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30億だけ持たされた私の異世界生活。  作者: 夢寺ゆう
第2章 魔法科学
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22.アインツベルク最強


 眩い閃光と衝撃波に足に力が入らないハルは20メートルほど後方まで吹き飛ばされる。


 そしてそのまま仰向けになって動かなくなる。


 一方ハルとは反対側にいたアランはというとフードを押さえながらその場で衝撃波に耐えていた。


 爆風が収まった後、その顔を驚愕に染める。


「…………俺が撃てる最強の魔法を、相殺、した……?」


 かつてはこの魔法を1発撃つだけで1つの大都市を消滅させたことがある。

 この巨大で強大な雷撃の矢が通った後そこは全てが塵となる。


 建物も、人間も、獣人も、モンスターも、全てが無となり、何も残らない。


 そんな最強の攻撃を相殺した。

 

 ありえない――

 絶対にありえないことが今、目の前で起こった――


「……貴様、一体何者だ……一体何をした!!」


 アランはそんなありえない事をした元凶に珍しく声を荒げる。


「…………」


 しかし、その者からの反応はない。

 仰向けに倒れたまま微動だにしない。


「……?」


 アランは反応を見せないハルを不気味に思いながらも近づいていく。


 そしてハルのすぐ横に立ってようやく気づく。


 ハルは顔色を青白くさせ、全身を小刻みに震わせていた。

 顔全体に脂汗をかき、表情を苦しそうに歪めている。


 魔法使いであるアランはこの症状を知っている。


 ――魔力切れ。


 それも、並大抵の魔力切れではない。

 本当に体内の魔力の全てが尽きかけている。


「……! なるほど、そういうことか……」


 アランはハルの左手に握り締められている物に目を向ける。

 

 ピンポン玉ほどの大きさの丸い魔道具。

 今回アラン達が目的としていた(ブツ)だ。


「……く、くくく……こいつで魔力を限界以上に引き上げたか。ここまでの魔力切れを起こしてよく生きている」


 アランは込み上げてくる笑いを噛み殺しながらハルの左手に握られた魔道具を取り上げる。


 次に右手首に装着された魔道具に目を向ける。


 こいつも奪おうと思ったのだが、中心に嵌め込まれた魔石は真ん中から真っ二つに割れており、その周りの魔道具本体にも何ヵ所か亀裂が入っていた。

 

(これはもう使い物にはならんな)


 ハルが右手に持っているクロスボウも、弦が真っ黒に焦げた状態で切れてしまっている。


 右手首の魔道具にしても、クロスボウにしてもあの威力の魔法に耐えられなかったようだ。


「…………っぁ……」


 未だ苦しそうに微かな声を上げるハルを見下ろしながら、アランは右手にバチバチと音を立てる青白い光を帯電させる。


「せめてもの情けだ。これ以上苦しまなくてもいいように、楽に逝かせてやる」


 右手に帯電させた雷魔法をハルに向けて撃とうとした瞬間、辺りがいきなり霧に包まれる。


「……! 何だこれは……」


 路地裏、と言えども街の大通りに面していないというだけでそれなりの幅はある通りの全てを覆うような霧にアランはいったんハルから離れ、辺りを警戒する。


 アランは自分を中心とし、四方八方に雷撃を放つ。


 普通の霧なら今の魔法で綺麗に霧散するはずなのだが、いっこうにその様な気配はなく、むしろどんどん霧が濃くなっていく。


(自然に発生したものじゃない……魔法か……?)


 ついにほんの1メートル先すら見えなくなったアランは、飛行魔法の呪文を唱え、空へと飛び立つ。


(飛行魔法は苦手だが仕方がない。まずは霧の上まで出てみないことには……)


 意外と長い霧の道を上空へ向かって突き進み、ようやく霧を抜け出したと思った瞬間――


「ガハッ?!」


 何かに顔面を蹴りつけられ、再び霧の中へと真っ逆さまに落下する。


 地面に激突する直前に雷撃を地面に撃って落下の速度を緩める。


 地面との激突は避けられたものの無傷とはいかず、着地の際僅かに足を捻ってしまった。


「……っ……一体何者だ! 姿を見せろ!」


 アランの声が路地裏に響く。

 

 その声に応えるかのように、霧の中からまだ成人しきっていない少年の声が聞こえる。


『お前がこの攻撃に耐えられたらね』


「……!?」


 次の瞬間、霧が充満する路地裏の至るところで小さな爆発が起こる。


 それも1発や2発ではない。


 100は越えるのではないかという勢いで隙間なく連発していく。


(……っ!? この霧自体が爆発しているのか!?)


