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そして捧げる月の夜に――  作者: あわき尊継
第五章(上)

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   ジン=コーリア


 それは、王城がティリアナの攻撃によって吹き飛ばされる少し前の出来事だ。


 最初はガラスが割れたような音がした。

 次に分厚い湖氷が割れ擦れるような、太く響く音へ。


 世界が割れるとそんな音がするのかと思った。


 こうして生きて、息を吸い、吐いている世界はきっと、湖の氷なんかとは比較にならないほどの厚さと重さがあるんだろう。そんな世界なんてものでさえ、一つの切っ掛けさえあれば割れるのだと、唐突に足元が揺らぐのを感じる。


 最初はあの無数の手が伸び始める前兆かと思った。けれど、音は少しして止まり、生まれた亀裂よりソレが現れた。


 細い細い枯れ枝が伸びていく。

 生き物というより植物に近い。

 なのに内部に流れているのは血液だ。

 そう感じたのは陽の光に枝が晒されて、血管のようなものが透けてみえたからか。

 鼓動の音を聞いた。確かに生きている。生きて血を巡らせている存在が現れようとしている。


「セイラム……」


 誰かが呟いた。

 俺かも知れない。


 口に馴染んだ名前だ。


 その名前はあまりにも有名で、物心付いた時には当たり前に知っていた。


 聖女様に祈りなさい。

 聖女様が見ていますよ。

 貴方の運命は聖女様が導いて下さいます。


 良いか悪いかも考えなかった。

 父も、母も、どっちの祖父も祖母も、まあそれなりに敬虔な信者だったから、祈りの日には欠かさず教会へ出向いていた。

 俺も何かへ祈ること事態は当たり前のことと思っていたし、内容の善とか悪とか俗っぽいとか清廉だとかも関係無く、祈る行為そのものは良いものだと感じていたし、今でもそう変わっちゃいない。


 その聖女を相手取って戦うと言われた時、当たり前に俺は疑った。発言者がハイリアなのもあったから、そう自分を偽っているイレギュラーか何かかとか、教団が勝手に名乗らせているだけの小娘だとかという方向性で。

 けど本物だという。

 少なくとも数百年に渡って俺たちに魔術を使わせて、歴史を左右してきた存在だ。


 だったら、確かに俺たちはずっと導かれていたし、聖女は本物だった訳だ。


 ハイリアの理由については聞いた。

 多少は納得したし、目の当たりにもしていない本物の聖女とかいうふわっとした奴より、これまで命預け合って来たダチの方が優先だろうなと思ったんだ。


 けど今、改めて思う。


 これは本物だ。


 善とか悪とか俗っぽいとか清廉だとかも関係無く、ただ単純に自分たちの()なんだと納得した。

 あのデュッセンドルフで見た無数の腕を思えば今更なんだろうが、矛先がこっちへ向いてようやく感じ取れたんだ。


 勝てない。


 子どもが大人に喧嘩吹っ掛けるとかそういう程度の話じゃない。


 同じ土俵に立つことさえ出来ない、歴然たる差がアレと俺にはある。


 そしてアレは、セイラムは、俺たちにとってその名がどういう価値を持って居ようが、容易く俺たちを踏み潰していく。

 今も尚交戦を続ける『槍』のアーノルドとか、『弓』のティリアナとか、単純な力で対抗できる相手とは訳が違う。圧倒という言葉すら生温い決定的な溝があった。


 手指が震えていた。

 強く握って、一つの顔を思い浮かべる。

 腹の奥に力を込めて、今はただ向き合う。


 枯れ枝は天高く伸びていき、それは翼のように広げられた。


 視界が揺らぐ。

 酩酊したような、早朝にふっと意識を飛ばすような感覚。


 目を細めた次の瞬間には、枯れ枝は無数の歯車が重なり合った巨大な翼に変わっていた。歯車が擦れ合う、不快感を催す音が風に乗って聞こえてくる。錆びて、歪んで、回るはずのないものを無理矢理に回して、壊れながら、再生しながら、そうして空を覆いつくしていった。


