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30億だけ持たされた私の異世界生活。  作者: 夢寺ゆう
第1章 異世界転移
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20.キサラギ到着


 予定ではカンナギからキサラギまでは3日かかる予定だったが、私は師匠に、カイはカナタに特訓をつけてもらいながらの移動だったため当初より2日多くかかってしまった。


 とはいえ、この2日間で私達が強くなったのも確かで、私とカイの2人であのイノシシ型モンスターを無傷で倒せるくらいにはなったし、私個人としても逃げるウサギや鳥に矢を命中させることができるようにはなった。


 さらに移動中には荷台の中でリロードをとにかく早くできるようになるために、何十回何百回とリロードの練習を繰り返した。


 たった2日でそこまで成長するものかと私自身信じられない部分もあるのだが、そこは師匠達の教え方が上手かったのだろう。


 そしてカンナギを出発してから6日目の昼前、私達はようやくキサラギの街に到着した。


「それじゃあ、僕達はここまで。確かに送り届けたから」


「うん、ありがとね。護衛に加えて特訓まで」


「いえ、そもそも初めに巻き込んだのはこちらですし、お礼なんていりませんよ」


「報酬もしっかりもらったしね」


 ロイド師匠が1000G札をピラピラと見せる。

 ロイドとカナタはキサラギには寄らず、このまま王都へと向かうらしい。

 彼らは王都を本拠地としており、自分達の家も王都にあると話していた。



「それじゃ」


「いつか王都に来ることがあったら、その時は王都の街を案内します」


 2人はそう言って私達に背を向けて歩き始めた。

 が、ロイドが途中で足を止めた。


「……1つ忠告しておくと、この街じゃそのフードは取らない方がいいよ」


 カイに向かっての言葉だろうか。ロイドはこちらを振り返らないままそれだけを言って、再び歩を進めるのだった。





        ×  ×  ×





「こ、これは……」

 

 大きい。

 これがこの街に来て最初の感想である。


 大都市と言っても過言ではない。後から知ったことなのだが、このキサラギという街はアインツベルク王国の中で王様が住んでいる王都の次に大きな街で、もう街というよりは都市と言った方が合っている気がする。


 人の多さも()ることながら、平均的に背の高い建物が多い。

 街の大きさでも軽くカンナギの3倍はある。


「まずはユニーを預けて、それから武器屋だね」


 街の大きさに一通り感心してからこれからどうするかを決める。


 カナタによるとカイはダガーを2本持って戦う、所謂二刀流スタイルが合うらしい。

 ダガーを両手で握って振ることはまず無いので、1本では持っていない方の手が手持無沙汰になってしまうらしい。特にカイは動きが小さく素早いため一撃の重さよりも手数で勝負するタイプなのだとか。


 ついでに私もクロスボウの矢はそれなりに数がいると学習したのでそれを買いに行く。


 背の高い建物を見上げながらユニーを預かってくれる店を探す。東京に比べればこの程度まだまだのハズなのに、異世界というファクターを1つ挟むだけでここまで珍しく思えてしまうとは。

 異世界と聞くと勝手に中世ヨーロッパくらいの時代を想像してしまうが、これは改めなければいけない。


「お、あそこで預けられそうだね」


 横にいくつもの馬小屋が並んでいる店を見つける。

 ここに預けるなら宿もここの近くの宿を取っておいた方が良いだろう。


「すみません、馬車を預かってほしいんですけど」


「へいらっしゃい、馬車のお預かりですね。ってユニコーン!?」


 お店の主人らしき男性がユニーを見て驚く。やはりユニコーンというのは珍しい生き物のようだ。この街に入ってからチラチラと道行く人に見られていたのは恐らくユニーのせいだろう。


「えーと、期間はどれくらいにします?」


「とりあえず1週間で」


「了解しました。宿が決まっているなら荷台の荷物はそこまで運びますけどどうします?」


「あ、自分達で持てる量なので大丈夫です。まだ宿も決まってませんし」


 代金を払い、荷台から荷物を降ろす。自分達で持てるとは言ってもこれをずっと持ったまま観光をするのは流石に厳しいので、武器屋の前に宿を探す方が賢明だろう。


「あ、ここって若い女性の店員さんっています?」


「いることはいますが……」


「ならこいつのお世話はその人に任せた方がいいかもしれません」


「……? ああ、ユニコーンですもんね。なるほど、わかりました」


 あ、やっぱり皆知ってることなんだ。ていうことは事実なんだね。まったく、ユニコーンってのは失礼なやつだ。


 荷物を背負い、ユニーのことを頼んでから店の外に出る。

 すると、何やら店の外が騒がしくなっていた。


 店の前は大きい通りになっているのだが、その通りの真ん中でまるでモーセの海割りのように人が分かれているのだ。


 何かあるのかと見てみると、そこには1人の女性とその3歩後ろを主人に仕えるようにしている獣人が2人が歩いていた。


「…………あの人何者ですか?」


 馬車店の店主に訊ねてみる。

 この世界に来てまだ2つ目の街ではあるが、今まであんな風に獣人と一緒に歩いている人間を見たことがなかった。


「ああ、あの人はこの街じゃ一番有名なんじゃないですかね。″獣人保護のファネル″と聞けばこの街で知らない人はいませんよ」


「獣人、保護?」


「ええ。あの人は貴族の娘なんですが、親元を離れて1人でこの街に住み獣人を保護してるって噂ですよ。まぁ1人で暮らしてるって言っても御付きの護衛が何人かいるみたいですが」


 御付きの護衛。どうやらあの獣人達のことではなく人間の護衛もいるらしい。


「それにしても立派ですよね。獣人にあんな綺麗な服まで着せて、どこかに行くときはいつも何人かの獣人をああやって連れてるみたいですよ」


 もう一度女性の後ろの獣人2人を見る。


 猫耳と、あれは狐耳か? 2人とも女性の獣人で、狐耳の方の女性は真っ白なロングのワンピース、猫耳の方は薄い水色をしたロングのワンピースを着ている。恐らくは色違いのお揃いなのだろう、手首まである長袖と足首辺りまでのロングスカートのワンピースだ。


 そして首にはこれまたお揃いのチョーカーがしてある。

 今度のは2つとも真っ黒で、色までお揃いである。


「…………」


「お客さん? どうかしました?」


「……いえ、何でもありませんよ」


 ニコリとお得意のお嬢様スマイルを見せる。


「それじゃカイ、そろそろ行こっか」


「ん」


 店主に一礼し、あの3人が歩いていった方とは逆の方へと向かう。


 最後にもう一度だけ前のファネルという女性に仕えるように歩く2人の獣人を見る。


 貴族の娘が1人親元を離れて″獣人保護″。

 これはまた立派なことで。


 

『……1つ忠告しておくと、この街じゃそのフードは取らない方がいいよ』



 何故かこの時私は、この街に入る前に言われたロイド師匠の言葉を思い出していた。




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