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04

 朝日と共に目が覚めた。

 昨日の夜は空を眺めながら眠ったせいでカーテンが全開だ。ベッドを照らす太陽の熱は、まだ涼しい季節にあっても熱かった。


 布団の中で何かがもぞもぞと動く。気持ちよさそうな寝息が覚醒に従って喉を鳴らすようなものに変わり、夜の間にしっかりしがみついていた俺の身体へ一層べったりと肌を寄せる。薄いシルクの肌着一枚というあられもない少女の身は柔らかく、押し付けられる胸の柔らかさは凄まじかった。

 こんな朝に女の子の肌を感じるのは拙い。そのつもりがなくとも大変な変化が起きてしまう。


「朝だ。もう起きろ」

 仕方なく俺は掛け布団をめくり、目を覚ますよう訴える。

「ん、んん……ん~」

 彼女は甘えるようにいやいやと首を振り、胸の上に乗ってきた。ここ数日でどんどん過激になった彼女の甘えぶりに、流石の俺も苦笑するしかない。


 その時、部屋の扉がノックされた。

「起きている。入って構わない」

「失礼します」

 慇懃に礼をし、メイド姿のメルトが入ってくる。カートの下には二人分の着替えが数着。


「ほら、メルトが来たぞ。いい加減に起きるんだ――――アリエス」

「やぁ……」

 やぁ、じゃなくてさ。

 ああもう可愛いなぁ本当に。


 誤解なきよう説明しておくと、同じベッドで一夜を過ごした俺たちに過ちなどない。一緒のベッドで寝た。それ以上のことは何もしていない。

 そもそもハイリアと合一した状態にある俺では、妹であるアリエスに対して一欠片も性的な興奮を覚えない。生理現象として、朝の寝ぼけた状態では事故もありうるが、その先を思考するだけでテンションダウンするのだ。


「目覚めのキスをしていただけたら起きますぅ……」

「分かった。じっとしてろよ」

 キスをした。勿論頬にだ。

「えへへ」

 嬉しそうな妹のとろけた笑みに俺はとてつもない衝撃を受けた。


 くっ! しくじった!


「何故、今俺はこの場面に絵師を同伴させなかった……! 今の笑顔を記録に残すというのは人類の義務だっ! もし残せていたのなら国宝、いや人類の宝となるのは間違いなかった……そうだろうメルト!?」


「はい。アリエス様は大変可愛らしかったと思います」

「私は、お兄様以外に見られたいとは思いません。まあ、メルトになら特別に、横から観賞する程度のことは許しますけど」

「ありがとうございます、アリエス様」


 入学して以来、両親や周囲の監視の目が薄まったのをいいことにアリエスは毎日毎晩俺のベッドへ入り込んでくる。今となってはメルトが俺の着替えと一緒にアリエスの着替えも運んでくる始末で、俺の急なハイテンションやアリエスの甘えぶりにもにこやかな反応をするようになった。

 元々は二度に渡り目撃した俺とメルトの未遂事件が原因なのだが、学園へメルトを同行させると伝えた時に父上から、手を出したら家から追放するから覚えとけ、と優しいお言葉を頂いた。

 貴族が使用人を性欲の捌け口とするのは極端に珍しい話ではないが、やはり外聞も悪い。まして情婦であるならともかく、愛情を注ぐなど、ウィンダーベル家の嫡男としてはありえない暴挙だった。


 というのはあくまで父上の建前で、当時メルトに嫉妬しまくったアリエスが泣きついたのが原因だ。父上はアリエスに甘い。不用意に男がアリエスへ触れようものなら相手の住む都市へ火を放つくらいはやりそうだ。

 全く、親馬鹿も行き過ぎればみっともないな。少しは俺を見習って欲しい。


 俺はアリエスの手を取ってベッドから下ろすと、その柔らかな肌へ一片の傷も付けぬよう肌着を脱がせる。今や慣れた手つきでブラを付けさせ、メルトから受け取った肌着に変えさせた。そのまま肌着の下から腰元へ手を入れ、ショーツを脱がせると、丁寧に畳んでカートに載せる。ブラと同じく淡い水色のショーツをアリエスの足元にやり、彼女が両足を通すのを待って上へ。履き心地を整える。ぷりぷりとしたお尻が可愛らしい。

 あぁ、言っておくが性的な興奮など一切覚えない。大切な妹へ兄として当然の責務を果たしているだけだ。

 それからスカート、靴下、上着と着せて丁寧にリボンを結ぶ。

 続けてヘアバンドで月の光を集めたかのように美しい黄金の髪を上げ、軽い肌のケアを施した後、メイク、ヘアスタイル、香水とおよそ一時間ほど掛けて整えた。


 流石は高性能ライバルキャラであるハイリア。

 まだ僅かな経験しか積んでいないにも係わらず、今日も妹の愛らしさ、美しさをこれでもかというほど引き出して見せた。見ろ、金髪碧眼の天使がこの世に舞い降りているじゃないか、はははは。


