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30億だけ持たされた私の異世界生活。  作者: 夢寺ゆう
第3章 王都にお呼ばれ
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1.し、信じないぞ

新章始まります。


 ″国王が会いたがっている″


 えぇ……

 ロイドの言葉にあからさまに嫌な顔をするハル。


「僕達の前ならいいけど、国王の前でそんな顔しない方がいいよ。国王はいい人だけど、周りの貴族やら伯爵やらがうるさいから」


 えぇ……

 ロイドの言葉にさらに嫌な顔をするハル。


 お家柄、世に言う偉い人とは昔からよく会ってきた。

 故に偉い人と会うときはどういう風に振る舞うべきかは分かっているつもりだ。


 しかし、それはあくまでも現代日本での話。

 現代の日本には貴族も伯爵と王族もいなかった。


 やはり無礼を働いたら即処刑とかになるのだろうか。


 会いたくね~と内心思いながらも、国王の命令は絶対であり、断ることは不可能ということを一応知っているハルは大きな溜め息を吐く。


「国王直々に会いたいって言われてそんな態度をするやつは初めて見たな。普通は光栄ですって泣いて喜ぶものなんだけど」


「……知っての通り私は普通じゃないんで」


 後ろから、あぁ……確かに。という声が聞こえた。


 ハルがパッと振り返ると、後ろに立っていたカイ、ルル、リリィの3人がいっせいにそっぽを向く。


 しかし、残念ながら声は3人分聞こえたので、その誤魔化しは通用しない。


 自分で言っておいてなんだが、そんなことないよと言って欲しかったハルは頬を膨らませながらロイドに向き直る。


「……それで? いつ行けばいいの?」


「すぐにでも、って言いたいところだけど、ハルはまだ本調子じゃないだろうし出発は1週間後くらいでいいよ」

 

