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30億だけ持たされた私の異世界生活。  作者: 夢寺ゆう
第1章 異世界転移
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3.円? いいえG(ゴールド)です。


 とりあえず、札束をポケットに入れて目的のお店へと向かう。


 先程の銀行員のお姉さんに訊いてみたところ、どうやらこの街は本当に規則正しく建物が建ち並んでいるらしい。


 私が初めにいた噴水のある広場がこの街の中心らしく、そこから四方向、東西南北に4本の大通りが延びている。


 さらにそこから細い道が何本も枝分かれしており、空から見たらまるでクモの巣のように道が続いているらしい。

 しかもどれも似たような建物で、行き止まりというものもないため、初めてこの街へ来た人は同じところを何回もグルグルと回ってしまうこともあるのだとか。


 そのためか、この街には至るところに現在地を示す地図が描かれた看板が置いてある。


 文字の読めない私がお姉さんの教えてくれた店まで辿り着くにはこの地図と店に出ている看板の絵を便りにしなければならない。





 10数分後、私はある服屋さんに着いた。

 そこは女性専用の服屋さんのようで、服から下着、靴などまで所狭しと並んでいた。


 日本にいたときから買い物は好きな方だった。

 確かに社長令嬢ではあるものの、何でもかんでも高い物ばかりを身に付けていた訳ではない。

 気に入った物なら安くても買っていたし、今着ているパーカーだって着心地の良さと動きやすさを重視しているため金額は安かったはずだ。


 まぁ基本まとめ買いだから1つ1つがいくらだったのかは覚えてないわけだが。

 

 とりあえず、目の前にある黒のワンピースを手に取る。


 昔から明るい色はあまり着てこなかった。

 パーティーの時のドレスなんかも基本は黒を基調としていた。


 ふむ、このワンピースも悪くない。特別物凄く良い生地というわけではないが、別段悪いわけでもないし、普通に可愛い。


 いくらくらいなのだろうか?

 日本なら軽く7、8000円はすると思うのだが……

 私はタグの所に付いた金額に目を落とす。



『70G』



 おっとぉ? これまたおかしな数字が出てきたぞ。


「あの、すみませーん」


 迷ったときは知っている人に訊くのが一番。

 訊けば一瞬でわかることをウダウダと1人でいつまでも考えているというのは時間の無駄に値する。


 ゛TIME IS NOT MONEY゛


 お金は時間には代えられない。

 父がよく使っていた言葉である。


「はい、なんでしょう?」


「これっていくらですか?」


 服を渡しながら訊くと、店員さんは私が見たタグと同じところを見て。


「70Gになりますね」


 え、本当に70Gなの? この服が? どう見ても7、8000円はすると思った、の、に……


「あっ!」


「えっ?」


 突然声を発した私に店員さんが驚いているが、今はそれどころじゃない。


 そうか、私は何で勝手に決めつけていたんだ。


 父が残した30億という莫大な遺産がそのまま通帳に入っていたからてっきり私の資金は30億円だと思い込んでいた。


 しかし、あそこに入っていたのは30億円ではなく、あくまでも30億Gなのだ。


 そして、これまた勝手に1円=1Gだと思い込んでいた。


 私が10万下ろすと言った時の銀行員のお姉さんの反応。

 銀行なのに1万じゃなく1000Gまでのお札しかなかったこと。

 そしてこの服の値段。


 あくまでもこの服が7、8000円というのは私の予想でしかない。

 しかし、仮に7000円だとしたら……


 7000円=70G → 100円=1G


 という式が成り立ってしまう。


 つまり、この世界の『(ゴールド)』というお金の単位は円というよりはドルに近いのではないのだろうか。


 ということは、私はさっき銀行で約1000万円を現金で下ろしたということになる。なるほど、それなら銀行員のお姉さんの反応も頷ける。


 そっとポケットに入っている札束に触れる。


 私の全財産は30億G……つまり、30億円が異世界に渡って3000億円になったということだ。


 辺りを見渡す。

 服屋とはいえ可愛い服に可愛い靴の他にもネックレスなどの小物からバッグまでもが置いてある。

 

 ゴクリと唾が喉を通る。


 さて……この店が一体どれ程この札束を減らすことができるのか、楽しみね。





        ×  ×  ×





「……ち、調子に乗った……」


 馬鹿か私は。ついついいつもの癖でお付きの車で来ているつもりで買い物をしてしまった。


 こんな馬鹿みたいに買っても持てるはずがないじゃない。

 私の腕は2本しかないのに!


「はぁ……」


 結局お金だけは払ったが、買ったうちの3分の2程はまた後で取りに来ると言ってお店に置いてもらうことになった。


 とりあえずこの荷物を置ける場所を見つけなければいけない。


「今日泊まる宿を早めに決めておくべきかな。そこに荷物も置けばいいし」


 服屋さんを出てすぐ横にあった地図案内板で宿屋の場所を見つけ、そこへ向けてヨロヨロとよろけながらも歩き出す。


「早く、1秒でもはやく、この荷物を置きたい……っ」


 

 でないと……私の肩が外れてしまう!!


 うぅ~、重いよぉ、痛いよぉ……


「私がこんな目に会ってるのもアイツのせいだ……あ、でもパパの遺産は私がこっちに持ってきてるわけだから、アイツがあの後私の家に押し入ってもお金なんてどこにもないんじゃ……ははっ、ざまぁ!」



 荷物が重いのは明らかに自業自得なのだが、そんなことは棚に上げて私を殺したあの男に呪いの言葉をブツブツと念じながら、私は宿屋に向けて歩き続けるのであった。


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