 まるで今の世界の不安定さを現しているように、本当に限界寸前のところで留まっているとでも言うように。


 やがて翼は文字通り、空を覆った。


 王城よりも、神樹よりも、この平原よりも大きく、歯車の翼は広がっていく。


 際限の無い拡張には心底震えた。

 なにせ相手は聖書に記される本物のセイラムなんだ。

 力の強大さ、何が出来るか、何をしてくる可能性があるかを事前に知らされ、対策を練っては来た。

 だが、天を埋め尽くすほどに伸びる翼を見て、恐怖を覚えるのは生物としての本能だろう。

 こんなにも凄まじい存在を相手に俺たちは戦えるのかと、堪えた恐怖がまた湧き上がって来る。


 やがて伸び続けた翼がある一線で止まった。


 伸びるのを止めたんじゃない。

 伸びていこうとして阻まれた。

 見えない壁があるように動きを止め、留まる。


 今日まで散々考え続けてきた相手。だからか、思考が固まる中でもこぼれ落ちるようにして言葉が出た。


「魔術の……効果範囲」


 そうだ。

 再臨したセイラムですらその制約を破れない。

 魔術の限定化は彼女が未来を操る上で核となるほど重要な要素で、迂闊に解除すればこれまで操作した歴史ごと解けてしまう可能性も在るという。


 また現状は完全な復活とは呼べず、この徐々に広がっていく効果範囲が世界を埋め尽くした時に、本当の意味で世界は聖女の支配化に落ちる。


 呼吸を整える。

 荒くなってなんかいない。

 むしろ縮こまっていた。

 息をして、頭の中に送り込め。


 見れば、翼の根元に真っ白な服を着た少女が居る。

 白のワンピースだ。生地は絹のようにも見えるけど、風になびく様からすると少しだけ固い。簡素な作りで飾り気は無く、そんな服を着ている少女の手足を見れば、痩せ細っていて弱々しい。魔術なんて使わずともこの手でへし折れそうなほどだ。時折姿がブレるのは、完全な状態で表へ出てきていない証拠か。

 金色の髪をした少女。流石にここからじゃ顔まではよく見えないが。


 あれがセイラム。


 俺たちの敵だ。

 そしてセイラムにとって、俺たちは敵なのだ。

 互いを敵として認識し、戦場に立っている。


 もう逃げる手は無い。


 そう自覚した時、翼で見通しの悪くなっていた王城を巨大な一矢が吹き飛ばした。


    ※   ※   ※


   ビジット=ハイリヤーク


 以前から近衛兵団を処理しようという意見はあったらしい。

 なにせ連中は王の身辺警護という名前を持ちながら、名誉も品格もあったもんじゃないような振る舞いを平然とやってのける。

 そいつは宰相の時代からの問題ではあったが、ルリカが王となってからは殊更に問題視されるようになった。


 敢えて、連中は中央の権力者たちの弱みは握らなかったんだと思う。


 でもだからこそ、近衛兵団を危険視する中からは適当な戦場で処理してしまえという過激な意見が絶えなかった。


 連中の忠誠については内乱で証明されている。


 正しい王を戴く。

 その為に団長の命すら捧げて見せた。

 昨今力を付けてきている北方の領主たちも、その手勢たちからも奴らは信用されている。

 共に戦い、共に成功してきた仲間だ。


 当初はなんとか奴らを落ち着かせ、本来の近衛に戻そうとする動きは多かった。


 結局、駄目だったみたいだけどな。


 平穏が戻っていれば違ったのかもしれない。

 のんべんだらりとしていれば、近衛兵団の内部でも変化があり、それなりに動けただろうとも思う。


 だが、争乱は続いた。


 ルリカの治世が始まると同時にセイラムへの警戒、フィラントの勃興、西部戦場の沈静化や北方領主らの台頭による内部での権力争い、更には国際連合の設立なんてものまで始めたせいで周辺国を片っ端から巻き込んだ。


