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30億だけ持たされた私の異世界生活。  作者: 夢寺ゆう
第2章 魔法科学
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25.第2章 最終話

第2章 最終話です。


「ハルちゃん!!」


 ハルが目を覚ましてから入院3日目の朝、瞳に涙を浮かべたヒーラが病室にやって来た。


 流石イケメン。

 泣いている姿もイケメンである。


「よかった、無事で本当によかったよ……」


「あ、ありがとうございます……でもちょっと苦しいですかね」


「あ、ああ。ごめんごめん」


 ヒーラは自分が取り乱していたことをようやく自覚したのか少し頬を染めながらハルから離れる。


「ハルちゃんがもう翌朝には目覚めたって聞いてたんだけど、どうしてもこれを完成させてから来たかったからさ」


「……! あ、これって……」


 ヒーラが取り出したのはお馴染みブレスレット型の魔道具と、ハルの相棒であるクロスボウだった。


「起きたときにには手首に無かったんでどこ行ったのかなってずっと思ってたんですけど……」


「お前が倒れてるとき、魔道具は魔石が割れて使い物にならなくなってた。あと、クロスボウは弦が切れて本体部分は真っ黒に焦げてひしゃげてた」


 それを聞いてハルは納得する。


 あれほどの威力の攻撃を撃ったんだから、普通のクロスボウが耐えられるはずがなかったのだ。


「今日退院するって聞いたからね。どうしても退院祝いにこれを渡そうと思っていたら、お見舞いに行けなかったんだ。ごめんね」


「いえ、私こそヒーラさんの魔道具を壊してしまって申し訳ないです。本当にまた貰っていいんですか?」


「もちろん。それに僕はハルちゃんに返しきれないほどの場所を提供してもらったからね。これくらい当然だよ」


 確かにヒーラとは大きな研究所と実験場を与える代わりにハル達専用の魔道具を作るという契約を結んでいる。


「……じゃ、ありがたくまた使わせていただきます」


 ハルが受け取った魔道具をカチャリと右手首に装着すると、それとほぼ同時に病室の扉が開いた。


「おーい、シュナが目を覚ましたぞ……っと、ヒーラいたのか」


 ハルは今日退院なのだが、シュナは昨夜ようやく目を覚ましたらしく、もう2、3日入院することになっている。

 どうやら朝になって再び目を覚ましたのでカイが教えに来てくれたようだ。


「よし、じゃあシュナのところに行って私もそのまま帰ることにしよう」


「あー、ただシュナの部屋に行く前に、ちょっと面倒臭いことになってるから覚悟しといた方がいいぞ」


「……面倒?」


 ハルとヒーラは互いに首を傾げながら顔を合わせ、頭に疑問符を浮かべながらシュナの病室へと向かった。





        ×  ×  ×





「おーい、ハル連れてきたぞー」


 カイが扉の外から病室の中へと呼び掛ける。すると――、


『いやあぁぁぁぁぁぁ!!』


「「!?」」


 病室の中からいつも凛々しいシュナからは考えられない悲鳴が聞こえてきた。


「え、何!? どうしたの? シュナに何かあったの!?」


「あー、あった言えばあった……のか?」


「……?」


 カイの歯切れの悪い言い方に余計分からなくなる。


「とにかく入るからなー!」


『待って! 待って! 本当に待ってくれ!』


「失礼しまーす!」


「いやあぁぁぁぁぁぁ!!」


 ばん! と勢い良く扉を開けるカイ。

 それと同時に再び中から悲鳴が聞こえてきた。


「や、やっほシュナ。ええっと、どしたの?」


「は、ハル! い、いや何でもないんだ! 気にしないでくれ!」


「何でも、ハルがシュナに短剣を刺そうとしたとき、全てを悟ったかのように躊躇うなって格好つけてたらしいじゃない。死んだものだと思っていたから目を覚ましたとき急に恥ずかしくなったんですって」


「あー……」


「う、うぅぅ……」


 シュナの病室にいたルルが説明してくれる。


 確かに言っていた。ハルがシュナに埋め込まれた魔道具に魔石でできた短剣を刺そうとしたとき、シュナは死んだら魔力の流れが止まるから爆発も止められるとかなんとか。


 あと”一思いにやってくれ”とか、”ハルに殺されたい”とか、”恐れるな”とか格好良く言われたような。


 あのときは爆発まで時間がなかったのでいちいちツッコまなかったし、爆発を止めた後に言えばいいかと思っていたのだが、シュナが昏睡状態になってしまったのでそのままだった。


 あと、勘違いしているシュナが面白くて笑いを堪えていたというのもある。むしろそれが大半を占めていると言ってもいい。


 だが、当然シュナは自分が死んだものと思っていたらしい。


「うぅぅ……恥ずかしい……」


 真っ赤になった顔を両手で覆うシュナ。

 しかし、しばらくしてから覆っていた手を外し、真剣な表情へと変わる。


「……でも、私が今ここにいるのはハルのおかげだ。確かに私はハルを爆発に巻き込んでしまうくらいなら殺してくれと思った。思ったのだが……今も生きていると実感してしまうと、やはりどこかホッとしている自分がいる」


