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30億だけ持たされた私の異世界生活。  作者: 夢寺ゆう
第1章 異世界転移
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11.武器選び


「お、戻ってきたな」


 多過ぎた服やら靴やらを銀行のお姉さん達に押し付けて身軽になった私達は、一度宿へと戻る。


 すると、宿屋の前でロンドンさんが腕を組んで立っていた。

 どうやら私達が戻ってくるのを待っていたようだ。


「よし、んじゃあ早速武器屋に行くぞ、明日出発するなら今日中に武器の扱いと馬車の乗り方まで覚えなきゃならないからな」


 確かに、昨日の3人組が言い広めているのか、それとも私達が昨日街で目立っていたからかはわからないが、今日は昨日一昨日と比べてやけに視線を感じる。


 カイは今日一度もフードを取っていない。にも拘わらず見られているということは私ごと顔を覚えられているということだ。


 これでさっきの銀行での件が広まればよりいっそう私の名前は良い意味でも悪い意味でもこの街で有名になるだろう。



 ――カイには少し悪いが、ここまでは狙い通りである。



 私達はロンドンさんに連れられて武器屋に向かうのだった。





        ×  ×  ×





「そういえば、ロンドンさんは何でカイを見ても普通に接してくれるんです?」


 最初にカイを見たときも嫌がる素振りも見せず、恐らくは私達のことを思って他の宿泊客には見つからないようにと言ってくれた。


「俺が元冒険者だって話はしたよな。冒険者ってのは毎日毎日凶暴なモンスターと戦っている。正直なところ、そんなモンスターと比べれば獣人なんて人間と全然変わらないんだよ。実際、冒険者の中に獣人を差別する奴はあまりいない。獣人を差別するのは所詮街から出たことのない本当に恐ろしいモンスターを見たことのない奴らだ」


 なるほど、それは理にかなっている。

 モンスターというものを見たことがないから断言は出来ないが、ゲームに出てくるような恐竜のようなモンスターが本当にいるのなら、獣人なんて可愛いものだろう。むしろ愛玩動物だろ。

 いや、これは獣人に失礼か。


「着いたぞ、ここだ」


 そう言って立ち止まったところにあったのは隠れ家のようなお店だった。特に看板も出ていないし、知る人ぞ知るといったお店である。

 昨日この街の店を粗方見て回った私だが、ここには気が付かなかった。

 ていうか、文字も読めない私が絵の描かれていないどころか、看板すら出ていない店に辿り着ける訳がなかった。


 ロンドンさんが少し立て付けの悪い扉を開けて迷いなく中へと入っていく。


「ガランタ、邪魔するぞ」


「んー? おお、ロンドンじゃねぇか。珍しいなお前が来るなんてよ。何だ? 久しぶりに狩りにでも出んのか?」


 ロンドンさんが話し掛けた先に居たのは丸眼鏡を掛け、所々汚れた作業着のような服を着たガランタと呼ばれた男性だった。


「違ぇよ。この2人に何か武器と防具を見繕ってやってくれ」


「ん~?」


 ロンドンさんが言うと、ガランタさんが私達の方をジロジロと見る。

 その視線から逃れるように私は無意識に自分の身体を抱き、カイはフードをよりいっそう深く被る。

 いやだってこの人の目が凄い変態っぽいんだもん。


「おい、変な目で見るな」


「ガハハ、わりぃわりぃ。にしても、女の子に獣人のガキか……その細い腕じゃ俺の作る剣は振れねぇぞ?」


 む、失礼な。そりゃあ片手でカッコよくとはいかないかもしれないけど、両手で持てばなんとかなるし!


「ま、試しに今作ってるヤツを持ってみな」


 そう言って私に1本の剣を渡してくる。

 見た感じゲームなどでよく見る普通の剣だ。これくらいなら片手でも持てそうだけど。


「って重っ!!!」


 持った瞬間剣先が地面にぶつかる。両手でも持ち上げることすら出来ない。


「いやいやいや、重すぎでしょ! 見た目と重さが全然合ってないんだけど!? 何で出来てんのこれ!?」


「よくぞ訊いてくれた。これはやっとこさ手に入ったオリハルコンで出来た剣だ」


「ほう、オリハルコンを防具じゃなく剣にしたのか。む、確かにこれは良さそうだな」


 私から剣を奪ったロンドンさんが片手でブンブンと素振を始めた。

 バケモンかよ。


「とにかくこんな重いのは無理です。もっと軽いのないんですか?」


「つってもなぁ、元々俺はロンドンみたいな重型戦士用の剣ばかり作ってるし、軽い剣なんてねぇぞ?」


「弓はどうだ?」


「ああ、弓か。それならあるな」


 ガランタさんが奥からゴソゴソと取り出して来たのは1つの弓矢だった。

 

「こいつは弦の部分をかなり頑丈に作ってあってな、滅多なことじゃ切れたりしねぇ」


「確かに、これは中々に頑丈だな。これなら放たれる矢もかなりのスピードが出る」


 ロンドンさんが弦をビヨンビヨンとしながら太鼓判を押してくれる。そして私も試させてもらった。


「…………硬ぇ」


 全然弦を引くことが出来なかった。

 ロンドンさんが人差し指と親指の2本だけでビヨンビヨンしてたから私にも軽く出来ると思ったのに、全ての指でしっかり握ってもほんの少ししか弦を引くことしか出来ない。


「お前さん、女の子といっても流石に非力過ぎねぇか?」


 失礼な! 普通の女子高生は皆こんなもんだよ!

 そもそも地球じゃ弓道部以外弓なんて使わないし! こんな動きしないもん!


「はぁ……銃、は流石にないだろうし、ボウガンとかないの?」


 何か敬語で喋る気力、体力すら無くなった。


「ぼーがん? なんじゃそりゃ?」


「へ? ボウガンってないの?」


「聞いたことあるか? ロンドン」


「いや、聞いたことも見たこともないが……」


「ボウガンっていうのは……」


 いや、待てよ。




「……ガランタさん。私の知識(・・・・)、買ってみませんか?」




 多分、今の私悪い顔してるんだろうなぁ。


 しかし、莫大な財産も無限じゃない。

 塵も積もれば山となる。はした金も積もれば大金となる。

 ここは少し節約するとしようかな。




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