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30億だけ持たされた私の異世界生活。  作者: 夢寺ゆう
第2章 魔法科学
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13.ハルがいないんですけど


 アランカの街のすぐ外には大きな山々が連なっている。


 そこには強力なモンスターから弱いモンスターまで多種多様なモンスターが蔓延っており、食料などを求めて街にモンスターが下りてくることが多々ある。


 そんな山では山菜やきのこ等の食料や、薬草などの薬に調合される材料も採れたりするし、山の中にある洞窟では鉱石や魔石なんかも採掘することもできる。


 故にこの街ではモンスター討伐以外にもそれらの採取が目的のクエストなんかもたくさんあるのだ。


 まだ日の出前で薄暗い時間帯に、1人の少女が手にはクロスボウ、背中には籠を背負ってそんな山の中に立っていた。


「さて、やりますか」


 夜行性のモンスターは徐々に活動を終わらせ始め、昼行性のモンスターが活動を始めるにはまだ少し早いという絶好の時間帯に、咲場 春は1人で山の奥へと進んでいった。





        ×  ×  ×





「あれ? ハルは?」


 2度目の殺人及び爆発事件があった翌朝、カイ、ルル、リリィはいつものようにリビングに集まっていたが、そこにハルの姿はなかった。


「昨日は病院に泊まらず帰ってきてたはずだけど、今日はまだ見ていないわ」


「無理もないと、思うよ。あの店員さんと一番仲が良かったのは、ハルさんだし……」


 昨日の爆発を思い出して暗く静まるリビング。


「今回のことは流石にヒーラさんの時のようにはいかないわ。時間が解決してくれるのを待つしか……」


「よし。オレちょっと呼んでくるわ」


「貴方、人の話を聞きなさいよ。昨日の今日で無理矢理連れ出しても逆効果よ!」


「うっせ! 落ち込むなんてあいつらしくねぇんだよ! それにオレ達は警備団から捜査の協力を頼まれたままのはずだろ! 落ち込んでる暇があったら次の犠牲者が出る前に何かしらの行動を起こすべきじゃねぇのかよ!」


 カイの言葉にルルとリリィが黙り込む。

 そう、まだ事件は何1つ解決していない。もしまだ犯人があの魔道具を持っているのなら、いつ次の犠牲者が出るのか分からない状態なのだ。


「まあ、貴方の言っていることも一理あるけれど……」


「だったらさっさと起こしに行くぞ!」


 そう言ってカイは足早に2階のハルの部屋へと向かう。


「あ、こら! 1人で行かないで!」


 ルルとリリィもカイの後に続くように階段を上って行くと、既にカイが扉に蹴りを入れて強引に開けていた。


「おらハルいつまで寝てんだ! さっさと起きろ!」


「せめてノックくらいしなさいよ。着替え中とかだったらどうするつもりよ。ハルだってあれでも一応女の子よ?」


「お姉ちゃんも、だいぶ失礼だね……」


 ブツクサ言いながらルル達も部屋の中を覗くと、ハルの部屋は何故かもぬけの殻だった。


「……あれ? ハルいないわね」


「あ、お姉ちゃん。クロスボウと矢筒もないよ?」


 いつもクロスボウと矢筒が置いてある場所には何もなく、ハンガーに掛かっていたハルのお気に入りの茶色いフード付きジャケットもなくなっていた(以前のものは血まみれになったのでキサラギで買い直した)。


「ってこら。貴方はなんでハルが脱いだ寝巻きを触ってるのよ。変態」


 ルルとリリィが部屋の様子を確認していると、カイがベッドの上にあったハルがいつも寝巻きにしている短パンと薄目のパーカーをサワサワと触っていた。


「体温が全然残ってない」


「……貴方本当に警備団呼ぶわよ?」


「ちげぇよ馬鹿。これを脱いでから少なくとも1、2時間は経ってるってことだよ」


「1、2時間? それって、わたしたちが起きるよりも、ずっと前ってことじゃ……」


「そうなるな」


 リリィの言葉に頷いて肯定するカイ。


 しかしルルはそんな2人に首を傾げている。


「でも着替えただけじゃなくクロスボウまで無くなっているということは、少なくとも屋敷の中にはいないってことよね?」


「もしかして、あいつ1人で街の路地裏とかに行ったんじゃ……」


「それか、隣のヒーラさんの研究所に、行ったとか……?」



 …………。



「……とりあえず、ヒーラのとこに行ってみるか」


「そうね」


「うん」


 カイ達はそれぞれ準備をしてから屋敷を出た。






「おーい起きてるかー? 起きてたら返事しろ男女ぁ」


「こら! 確かにヒーラさんは胸も無いしアタシ達全員勘違いするくらい男の人っぽいけど、あれでも一応女性なのだから失礼でしょ?」


「だから、お姉ちゃんも十分過ぎるくらい失礼だって……」


 カイ達は屋敷から20メートル程隣にヒーラの為だけにハルが建てた2階建ての研究所に来ていた。


 1階は完全に研究室となっており、2階はヒーラが生活する部屋となっている。


 1階の研究室の中から2階に上がれるようにはなっているが、外から直接2階に上がれる階段もあり、上がった先にある玄関の前でカイ達は3人並んでヒーラが出てくるのを待っていた。