 当然爆発はアランがいる場所でも起こり、絶え間無く爆風がアランを襲った。




 およそ1分間も続いた連続爆撃は路地裏に充満した霧を完全に晴らしていた。


「ちっ……」


 身体中に火傷を負ったアランは、10メートルほど前に佇む少年を睨んでいた。


「その程度の怪我で済んだか。意外とやるね」


「……何故貴様のような奴がここにいる」


「あれ? 僕のこと知ってんの?」


「この国最強と言われており、俺達の最大の敵でもある貴様を知らないはずがない」


「ふぅん、最大の敵ね……」


 アインツベルク王国最強と呼ばれた少年であるロイドは羽織っているローブを整え直し、30センチほどの杖で肩をぽんぽんと叩く。足元に苦しそうに倒れている弟子を見て、はぁと溜め息を吐く。


「貴様の魔法は既に把握している。俺の魔法と相性が悪いということもな!」


 アランはロイドに雷撃を撃つ。

 ロイドはそれに素早く反応して一瞬で水の壁を作り、迫る雷撃を防ぐ。


「僕の魔法がアンタの魔法と相性が悪い? なにそれ、どこ情報?『アクアボム』」


 ロイドの呪文により発生した無数の水の玉がアランを囲む。


「……っ」


 そして完全に囲んだと同時にその水の玉が一斉に破裂する。


 破裂したことによって発生した水蒸気に覆われ、アランは視界を奪われる。


「舐めるな!」


 雷撃を放ち水蒸気を霧散させ、ロイドの方へ雷魔法で出来た数十本の矢を撃つ。


 しかし、先程までそこにいたロイドと倒れていたハルの姿は消えており、雷の矢は誰もいない地面に突き刺さる。


「……逃げた……?」


「誰が?」


「――ッ!?」


 自分の頭上から掛けられた声にすぐさま顔を上げる。


 顔を上げたその視線の先には数百の氷のつららがアランの方を向いていた。


「水魔法だけじゃないんだよね。僕が使える魔法は」


 まだまだその数を増やしているつららが空を覆わんばかりになった時、鋭利な氷の雨が、一斉にアランに降り注いだ。





        ×  ×  ×





「ガハハハ! 強いなお前!」


 大剣と大剣がぶつかり合う。


 カナタは焦らず騒がずアルの斬撃を冷静に躱し、受け止め、受け流す。

 そして流れの中で生まれた僅かな隙を確実に突いていく。


 徐々に徐々に追い込まれていくアルは楽しげに笑ってはいるものの、内心ではかなり焦っていた。


(この女……まさか噂の女冒険者か……! ここまでの実力だとは思いもしなかったぞ……っ)


 一度カナタが攻めに回れば勝ち目はないと踏んだアルはとにかく攻撃の手を止めない。


 それでもアルの攻撃は一撃も当たらず、逆にアルの身体にはいくつもの切り傷が生まれている。


(強ぇ……このままじゃやべぇぞ。仕方ねぇ……)


 アルはカナタからいったん距離を置き、大剣を両手で持って構える。


「俺の剣はただの剣じゃねぇ。この剣も魔道具なんだよ。こいつはあまり使いたくなかったが、お前は強ぇからな。特別に見せてやる」


 そう言うと、アルの持つ大剣が淡く光り出す。


「お前は確かに強い。だが、こいつを躱すことなんざ出来ねぇぞ!」


 吠えながらアルが光り輝く大剣を振り下ろす。


 するとそこから三日月型の光の斬撃がカナタに向かって放たれる。


 音速にも届きそうな速度で迫る光の斬撃を――


 カナタは剣を一振りするだけで消し飛ばした。


「は……?」


「……? 終わり?」


 可愛いらしく首を傾げるカナタに、アルはもう1発、さらにもう1発と光の斬撃を放っていく。


 しかしそれら全ての斬撃を、カナタは大剣を振るだけで光の粒子へと霧散させていく。


「ば、馬鹿なぁぁ!!??」


 信じられない光景にアルは叫びを上げる。



「躱せないのなら消してしまえばいいじゃない」



 そう言って、カナタはアルに満面の笑みを見せた。


「すげ……」

「何よあの人、無敵じゃない」

「ていうかさっき、カイくんのこと、弟子って言ってたような……」


 カナタの後ろでその戦いを見ていた3人は、その圧倒的な実力差に呆けることしか出来なかった。


「それじゃ、そろそろ……ん?」


 そろそろ終わらせようとカナタが大剣を握り直すと、アルの横にいつの間にかもう1人、小柄な黒装束の男が増えていた。


「アラン! ちょうどよかったぜ! 2人であの女を殺るぞ!」


「あっれぇ? あっちにはロイドが向かったはずだけど……」


 そこにいたのはアルのコンビでハルとロイドが戦っていたアランだった。


「いや退くぞ」


「はぁ!? 待てよアラン! 俺達2人ならあの女でも……」


「目的の魔道具は手に入れた。それに、俺の残りの魔力量じゃあの2人は倒せない」


 話を聞くところによるとどうやらアランはロイドから命からがら逃げてきたようだ。

 よく見ると黒装束の至るところが破れたり裂けたりして、そこから血が流れている。

 

(どうせえげつない波状攻撃でもしたんだろうなぁ)


 明らかに弱っているアランを見てアルも渋々納得する。


「ちっ……わかったよ」


「行くぞ」


 アランが詠唱すると2人の足元に魔方陣が浮かび上がり、光が2人を包み込む。そして、次の瞬間2人はその場から姿を消した。


「転移魔法か」


 2人が転移し終えるのを呑気に眺めていたカナタは、大剣の鞘に収める。


「おい、逃がしていいのかよ!」


「あれ? 師匠にそんな口の聞き方するの?」


「うっ、いや、今はそんなこと言ってる場合じゃなくて」


「あの2人を追うより今はロイド達の方に向かった方がいい。ロイドが簡単に敵を逃がすとは思えないし、何か追えない理由があったってことだよ」


「……!」


 その言葉にカイはカナタが何を言いたいのか理解する。


 カイ達は急いでロイドと、そしてハルがいる場所へ駆け出した。







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