27.確保ぉ!
結局私の予想は完全に外れ昨夜は何のアクションもなく、私とカイ、そしてルルは一睡もせずに朝を迎えてしまった(リリィは早々と熟睡していた)。
外が十分明るくなってから敵さんが来ないとわかり、それから寝ることにしたのだが目を覚ましたリリィに起こされ、3時間ほどしか眠れなかった。
私はまだ大丈夫だけど、カイとルルはキツいよね……
カイは自分の正確な年齢を知らないらしい。物心ついた時には既に親はおらず今は亡くなってしまったらしい親切な犬科の獣人のお爺さんに拾われたとのこと。カイの年齢は見た目的に10歳くらいだと予想しているにすぎないのだ。
仮に10歳だとしても、10歳と12歳の子供に貫徹させたことになる。流石に悪いことをした。
気を取り直して私達は朝食兼昼食を取ろうと街に出ることにした。
昨日のこともあるので多めにお金を持ち、背中には既に矢がセットされたクロスボウを背負い、腰には矢が7本入った矢筒が左腰に来るように巻くことで矢をすぐ抜けるようにしている。
街中だとしても何が起こるかわからない。特に私達は昨日から目立っており、あのオークションまたはレストランにいた人間は私が大金を所持していることを知っている。
17歳の美少女と10歳前後の獣人の少年、そして12歳の獣人の少女が2人という構成の4人組が大人もビビるレベルの大金を持っていると知れば、悪い顔をした人が寄ってこないとも限らない。ましてやこういう広くて人口も多い街は例外なく軽犯罪がバレにくく多いのだ。
「さて、ユニーの様子でも見てから何か食べに行こうか。ルルとリリィはまだ見てないよね」
「ユニー? 何かしら?」
「様子を見る、ということは、なにか、生き物……?」
「正解。私達の馬車を引いてくれる馬だよ。今はすぐ近くに預けてあるんだ」
「普通の馬じゃないけどな」
× × ×
「……なにこの馬、頭に角が生えてるわよ?」
「お姉ちゃん、ユニコーンだよ。初めて見た……きれい……」
ルルは恐る恐るといった感じでユニーを見ている。逆にリリィは怖がることなくユニーに近付き、毛並みをなぞるようにユニーの背中を撫でていた。ユニーも気持ち良さそうにしている。
「リリィは動物が好きなの?」
「はい……でも、こんなきれいな子を見たのは初めてで、すごいです」
「リリィは動物だけじゃなく虫とかも好きなのよ。獣人のアタシが見た目をとやかく言っちゃダメなんでしょうけど、アタシはあの足がいっぱいあるのとかがどうしても受け付けなくて」
「えー……そこが可愛いのに……」
ごめんねリリィ。私もそれは無理かな。
「よっ、元気だったかユニー」
「バルルルルルル!!!」
「うおっ!!」
「きゃっ………!」
ユニーを撫でているリリィを羨ましそうに見ていたカイは、我慢できないといった感じに声を掛けながらユニーに触りに行った。
わかりきっていたが、案の定ユニーに威嚇され、涙目になりながら驚異の瞬発力で私の後ろに隠れる。ついでにユニーを撫でていたリリィまで尻餅をついてしまう。
「いきなり何なの!?」
「あー、この子カイのこと嫌いみたいで」
「そろそろなつけよ! 一緒にドラゴンから逃げた仲だろ!」
「ブルルルルル!!!」
ユニコーンは清らかな身体の女の子にしかなつかないというのは何となくルルとリリィにはまだ内緒にしておこう。
「それじゃあ多分あと2、3日したらこの街を出るからその時にまた来るね」
「ヒヒーン!」
最後に私とリリィが軽く撫で、ルルがビクつきながら触り、カイが威嚇されてからユニーとは別れた。
昨日とは違う少し小さめのレストランに行ったのだが、案の定昨日ほどではないにしろ明らかにぼったくられた。通常なら30Gくらいの注文だったのにも拘わらず100Gを請求されたのであえて1000Gを払い今日はしっかりとお釣りをもらってやった。
そもそも一度の食事で100G以上のお釣りというのがあり得ないような小さなレストランで、900Gというお釣りを払うという貴重な経験をさせてやったのだからむしろ感謝して欲しいレベルである。
そして店を出た今――
「これですよ。この装備で来たのが既にフラグだったのかな」
軽装に不精髭を生やした男4人に道を塞がれていた。