 連中は動いた。詳細は連中自身しか追い切れていないんだろうと思えるほど、裏工作に近衛兵団は動き回っていた。

 実際、ウィンダーベル家の当主オラントですら把握出来なかったって話だ。これは嘘の可能性もあるんだが。


 問題はその行動には何一つホルノス中枢からの指示がなく、勝手に動いているってことだ。


 有能だ。

 結果を出してくれる。

 だが、汚い手も使う。

 時に相手が明確に近衛兵団を名指しして非難、暴露、共倒れすら狙った行動を取ることもある。


 正直言って滅茶苦茶だ。


 連中は戦場と平時の政治との区別も付いていないんじゃないかと思えるほどに。


 マグナスの時代はもうちょっとはマシに立ち回っていた筈だ。


 当時を知る奴らは口を揃えて評する。

 近衛兵団は暴走している、と。

 同時に、彼らは自分たちが時代にそぐわないことを知り、自ら罪を背負う形で消えようとしているんじゃないか、と。


 皆がセイラムの出現に目を奪われ、呆気に取られている中、確実に連中を吹き飛ばす一矢が放たれていた。


「チッ」


 つい舌打ちが出る。


 ルリカがこちらを見た。


 腹立たしい光景だ。

 かつて俺の親父をぶち殺し、内乱で散々手古摺らせてくれた、仇敵と呼んでもいい相手が自滅の道を突っ走ってやがる。


 どうせくたばるなら、俺の手でくたばれってんだよ。


「ルリカ、連中は……」


 言いかけて、止める。

 俺は立場上内情には踏み込めていないが、こうして行かせたってことは、それが王の決断なんだろう。


 こいつは最大限あの馬鹿共をなんとかしようとしてきた。

 時に声を掛け、居場所を作り、周囲の声を抑えてきた。


 だが結局連中が全てを無視して突っ走りやがった。


 裏切りと呼んでも差し支えない。


 時を経る毎に増大する敵勢力を思えば、まともな手段で助けに入れるとは思えない。


 やれるとすれば、連中と同じだけ無謀で馬鹿で、周囲のことなんざ考えない最低のクソ野郎くらいだ。


 どうしても連中のことにはもやもやする。

 冷静になれていないのは問題だ。

 俺は戦いの流れについては外様だが、敵に突き崩された時は『王冠』を展開して味方の後退を助ける役割を負ってもいる。

 状況を読み違えれば被害が数倍にも数十倍にもなる。


「大丈夫」


 翼を広げた後はじっと佇むだけのセイラムを睨み付けていたら、ルリカがちょっとだけ得意気に笑った。


 珍しい。こんな顔、昔に見たきりだ。


「あの人たちと同じだけ無茶をする人が、自分から名乗り出てくれたからね」


 頭を掻いて、それから気付いた。


「あ」

「絶対の保証じゃない。だけどやっぱり、同じ種類の人間じゃないと目を冷ますことは出来ないんだと思う。気付かれないように根回しするのが結構大変だったけどね」

「そいつは凄い。諜報合戦で連中を出し抜くなんざ、そうそう出来ることじゃないぜ」


 言うと、脇で静かにしていたダリフが皮肉げに口元を歪めたのを見て納得する。


 内乱の時は裏切りもあって後手に回る所もあっただろうが、なるほど離反していた宰相の手駒が戻ったことで上手くいったのか。


「にしても、それなら突っ走る前に止めてやれば良かったんじゃないのか」


「一度突っ走ってからじゃないと止まらないよ。兄さん、近衛兵団のことになると妙に考えが弱気になるよね」


 うるせいやい。


「彼らは私の精鋭なんだから、そうそう簡単に手放したりはしないよ」


 『王冠』を手に入れたルリカは、前よりちょっとだけ我侭で、欲しがりだ。


 良いか悪いかなんて関係ない。


 王とはどういうものであるか、こいつはもう決めたんだ。


「ま、帰ってきたらぼやきには付き合ってもらうけど」

「そいつはご愁傷様だな」


 我侭になった最近のルリカは愚痴っぽいんだ。


    ※   ※   ※


   ベイル=ランディバート


 どうやら、まだ生きているらしい。

 耳鳴りがしてる。拙い状態だ。身体は痺れちゃいるが、経験から言うと少しすれば治る。問題はその後、痺れて分からなくなってる負傷が致命的なら、そこへの対処が遅れちまう。耳が効かないおかげで周囲の状況も分からず、状況への対応も上手く出来そうに無い。


