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30億だけ持たされた私の異世界生活。  作者: 夢寺ゆう
第6章 選択
144/186

4.全て私の意思


 サランド皇国から帰ってきて2週間ほどが経ったある日のこと。

 まだ本調子ではないハルとカイのために王都の王城に残っていた一行は、各々がロイドとライン王子から今回の数日間の旅で起こったことを訊かれていた。


「つまり……ハルちゃんが転移魔法を使って君達をここまで移動させた、と」


「ああ。あの詠唱はロイドが唱えているのを何回か聞いているし、あの魔方陣も間違いないと思う」


 ライン王子の質問にシュナが記憶を辿りながら答える。もう既に何度か話した内容なのだが、それでもしつこいくらいに彼らは何日もかけてこんな質問を繰り返している。


「そこにハルの意思は?」


「……? どういう意味だ?」


「以前、マヒユ教の教会であいつがひと悶着起こしたことは聞いている。その時にハルの様子がおかしかったとも。転移魔法を使ったとき、そこにハルの意思はあったのかってこと」


 以前ハルがマヒユ教教会でひと暴れしたときはシュナもその場にいた。確かにあの時のハルは、少し様子がおかしかった。誰の声にも反応せず、ただ一方的ににマヒユ教徒達を吹っ飛ばしていた。魔力のしっかりと制御して。


「そういえば……初めは少しだけ様子がおかしかった。私の呼び掛けにも反応しなかったし、言われてみればあの時と様子は似ていた気がする。だが、転移魔法を使ったときは間違いなくハルの意識はあったし、焦ってはいたがカイの様子を訊いてきたり、ロイドのように上手くできるかは分からないとはっきり言っていたので自分の意思で転移魔法を使ったのだと私は思っている」


 その後も何個か既に訊いた質問をして報告とのズレがないか確認した後、シュナは部屋から退室した。


「どうやら転移魔法はハルちゃんの意思で使ったらしいね」


「ありえない。……と、言いたいところだけど、他の3人に訊いても同じ答えしか返ってこない」


「いくらロイドの魔力だからといって、転移魔法が使えるほどの魔力量があったとは考えにくいんだけどね。直前まで魔力過多を起こしていた訳ではなかったということは、あくまでもその時点の魔力量はハルちゃんのキャパシティ分しかなかったはず」


「それ以前の問題でしょ。そもそもあいつには魔法の才能なんてなかったはずなんだ。それがいきなり転移魔法? いやそれだけじゃない。他の3人の話によると、大筒兵器の攻撃から3人を守ったり、20人の獣人兵を殺した時も瞬間移動を繰り返して攻撃を躱しながら敵の背後を取っていたと言っていた。多分無詠唱の瞬間転移魔法のことだと思う。でもこれは転移魔法の応用みたいなもので、転移魔法を覚えてすぐにできるようになる魔法じゃないし、いきなり命を狙われた戦場でできる芸当でもない」


「でもさっきシュナちゃんは、初めはハルちゃんの様子がおかしかったって言ってたでしょ。その”初め”というのが獣人兵と戦っていた時を指すなら、その時はハルちゃんの意識はなく、前みたいな無意識状態だったのかもしれない」


「そもそもその無意識状態っていうのが意味が分からない。あいつは狂戦士(バーサーカー)か何かなのか?」


 2人して頭を悩ませていると、コンコンと扉をノックする音と共に扉が開いた。


「や、失礼するよ」


「ちゃんと返事を聞いてから入ってこないとノックの意味がないよ。着替え中だったらどうするつもりなのさ」


「そりゃあ、全身を舐め回すようにじっくりと観察させてもらうに決まってるじゃないか」


 ブルリと体を震わせるライン王子とロイド。着替えるときは必ず部屋の鍵を閉めようと心の中で密かに誓った。


「話は聞かせてもらったよ。随分とお悩みのようだね」


「……? この部屋には防音魔法がかけられていたはずなんだけど?」


「ちっちっち。ロイドっち、王子様の服の襟元を調べてごらん」


「……?」


 何の事だと首を傾げながら言われた通りにしてみると、ライン王子の襟元から米粒大の小さな物体を見つけた。


「……魔力を感じる。これは一体?」


「またか! 君はまたやったのか!? いつ付けた!?」


 ロイドの手から盗聴魔道具を取り上げると地面に叩き付けた。魔道具を壊された当人はどこ吹く風でケラケラと笑っている。

 いまいち状況に付いていけていないロイドはまあいいと気を取り直し、シュガレットに向き合うと先程の発言について追及する。


「さっきの口ぶりからすると、何か分かったってこと?」


「そうそう。王子様が騒ぐから危うく忘れるところだったよ」


「誰のせいだよ」


 ライン王子のツッコミを無視し、シュガレットは話を進めることに。


「まずさっき王子様が言ってた魔力量問題。これに関しては100%説明できる」


「どういうことだ?」


「さっき廊下でシュナちゃんに確認したんだけど、やっぱりビンゴだったよ。20人の獣人兵と戦う直前、ハルちゃんはこの旅で二度目となる魔力暴発を起こしていた」


「「……は?」」


 2人の反応は最もだ。そんな話シュナ達からは聞いていないし。


「一度目の魔力暴発を目の前で実際に見て知ってたからね。彼女達にとってそれが魔力暴発とは思わなかったらしいよ」


 あの廃村で一度目の魔力暴発を目の当たりにしたシュナ達は、魔力暴発とは目を覆うほどの光を発した後に屋敷の1つがバラバラに吹っ飛ぶほどのエネルギー爆発が起こるものだと認識した。