 タイミング良くメルトが紅茶を淹れて戻ってきた。

 俺は妹へ先に始めているよう伝えると、メルトに手伝ってもらいながら素早く着替えて同じ席に着く。


「……全く、父上も過保護だと思わないか?」

「えぇ。学園には寮もあるというのに、態々私たちの為にお屋敷を建てるだなんて、本当に過保護」

「甘やかしが過ぎると、こちらとしては早く自立せねばと思ってしまうな、アリエス」

「その通りですね、お兄様。私たちが卒業すれば使い道も無くなるというのに、甘やかし過ぎです」


 メルトが何か言いたそうにしていたけど、俺たち兄妹は朝の紅茶を楽しんでいるだけだ。

 ん? 俺がアリエスを甘やかしている場面がどこかにあっただろうか……?


 しばらく二人で談笑していると、料理人が入ってきて今日の朝食は何処産の何だとか、どういう歴史や経緯があって、何をテーマにしているだとか長ったらしい口上を並べ始めた。

 腕の良い料理人ではあるが、やや権威主義が強く話の長さが珠に瑕だ。

 本来は食堂で摂るべきなのだが、アリエスが嫌がったので朝は俺の部屋へ運ぶよう言ってある。勿論父上たちには内緒だ。


 優雅に食事を済ませると、しばしの余暇が出来る。

 しばらく前に馬車の用意が出来たと使用人が伝えに来たが、登校しても次々押し寄せる挨拶ラッシュに揉まれるだけだ。俺とアリエスはすっかりそれを嫌って、いつもギリギリに登校している。


「メルト、こっちへ」


 アリエスが化粧台へメルトを呼ぶと、椅子に座らせ仕事用に纏めてあった彼女の髪を解き、あれやこれやと髪をいじり始める。それも、ここ数日ですっかり馴染んだ光景だった。


「もう随分と艶が戻ってきたのね。とってもエキゾチックで素敵よ、メルトの黒髪」


 当初こそ嫉妬やら何やらで衝突(あくまでアリエスが一方的に)していた二人だが、俺のためにあのメイド長の厳しい試験をクリアしたと聞いた辺りからアリエスの態度が変わった。普段からもメルトが俺へ向ける忠誠は確かなものであるし、また彼女の持つ美しさと独特の雰囲気を気に入ったアリエスは、お人形へそうするように様々な服を着せ、髪を結う愉しみを覚えたようだった。

 その過程でメルトの高い知性や品の良さなどにも触れ、すっかり信用するようになった。

 こうして髪を弄っている姿は、双方の印象の違いはどうあれ、姉妹のような空気がある。元よりアリエスは甘えたがりで、メルトには包容力がある。こうなるのは時間の問題だったのだ。


 二人の麗しいやりとりを眺めながら俺は食後の時間を愉しんだ。

 紅茶の熱を吐息に混ぜて吐き出す。


 入学式からしばらく、俺は表面上ハイリアとしての顔を取り繕いながら、やはり消沈する自分を抑えられなかった。

 支えてくれたのがメルトで、アリエスだ。

 二人にいつまでも心配をかける訳にはいくまいと、俺も徐々に気持ちへ整理をつけた。


「あぁ、そうだ」

 そろそろ時間だった。

「今日は小隊の訓練がある。遅くなるから、メルトはアリエスについて戻ってくれ」

 小隊とは言ってしまえばクラブ活動に近い。


「あ、お兄様の……一番隊の?」


 隊番号は総合実技訓練、つまりは学内公式試合の結果によって割り振られる。数字の小さい順から高い成績を修めていて、学園トップの実力者であるハイリアの小隊は入学二年目にして一番を維持し続けていた。


「私も見学に行ってよろしいでしょうか……」

「前にも言っただろう。お前にはまだ早い」

「お兄様ぁ……」


 こればかりは譲れない。

 小隊としての活動を始めれば訓練室や授業の融通などを受けられる他、規模の大きな隊ともなれば数多くの卒業生らが支援もしてくれるし、純粋な部隊員の他に雑用目的の在籍者も居る。過度に使用人を連れ歩かない様クギを刺されている貴族からすれば、学園内で使える便利な人手でもあるし、雑用を引き受ける平民も貴族の庇護を受けられ、その上賃金まで与えられる。