 そこまで考えて、なんだ俺、まだ生きようとしてるんじゃねえかと気付いた。


 ため息をついた感覚がある。

 どっちが上か下かも分かんねーが、腑に落ちてくる。


 こいつは性分だ。


 どんだけキツい状況でも生き残ろうとする。

 成果を出すなんざ当たり前で、けどその為に自分の命を捨てるなんてこと、本当はらしくないんだ。

 最終的に勝てば良い。まだまだ過程の、出だしも出だしの状況での成功なんて頓着するべきことでもない。


 なのになんで無茶をした。


 初手で無理な突撃カマして潰れるなんて、精鋭としての振る舞いじゃあない。


 気付いた頃、ぶちりと耳の中で何かが繋がって、声が聞こえた。


「随分な有り様じゃねーか、近衛兵団」


 奇妙な声だ。

 もうとっくに俺たちじゃなくなった、二度とこんな場面で聞くことはないと思っていた奴のもんだ。


 そいつは裏切り者で、もう居ないはずの相手だが、色々あってこの戦場へは参加しているらしいとは聞いていた。


 適当に利用し尽くして捨ててやろうと思っていたのに、自分が先にくだばるとはな。


「まぁだ寝惚けてやがるのか。おいおい、俺の後釜の癖に情け無ぇことしてくれんじゃねえぞ」

「っ!?」


 つま先で頭を小突かれ、急激に自分の身体を取り戻していったような感覚があった。

 四肢がある。頭も残ってる。俺の血肉はまだ、ここに在る。


 遅れてずっと自分が目を瞑っていたことに気付いた。


 どおりで上も下も分からなくなってる訳だ。

 何も見えてないことにさえ気付いてなかった。


 視界は最初、太陽の強烈な光にぼやけた。

 瞼に力が入って手を翳そうとするが、どうにも肩が痛くて上手くいかない。


 一度目を瞑り、その後でようやく、光の中に居た男の姿が像を結んだ。


「…………テメエは」


 赤い髪が揺れる。

 長身で、近衛兵団じゃ細身の部類に入る人だったが、入団当初の手合わせで組み伏せられた時はまるで抵抗出来ないくらいの力があった。


 前副団長、トーリ=フェルノット。

 前団長、マグナス=ハーツバースが片腕として認め、数え切れないくらいの戦場で猛威を振るった近衛兵団の活躍を支えてきた参謀であり、凄腕の『剣』の術者だ。


 そして、俺たちの敵。


「いまはユーリな! おう、中身だけ先に逝っちまったかと思ったぜ!!」


 陽気な口調、軽薄で適当で、油断しまくってるようにしか見えないクソ野郎。

 普通、この手の奴は目の奥に何かを感じるもんだ。だがコイツは何も感じさせない。本当に軽薄な馬鹿野郎ってのもあるんだろうが、容易く奥を覗かせちゃくれねえ。マグナスの派手な立ち回りに隠れて実態すら掴めないのに、その曖昧な結果からしか実力を測れやしない。


 そんな野郎が、どういう訳か崩落を免れた王城の一部へ俺たちを運び込み、ウマそうに煙を吸って嗤ってやがる。


「助けたのか」

「あぁ、ホルノスには恩を売っておきたいしな」

「どうして……!!」


 苛立って壁をぶっ叩くが、いきなり崩れてきて本気で驚いた。

 やべぇ、崩落免れたっても崩れかけの場所じゃねえか!?


 ビビる俺を見下ろして、しゃがみこんだ野郎の吐き出す煙に顔を顰めるが、そんな俺以上に顔を歪めた前副団長がゲロみてえな声を出す。



「どうしてェエエエエエ?」



 唾が飛ぶ。

 この世の汚物を一点へ集めて三日三晩煮詰めたみたいな顔で野郎は嘔吐を続けた。


「弱ってる可ぅあ哀想な奴を救う方が効果あるからに決まってんだろうガぁ! なんだ昔の誼とか後輩だからとか、そんな生優しい理由とか期待しちゃったああああああ!? テメエらがそんな可愛げのある連中かよ!! つーか随分甘い手に引っ掛かってんのなっ!? いやぁ後ろからのんびり眺めてたけど全く気付かねえしさ、なんつーの、浸りきった阿呆共ってのはこんなに気の抜ける姿なんだなって、正直見捨てようかと悩んだくれぇだゾォッう!?」


