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――そして、ここへたどり着いた。
王都ティレールの王城より更に奥、人口湖に掛かった橋を渡り、小さな屋敷へ足を踏み入れた。
元は先王の時代、ティレールを再度要塞化するにあたって建設されたダムの管理人向けに作られた場所なのだとか。
フロエと別れ、案内されたのは細い通路。
後になって増設されたという、小さな塔へ通じる唯一の道だ。
屋敷の主がここに居る。
侍女のノックに応える声はない。
重く閉ざされた扉がゆっくりと開いていき、俺は、数年ぶりに彼女の姿を目にした。
薄暗い部屋の中央、こちらを見据えて待つ影が居る。
促されるまま踏み入り、膝を付いた。
頭を垂れ、声を発する。
「ご無沙汰しております、ルリカ=フェルノーブル=クレインハルト女王陛下。お招きに応じ、参上いたしました」
第三章(中) 完