 学園でより良い環境を得ようとするなら、小隊への所属は必須と言える。


 ふくれて悲しそうにするアリエスの頭を撫でる。シルクよりも艶やかで柔らかな髪を手で梳いていると、とても心地が良い。


「総合実技訓練では厳重な安全管理が成されているが、やっぱり死亡事故もあるんだ。お前は無理に魔術の腕を磨かなくともいいし、まだ入学して日も浅い。今月辺りから各小隊が動き出して公式試合を見る場面も増えるだろう。しっかりとソレを見極めてからでも遅くはないさ」


「お兄様と一緒に居たいのです」

「うっ……そうか。うん、まあ見学くらいな――」

「ハイリア様」


 と、アリエスの甘えに心が揺れた俺にメルトが注意を促してくれる。助かった。今のはかなり危なかったからな。我が妹ながらなんという強烈なおねだりをしてくるのだ、全く以って油断ならない。


「駄目だ駄目だ。別に既存の小隊でなければならんという規則もない。いっそ仲の良いメンツを集めて、俺のように自力で作るというのも悪くないぞ。新年度前に隊が整理された後でもあるし、枠は空いているからな。さ、そろそろ行かないと遅刻だ」


「お兄様とメルトの馬鹿ぁっ!」


 話を打ち切られて不満顔だったアリエスが、俺達へ向けて「イー!」をする。それから、はしたなくも走って部屋を飛び出していった。


 妹の「イー!」顔を堪能した俺は満足気にメルトへ声を掛けた。

「やはり俺の妹は天使のように可愛いな」

「……同意は致しますが、少しはお控え下さい」


 そんな訳でのんびりと屋敷を出て、結局馬車の中で俺たちを待つしか無かったアリエスの恥ずかしそうな顔を改めて堪能した俺は、メルトから厳しめのお言葉をいただいたのだった。


   ※  ※  ※


 一日の基礎学習や訓練を終えて、俺は自分の小隊が所有する訓練室前へやって来ていた。

 俺に気付いた見張りの二人が扉を左右へ引く。重々しい音を立てて扉が開くのを待ち、軽く礼を言ってそのまま中へ。背後で扉が閉じられた。


 一斉に声が掛かる。

 今年入ったばかりの下級生は当然としても、上級生でさえ俺には最敬礼を欠かさない。年功序列という概念はあっても、それを覆って余りあるほどの家格と実力をハイリア=ロード=ウィンダーベルは持っている。

 自ら小隊を新設し、それをたった一年で学園トップの地位へ押し上げたのだから当然だ。


 俺は軽く手を上げて続けるように示すと、荷物と上着をそれぞれ雑用の女生徒へ預けて訓練室に設置された椅子へ腰掛ける。

 先客が居た。

 飄々とした様子の金髪の青年。

 彼だけはハイリア相手に礼儀を放り捨てる。


「あら、今日はメルトちゃん居ないの?」

「遅くなるから妹へ付けて帰らせた」

「なぁんだよぉっ、メルトちゃんに冷たくあしらわれる事だけを糧に今日の授業を頑張ったのにさあっ」


 黙っていろマゾヒスト。

 とは流石に言わず、俺はむっつり黙りこむ。


「妹さん……アリエスちゃんだっけ。彼女誘っといてくれた?」

「言っただろう。妹を小隊に入れるつもりはない」

「なんだよ過保護だなぁ。『盾』の上位能力を持つ俺を部隊へ加えれば、そうそう死んだりなんてしないって言っただろ。必要なんだよ、腕の良い『弓』の術者がさぁ。お前、妹さん、俺の三段構えになったらもう最強だぜ?」