 あんまりにもムカついたので全員で襲い掛かったが、


「温ィッつってんだろうが……!!」


 呆気無く叩き伏せられて背中を踏みつけられる。

 野郎に踏まれる趣味はねえんだ退けろクソが。


「お~、いい顔すんじゃねえかゾクゾクしちまうぜええ。――――それでいい。飢えた野犬みてえに吠えてろよ、テメエらはよ」


「抜けてった奴が好き勝手言ってんじゃねえ!!」


「んだよつれねーな! 捨てられた子犬みてーな顔しやがって。どうせよ、お前らあのハイリアとかいうガキにアテられて、アイツみてえに格好良く振舞おうって勘違いしちまったんだろ? これから先のホルノスに自分らは要らねえとか、後行く連中に花道用意してやろうとか、そんな柄ァにもねえこと考えてたんだろ? ッアー!! 恥ずかしい恥ずかしい!! もうなに空回りしちゃってるの!? 折角だから言ってやるよ、カッコィィィゥイイッ!!」


「殺す!! テメエ絶対ェぶっ殺してやる!!」


 暴れると容赦無く頭を蹴られ、怯んだ隙に股間を蹴り上げられた。


「っっっっ!? っ、て、めえ……!! ~~~~っ!」


「おうおう好い声で泣くじゃねえかそそるねぇ……! 野犬にゃお似合いの格好だがよ、そんなに腰振って誘ってんのかよテメエ!」


 ただでさえ股間が縮み上がってるってのに更に背筋が凍った。

 そういや前副団長って、暗殺者や間諜を仲間に引き入れるのが得意だったって話だ。

 色仕掛けだのなんだの言われちゃいたが、何故か女だけじゃなく男まで居たんだよな………………。


「おまっ…………俺を……その………………っ!?」

「いやそっちの趣味はねえよ。必要ならヤルけどよ」


 やるんだ……! と、助けられた近衛の生き残りのみならず、奴の引き連れていた一団が揃って畏怖し、一歩引いた。俺は踏まれてるから逃げられなかったけどな……。


「つーかそろそろ分かったかよ、自分の間違い」


「え……その、必要なら男を抱くくらいの覚悟……?」


 何故か頭を蹴られた。


 違うのか!?

 確かにそこまでの覚悟は無かったって本気で思ったのに!?


 ようやく足を退けてもらえたのでなんとか起き上がり、ずるずると身を引いた。

 違うらしいが距離は欲しい。俺も流石に尻の純潔は守りたいというか、なんというか。


 こっちが必死なのにトーリの奴は急に表情を静かにしてこっちを、仲間を眺めた。


「飢えた野犬の望みは一つだ。食うこと。食って生き残ることだ。獣の世界じゃ卑怯も糞も無い。勝った奴が肉を喰らい、強くなって、大きくなる。その分もっと腹をすかして飢えていく。勝つほどに巨大化し、肥大化し、最後には勝利無しには生きていけない化け物になって戦場を這いずり回り、正義のナントカサマに打たれて死ぬ。そういうもんだろ、俺たちはよ。そんなお前らが騎士サマみてーなのに憧れて無茶すりゃ、そりゃあ無理が出てアホ晒すに決まってんだろうが。お前初めて娼館連れてってやった時、恰好付けて大失敗したの忘れたのかよ。舞踏会みたいな服に、部屋埋め尽くす花に、デケェ宝石とか、安宿の娼婦にそこまでやったの初めて見たわ」


「最後の関係ねえだろ!? 誰にも言うなって高い酒まで買わせやがった癖に!?」


「だからよ、分を弁えろって話じゃねえよ。場違いだってのを覚えろよ。相手が超高級娼婦なら向こうも堂々と受け取ったかもしれねえけど、あの時の化粧臭い年増の娼婦なんか明らかにドン引きしてたろ? 正直娼婦としてよく長生きしたよなとか、流石にその若作りは無理があるって感じだったのに、お前顔もよく確認せず暴走するんだからさあ」


 その話はいいんだよ!!


 あの頃の俺は女慣れなんかしてなくて、どれが化粧でどれが素かも見分けることを知らなかったんだ!!


