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30億だけ持たされた私の異世界生活。  作者: 夢寺ゆう
第1章 異世界転移
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17.ピンチ再来。謎の2人組


 何だアレ何だアレ何だアレ。


 本当に一瞬だった。


「……ハル……ハル!」


「……! な、なに!?」


「なにじゃねぇだろ! 何があったんだ?」


「あー、えっと、スピードリザードが皆灰になった?」


「は!?」


 何があったと訊かれても、今起きたことを説明しようとするとそうとしか言えない。


「ていうかカイは何で伏せろって言えたの?」


「いや、何かが凄い勢いで近付いてくる気がして」


 カイは猫科。あの炎の柱による僅かな空気の異変に気付いたのだろう。

 

「炎の柱がいきなり横切ってスピードリザード達を焼き飛ばした。多分ユニーが使ったみたいなブレスの類だと思う」


「ぶ、ブレスって、誰の?」


「ドラゴン」


「は!? ど、どこに!?」


 あ、そうか、カイは前を向いているからドラゴンの姿は見ていないのか。


「もう大分離れたから大丈夫だと思うよ」


 走り続けていたユニーには少し前から歩かせている。10分近く走り続けていたのだ。今1番疲れているのは間違いなくユニーだろう。


 それに最初に見たときであのドラゴンとは200メートルくらい離れていたのだ。今はもうあの巨体が見えない所まで来ている。あのブレスも流石にここまでは届かないだろう。


 そもそもあのドラゴンは私達に向けてブレスを撃ったのだろうか? あの距離から本当に私達が見えてブレスで狙ったのだろうか?


 違う気がする。

 何か違う理由でブレスを撃ち、たまたまその直線上に私達がいたのではないのだろうか?


 あのドラゴンが視界に入った生物には全てブレスを撃つという性質を持つならまだしも、そんなことはまずありえない。


 あのドラゴンが私達を狙う理由は別にないのだ。


 それならあのドラゴンがブレスを撃った理由は別にあるはず。

 私達以外の何かに向かってブレスを撃ったと考えるのが妥当だ。


 そんなことを考えていると、いきなり辺りが暗くなった。

 影ができたのだろう。


「…………影?」


 馬車の荷台から顔を出し、上空を確認する。


「わー、飛行機だー。凄い低空飛行してるなー。空港近いのかなー?」


「ひこうきって何だよ! ていうか、あ、アレ、アレって!!」

 

 え、飛行機じゃないの? でも飛行機以外であんな大きな乗り物あるんだ。流石異世界。


「ど、ドラゴンじゃねぇか!!」


 知ってました。


「離れたからもう大丈夫じゃなかったのかよ!」


「そんなことを思ってた時期が私にもありました」


「このバカ!」


 ユニーには申し訳ないがまた走ってもらうことになりそうだ。しかも今回は先程とは比べものにならないくらいヤバい状況である。


「くっ、ぴったりオレ達の上を飛んでやがる」


 明らかに私達の速度に合わせて飛んでいる。これは笑えないくらいヤバいかな。


 もう一度馬車から上半身を乗り出し、クロスボウを上空を飛んでいる巨体に向ける。


「的は確かに大きいんだけど……」


 引き金を引き矢を放つ。しかしクロスボウの射程圏外を飛んでいるドラゴンに矢は届かず落下してくる。

 

「やっぱりか…………っ!! まずい! またブレスが来るよ!」


「はぁ!? そんなの避けられないぞ! どうすんだ!」


「そんなこと言われても……」


 どうするどうするどうする。

 大体何で私達に向かってブレス撃つんだよ。

 私達別に君に何もしてないじゃん!


 って、今はそんなこと考えてる場合じゃない。

 ユニーに急ブレーキをかけさせるか? 向こうだってこの速度で飛んでいるんだ、上空での急ブレーキは難しいだろう。


 ただやるならブレスを撃つ寸前だ。スピードで勝てないならあのブレスを避けるにはそれしか方法はない。


「カイ、ユニー。あいつがブレスを撃つ寸前に急ブレーキをかけよう。向こうは空中だから、急ブレーキに反応できないはず」


「なるほど、よし」


「ユニーも頼むよ」


「ぶるるるるる!!」





「いやー、悪いんだけどその作戦はちょっと待ってくれないかな?」





「「…………っ!?」」


 ……いつの間にか、御者台のカイの隣に見知らぬ少年が座っていた。


「このスピードから急ブレーキなんてかけたら荷台ごと僕達吹っ飛んでっちゃうよ? お姉さん♪」


 30センチ程の杖で私を指しながらケラケラと笑う。

 

「ロイド! ブレスが来るぞ!」


「へ?」


 荷台の屋根からこれまた違う声が聞こえたと思い視線を上に上げたら、視界を炎が埋めていた。


「きゃあっ!!!」


 あ、何か久しぶりに女の子らしい声を上げた気がする。


 って、今はそんなことどうでもいいわ! 何で熱くないんだ?


「…………え?」


 馬車上空を見てみると、液体でできた膜に炎が遮られていた。

 ドラゴンは今もブレスを撃ち続けているが、何度やってもその膜が炎を通すことはない。


「獣人の君、この馬車を停めてもらっていいかな?」


「え? えっと……」


 カイが私を見る。この少年の言う通りにすべきかどうか迷っているのだろう。

 私はカイの代わりにユニーに指示を出す。


「ユニー、停まって」


「ぶるるる!」


 私の指示通りユニーは徐々にスピードを緩め、そのまま停止した。


「へー……ユニコーンを完璧に手懐けてるんだ。ま、ネーミングセンスはちょっと疑うけどね」


 少年は馬車が停まったのを確認して御者台から降り、私達の方へ振り向く。


「巻き込んじゃってごめんね。ついでにもう少し巻き込んじゃうから死にたくなかったらここから出ないように」


 少年がそう言った瞬間、先程の液体の膜がドーム状になって私達の周りを馬車ごと覆う。


 すると荷台の屋根からもう1人飛び降りた。


 先程の声から予想はしていたが、やはり女性だ。

 かなり長身で女性らしい体つきをしており、しかもかなり美人だ。背中に背負った大剣が色々と台無しにしているが。



 ていうか、ほんとアンタら一体いつから馬車に乗ってたんだよ……





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