「ビジット」


 付き合いの長い幼馴染の先輩を、俺は昔からそう呼び捨てていた。


「アリエスにはいい加減、兄離れして貰わないと困る。もう年頃なんだ、嫁入りの準備は必要だろう」


「妹のパンツ選んでる奴の言葉じゃねえな」

「なぜそれを知っている!?」


「……俺は今、自分の冗談に食いついたお前に激しく動揺してるぞ」

「くっ!」


 そうだ。昔から、ビジットにはよく口で言い負かされてきた。

 頭の回転も実際は彼のほうがずっと優れている。いい加減な性格さえ直せば、彼が学園トップであってもおかしくはないというのに。

 まあ、流石の彼も履かせていることまでは気づくまい。ふふふ。今朝の「イー!」顔を思い出して幸福に浸る。


「その笑顔は気持ち悪いぜ、おにいちゃん……」

「黙っていろ」

「なんでこんなのがいいのかねぇ、メルトちゃんも他の女達も」


 そんなこと俺が知るか。


「ほら、お前が上着を持たせた子、見てみろよ。丁寧に折りたたんじゃってまあ、胸に抱えてずっと立ってるぜ? あれもう、お前が帰るまで手放す気ないぜ?」


 そ、そうか。うん。


「モテる癖に反応は初心なんだからハイリアちゃんってば」

「気持ち悪いからそのオネエ口調は止めろ」


「てか、もうヤりまくりだろ? どうだよメルトちゃんの具合は」

「俺とメルトはただの主従だ。お前の勘ぐるような事はない」


「うっそだあ。あんな美人俺だったら放っておかないって」

「そんなことよりもだ」


 強く言って、話を打ち切らせる。

 ビジットを放っておけばいくらでも下劣な会話が続く。放蕩貴族らしい手の早さで、入学式から一ヶ月しか経っていないにも係わらず二度に渡る痴話喧嘩を起こした話は、今や全校生徒の知る所だ。


「スカウトの話はどうなっている」

「あぁ、お前の言ってた一年な。俺が直接誘ってみたんだが、どうも反応が鈍くてな。すまん、手篭めに出来なかった」

 していたら流石に殴っていた所だ。


 そうか。やはり引き込むのは難しかったか。

 彼女にとっては悪くない話だったろうに、妙な所で頑固だからなアイツは。

「……なんか、分かってて頼んだのか、お前」

「ん?」

「えーっと、それとだ。頼まれてた通りに新規隊員の能力評価を作っておいたよ。これはさっきお前の上着を抱えてた子が作った。あの子、魔術の腕は微妙だけどこういうの得意みたいだから、覚えといてやりな」


 手を振るビジットに気付いて、俺の上着を抱えた女生徒が驚いて赤くなる。

 目礼し、書類を受け取って目を通していった。白染めされた高級紙を惜しげも無く使っているというのは、流石大貴族と言うしか無い。


「どうよ、御眼鏡に適う子は居るかね?」

「とりあえずは五人」

「よし。おいっ、誰かこの五人呼んで本隊の訓練に加えろ」


 素早く反応した雑用班が訓練室を飛び出していった。


 総合実技訓練では各隊から選出された人員が小隊規模で試合を行うから、学園創立当初よりそう呼ばれているものの、今となっては大きい所で大隊規模にもなる。

 当然ながら学園一位の小隊である我が一番隊も、人員は相当数に及ぶ。

 実戦でもままあるそうだが、戦う者よりそれに付き添う貴族らの使用人らの方が数が多いとか……それで兵糧食い潰して撤退なんて馬鹿げた話も過去にあった程だ。今では人数制限が一般化しているものの、やはり組織が動くにはある程度後方で動く人員と、予備の戦力は欠かせない。


 大きな部分は俺が方針を定めているが、細かい部分を調整してくれているのは、なんだかんだでこの男、副隊長であるビジット=ハイリヤークだ。


「にしても、全員『剣』ブランディッシュソードか。それも速度に優れたメンツばっかりだ。新しい隊形といい、どうしたんだイキナリ」

「試したいことがあると言っただろ」


 資料の最後にあった紙を二人の間に置く。

 今話していた隊形についての考察と報告書だ。ビジットの視線もそちらへ向いた。


 一つは俺が提案した速攻重視のアローヘッド。

 『騎士』(インペリアルナイト)により高い速度と防御力を持つ俺を先頭とし、その名の通り矢の形で進む隊形だ。左右のやや下がった位置に『剣』を二人、俺の後ろに『弓』(ストライクアロー)を一人。

 研究班からの報告はリスクの高さを訴えていた。


 1.アローヘッド

       『剣』

 『騎士』『弓』

       『剣』    ←進行方向


「正直コレは、俺もおすすめしない。お前の力量は知ってるが、『騎士』の属性は『弓』に弱い。高速で移動を続ける速攻目的なら、余計に罠で潰される危険があるんだ。開幕速攻を見抜かれたら一発で総崩れになる」


 当然ながら、この隊形では『盾』の術者であるビジットは外される。だが、彼はそんなことを気にも留めず、素直な評価を淡々と述べた。


「まあハマれば耐え抜ける小隊がまず居ないのも確かだ。『盾』をぶち抜けるお前が先頭な上、速度に優れた『剣』二人は状況次第で遊撃に用いてもいい。攻撃力と速度なら確かに最強。が、ギャンブル要素が絡むことは覚えといてくれ」