「…………君達、朝から中々に元気だね。子供が元気なのは良いことだ。ただし、全部聞こえてたよ……」


 中から扉を開けて出てきたのは、髪の毛に寝癖を付けた明らかに寝起きのヒーラだった。


「なるほど、イケメンは寝癖が付いてても格好良いのね」


「……僕は女だからカッコいいと言われてもあまり嬉しくないかな」


 実は彼女が女だと判明してからショックを受けていたのはハルだけではなく、ハル達4人にずっと男だと思われていたヒーラ自身もかなりショックを受けたらしい。


 今まで色んな人から何度も「格好良い」と言われたことはあったのだが、それは女だと知った上での発言だとずっと思っていたヒーラだったが、もしかしたら今までそう言っていた人も男だと思って言っていたのではないかと、不安になっているのだ。


「そんなに僕って男っぽいかなぁ……確かに胸はないけど……」


「とりあえず、その僕っていうのをやめて、可愛い服でも着ればいいんじゃないかしら?」


「でも僕スカートとか似合わないし……」


「あら、スカートじゃなくても可愛い格好はできるわよ?」


「本当かい? それを着れば僕も男に間違われたりしなくなるかな?」


「女装してる男に見えるかもな」


「…………」


 カイの言葉に目に見て落ち込むヒーラ。

 目頭に少しだけ涙が浮かんでいたのはきっと見間違いではないだろう。


「そんなことより、ハル知らないか?」


「そんなことって……ハルちゃんなら3時間くらい前に来たよ」


「は!? 3時間前!?」


「うん。僕も寝てたんだけど今みたいに起こされたよ」


「何しに来たんだ?」


「何か変なこと聞いてきたよ。僕も半分寝ぼけてたからハッキリとは覚えてないんだけど、僕が作った魔道具を貸してくれって言ってきて、あと魔道具に付けてある魔石について聞いてきたかな?」


「魔石?」


「うん。何かその魔石を取りに行くとか言ってたような……」


「「「……!」」」


 カイ達が目を見開く。

 ハルはカイ達が起きる3時間も前にここに現れ、その後何故か魔石を取りに行ったという。

 何故ハルがいきなりそんな行動に出たのかは不明だが、取りに行くという言葉からまず間違いなくハルは街の外に出たのだろう。


 カイはルル達と頷きあった後、再びヒーラに向き直る。


「その魔石ってのはどこにあるんだ?」





        ×  ×  ×





「…………はぁ、はぁ……ふっ!!」


 息を切らしながら岩陰に身を隠し、頭から長い角を生やした虎型モンスターの『一角虎』にそっと照準を合わせてからクロスボウの引き金を引く。


 洞窟の中に生息するモンスターの中ではかなり上位に君臨する肉食モンスターで、岩から岩へ器用に跳び移り、広い洞窟を上手く利用して獲物を追い詰めていく頭が切れるモンスターだ


 しかし、そんなモンスターでも見えない場所からの矢を避けることはできず見事に左目に矢が命中し、一角虎が苦しみながら倒れる。

 矢の先には催眠魔法が付与されているため、一角虎は苦しみながらも次第に眠りについてしまう。


 岩陰から顔を出したハルは一角虎が完全に眠ったのを確認してから近づき、ごめんねと呟いてから一角虎の額に矢を撃ち込む。


「…………ふぅ。そろそろモンスターが起き始めたかな。結構集めたつもりだけど、ヒーラさんが言ってた通り1つ1つがかなり小さいんだよね」


 背中の籠を一旦下ろし、中に入っている魔石を1つ取り出す。


「この魔道具に付いてる魔石ってすごい大きい魔石だったんだ……」


 自分の右手の籠手に付いている魔石と大きさを比べると、ハルが集めた魔石は10分の1もない。


「洞窟を出ても街までは山を下りないといけないし、モンスターが活発化する前に戻るとするか」


 ハルは籠を背負い直し、洞窟の出口へと向かう。


 そんな時、どこからか聞き覚えのある声が洞窟内に響いた。


『うおおおおぉぉぉ! 何だこのコウモリ共!』


『ちょっと貴方男でしょ! 何とかしなさいよ!』


『男とか女とか関係なくね!? それを言うならお前の方が年上なんだから何とかしろよ!』


『貴方自分の歳を知らないのでしょ!? ならアタシが年上かどうかなんて分からないじゃない!』


『オレ前にそれ言ったよな!? その時お前一蹴したよな!?』


『……このコウモリ達、かわいいね』


『『頼もしい!!』』


 洞窟内で反響しているため正確な位置は分からないが、明らかに知っている子達の声だった。




「……はぁ、何やってんだか」



 呆れながら未だ騒いでいる声に苦笑いするハルだった。




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