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漆黒の狩人《イエーガー》アルティメス  作者: 北畑 一矢
第1章
8/90

アルティメス

投稿を中途半端に途切らせてすみません・・・。

 時は遡り、今より数日前。

 ガルヴァス帝国ではない、どこかの場所。そこから一人の少年による戦いが始まろうとしていた。

 ――カツッ! カツッ!

 空が見えない天井がある薄暗く狭い空間の中で、奥から届く光が唯一、先を照らし続けるその場所に一人の少年――ルーヴェは歩みを進めていた。

「…………」

 先へ先へとルーヴェはその奥行きから見える光を求めて足を進め、その光の中へ入っていくと、先程とは異なる広い空間に出た。

 そして、機繰者を防護する役割を持つ【アドヴェンドスーツ】を纏ったルーヴェが見上げると、そこには一体の巨人――アルティメスが立ち尽くしていた。

 漆黒に包まれた姿に、背中から生えた二枚の翼。それでいて、鋭い目つきにスラッとした外観。

 悪魔のような風格を漂わせる巨人の元に、ルーヴェは再び歩み始める。しかし、彼が通った出入口付近に潜む人影があった。

「本当に行くのね? ガルヴァス帝国に」

「……紅茜あかねか」

 待ったをかけるような言葉を耳にしたルーヴェは一旦足を止め、声が聞こえてきた方向に顔を向ける。するとそこに、彼と同じくらいの歳の少女が壁に寄りかかっていた。

「アタシもついてっちゃおうかな~。何だか面白そうだし」

「……お前は別の仕事があるだろ」

「それもそうだけど、アンタ一人には荷が重いんじゃないの? この仕事・・・・

「お前の方があそこに馴染むとは思えんが……」

「!!」

 少女の何とも図々しい言葉と笑顔に、彼はそれに反論するような言葉をかける。だが、彼女は食い下がろうと逆に反論するもスルーされ、さらに重ねたルーヴェの言い分に、頬を膨らませた。

「そんなに来たいなら、自分の仕事・・・・・を先に済ませたらどうだ。それに……」

「?」

最終的・・・には、俺らは合流するんだからさ。ま、ちょっとした異文化交流に行ってくると思えばいい」

「……異文化っていうか、地元・・でしょ、そこ」

「どっちでもいい。一足先に休暇を楽しんでくるわ。じゃあな」

「でも、いいの? アンタのそれ……」

 淡々と並べる彼の言葉に、紅茜は自分の右手を頭の位置に持ってくる。その人差し指はある位置に差し掛かっていた。

「あっちの方が目立つからな。ま、カモフラージュって奴だ」

「……アンタがそう言うなら、何も言わないわ。じゃあね」

 ルーヴェはそう答えつつ、紅茜が納得すると、再び足を動かし始めた。そして、ヒラヒラと手を振りながら歩くルーヴェを見送るように彼女も手を振って、この場を去っていった。


 紅茜とのじゃれ合いを経て、ようやくアルティメスの足元に近づいたルーヴェは、そのまま胸元から伸びる昇降用のワイヤーに引き上げられ、胸部を開いていたハッチを通じて上から乗り込む。その中に設置された操縦席に背中を預け、正面にある赤いボタンを押すと、その空間内に聞き慣れない音が血を体内で通わせるように響き渡り始めた。

 さらには、未だに開いていたハッチが閉ざされると外からの光が完全に遮断され、空間が闇と化した。ルーヴェはそのまま操縦桿を握り出すと、

 ――キィーン!

「!」

 自身の身体に何かが響き渡り、ビクッと全身を震わせるが、すぐさま姿勢を正す。そして、多数の機器が左右に並ぶ四角の液晶ディスプレイにパパッと光が点き始めた。

 最初に羽を広げた黒いカラスの姿を模した紋章と、次にこの巨人の名を表す、見慣れない文字が画面に浮かび上がり、さらには先程とはまた異なる文字が上から下へと画面を埋めていく。

 次第にディスプレイの周辺にも明かりが点き、空間全体に行き渡ると、正面と左右に位置する巨大なモニターに外の光景が映し出された。

「ようやく……この時を待っていた。そう、この時・・・を……!」

 ――ドクン!

 心臓の鼓動が強く波打つ。今にも聞こえそうに、高く。

「行くぞ……《アルティメス》!」

 そして、閉ざしていた少年の目が開かれた水色の瞳と、彼が乗る黒い巨人の鋭き赤い瞳が重なり、強く輝いた。

 そう、彼と一体化・・・を果たした巨人、アルティメスは共に戦う主を得て、今ここに〝狩人〟として目覚めるのだった。



 アルティメスがガルヴァス軍とヴィハックの前に姿を現した頃、そこから遠くに離れた帝都レディアントは、今でも非常厳戒態勢が続いていた。

 街中より真下に位置する地下シェルターに避難していた住民達はずっと地面に腰を掛けた状態であり、厳戒態勢が解除されるまで身動きが取れずにいた。四方の無機質な壁が目立つ大きな箱のようなシェルターに入れられ、いつ終わるのか分からないという緊張が住民達をより不安がらせていた。