 俺の頷きを待って、ビジットが次の隊形へ話を進める。

「んで、ウチの連中が考案したのがコレだ」


 2.ハンドウォール

 『剣』

     『剣』

   『騎士』

       『弓』  ←進行方向


「かなり変則隊形ではあるが、主力のお前を守りつつ前線に配置し、一定の速度を維持出来る隊形だ。一番の利点は、先行する『剣』の攻撃に対する負担軽減かな。接敵時に手の甲側へ弾けば続く二列目の『剣』が二の太刀を送り、場合によっては置き去りに出来る。手の平側へ来るなら、それこそ手で握るように相手を包んで潰せる。正面への警戒、罠の回避と先頭は一番負担が多いからな。接敵時の行動が凌ぐだけでいいってんなら気も楽だ。


 また特徴として、位置関係を弄ること無く有機的な二人分隊になれる点もある。『剣』二人と、お前と『弓』。あるいは先頭の『剣』とお前、二列目の『剣』と『弓』って具合にな。待ち伏せなんかで分断された場合も、その組み合わせでの動きを訓練しておけば対応速度が上がる。お前の要望である速攻と、いざという時の守りを両立した隊形だな。まあ、横に広がる分、一個目より遅くなる上、正面からは魔術光を目視観測され易い欠点はある」


 更に言えば、左右への警戒担当がはっきり分かれることか。味方の姿が視界を遮ることによって、片側のみしか見渡せない。罠や奇襲を見抜く目を持った『弓』の視界が最も悪いというのは多少気になる。


「その辺は経験豊富なのを選出すればいい。『剣』の術者は多いからな、選り取りみどりだ」

 聞いてみれば、予想していたのかあっさり返事が戻ってくる。

「仮に敵の斥候一人と遭遇した場合は、先頭の『剣』を単独で分離させて残りを突破させる、こういう手もあるな」


 3.ストライクワン


 『剣』  『騎士』『弓』


「見ての通り縦列隊形だが、『剣』をやや先行させる。分かると思うが、お前を温存し、また新たな前衛が来たらコイツに任せる為でもある。当然これを想定するなら『剣』二人は速度以上に負けない戦い方、逃がさない立ち回りを鍛えあげる。その上でお前を敵後列へ叩き込み、『盾』や『弓』を始末した上で反転、残る前衛を挟撃して潰す訳だ」

 ただの縦列では正面からの縦射で全滅もありうる。だからこその先行だが、初手で先頭を囲んで来た場合は援護が一手遅れてしまう。


 本来ならそれをカバーする為に『弓』を配置しているのだが、


「ま、どっちにしろウチに『弓』の優れた術者は居ないってのが問題だ」


 そうなのだ。まだ若い小隊というのもあって、ほとんどが生え抜きの連中ばかり。

 術者の多い『剣』はそれなりなメンツが居るものの、俺やビジットを含めた小隊を指揮出来る者となると相当に難しい。ただ搦め手や射撃が上手いだけの『弓』ではいけない。高い指揮能力と判断力を兼ね揃えた、嫌らしいくらいに戦場を見極められる人間。


 なによりそれを求める理由は、最大火力である俺に戦いへ全力を注がせる為だ。これまでは最前線で指揮を執りながら戦っていたから、全力を発揮できたことは滅多にない。ビジットは最低速度の『盾』で、その特異性から指揮者には向かない。


 なまじ二人の上位能力に支えられた小隊というだけあって、優れた術者が育つ機会を得られなかったというのもある。当然スカウトには力を入れているが、この弱点をしっかり把握している他小隊が結託して妨害する為、『弓』の術者で腕の確かな生徒は今年一人も加入がなかった。


「まーあれだ。いっそお前以外を全員『剣』にしちまうのが早い。速攻も速攻。情報戦でバレた時はご臨終。ギャンブルっぽくて俺は嫌いじゃない」

 言ってビジットが提示した隊形を俺は見た。


 4.ダイヤモンド

   『剣』

 『剣』 『騎士』

   『剣』


「作戦名、気合いで頑張る」

 ため息が出た。

「基礎能力が相手を上回れば安定して勝てなくもない」


 本来なら速度重視になると『剣』か『弓』だけが選出される。だがそれでは相手小隊の『盾』を突破できずジリ貧となってしまう訳だ。

 『盾』の術者は希少ではあるが、上位小隊なら必ず複数名保有している。

 多くの場合は機動力の低い『槍』をいかに敵の『盾』の前まで連れてくるかが戦いの要となり、『剣』や『弓』が最前線でそれを阻む構図となる。だからこそ余計に、俺の持つ『騎士』の属性は、学園での公式試合において反則的な性能を誇るのだ。

 速攻などという発想自体、現在のデュッセルドルフ魔術学園にはない。


 今のトレンドは『盾』を中心とした待ちの戦術で、ゆっくりとした試合運びが当然のものとなっている。これは実際の軍隊でも同じだ。

 上位能力に覚醒する者など、数十万人に一人という割合しか居ないのだから。

 そしてだからこそ、上位能力者は重宝される。一人存在するだけで戦術の幅が大きく広がる。それを二人も保有するハイリアの小隊が、瞬く間に一番隊へ駆け上がったというのも頷ける。


