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30億だけ持たされた私の異世界生活。  作者: 夢寺ゆう
第2章 魔法科学
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7.イケメン


「すまなかった。魔力を吸引する方の調整は完璧だったんだが、放出の調整をミスしていたらしいんだ。本当に申し訳なかった」


 半壊した会場の医務室で火傷を負った手の治療を受けていたハルのところには20代前半といった美形青年、ヒーラが謝罪をしに来ていた。

 舞台の上では黒縁の研究者らしい眼鏡をかけていたが、今はそれを外して90度の角度で頭を下げている。


「ま、まあ、怪我人も私以外出ていませんし大丈夫ですよ。失敗は誰にでもあります」


「そう言ってもらえると助かるよ。だけど、可愛らしい少女の身体を傷物にしてしまったのは事実。何かしらの形で責任を取りたいんだ」


「いやちょっと言い方に問題がありますねそれ」


「……?」


 どうやら天然発言のようだ。


「何でもいい。僕にできることなら何でも言ってくれないか?」


 ハルの肩がピクリと動く。




「今、何でもって言いました?」





        ×  ×  ×






「ここが僕の研究室(ラボ)だよ」


 ハル達はヒーラの後について研究室に来ていた。

 アパートのような2階建ての建物の1階。そこの一室を研究室にしているらしい。


「でも、何故僕の研究室に来たいだなんて言ったんだい?」


「研究室、というかあの魔道具がもう少し見てみたかったというのが正直なところですね」


「ほう、そんなに僕のしていることが気になるのかい?」


「……いや、だから言い方が……魔道具の研究ね魔道具の研究」


「さ、狭い所だけど入ってくれたまえ」


「聞いてないし」


 ヒーラがマイペースに自分の研究室の扉を開くと、そこには大量の資料で埋め尽くされた部屋が現れた。

 部屋はワンルームでトイレと簡易的なキッチンが付いているだけの部屋だった。


「あ、謙遜とかじゃなく本当に狭いんだな」


「こらこらカイ。失礼だよ」


「ははは、本当の事だから気にしないよ。もともと狭い部屋に資料や材料なんかもたくさんあるからね」


 研究室と聞いていたのでてっきり研究をするためだけの部屋かと思われたが、ベッドも置かれているのでここで生活しているのだろう。


 そのベッドには脱ぎ散らかしたシャツなんかも落ちていた。


 生まれて初めて男性の部屋に入ったハルは内心どぎまぎしながらも冷静を装いつつ部屋の至るところに落ちている資料に目を向ける。


「正直なところ資料や設計図を見ても私達にはさっぱりなんですけど、あの籠手のような魔道具は結局何なんですか?」


「さっきの模擬発表会でも言ったけど、これは武器に魔法の力を付与する魔道具だよ。たださっきの事故の原因はまず魔力の放出量が多過ぎたこと。あれは完全に調整ミスだった。あとは付与した武器が金属製の剣だったためにハルちゃんの持っていた手にまで熱が伝わってしまった」


