてきてね。それで、どうかな? 僕が一緒なら君が心配しているようなことにはならないと思うよ?」


「…………」


 ニコニコしながら簡単にハルの思考を読むライン王子。


 確かに彼が一緒ならハルが心配していたような面倒事は起きないだろう。


 別の心配事は増えそうだが――


「……本当にいいんですか? お仕事とかは」


「大丈夫大丈夫。仕事なんて後でもできるけど、君達の案内は君達が王都にいる間しかできないからね。最悪僕の仕事は他の人に任せればいい――」

「わけないだろ」


「ぐはっ!」


 扉のところに立っていた王子が背中を蹴飛ばされて部屋の中へと倒れ込む。


「どこにもいないと思ったら、こんなとこにいたのか」


「やあロイド。アインツベルク王国第1王子を足蹴にするなんて偉くなったね」


「よお馬鹿王子。王都に来た一般人を案内するためだけに仕事放り投げるなんてより一層馬鹿になったか?」


「あ、ロイド、どこ行ってたの?」


 そこにいたのは王子を蹴ったであろう足を上げた状態のロイドだった。


「この馬鹿王子を探してたんだよ。ほら、グリフォンの羽」


「おおー! お、おぉ……?」


 ロイドからバラバラと10本近いグリフォンの羽を受け取った王子は何とも微妙な反応を見せる。


「で、でかくないかい?」


「そりゃ、グリフォンの羽だからね」


 確かライン王子は、グリフォンの羽で羽ペンを作りたいと言ってロイドにグリフォンの羽を取りに行かせたとか言っていた。


 だが、グリフォンの羽は1枚でも軽く60センチを越える。

 ペンにしてもでかくて書きにくいだろう。


「じゃあかさばるし、いらないや」


 ぽーい、とグリフォンの羽を放り投げるライン王子。


「…………………………」


「うおっ、嘘嘘! じいやか誰かにこれで扇でも作ってもらうから! 怒んないで! こんなとこで魔法撃たないで! 城が壊れるから!」


 グリフォンの羽で作る扇はでかくないだろうか?

 どうやって扇ぐのだろうか。


「もちろん他の人に扇いでもらえばいいんだよ」


「…………なるほど」


 いや、そんなことより、さっきから心の声を読まれていないか?


「気を付けた方がいいよ。この馬鹿王子は読心魔法が使えるから」


「は? 読心魔法?」


 読心魔法とは読んで字のごとく相手の心を読む魔法だ。


 地球にも読心術というものがあるが、あれはあくまでも表情や目の動きなんかで相手の心を読み取る技術。


 しかし、読心魔法は表情も目の動きも口調も何も関係ない。

 ただただ、その人が今考えていることが分かってしまうというチート級の魔法だ。

 読心魔法が使える者には嘘も誤魔化しも通じない。


「いやー、この魔法は他国との交渉とかで凄い役に立つんだよ。ま、戦いの中でも相手の考えが読めるのはでかいけど」


「……? 戦いの中って、ライン王子も戦ったりするんですか?」


「…………ぷっ、ははは、こう見えてカナタに剣を、ロイドに魔法を教えたのは他でもない僕だからね」


『ええぇぇ!!!?』


 ライン王子とロイド以外の全員が驚きの声を上げた。


「え、じゃあもしかしてライン王子はロイドより強いってことですか!?」


「……は? そんなわけないでしょ? 誰に向かってそんなこと言ってんの? 僕がこんな馬鹿王子より弱いわけないでしょ?」


「そうそう。もうとっくの昔に抜かされちゃったんだよー」


 あははーとまるで気にしてない様子のライン王子。

 

 想像していたのとはまるで違う、何とも捉えどころのない人である。


「そういえばハルちゃん……だっけ? 確かロイドの弟子なんだよね? どう? 一戦交えてみる?」


「ええ!? ライン王子とですか?」


「そう。だってハルちゃんに勝てば間接的にロイドにも勝った気分になれるし」


 ピキッ、とロイドから不穏な音がした。


 それにライン王子も何だかんだで昔の弟子にとっくに抜かされていることを気にしているようだ。


「いいよ。やってみるといいさ。言っとくけど、この僕の弟子なんだがら、最近運動不足の馬鹿王子が勝てるわけないけど」


「よーし決まりー。じゃあ久しぶりに負けた方が勝った方の言うことを何でも1つ聞くやつやろうよ」


「ああ。望むところだよ」


「いや、ちょっ……」


 ハルの意思とは関係のないところでどんどん決まっていく。


「じゃあ30分後、闘技場に集合ねー」


 楽しみだなーとスキップしながら部屋を出ていくライン王子。


(本当に想像してた人と違いすぎるでしょ)


 ライン王子を知らないハル達は全員がそう思った。



「……ハル」


「へ、へいっ!?」


 聞いたこともないようなロイドの低い声につい変な声が出てしまう。


「……負けたら殺す」


「……う、うす」


 自分の意思は全くの無視で命の危険が迫るハルだった。






 一方その頃~


「ライン兄さま」


「ん? ああ、カリナ来てたんだ」


 客間から楽しそうに出てきたライン王子に1人のカリナと呼ばれた少女が声をかける。


 少女は淡いピンクのドレスに身を包み、気品のある立ち振舞いと煌めく金色の髪が相まって、一目見るだけで地位の高い家の者だということがわかる。


「でもカリナ達との食事会は明日じゃなかった?」


「ええ。ですから今夜はここに泊めてもらおうかと思いまして」


「珍しいね。僕は大歓迎だけど。……あ、なるほど、ロイドが帰ってきたからか」


「~~~~~っ!」


 どうやら図星のようだ。


 ライン王子のことを兄さまと呼ぶ彼女は実の妹というわけではなく、ライン王子とは従兄妹にあたる。


 つまり国王陛下の弟君の娘ということだ。


 まだ齢11歳ではあるものの、お察しの通り昔からロイドに気があるらしい。


「じゃあちょうどいいし、カリナも闘技場に来るかい?」


「……? 何かありますの?」


「久しぶりにロイドと勝負をすることになってね」


「ロイドと!? 懐かしいですわね!」


「とは言っても実際に戦うのはロイドの弟子とだけどね」


「へ? お弟子さん?」


 ポカーンと口を半開きにさせるカリナ。


「そ。流石に今のロイドじゃ僕が相手にならないからね。ロイドのお弟子ちゃんと戦うことになった」


「お弟子……ちゃん? ちょいとお待ちを。ロイドのお弟子さんって、男性ですわよね?」


「ん? いいや、多分ロイドより2、3歳年上の女の子だよ」


「……それは、カナタさんのお弟子さんじゃなくて?」


「違う違う。ロイドの弟子だよ」


 それを聞いて、少女はプルプルと身体を震えさせ始める。


「………………わ」


「え?」


「わたくしも行かせていただきますわ!」


「あ、ああ……うん。歓迎するよ……」


「では! お先に失礼しますわ!」



 ぽつねんと1人その場に残されたライン王子は、


「……全く、ロイドも罪な男になっちゃったねぇ。……いや、それよりもハルちゃんがちょっと不幸なだけかな?」


 と1人呟いた。


 ハルが数ヶ月で色んなことに巻き込まれていることはライン王子も粗方聞いている。




「ま、勝負とあっては手加減はしないけどね」



 ライン王子は懐からロイドのものと似た杖を出し、くるりと回しながら微笑んだ。






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