 だが今回は、敢えてビジットを外した速攻を考案した。

 多くの者は誤解しているだろう。おそらくは、この閉塞した現在の戦術理論を、ハイリア=ロード=ウィンダーベルという天才は破壊しようとしているのだと。


 残念ながらそんなことに興味はない。

 俺の目的は、この『幻影緋弾のカウボーイ』の世界に生まれ落ちた日から決まっている。


 固有ルート以外では必ず死亡し、自己ルートでさえ死ぬか、孤独に生き続けるしかないという、あまりにも不幸な扱いを受けた裏ヒロイン、フロエ=ノル=アイラの救済だ。

 そしてこの速攻隊形は、彼女のルートへと分岐させる為に考案したもの。


 ゲーム中では明確な日にちの表示が無かった為に、発生する日時までは分からないものの、じきに俺はあのジーク=ノートンと戦うことになる。

 序盤最大の見せ場であり、聞く所によると体験版のラストシーンとなるこの戦いは、メインヒロインを始めとする三名の√では必ずジークが勝利して終わっている。

 だが裏ルートとも言われるフロエルートでは、父からの遺言状を渡したいという故郷からの手紙を受けて、帰省イベントが発生する。そこで、ある事情から体調を崩していたフロエが崖から転落しそうになり、それを助けたジークが負傷してしまうのだ。

 既にハイリアとの公式試合が決まっていたことで、ジークは負傷を押して戦いに挑み、作中では初めて敗北する。ハイリアから受けた傷と、元々あった傷の治療とで療養を余儀なくされたジークは、遺言状から受けた話や学園へ来た目的を一度脇へ置いて、幼馴染であるフロエの甲斐甲斐しい介護を受けるのだ。


 つまり、俺は敗北フラグを立てたジークに勝たなければならない。

 帰省イベントの発生をこちらで操作するのは難しいが、最悪の場合は偽の手紙で誘い出す手もあると俺は思っている。故郷の人間しか知らないような話も俺なら知っているし、ジークからの話を受ければ、村長も遺言状を渡すだろう。


 問題なのは、あの『銃剣』(ガンソード)の魔術をいかに打ち破るかだ。

 原作通りに戦いを進めるのが最も安全だが、生憎と原作はジーク視点で、ハイリアがどのような戦術で彼を孤立させ、正面対決へ持ち込んだかは全くの不明なのだ。ジークの不調により周りが見えていなかったというのも大きい。

 だから俺は、より確実な対策を講じることにした。


 『剣』と『弓』の二重属性を持つ『銃剣』。

 その最大のウィークポイントは、速度と近接戦闘にある。あの短剣二振りでは、しっかりと間合いを見極めてくる『剣』の術士に対応し切れない。また『剣』を基板としながら『剣』の術者の中ではもっとも遅いという点も重要だ。間合いを詰めようにも詰め切れず、接近戦では銃の扱いも難しくなり、逃げようにも逃げられない。

 詰まる所、彼が最も苦手とするのは、同じ属性である『剣』の術者なのだ。


 だからこそ速攻を重視した隊形で、彼があの小賢しい罠を設置し始めるより先に叩き潰したい。俺が先頭に立つのは、作品の中でジークの手管を何度も目にしているからだ。


 おそらく俺がビジットに頼んでスカウトしようとしていた人物、メインヒロインのリース=アトラもジークの結成した小隊に入る。

 だが現時点の彼女なら、ウチの小隊員で十分に抑え込める筈だ。

 最大の懸念は人数合わせで特別出場してくるフロエだ。力を隠している状態ならともかく、彼女を抑えない内にジークを追い詰めれば、最悪こっそり援護してくる可能性がある。正直そうなると本気で勝てない。

 仮にこの小隊員全員で掛かったとしても、本気になったフロエには敵わないのだから。


「四つ目は置いておくとして、今日の内に適性ある者を選出し、明日から訓練に組み込みたい。出来そうか?」

「明日はメルトちゃん連れてきてくれるなら考える」

「分かった……明日は連れてくる」

「いやったー!」


 全く、どこまで本気なんだかこの男は。

 俺の付き人ということで周囲の目は他の奴隷とは大きく異るものの、こうも表立って好感を訴える人間はビジットくらいのものだ。


「俺、この調整が終わったら、メルトちゃんに肩揉んでもらうんだ」

「よく言った。死ぬ気で働け」


 目上相手にどうかと思ったが、想像するビジットの表情があまりにも鬱陶しかったので我慢出来なかった。幼馴染の先輩は肩を竦めて笑うと、すぐに何名かを呼びつけて再調整に取り掛かった。