 おっぱいは平等だって信じてたし、女には花を贈るのが当然だっていう貴族の常識がだな!?

 全ては俺を面白おかしくしようとズレた常識を教えた兄貴の陰謀なんだよ!!


「おかげで文官の出世街道から転げ落ち、奇跡的に得られた偉いさんの娘との結婚話も流れたんだよな。その娘さんも後に家出して、出てった先でやらかしたとか、意外とお似合いだったんじゃねえの」

「はっ、あんなクソアマ願い下げだ」


 下らない話のおかげで頭も冷えてきた。

 現状は把握した。

 問題点も、認めるのは癪だが分からないでもない。


 生き残りたいだけの獣がそれ以上を求めるのは場違い。


 本当にそうしたいのなら、自分たちの振る舞いを根元から変えていくべきだったんだ。


 近衛兵団は結果を出すことが大前提で、そうでなければ生きていけない集団だった。

 だが結果を出すってのはそう易いことじゃねえ。どんな手でも、時に犠牲もあっさり飲み込まなくちゃいけねえ。


 そんな考えの奴がお綺麗な場所へ出て行きゃあ、周りがドン引きするのも当然って話だ。


「お前は頭が回る。心配性であれこれ無駄に口出ししたがるし、なんだかんだ楽しんでる奴だったろ」


「ふんっ」


「まあだからハゲるんだけどな」


 余計な一言に思いっきり拳を振るった。


 気持ち良いくらいあっさり殴り飛ばせて、今が好機と起き上がった馬鹿共が「ひゃっはー!!」と大喜びで飛び掛った。

 なにはともあれケジメは付けとかねえと駄目だよなあ?


「どうでもいいから死ねよ」

「裏切り者のくせに偉そうに俺ら語ってんじゃねえよ」

「俺は昔をよく知らねえけどその面ムカつくから死んどけよ」

「こっちの気も知らない癖にうるせえんだよテメエ」

「ふふふふふ、こうすれば痛いですか? こうならもっと痛いですか?」


「ぎゃあああ!? ちょっと待て最後のテメエ洒落になんねえ痛い痛い痛い凄い汗出る汗でちゃうううううっ」


 しばらくぼこぼこにしてすっきりしたので、改めてダクアやらの東方連合を見た。


 恰好からして珍妙な連中だ。

 まああちこち転戦してりゃあ独特な服装なんてごまんと見るし、フーリア人ほど俺らと見た目離れてもいねえ。

 つーかどうでもいいしな。内乱以前から近衛兵団にゃフーリア人居たし。流石に表立っては動けないから裏方が主体だったが、今回は普通に連れ出してる。カラムトラってのは意外に恨まれてるし、攻め寄せる勢力にも温度差はある。


 恨み辛みで暴れる馬鹿も居るが、枠組みにまでケチつける馬鹿は長生きしねえ。

 後は腕次第。結果を出すならそれでいい。


「こいつらはアンタがあっちで育てた面々か」


「っ……、本気でやりやがってクソが」


 アンタも俺の頭とか股間とか容赦無く蹴りやがったじゃねえか。


「元は俺の兄貴が選別した連中が殆どだ。幾らか後加入のも居るけど、まあ、今のお前らより躾はちゃんとしてるぜ」


 へぇ躾ねぇ、と思ったものの、偉そうに言ったクソ野郎の後ろで連中は、


「躾? 替え玉風情が随分息巻いたものですね」

「なんというか、強ければ我を通せるとか勘違いしてる所は可愛いですよね」

「あーあ、余計なこと言わなければ黙っててあげたのに」

「うふふ、あの方そっくりな顔で地べたを這いずり回る姿はとても……えぇ」


「あんまり忠実そうには見えないんだけど」


「性癖濃いんだよダクアは」


 その回答はどうなんだよ。

 ウチより女率高いよなとか思うけど、まあ見るからに危ない感じの奴が混じってるよな。


 ふっと目を逸らすと、やや離れた位置で眼帯付けた女が頬を染めていて。


「あぁ、ユーリさまがぼろぼろになってユーリさまが殴られ蹴られユーリさまが男たちに組み伏せられて汚されてもっともっと惨めで情け無い姿を晒して晒して晒して最後の一息を私がこの手で刈り取ってその血を飲んで差し上げたい……!!」