 そんな彼女達にとって、光を発した後、すぐにその光が収まり爆発も何も起こらなかったあの現象が魔力暴発だとは思わなかったということだ。確かにシュナもあの光を見たときは一瞬また魔力暴発かと思ったが、すぐに違ったのかと思い直した。それに、その後に起こったことの方が衝撃がでかすぎて、正直4人ともそんなこと忘れていたというのもある。


 ただ実際は、暴発させた魔力をエネルギー爆発が起こる前に魔法に変換したため光が収まったに過ぎないのだ。


「つまりハルちゃんは自分のキャパシティ分じゃ足りないと思って、わざと魔力暴発を起こしたんだよ。ロイドっちの魔力を思う存分使うために。……ね、ハルちゃん」


 そう言って後ろを振り返るシュガレット。そこにはまだ顔色があまり優れないハルの姿があった。


「ハルちゃん!? 目を覚ましたのはいいけど……まだ横になってた方が良いよ」


「……でも2人とも私に訊きたいことが色々とあるでしょ? だから話しに来た」


「ならハルちゃんの部屋まで行ったのに」


「いいんですよ。布団に入ってるとまた寝そうになる。さっきシュガレットさんに聞きました。あれからまた1週間ぶっ通しで寝てたって」


 そう。ハルは1週間前に一度目を覚ました後、またすぐに眠りについてしまい、そのまま1週間目を覚まさなかった。彼女の魔力過多状態も1週間くらいが限度なため、それ以上増え続けるロイドの魔力を放出せずにいると魔力暴発が起こりかねない。故に今もハルは眼帯をしていない状態だ。


「この4人が揃ったのはちょうど良かった。ハルちゃんの話を聞いた後、私からも聞いて欲しい話がある。特にハルちゃんには絶対に覚えておいて欲しいことだから」


「……? はい」


 ハルとシュガレットを交え、4人で今回の旅で何があったのかの事情聴取が始まった。





「つまり、今回の件に関しては、全て記憶があると?」


「うん。今回の旅で記憶がないのは一度目の魔力暴発のときだけ。あの時は気がついたら廃村の屋敷がなくなってて、そこの地面も抉れていた。後からシュナにあれは私がやったんだって聞いてビックリしたからね」


「じゃあ、獣人兵と戦ったときは……」


「全部……全部記憶もあるし、全部私の意思で動いてた。以前アランカの教会で暴走したときとは違う。今回は自分の意思で二回目の魔力暴発を起こしたし、自分の意思で転移魔法も使った。自分の意思で……獣人兵も殺した」


「「「………………」」」


 途中、ハルの母親と会ったことは伏せながら、あくまでも現場であった出来事を話していく。

 ただ、残念ながらこれは隠しておける話ではなかった。必ず訊かれるだろうとも思っていた。


「正直、お前が獣人兵を殺したことについて追及するつもりはない。僕も目の前でカナタがやられたら冷静でいられる自信はあまりないし、多分その相手は殺すと思う。だからその時のお前の心境は、何となくだけど分からなくはない。僕が訊きたいのはそんなことじゃないんだよ」


 それはロイドだけではなく、ライン王子も似たような反応だった。

 ただシュガレットだけは、2人とはまた違った様子でハルの話を聞いていた。


「ハルちゃん。ハルちゃんには元々魔法の才はなかったはずだ。そんな君がロイドの膨大な魔力を得たところで、いきなり転移魔法が使えるとは思えない。無事だった4人の話では他にも障壁魔法を使った場面もあったって聞いた。……いや、順を追って訊いていこうか。まず、どうやって自力で魔力暴発を起こしたんだい?」


 ヒーラが作ってくれた右手首の魔道具。これを一切使用せずに魔法を使ったと知れば必ずその方法については訊かれると思っていた。そして、その方法を語るには先程は話さなかった母親の話をしなくては説明ができない。何となく魔法が使える気がしたではこの2人は納得してくれないだろうし、今まで散々ハルのことで真剣に考えてくれた2人にそんな適当なことは言いたくもない。信じてくれなくとも、一通りの事を話すのが筋というものだろう。


 ただ、ハルが話す前に口を開いた者がいた。



「あー、それに関しては私が説明できると思うし、逆にハルちゃんは多分そのことに関しては理解しきれてないと思う」


 ハルの横に座ってずっと黙っていたシュガレットが手を挙げて、そう口にした。






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