 その振る舞いは、学生でありながら既に参謀としての風格がある。

 性格に難があるものの、頼れる男。というのが、俺というより、ハイリアが持っていた彼への評価だ。


 それからしばらく、俺はビジットが寄越した三十名ほどの『剣』の術者に対し訓練を付けた。

 自分の力量を確認するものでもあり、彼らの中から、あのジーク=ノートンに対抗しうる適性を持った人間を探し出す為でもある。

 選出された本隊の者だけでは見付からず、結局別で訓練している者達や、本来戦いに加わらない研究班や雑用班にまで手を付けた。皆、能力が低いというだけで、この学園に居る以上魔術の基礎訓練は受けている。入学から一月も経った今、この学園に魔術を扱えない者は居ない。

 一対多数で長時間に渡り戦い続けていた俺は、ようやく一人の女生徒に目をつけた。今年入ったばかりの一年生で、最初にビジットから渡された資料を纏めてくれた子だ。


「は、はいっ、ががががんばりましゅっ!」


 噛みっ噛みで顔を真っ赤にしながら訴えた少女に、他の者はなんで選ばれたのかも分かっていないようだった。

 能力的には最低ランク。ただ雑用には向いているようで、細々とした作業が早く、それを買われて平民の新入生ながらこの小隊への編入を許可された人物だ。腕は素人同然と言っていい。『剣』魔術の大前提である速度を活かした戦い方も、『弓』の斉射を掻い潜って討ち果たすことさえ出来ない。

 だが、彼女こそ、俺以上にあのジークへの対抗手段となる可能性があった。


 早速基礎訓練へ組み込んで鍛え上げようとしていた所へ、血相を変えた教師が飛び込んできた。基本的に小隊運営には不干渉の彼らが訓練室へ顔を出すのは珍しい。なにより、不穏な空気を纏っていた。


「ウィンダーベル君! 君の妹さんが――」


 奴隷狩りに巻き込まれた。

 おそらくはフーリア人であるメルトを狙ったものに。


 俺はビジットにその場を任せ、一目散に二人が搬送された施療院へ向かった。


 最悪の予感が俺を包む。

 この展開は知っている。


 多少経緯が違うものの、俺が最も恐れていたイベントが発生してしまったんだ。


   ※  ※  ※


 震える指先が引き戸の窪みに触れた。

 ここはウィンダーベル家が所有する、学園近郊では最も大きな施療院だ。俺、というよりアリエスの在学中に何かがあってはと、父上が特別に優秀な施療士を常駐させている。


 部屋は一番奥の、最も大きな個室。

 そこらの豪邸並の家具を取り揃え、泊まり込みで看病も出来るという特別室だった。


「っ――!」


 怖れがあった。

 この扉を開ければ、その時点で何もかもが決定してしまうような気がしている。


 この病室に、アリエスが……。


 しかし、確認しなければならない。

 俺が逃げた所で事実はひっくり返らない。仮にコレがパソコン上に表示されたゲーム画面であったなら、俺は死に物狂いでリセットボタンを連打し、ゲームを最初から起動させていたに違いない。

 だが無理だ。

 この『幻影緋弾のカウボーイ』の世界に入り込んでしまった今、セーブ画面もロード画面も呼び出せない。そもそも俺、ハイリア=ロード=ウィンダーベルはこの物語の主人公ではないのだから。そんな特権は主人公であるジーク=ノートンしか持っていないのだ。


 逃げる訳にはいかない。


 意を決し、扉をそっと開けた。

 病室の景色が目に飛び込んでくる。

 ベッドの上、ギブスで固められた右足を天井から吊り、胸部、両腕とこれでもかというほどに包帯が巻かれた人物が居る。顔の包帯は片目を塞ぎ、ほとんどミイラのような姿だった。


