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30億だけ持たされた私の異世界生活。  作者: 夢寺ゆう
第1章 異世界転移
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14.初獲物


「それじゃあ気を付けてな。『キサラギ』までは馬車で普通に行けば大体3日はかかる。食料のペース配分に気を付けろよ」


 ロンドンさん曰く、ここカンナギの街から南へ向かうと、キサラギという街に着くらしい。

 

 街の南門でロンドンさんと別れの挨拶を済ませていると道行く人にチラチラと見られていることに気付く。


 どうやら私はたった3日で『獣人を連れてユニコーンをも従わせた謎の美少女』ということでこの街ではちょっとした有名人になっているようだ。


 初日に銀行で10万Gを下ろし、服やら鞄やらを買いまくり、レストランではちょっとした騒ぎを起こした。2日目は街中で獣人を連れ回し、かなり目立っていた。3日目には初日に買ったそれなりに高級な服やら鞄やらを銀行員のお姉さん達に押し付け……無償で譲って、銀行内では完全に良い人として認識された。


 そして4日目の今日、街中をユニコーンに馬車を引かせているのをバッチリ目撃されて何者なんだ!? ということになっている。


 カイには少し申し訳ないが私が良い意味でも悪い意味でも目立っていることはそこまで悪いことではない。


 たった3日しかいなかったが、この街ではそれなりに楽しめた。カイにも出会えたし、ロンドンさんやガランタさんのような獣人に理解のある人もいたし、肉屋のブライアンさんにユニーを売ってくれた馬車屋のおじさん、銀行員のお姉さん達とも知り合いにはなれた。

 少なくとも次この街に来たときは今言った人達は私達のことを覚えていてくれるだろう。


「3日だけでしたがお世話になりました」


 私とカイはロンドンさんに別れを告げて次の街に向けて進むのだった。




 ………………あれ? よくよく考えれば私おじさんとばっか仲良くなってない?

 こういうのって普通最初の街で優しい美少女と出会って仲良くなったり、性格の良いイケメンに助けられて仲良くなったりするもんじゃないの?


 あっれぇ~……?





        ×  ×  ×





 人差し指を曲げて引き金を引く。

 弦が弾かれる衝撃と共に放たれた矢は勢いよく進み、大きな木の根本に突き刺さった。


「…………また外しちゃったよ」


 馬車の影からクロスボウを持って顔を出す。

 隣で私と一緒に息を潜めていたカイが大木に刺さった矢を抜いてきてくれた。


「得意って言ってなかったっけ?」


「うっ……と、止まってる相手にだったら当てられる自信はある」


「つまり動いてる相手には当てられないと」


「う、うす……」


 そう、今私達は昼食の材料になるモンスターを狩ってみようということになったのだが、今のところ5回チャレンジして5回とも失敗しているのだ。今もウサギに似たモンスターに逃げられたところである


「ていうか飯ならあるんだからわざわざモンスターを狩らなくてもいいんじゃねぇの?」


「ま、私達が持ってる食料は保存が効くものだし、クロスボウの練習がてらモンスターを狩って調理するのも悪くないでしょ」


 いざ危険なモンスターと出くわしたときに上手くクロスボウを使えなかったら困るから練習は大事だ。

 ついでにモンスターの肉というのも食べてみたい。

 ロンドンさんに食べられるモンスターを教えてもらったし、焼くだけで美味しいと訊いたので私でも調理できるだろう。


 解体は何故かカイができるらしいし。

 

「それにしても動いてる相手に矢を当てるのがここまで難しいとは思わなかった」


「そりゃあモンスターも必死だしな」


 それに毎回逃げられているのには他にも理由がある。


「クロスボウの欠点だったなぁ……リロードが長すぎる。連射ができないから2発目射つときにはもういなくなってるんだよね」


 1発射ったら腰につけている矢を入れているケースから矢を取り出し、クロスボウにセットして弦を引いて再び照準を合わせる。当然敵は待ってはくれないのだから、この時間を短縮しない限り2発目を射つことはできない。

 つまり今のところ1発で仕留めなければ詰みなのだ。


「よし、次は連携でいってみよう」


「連携?」


「そ。いい? まずは――」







 前方に見えるのはイノシシに似たモンスター。

 茶色い毛皮に覆われ、大きく反った牙が2本生えている。

 ただ1点だけ地球のイノシシとは違うところがある。大きさだ。


 4足で立っているにも拘わらず高さが3メートル以上はある。

 重さは何トンとあるだろう。

 あの太い脚で蹴られたら一溜まりもない。


 しかし、的が大きい分先程までよりは当たりやすいだろう。


 カイと目が合い頷き合う。


 まずは私が馬車の影からイノシシ型モンスターの横っ腹を狙って矢を放つ。


 生えている草を食べるのに夢中になっていたイノシシ型モンスターは迫る矢に気付かず、その横っ腹に見事に命中する。


「ぐうぉおぉぉぉ!!!!」


「当たった!」


 痛みに対して悲鳴を上げているのか、それとも威嚇のために吠えているのはわからないが、かなりの迫力である。

 

「カイ!」


 痛みに怒り狂ったイノシシ型モンスターがこちらに向けて駆けてくる。

 そこで木の上で待機していたカイに合図を送る。


 カイはこちらに向かってくるイノシシ型モンスターの背に飛び乗り、腰のダガーを抜いて背中に何度も突き刺した。


「ぐがあぁぁぁ!!!」


 流石に苦しそうにするイノシシ型モンスターは駆けていた足を止め、背中に乗ったカイを振り落とそうと身をよじる。

 あまりの勢いの揺れにカイが振り落とされる。

 高さ約3メートルから振り落とされたカイだが、そこは流石猫科である。空中で1回転して見事に着地、そのまま目の前にあったイノシシ型モンスターの右前足をダガーで何度も切りつける。


「が、があぁぁぁ!!!」


 自重を支えきれなくなったイノシシ型モンスターは雄叫びを上げながら右側に倒れ込む。


 そして倒れたイノシシ型モンスターの面前で、私はクロスボウを構えた。


「ごめんね」


 シュカッ! という音とほぼ同時にイノシシ型モンスターの眉間に矢が突き刺さる。

 矢が刺さりピクピクと痙攣していた身体がしばらくして完全に停止した。


 



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