「あのー、通れないんですけど?」
「へへへ、ここを通りたけりゃ通行料払ってもらわねぇとなぁ。なぁに、さっき店でもらってたお釣りを払ってくれりゃあいいんだよ。嬢ちゃん、小銭を持つのが嫌いなんだろ?」
うわ、昨日の店にいたんだこの人達。
ていうか通行料900Gとかどんなけ高いんだよこの道。
「じゃあ違う道から行くんで大丈夫です。お疲れっしたー」
「おいおいおい、逃げられると思ってんのか?」
4人のうち2人が後ろに回り込み、退路をも塞いできた。
「フッ、嬢ちゃん。あんまり若いうちから大金持ち歩かない方がいいぜ? 俺らみたいな悪いおじさんに目をつけられちまうから」
「何言ったって無駄無駄。こいつは獣人連れておままごとしてるようなガキだぜ? 金の価値なんか分かりやしねぇよ」
カチン。
面倒くさい。奇異な目や敵意を向けられることには慣れているが、舐められるのは慣れていない。昨日から舐められっぱなしで流石の私も我慢の限界だ。
「さっきから黙って聞いていれば随分と勝手なことを言ってくれますね。あなた方、私が誰だか知っての狼藉ですか?」
「はぁ? 誰だよ嬢ちゃん」
「はぁ……あなた達のような底辺の人間が知らないのも無理がありませんか。いえ、そんな低俗な市民にも知られるくらいもっと有名にならなければいけないということですね」
「何でそんな変な喋り方してんだ?」
「…………」
後ろからカイに口を挟まれるが、それを平然な顔で流す。
「お、おい、こいつどこか有名な家の子供とかじゃねぇのか?」
「は? おいマジかよ」
男達がこそこそとこちらに聞こえないように話始める。
「あ、別に関係ありませんが、ただの平民が貴族に無礼な態度をとったら最悪の場合処刑ですよね?」
「おい! やっぱこいつただのガキじゃねぇって!」
「だから言ったんだ! こんなガキがあんな大金持ってる時点でおかしいって!」
「いや、ハッタリだ! こんな奴見たことねぇ! おい嬢ちゃん、どこの誰だか知らねぇが、あんまり調子乗ってんじゃねぇぞ!」
「はぁ、仕方ありませんね。あまり名乗りたくはなかったのですが、礼儀の知らない低俗な市民に何を言っても意味がありませんね」
私は1歩前に踏み出し、手を己の胸に当てながらハッキリと告げる。
「頭を低くして聞きなさい。そう、私こそがあのサックバー家の一人娘、ハル=サックバーです!」
「いや、誰だよ」
後ろからカイのツッコミが聞こえてきたが、私は今ハル=サックバーなので耳を貸さない。
「……聞いたことあるか?」
「いや、だが最近貴族になったとかなら聞いたことがなくても不思議じゃねぇ。もしかしたら本当に……」
「頭が高いですよ? あなた方の顔は覚えました。私がお父様に一言言えば、あなた方の人生はそこで終了だということを理解していますか?」
「わ、わかった……! すまなかった。それだけはやめてくれ!」
ふう、流石私。役者になれるかも。
ピピッーー!!!
と、そんなことを思っていると、後ろから笛の音が聞こえた。
男達はその音を聞いた途端やべぇ! と言いながら逃げ出していく。
笛が鳴った方を見てみるとそこには笛を咥え、警備団の制服を着た男性がこちらに走ってきていた。
とりあえず助かった。別にあのままでも追い払えたけど、国家権力を頼れるなら頼っておこう。
「いやー、助かりました。ありがとうござい――」
「逮捕する!」
「…………はい?」
ガチャリと私の両手首に手錠が掛かる。
あっれぇ? 捕まえる相手間違えてない? 悪い人達なら向こうに逃げていったよ?
「えっと…………」
「署まで同行してもらおう」
ん?
「君達もこの子の仲間か? それなら君達にも一緒に来てもらおうか」
カイ達に視線を向けて男性は言う。
「いやいや、えっと、何で私は捕まったのでしょう?」
カツアゲを追い払っていたら警備団が来ていきなり私が捕まった。何を言っているかわからないだろうが、私にもわからない。
「許可なく貴族を名乗るのは法律違反だよ」
ん? ん、んえええええええ!!!???
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