「はぁ~、また(・・)、これだよ……」

「っていうか、日に日にヴィハックの襲撃が増している気がするんだけど……気のせいかな?」

「…………」

 帝都の郊外にあるニルヴァーヌ学園のシェルターに避難していたイーリィ、カーリャ、ルルの三人は今回の避難を通じて、これまでのことを振り返っていた。三人の会話からヴィハックの存在が彼女達にも伝わっているのがよく分かる。

 都市を隔てるヘカトンケイルが今も存在していることも含めて、その意味がしっかりと住民達に浸透していたのである。それもあって、噂も絶えず、街中でもそれに関するニュースが流されており、当時はそれらを聞かされてパニックだった頃から比べても、今ではしっかりと受け止めていた。

「エルマ~、どう思う?」

「…………」

「? どうしたの?」

 イーリィ達三人のすぐ傍にいたエルマは、イーリィの呼びかけに応じようとせず、顔を下に向けたまま無言を貫いており、まるで何かに魂を抜かれているような様子である。「オーイ」と声をかけても、返事がない。

「…………」

 彼女が返事をしないことに違和感を持ったルルは、四つん這いになって彼女に近づき、ツンツンと人差し指でエルマをつつき始めた。すると、ようやく反応したのか、下に向けていたエルマの頭が上がり、その顔を意識と共に自分へと向けさせる。

 彼女の顔をようやく拝めたルルだったが、そのエルマの顔を見て、一気に目を見開く。彼女の顔に何かが起きていたのだ。

「!」

「……ルル?」

 こちらに顔を向けたはずのエルマの瞳が両方共、青く輝いている・・・・・・・。そのことにルルは、口を開けたまま、言葉が出なかった。また、その輝きは宝石のごとく美しく、薄暗い空間に強く光っており、一層それを際立たせる。普段のとは異なる出来事にルルは驚きを隠せなかった。

 その一方で、エルマは同じく普段とは考えられない表情を取るルルを目にして、どういうリアクションを取っているのか分からず、キョトンとした表情のまま首を傾げた。

 自分に起きた異変・・が表面化していることを知らず、瞳を文字通り輝かせながら、こちらを見てくるエルマを見て、ルルは思わず目を逸らした。

「……いや、何でもない……」

「?……ちょっと、今は話しかけないでくれる? 少し、気分が……」

「……分かった」

 なぜか今は誰とも言葉を交わそうとせず、気持ちが沈んでいるエルマに、何とも言えない表情を取っていたルルは、ただ彼女の言葉を受け入れてそのまま引き下がり、イーリィ達の元へ戻っていった。

(まさか……)

 その際、エルマへと向けられたルルの視線は、一つの確信を持って、目標を定めるものだった。


「…………」

 ルルがイーリィ達の元に下がると、エルマはため息をつき、また顔を下に向けた。

 さっきはルルが不意打ちに似たことをしてきて、思わず顔を向けてしまったが、彼女から交わす言葉もないまま下がってたことに疑問を浮かべるものの、実は、ホッとしていた。なぜかというと、今の彼女の心は、気を引こうとしたルルやイーリィ達を含めた三人には話せないことでいっぱいだったからだ。

 ――キィーン!

 そう、ルルが見たエルマの異変は、瞳を輝かせていることだけではなかった。

(ガルヴァス軍やヴィハックの他に、何かが……来ている・・・・・・・・?)

 まるで今、閉鎖区にて起きている戦闘を見ている・・・・かのような言葉を思い浮かべるエルマ。それだけでも普通・・の人間のそれではなく、彼女は、先程、いや、ヴィハックが・・・・・・侵攻する前から・・・・・・・、奇妙な感覚に囚われていたのだ。

 もっとも、直接見ているわけではないが、エルマはそれらから発する反応・・を感じ取り、ずっとそれに苛まれていたのである。この感覚をどう口にしていいのか分からなかったのは、彼女も同じであった。

「…………!」

 今エルマが感じている、その三つ目・・・の反応は、彼女自身、何も知らなかった。そもそも、閉鎖区で戦っている者や、皇宮にてその姿を目にした者達ですら、その正体を知らなかったのだから――。



 閉鎖区の上空から、落下しそうな勢いのまま、アルティメスは猛スピードで高度を下げていき、すぐには地上へ到達しようとしていた。

 廃墟が立ち並ぶ地上にて身を構えるヴィハックが、しっかりとアルティメスをその目で捉える一方、ガルディーニを中心としたアルファ部隊も、それぞれ操縦席にあるレーダーから徐々に高度を下げる一つの反応として捉えつつ、身構えていた。

「…………!」

 少しずつ自分達の元に近づいていくことに少しずつ警戒心を高めるガルディーニ。

 先程は襲い掛かろうとしたヴィハックから自分達を助けたかに思えたものの、突如出現したシュナイダーを信用したわけではなく、未だに疑いの目を向けつつ、その正体を見極めようとしていたのだ。だが、その考えは虚しくも空回りすることとなる。

