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そのなな

4 縁羽と我殿院




「一週間経ちましたけど何か変化はありましたか?」


「いや、何も」


 我殿院は目の前に並べられた料理を口に運ぶのに集中してにべのない返事を返し、白河夜船はため息をついた。


 平日の昼下がり、ファミレス。昼時を過ぎた店内は客が二、三人ほど。窓際の席に我殿院と夜船は向かい合って座っていた。我殿院はハンバーグ定食、夜船はシーフードドリアをそれぞれ味わっている。


「一口もらいますね」


 夜船が伸ばしたフォークを払いのける。


「これは俺が注文したものだ。お前にくれてやるものはひとかけらもない」


「……けち」


 頬を膨らませてフォークをくわえ、恨めしそうな目で睨んでも我殿院は全く気にする様子もない。


「で、我殿院さん。あの子はどうです? 仲間になりそうですか?」


「力は素晴らしいものだ。磨き上げれば立派な戦力となるだろう。あいつの“ファントムペイン”はその左手で触れたものを斬りさく能力。威力の大きさ、範囲などは本人の意志で自由に変えられるだろう。鍛錬次第だが」


「それはそれは。鍛えがいのありそうな子ですねえ」


 からからと笑う彼女はセーラー服の上に白衣を着ている。夜船が美術部か化学部の女子高生ならばその格好にも頷けるが、彼女は既に成人している。童顔なので現役高校生に見られることが多々あり本人もあえて真実を告げることは少なく、その度に我殿院は辟易していた。


 黒い男と白衣の女の組み合わせが座る窓際の席は、ここだけ舞台設定を間違えたかのように異様な負に気を醸している。


「それよりも俺が気になるのは、雲煙縁羽のことだ。まだ会ってないが、こいつ、なかなかエグいぜ。大人しそうな面で中身はどす黒い。くっくっく、黒を尊重するこの俺ですら軽く畏敬の念を感じるほどだ。そのうちに何かとてつもないことをしでかすだろうな。そんな予感がある」


「我殿院さんがそう言うならきっとそうなんでしょうねー」


 夜舟はつまらなそうにストローでオレンジジュースを吸い上げる。我殿院があまりにも雲煙縁羽という見ず知らずの少女のことを誉めそやすから面白くないのだ。


「あいつも仲間にしたいくらいだ」


「そんなに言うならその子の元に行っちゃえばいいじゃないですかー」


「何を怒っている?」


「別にー。わたしという女がありながら女子中学生にゾッコンラブな我殿院さんにはわからないでしょうねー。若さの力には勝てないんですかねー」


「ふん。どうせメシを食えば機嫌がよくなるのだろう。もっと食え。肉をやろう」


 ハンバーグのブロックをフォークに刺し、夜船の口元に運ぶ。当然のように一番小さなブロックだった。


 夜船は目を輝かせてその肉を口に入れる。肉そのものよりも我殿院から食べさせてもらうというシチュエーションの方が嬉しい。幸せそうにハンバーグを味わった。


「ところでのバイザウェイ、なんで私たちはここでご飯食べてるんでしょうか?」


「腹が減ったからだろう」


「そうでなくて。先週、我殿院さんが例の子と接触してから何も行動してませんよね。私たちは遊び回っていただけだし、あの子、折花ちゃんも普通に学校行ってるし。いや、私は楽しかったんですけど、目的が見えないと不安になるじゃないですか。もうあの子も“ファントムペイン”を獲得してるんだから、さっさと拉致っちゃえばいいじゃないですか」


「力ずくで連れてくるのは簡単だ。だがそれじゃあ仲間とは言えないだろ。仲間なら、そいつが抱えてる問題を解決してやろうじゃないか。……俺の読みが確かなら、そろそろ来る頃だぜ」


 誰がですか、訊ねようとすると、二人のもとに人が止まった。


「よう、早かったな。会いたかったぜ」


 ハンバーグを切り分ける手を止め、にいっと笑みを浮かべてその人物を見た。


「あたしは会いたくなかったよ」


 雲煙縁羽、再び我殿院の前に現れる。



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