「よーし、ここはまだ狙われるだろうからさっさとズラかるぞー」


 とりあえず、陛下にダクアとの付き合いは考え直して貰えるよう進言するまでは死ねないな。


 生き残る。


 戦場じゃ当たり前のことの筈なのに、呑まれるとつい忘れちまう考えだ。


 食って寝て、糞して殺して殺されて。


 明日も続けていく日々の中でふっと自分を見失う。


 別に子ども作って畑耕す人生送りたかった訳じゃない。ハイリアみたいに表舞台で称賛浴びたいとか、その仲間連中みたいに真っ直ぐ生きたいとか、考えてたつもりはねえよ。越えられない壁だと諦めてもいない。


 だが俺たちは近衛兵団だ。


 その名を背負うことに誇りがある。

 誇れる俺たちでありたいと思った。

 あの人の後継に恥じない俺たちを求めて、迷って、変わる現状に対応しようと必死に考えてきた。


 間違えることなんざお家芸よ。


 団長からしてそうだったくらいだ。


 アァ、俺たちは俺たちであり続ける。


 飢えた野犬みてえにギラついて、肉を求めて彷徨い、いずれ化け物へと変わっていく集団。


 もう政治だとかクソ面倒くさいことは止めだ。

 やっぱ王の側回りとか柄じゃねえんだよ。あの手やこの手や色々浮かんだって碌にやれやしねえ。顔色伺って立ち回るのもかったるかったしな。精鋭としての振る舞いならともかく、敢えて片っ端から負担の大きい所を受け持つとか、お涙出るような自己犠牲はやっぱ別だ。こんな下らねえ勘違いの為に死なせちまった奴は数え切れねえ。だが謝らねえぜ。そういうのは俺らじゃねえ。従うことも、従わないことも、自分の裁量で動いてきたんだ。いつかくたばった後で、そいつら自身からケジメを付けさせられる。それでいい。今はただ走るんだ。勝利に飢えた獣のように。