 ルーヴェは自身が乗るアルティメスを一定の距離まで高度を下げ、一旦態勢を整えるように停止すると、その右手に持つライフル「ゼクトロンライフル」を構えて地上に向けた。

 その地上で身構えていたヴィハックに、正面のモニターに表示された照準スコープを合わせると、ルーヴェは右の操縦桿の、人差し指に添えられたスイッチを押し、それと連動したアルティメスの右マニピュレーターがライフルの引き鉄を引いた。

 銃口からは先程と同じ青白い閃光が放たれ、未だに身構えるヴィハックの背中に突き刺さる。さらにはそのまま腹部を貫通し、地面に直撃すると、そこから爆発が上がった。

「ギィアッ!?」

 爆発の余波で周囲が弾き飛ばされる中、その爆発の真下から身体ごと宙に投げ飛ばされたヴィハックは断末魔を上げるも、ガルディーニ達の前で身体をひっくり返されるかのように地面に打ち付けられた。

 加えて、先程の爆発で地面が抉られた跡ができると、それによって仰向けにされたヴィハックは腹部を貫通されながらも息を吹き返そうとするが、先程のと同様に、次第に動かなくなっていった。

「…………!」

 一方、それと対峙していたガルディーニ達はギガンテスの左腕に装着されたシールドで爆発の余波を防ぎ、そのシールドを下げると、目の先に倒れているヴィハックが絶命する様に目を見開いた。

『たった一発でヴィハックを……!? しかも、今のは……!』

「……ビーム兵器・・・・・、なのか……?」

 ガルディーニと共に似た機繰者が驚きの声を上げる中、そのガルディーニは、ヴィハックを一発で絶命させた閃光の正体に一つの見解を明らかにする。だが、彼はその見解に懐疑的であった。

 ビーム兵器――指向性エネルギー兵器の一種にして、俗にレーザー光線とも呼ばれる希少性の高い代物だ。

 もっとも、ガルヴァス帝国の技術力なら既に実用されていてもおかしくないのだが、それをシュナイダーに携える・・・・・・・・・・サイズにまで開発した・・・・・・・・・・という噂は、ガルディーニ達も耳にしたことがないという。

 当然、そのサイズでの実用が未だに至っていないのが現状なのだが、目の前で起こったことは紛れもない事実であった。

 ガルディーニ達が目の前で起きている出来事に驚愕している一方、ルーヴェは再び照準を別のヴィハックに合わせ、ライフルの引き鉄を引いた。

「!」

 先程と同様の閃光が数本、上空から降り注がれ、未だにその大地に立つ数体のヴィハックに襲い掛かる。だが、その思考が回らないうちにまた、

 身に迫る危機を感じ取ったヴィハックはその場から離れようとするが、その本能をも超える速度で空から降り注ぐ閃光が次々とヴィハックの身体を背中から貫いていき、その後に訪れる爆発に包まれていく。

「…………!」

 空から降り注ぐ閃光がヴィハックを貫くという、その一方的な蹂躙劇をガルディーニ達は無意識ながら一切手が動くこともなく、黙って見ていることしかできなかった。これまで苦戦を続けていた怪物共をまるで的当てのごとくその怪物を撃ち抜く漆黒の巨人に、ガルディーニは恐れを抱き始めていた。

 また、一早く危機を脱したのもいるが、ルーヴェが逃すはずがなく、彼は速やかにそれらを狩り取っていった・・・・・・・・


 最後の一匹を狩り取り、ルーヴェの狩り・・が終わった後の戦場はというと、〝駆逐〟されたヴィハックは一匹残らず亡骸と化し、いくつか抉れた地面の上に横たわっている。

 また、爆発で炎に包まれたものも存在し、その炎が明かりが点くことのない大地を図らずも明るく照らしている。その様を正面のモニターで捉えていたガルディーニ達は、先程の驚きから抜け出せずにいた。

『マジか……!』

『す、すげぇ……!』

「…………」

 アルティメスの無双ぶりを間近で見ていたアルファ部隊の面々は、ただ驚くというよりも、あらゆるものを圧倒するといった、その強さに言葉が思いつかなかった。何の苦もなく敵を葬る、その姿に機繰者達は心を奪われていた。――ただ一人を除いて。

「この強さ……まるで……!」

 操縦席の中で驚きを見せる機繰者達とは裏腹に、ガルディーニは頭を冷静にして、未だに上空に浮かぶ続けるアルティメスを引き続き正面にあるモニターで確認する。

 ヴィハックを単機で圧倒するその振る舞いに、自分達がよく知る、ある存在・・・・を頭に浮かばせる。そして、悔しさにも似た感情を込めた視線をアルティメスに向けつつ、操縦桿を握るその手をさらに強く握りしめるのだった。


メカについての詳細は追々、更新させます・・・。イメージはあるのに上手く書けない・・・。

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