「あれはびっくりするくらい熱かったですね」


「うっ、本当にすまない。炎を指示した僕のミスだ。選んだ武器もあまり適していなかった」


「魔力の放出量のミスってのは?」


 カイの質問に1つ頷いてから答えるヒーラ。


「あれは単純に実験不足だった。魔力の吸引の方に時間を取られ過ぎたというのと、あとここでは放出の方の実験ができないんだ」


「「「「ああ……」」」」


 4人は部屋の中を見渡す。


 もしこの狭い部屋であの炎の大剣が発生していたら大惨事になっていただろう。

 あの会場では警備団や水魔法が使える魔法使いが近くにいたにも拘らず会場が半壊した。


 もし紙の資料が散乱するこの部屋であの規模の事故が起きていたら被害はこの部屋だけに留まらず、隣の部屋やこのアパートが全焼なんて可能性もあっただろう。


「どこか実験できる場所があればいいんだけど、そんな広い部屋を借りられるお金もないし、街の外はモンスターが多いから1人では出られないし」


 ヒーラの言葉にハルがそれならと切り出す。


「うちに来ます?」


「……? どういう意味だい?」


「うちの敷地にここよりも広い研究室と実験場を作ってもいいですよ?」


「へ? 研究室? 実験場? 敷地?」


 首を傾げてハルの言葉にオウム返しをするヒーラ。

 そんなヒーラにハルは何かを企んでいるような笑みを向ける。


「ただし、条件というか、1つお願いがあるんです――」





        ×  ×  ×





「…………す、すごい」


 翌日の昼過ぎ、ハルの所有する土地へとやって来たヒーラは目を見開いて驚きを露にしていた。


「確かにこの街は中心から遠ざかる程家屋などは減っていくけど、まさかここまで広大な土地を持っているとは」


「あ、ヒーラさん、こんにちは。こちらです」


 所有地の端からハル達の住む屋敷まではそれなりに距離があるので、出迎えたハルが案内をする。


「といってもここからでも見えてますけどね」


「……ということはあの大きな屋敷がハルちゃん達の家なのかい?」


「そうなります」


 キョロキョロと辺りを見渡しながらハルの後ろをついていくヒーラ。

 ここは作物などが育ちにくい土なので畑なども一切なく、ただの見晴らしのいい土地といった少し殺風景な場所なのである。

 

「あれです。あれがヒーラさんの新しい研究室になります」


 ハルの声で前を向き直すと、そこには石造りの2階建て一軒家が建っていた。


「……え、これは……?」


「……? ヒーラさんの実験室兼お家ですよ?」


 ハルの言葉にまたも驚愕する。

 いったい今日1日で何回驚けばいいのか。


「1回は壁を全てぶち抜いてワンルームにしてありますので研究室としてそれなりに広く使えると思います。2階は一応2LDKになってます。1つは寝室にしてもう1つの部屋は物置きなどに使えるかと」


「…………」


「それにしても魔法ってやっぱり凄いですね。今朝早くから造り始めてもう完成なんて。超突貫工事のくせにかなり頑丈なんですよ? これを造ってくれた魔法使いの大工さんってば『これだけの額貰ったんだ。久々に本気出しちまったよ』って言ってて、じゃあいつもは本気出してないのかよって感じですよね」


「」


「……? ヒーラさん?」


「……………………………………………………………………はっ! 僕は一体……」


「えっと、大丈夫ですか?」


「そ、そうだった。こ、こんな立派な研究室兼家なんて貰えないよ! 一体いくらするんだい!? 僕が一生かけても絶対に買えないような家じゃないか!」


「大丈夫ですって。これは私達のためでもあるんですから。それにヒーラさんにもちゃんと約束は守ってもらいますか……らッ!!!!???!??!???!?」


 ガバッ! と、喋っている途中に、ハルがいきなりヒーラに抱き締められる。


「え、ええぇぇぇぇ!!??!?」


「ありがとう! ありがとう! こんな立派な研究室、絶対に大事に使うし、君との約束も絶対に守る! 君専用の魔道具は絶対に最高傑作にしてみせるよ!」


「た、たた楽しみにしてますっ!! だからこれは……っ」


「その後はカイ君達の専用魔道具も試してみる! そして絶対に素晴らしい魔道具を作り上げてみせる!」


「おおおおお願いします! それはそれとしてそろそろこの手を……ていうか身体が近い~!!」


 イケメンに抱き締められて何が何だか分からなくなるハル。本来ならイケメンの身体を思う存分堪能したいところなのだが、頭がついていけずそれどころではない。


「本当にありがとう! ハルちゃんに出会えて本当に良かった! ハルちゃん大好き!!!」


「……キ、キュウ~……///」


「……あ、あれ? ハルちゃん? どうしたんだい、ハルちゃん!?」


 兄弟もいなかったため歳の近い男性への免疫がないハルにとって、超絶イケメンの眼鏡男子からの熱い抱擁と耳元での『大好き』は効果ばつぐんだったらしく、嬉しいやら恥ずかしいやら良い匂いやら嬉しいやら嬉しいなどといった情報量がキャパオーバーし、頭から煙を上げながら気を失ってしまった。



(でも、ヒーラさんの腕の中で気を失えるなら、それはそれで…………)






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