論功行賞
ダイダルとの戦いを制し、コートンを解放したレムレスは配下の騎士達を集めていた。
その中には先の戦いで参加した奴隷兵のリーダーもいる。
レムレスは皆を一度見渡すと――。
「これより論功行賞をおこなう。まずは特に功績の大きかった者三名に特別褒賞を与える」
今回の戦闘において戦果をあげた人物に対し、報酬を与える大事な場だ。
戦争自体はレムレスの描いた通りに動いたが、そうなったのはこの場にいる者たちの働き合ってのこと。
それをレムレスはちゃんと理解していた。
「第一功労者をノワルーナとする」
「え!? 私!?」
名を告げられたノワルーナが慌てたように飛び上がった。
「ノワルーナにはコートンの情報収集だけでなく、コートン内部へ我らの兵を潜ませた功績と、住民および強制的に兵にされていた者たちにソウハ再興のために、我とともに立ち上がるよう広めてくれた。今回の作戦は君がいなかったら出来なかった」
コートンがあっという間に落ちたのも、奴隷兵が寝返ったのも全てノワルーナが工作をかけていたからだ。
数日後、新たな王の声が聞こえる。新たな王はユアンの支配を終わらせるために力を振るう。その時のために力を蓄え、ともに立ち上がろうと広めてくれたのだ。
最初は半信半疑だった住民たちだったが、実際にソウハ再興軍がコートンにやってきたことでその噂が真実だと皆が気付いた。
そんな中、レムレスが王としてコートンに入ると、コートンの中に潜んでいたソウハ兵五百人が門に集結した。
突如現れたレムレス率いるソウハ軍は、住民にとってみれば天から遣わされた騎士団のように見えたことだろう。
その中でレムレスは住民たちに蜂起するよう声をかけ、ともに地方統制局を占拠した。
そして、宝剣の力を使い、奴隷兵たち全員に背後を見るよう呼びかけると、コートンの城門にソウハの旗を立てた。
レムレスはそこで、もうユアンに怯える必要は無い、ともにユアンを打ち倒し、家族を救えと命じた。
その結果、奴隷兵たちはユアン軍を裏切り、立ちはだかる壁となった。
「ノワルーナには金貨千枚および宝物十品を与える」
「ありがたき幸せ」
目録を受け取ったノワルーナが敬礼し、自分の席に戻る。
「続いて第二功労者をシルヴァとする。金貨五百枚および宝物五品を与える」
「ありがたき幸せ」
「良く我の策に従って動いてくれた」
「王の策には毎度驚かされるばかりです」
「これからも頼む」
「はい。ソウハ再興のため、粉骨砕身で働きます」
前線部隊の指揮官だったシルヴァは表彰するに十分値する働きをした。
ある意味、表彰されて当然の結果だったためか、ノワルーナのような驚きはなかった。
けれど、すぐに皆の表情は驚きに染まる。
「第三功労者を奴隷兵から我らソウハ軍に復隊してくれたコートン防衛隊の者達とする」
「「!?」」
座っていた誰もが驚きのあまり立ち上がり、信じられないものを見るような目で、元奴隷兵の隊長を見た。
「貴君らが我の声に応じてくれなければ、この勝利はありえなかった。貴君らには褒賞として三年間の税および役の免除を与える。どうか各々家族のもとに戻り、失った時を取り戻すと良い。そして、身体と心を癒やした後、国を富ませるために力を貸して欲しい」
「あ、ありがたき幸せでございます! レムレス王!」
「あぁ、どうか皆によろしく伝えてくれ」
「はい! はい! 必ずお伝えいたします!」
元奴隷兵の隊長は涙をボロボロと流し、嗚咽したまま動けないでいた。
レムレスは隊長のそばにそっと近づくと、その肩をぽんと叩いて座らせる。
「ありがとう。君達は本当によくやってくれた」
「ありがとうございます。レムレス王! このご恩は必ず返します!」
その後も随分長い間男の嗚咽は続いたが、誰も彼を摘み出すことも、止めることもしなかった。
かわりに皆はただ真っ直ぐレムレスを見つめていた。
新たなる王の器を見逃すまいと、その一挙手一投足を見ようとしていた。
「では、残りの功労をまとめて発表する」
そうして、論功行賞はつつがなく終わった。
この先、多くの戦いが起こるが、レムレスは王として皆をまとめて国を開放するのであった。