 ハッキリとした口調でハルの目を見て話すシュナに、面白半分でわざと死なないって言わなかったことに僅かだが罪悪感が出てくる。


「ハル……私が誰かを殺めてしまう前に止めてくれてありがとう。それから、私を見捨てずに救ってくれてありがとう」


 ミラーに操られた狸耳の少女が自爆する寸前、一番近くにいたハルとシュナにだけ聞こえた少女の最期の言葉。


 少女の悲痛の叫びは、きっと一生ハルに付きまとう。

 ハル自身も、その言葉から逃げずに、一生受け止めていかなければならないと、自分に言い聞かせてきた。


 それを唯一知っているシュナからの″ありがとう″にハルは少しだけ苦笑いを浮かべ、


「どういたしまして」


 と、頬を掻きながら応えた。





        ×  ×  ×





 シュナの病室から出た一行はまずは警備団の詰所へと向かった。

 今回の事件の犯人がミラーだということはシュナの身体から取り出された魔道具から既に判明していた。


 しかし、それはあくまでも結果論。


 ハル達が発表会の会場を襲撃した時にはまだミラーが犯人だったかどうかは確実な証拠が無かったため確信まで至っていなかった。


 にも拘わらず会場を襲撃し、天井に穴を開け、他国のお偉いさんもいた客達を危険に晒したことには代わりない。


 フードを被っていたとはいえ、クロスボウなんて変わった武器を持っているのはこの街では当然ハルだけであり、誰が発表会を襲撃したかなんて一発で分かってしまう。


 お叱りどころか、最悪逮捕も覚悟して詰所に行ったハル達を待っていたのは、この街にいる全ての警備団員からの感謝の言葉だった。


「ロイド殿とカナタ殿から聞いた。君は我々の知らないところでこの街を救ってくれたのだと。あのときの街全体を覆う光……まさか君が自分の命を晒してまでこの街を守ってくれたなんて……警備団を代表してお礼を言わせてもらう。本当にありがとう」


 一緒に事件の捜査をしていた警備団の男性に頭を下げられる。


「カイ君、ルル君、リリィ君も危険な敵と戦ってくれたと聞いている。本当にありがとう」


 どうやらハルが入院している間、ロイドとカナタが警備団の人達に今回の事件について黒幕やハルがした事の意図など話してくれていたらしい。


 アインツベルク王国最強の冒険者から言われたら誰だって疑う訳もなく、その噂は警備団だけでなく街の人にも伝わっているらしい。


 事が事だけに発表会襲撃の件に関してはおとがめ無し。

 破壊した会場の天井や、ハルがアランと戦った路地裏に面していて爆風などで破壊された建物の弁償代についても払わなくていいと言われたが、流石にそれはハルとしても寝覚めが悪いので、札束を1つ置いていった。





 詰所を出て、道行く人達に度々感謝の言葉を掛けられながら、ハル達はようやく自分達の屋敷に到着した。


「ふへ~、やっと帰ってきた~」


「あ、おかえりなさい」


「おかえり~」


 疲れた声を出しながらリビングに入ると、そこには食卓でお茶を啜っているカナタと、ソファーに寝転がりながら新聞を読んでいるロイドがいた。


「あれ? 何で2人が?」


「ああ、言い忘れてたけど、お前が入院している間2人をここに泊めてたんだよ。この屋敷部屋も余ってるし、いちいち宿を取るのも馬鹿らしいだろ?」


「なるほど」


 カイの説明に、ロイドが新聞から目を離さずに「そういうこと~」と足を上げた。


「ハルさん、退院おめでとうございます。本当は病院まで行きたかったんですけど、ロイドのバカが『どうせここに戻ってくるのに何でわざわざ行かなきゃいけないわけ?』とか言い出したもので……」


「あー、言いそう」


「だからカナタ1人で行ってこればいいじゃんって言ったのに」


「ロイドを1人にしたら絶対この屋敷の中を漁るでしょ。何て言ったって、王城のライン王子の自室を漁った前科があるくらいだし」


「まあ、絶対にしないとは言い切れない」


「よし、カナタはいいけどロイドは追い出そうか」


 ライン王子とはこの国の国王であるダルキ=アインツベルク王の実の息子である、ライン=アインツベルクのことだ。アインツベルク王国の第一王子ということになる。


 確かに国王の護衛をしたりもするとは聞いていたが、まさか第一王子の部屋を漁るなんて、なんという命知らずなのか。


「まあまあ、冗談に決まってるじゃん」


「じゃあ王子様の部屋を漁ったっていうのも嘘ってこと? ……おい何で目を逸らす」


 ハルの詰問に目を逸らして黙秘を続けるロイド。

 ロイドの実力は多少は知っているつもりだし、師匠でもあるのだが、時折見せる子供っぽい行動に、未だアインツベルク最強というのがいまいち信用できない。


「はあ……まあいいや。それより、今回は助けてくれてありがとね。ロイドとカナタが来てくれなきゃ私達は4人とも死んでただろうし」


「いえ、感謝は必要ありませんよ」


「そうそう。それにハル達に死なれたら僕達も仕事ができなくて困るし」


「仕事?」


 ロイドは新聞をソファーの前のローテーブルに置き、ハル達に向き直る。


「ハルも退院したし、僕達がこの街に来た理由を話すよ」


 そういえば、ロイド達がここにいる理由をまだ聞いていなかった。


「理由は3つあって、1つはキサラギであった事件についてハル達に訊きたいことがあったってこと。2つ目はアルとアランがこの街にいるかもしれないという情報が入ったから」


 まるで予想していなかった2つの理由。

 ファネルの事件にハル達が関わっていることを何故知っているのか。

 その事を何故この2人が訊きたいのか。

 アルとアランがこの街にいることが何故2人がこの街に来る理由になるのか。


 疑問がたくさん出てくる。



「んで3つ目が、ダルキ=アインツベルク国王がハル達に会いたがっていて、連れてこいとの命令を受けたから」







 前の2つの理由が一瞬で吹き飛んだ。







次回から第3章に突入します。

1章2章とは違って、シリアスはほとんど無しのコメディーチックな話になる予定です。


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