 そんな『彼』へ、


「はい、あーん」


 心なしか頬を赤くした無傷のアリエスが、ウサギさん林檎を差し出している。

 その瞳は睨み付けるようでもあり、悔しそうでもあり。


「あーん、んむんむ」


 食べた。

 ベッドの上で包帯まみれになった彼が、男が、あの野郎が、


「あ……アリエス様」


 ここで俺に気付いた、これまた無傷のメルトがアリエスへ声を掛ける。

「おおおおおおお兄様っ!?」

 途端に悲鳴が上がった。飛び散った林檎や食器をしれっと空中で回収したメルトがそれらを片付ける間、アリエスは完全に固まっていた。

「あれ? よぉ、こないだの」

 ベッドのミイラ男が気楽に手を上げてくる。


「キ……キサマァァァ…………!」


 俺は問答無用でミイラ男に掴みかかった。包帯まみれの身体を容赦なく引き寄せ、本気の殺意を以って睨みつける。

 驚くアリエスは別として、メルトでさえ怪我人に対する俺の暴挙を止めようとしない。


 当然だ。

 コレは暴走したアリエスが次から次へと施療士にやらせていった処置であり、このミイラ男はかすり傷しか負っていないのだから。


 さっきのあーん、だって知っている。

 口八丁で言いくるめ、高飛車な大貴族をおちょくって()()()をさせる、そういうシーンだった。

 だからアリエスのほっぺがあかくなってたってべつにほれてるとかそういうんじゃないだよ。


 違う。

 絶対に違うんだが、


「おいおい、いきなりご挨拶じゃねえか。こないだのこと、怒ってんの?」


 尚も軽薄なことを言うミイラ男――ジーク=ノートンは、包帯まみれの両手を挙げて降参を表明する。それでも怒りの収まらない俺はいっそこのまま窓から放り投げてやろうかと本気で考えていた。

 しかし、


「お止め下さい、お兄様っ!」


 俺とジークを引き剥がすように、アリエスが割って入ってくる。

 最愛の妹は、天使のような妹は、あくまで落ち着いた表情で俺に説明した。


「私……この方に助けて頂いたんです。ですから、乱暴はお止め下さい」


「ぁ……ァァァ…………」


 後ずさる俺は、その後の瞬間をしっかりと目にした。

 乱暴な扱いを受けたジークは頭を抑えて包帯を取り始め、そんな彼をこっそりと覗き見たアリエスが、胸の奥に刺さった抜けない棘を想い、ほっとため息を落としたのを。


 階級社会の肯定者でありながら、本質的には差別意識など皆無で、万民の声を粒さに受け取ることの出来る彼女だからこそ、現状の悪に対する強烈な反抗者であるジークを無視出来なくなっていく。

 その萌芽。

 興味。

 あるいは敵意。

 故にこそ繋がる一つの未来が頭を過ぎる。


 ジークに寄り添い、甘い表情を浮か、うかうかうかべる、ア、アア、あああああっ、アリエ――――ああああああ……っ。


「ァァァァ……!」


 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?


「っ、お兄様!?」


 妹の呼ぶ声にも答えられず病室を飛び出した。


 どこをどう辿ったのかも分からないまま走り抜け、施療院を飛び出し街中を駆け巡り、目の前に現れた噴水の水へ顔を突っ込んで叫ぶ。


「アリエスルートに入っちまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああッッッ!! ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――!!」


 ぷしゃー、と噴水が勢い良く水を吐き出した。

 叫びは全て水に呑まれ、排水口の奥へ消えていく。その薄暗い穴と同じ目を俺は今しているだろう。


 いっそそのまま死んでしまいたくなったが、背後から俺の身を引く者が居た。

 余程慌てていたのか、力任せな勢いをそのまま受けて背中から転がる。目を擦り、視界を取り戻した俺に覆いかぶさる姿が見えた。


「だ、大丈夫ですか!?」

「メル、ト……?」


 浅黒い肌を見てそう思った。

 だが違った。メルトの髪は黒で、この人の髪は白だ。落ち着いた表情のメルトとは真逆に、彼女はどこか純朴で、可愛らしい顔つきをしている。


「落ち着いて呼吸を整えて。水を吐けるなら吐いてしまった方が楽。ゆっくり、ゆっくりと息を落ち着かせて」

「っ、君……は……」

「えっ? あっ、ええと……」


 彼女も俺を見て驚いたようだった。

 陽の沈みかけた薄暗い公園の噴水に、まさか学園でトップの成績を持つイケメンキャラが顔を突っ込んで溺れかけていたなどと誰が思う。


 こうして顔を合わせたのは二度。

 細かく分ければ三度目になるか。


 顔が急に熱くなって手で覆い隠す。水浸しになった髪をかき揚げ、そして、なんとか言葉を絞り出した。


「ハ、ハイリア=ロード=……ウィンダー、ベルだ。初め、まして、と言うべきか」

「私は、ええと……フロエ。フロエ=ノル=アイラといい、申し……ます? 初め、まして……」


 形式張った受け答えに慣れていない、田舎育ちの少女らしい言葉遣い。

 俺がこの世界で誰よりも助けたいと願う人が目の前に居た。


 夕陽が遠くへ沈んでいく。

 雲ひとつ無い空。


 今夜は、綺麗な月が見えそうだった。





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