 ロイドはそれだけ告げると、再び新聞に戻ってしまった。


「王都ってここからどれくらいかかるの?」


「あ、そこはお気になさらず。ロイドの転移魔法で一瞬ですから」


「いや、王都までは歩いて行くよ?」


 え? とロイドの言葉に一番驚いたのはカナタだった。


「聞いてないんだけど、何で?」


「ラインの野郎にグリフォンの羽ペンが欲しいから実物取ってこいって言われたんだよ。だから帰りにグリフォンを捕まえて羽をむしらないといけない」


「ばか! 様をつけろ様を!」


 なんでも、ロイドとライン王子は昔からよく遊んでいたらしく、大変仲が良いらしい。

 今でもマイペースで失礼極まりないロイドにカナタはハラハラさせられているようだ。


「とにかく、1週間後だね。わかった、準備しておくよ」


「お願いします」


 ハルは頭を下げるカナタに片手を上げて応えながら、自室へと戻っていった。





        ×  ×  ×





 ハルが退院してから3日ほどが経ったある日、ハルはシュナの病室に来ていた。


「明日退院だって?」


「ああ。医者によると魔力の回復も順調らしい。ただ――」


「ただ?」


「……魔力が足りてないからかもしれないんだが、今まで以上に腹が減って仕方がない」


「わかる。私も入院中ヤバかった」


「食べても食べても腹が減る。1日中寝るか食べるかのどちらかだ。たった3日だが、こんな生活では流石の私も腹回りが気になってしまう」


「あ、それは私大丈夫だったわ。私どれだけ食べても太らない(たち)だし」


「……………………」


「……?」


 何故か涙目で睨まれる。


「……私だって退院したら運動するし。そしたらすぐに痩せるし」


「……? よくわかんないけど頑張って。あ、でも退院しても2、3日は安静だよ?」


「…………」


 何故か頬を膨らませながら涙目で睨まれる。


「まあそんなことは置いといてさ」


「私としては置いてはおけない案件なんだが」


「実は来週王都に行くことになっちゃってさ」


「王都?」


 ここアランカの街から王都までは徒歩だと一月ほどかかる。

 ロイドは徒歩で行くと言ってはいたが、正確には目的であるグリフォンの羽を手に入れ次第転移魔法で王都まで行くらしい。


 つまり、運良く初日にグリフォンを見つけられれば1日で王都につけるのだが、全くグリフォンが見つからなければ一月かけて王都に行くことになる。


 今回はユニコーンのユニーは屋敷で留守番をしてもらうので、自分の荷物を持ち、自分の足で歩かなければならない。できることなら早めにグリフォンを見つけたいところだ。


「何をしに行くんだ?」


「何でも、国王様が私に会いたいとか言ってるらしく、ロイドとカナタに連れてくるように言ったらしい」


「ハル……やはり退院が早かったんじゃないか? もう一度入院して医者に診てもらうといい。主に頭とか」


「失礼だな、別に頭がおかしくなった訳じゃないんですけど。まあ、確かに信じられないのは私もだけどさ」


「そもそもあのロイド殿とカナタ殿がこの街にいるわけないだろう。あの2人は国王様の護衛任務に戻ったってだいぶ前の新聞で読んだぞ」


「……? あ、そっか。シュナはずっと寝てたから知らないんだったね。私やカイ達を助けてくれて、今回の事件の黒幕を追い払ってくれたのはロイドとカナタだよ」


 今回の事件には犯人であるミラーの後ろに黒幕が隠れていたことはシュナも聞かされていたが、それを追い払ったのが冒険者達全員の目標と言ってもいい伝説の2人だとは信じられない。


「…………またまた、私を騙そうとしても、そうはいかないぞ」


「今は私の屋敷に泊まってるから、明日来てみればいいよ」


「し、信じないからな」


「まあ、それなら別に来なくてもいいんだけど。でも2人にシュナのことを話したら興味深そうだったよ。獣人の冒険者は王都にもいないらしいし、ぜひ一度話してみたいって主にカナタが言ってたかな」


「…………し、信じてはいないが、ハルが嘘を吐いていることを証明しなければいけないし、仕方ない。では明日……」


「そんな言い方するなら本当に来なくてもいいよ」

「行かせてください。会わせてください」


 シュバッとベッドの上で土下座をするシュナ。

 

「仕方ないな。まああの2人は私とカイの師匠だし、言えばすぐに会ってくれると思うよ」


「ロイド殿とカナタ殿が2人の師匠!? おいハルどういうことだ! ちゃんと説明してくれ!」


「おおう……グイグイ来るね。そんなにあの2人が好きなの?」


「好きというか心の底から尊敬している。私の目標はカナタ殿だからな!」


「あ、そうなんだ……」


 キャラが変わりかけるほど興奮しているシュナに若干引きながら、ハルがロイド達との関係を話そうとしたとき、ガラリと病室の扉が開いた。


「シュナさんの血圧がいきなり上昇したのですが、何かありましたか?」


 そこにいたのはハルやシュナを見てくれた回復魔法が使えるドクターだった。


「ドクターが駆け付けるくらい血圧が上がってるって……どんだけ興奮してんの?」


「ち、違う! ただ私はカナタ殿達の話を聞きたいと思っただけで、興奮など……」


 ピーッ


「…………」

「…………」


 シュナに繋がっている医療専用の血圧を測る魔道具から何かを知らせる音がする。


 それを確認したドクターが静かに溜め息を吐き、


「……面会はここまでにしていただきます。ハルさんはお帰りください」


 呆れながら言うドクターに素直に従い、椅子から立ち上がるハル。


「ま、待ってくれ! もっとカナタ殿とロイド殿の話を聞かせてくれ!」


「シュナさん。これ以上血圧が上がると別の理由で入院が続くことになりますよ」


「そうなったら明日カナタ達に会えなくなっちゃうね~」


「くっ……なんという生殺し!」


 シュナは拗ねたように頭から布団を被り、ベッドに潜ってしまった。


 そんなシュナと未だに下がらない血圧を見て互いに苦笑いを浮かべたハルとドクターは、静かに病室を出るのだった。





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