 潰したくなったら勝手にしろ。

 潰れてやるほど殊勝な生き物じゃねえ。

 首輪を付けられようと噛み切って飛び出してやる。


「一時撤退する! まずは団長……ディランの部隊と合流するぞ!」


 東、丘陵地帯からの攻撃が止まってる。

 大方こっちとは別働隊を向かわせたんだろう。


 とはいえ事前に確認した程度の戦力で討ち取れるほどなら苦労はねえ。


 遠からずあっちも撤退し、ティリアナは王都に留まった阿呆をぶち抜くことだろう。


 奴が遠距離からの攻撃を加えてくる限り、ティレールを捜索し切ることは出来ない。


 『盾』の排除を一番に、ってのが理想だったが、やっぱり儘ならんもんだねぇ。


 とっとと駆け出していたクソ野郎が、いつか憧れた背中を見せつけながら叫ぶ。


「こっちだ! 表はもう『影』がわんさか沸いてやがるぞ!!」


「うるせえ指図すんな」


「っは! 好きにしな! どっち選んで生きようが死のうが、テメエの裁量だからな!」


 はいはい。

 分かりましたよクソ野郎が。


 眼下、動き始めた戦場を眺めながら、俺たちは導かれるまま王城を駆け下りていった。


 なるほど、ねえ。


    ※   ※   ※


   ワイズ=ローエン


 セイラムの出現、それに伴う巨大な……枝葉と呼ぶべきか、翼と呼ぶべきかは分からないが、少女の背より伸びた巨大な何かが天空を覆っていくのを見た。


 あれが目標。


 能力や性質など、詳細については聞かされているが、それを鵜呑みには出来ないとも言われている。


 本当に聖女と呼ばれてきた過去の人物なのか、それを名乗るだけのイレギュラー能力者なのかは断定が難しい。


 しかしコレで戦場には駒が出揃った。


 『剣』は近衛兵団の刈り取りを目論み、『槍』は最前線で暴れ回り、『弓』は丘陵地帯からの射撃、『盾』の所在は不明だが王都内部に引き篭もっているのは間違いないという。


 我らの位置ではティリアナの攻撃も届かない。

 『槍』のアーノルド=ロンヴァルディアもどうやら南に陣取った者たちとの戦いに興じている様子。

 『剣』の位置は流動的だろうが、『盾』はおそらく出てこないだろうとの事だ。


 自ら戦場に名乗りを上げておきながら情け無い話だ。


 そして遂にセイラムを名乗る存在が姿を現した。


 見た印象は強大。


 しかし、『魔郷』などを始め、過去のイレギュラーを思えばその枠を出ない。


 『魔郷』は地に根を広げる。

 アレは天に翼、うん、翼でいいだろう、翼を広げる。


 具体的に効果は判明していないが、似たようなものにも思える。


 方針は未だ見。


 あの翼もこちらにまでは届いていないようでもあるし、幾つか斥候を放って調査をすべきだろう。


 そう思っていた矢先、遠巻きにセイラムへ向けて進攻する一団に気付いた。


「あれは……ガルタゴと南部連合か」


 此度の戦いでは地味な役処を任された者たち。

 さぞかし目立ちたかったのだろう、敵将の出現と同時に突撃とは実に野蛮だが、かの国は勢いのある若者が好まれるというから、その結果なのだろう。


 防御陣地を捨てての特攻。

 無謀な行いだ。

 優雅とは言い難い。


 しかし砂塵と荒野に彩られた大地で生きる民の、心の熱さたるを愛でる想いもあった。


「予備の一部を動かし、ガルタゴを援護せよ。それと――――ヨハン、プレイン」


 既に調査目的の斥候は編成されている。

 そこに、先ほどから暇を持て余していた二人を加えるとしよう。


 ヨハンはともかく、プレインは退屈だと五月蝿かったからな。


「まずは小手調べとなる。仕留められるなら自由にしろ。けれど、少しでも無理があるのならガルタゴを盾にしてでも帰還せよ」


「あれは上手くいかねえが、いいのか」

「ほう……?」


 ヨハンが珍しく異論を挟んでくる。

 彼の剣を預かってより大きく印象が変わった部分で、意外にも素直だったというのがある。

 我が配下となりながら平然とホルノス側で過ごし、ハイリアを第一に考えている節はあるのだが、指示が通れば逆らうことがまず無い。今回も彼は当たり前の顔でホルノス側に加わろうとしていたのを、こちらからプレインを送り込んで指示を出したから手元に居るようなもの。


 扱いに困るかと思っていたが、いっそプレインより遥かに忠実で助かっているくらいだ。

 破天荒なのは変わりないがな。


 そんな彼が告げた内容、この私よりも多くの戦場を経験している者の言う事を無視するほど愚かではない。


「あくまで調査だ。不明点の多い敵将を知る好機だと思うが、それさえも上手くいかないということか?」


 問えば、彼は眉を寄せて面倒くさそうな顔をした。

 平民の、それも最下層とも呼べる貧民の出だという彼の内心は読み易い。

 表情や内心を隠すということを知らず、すぐ表に出てくるからだ。

 ただし表層だ。生まれも育ちも違い過ぎる者の機微など分かろう筈もない。


 この男を統べていたという者の存在を感じながら、答えを待つ。


 やがて彼は唸りつつ、なんとか言葉を捻り出した。


「敵は、ハイリアの敵だ。ハイリアを追い詰めるほどの相手だ。簡単には折れねえ、迂闊に攻め込めば弾き返して、一瞬で叩きのめしてくるような人の……その敵だ」


 熟考する。

 彼という人間の見方、考え方、それらを分からないなりに考慮し、咀嚼しなければいけない。


 そして私は話を別へ振った。


「プレイン、分かるか?」

「俺はあのクソ野郎のことなんざどうでもいい」


 意地に逃げている場合か。


 言いたいことはあったがまず呑み込む。


 広く意見を束ねて決定するには、なによりもまず忍耐力が必要だ。


「強い相手だ、ということかな」

「あぁ」


 話は終わったという様子のヨハンの思考、その中間を推測した。


「なるほど、軽い気持ちで小突くと高くつく可能性がある、と考えるべきか」


 しかしこうして敵将が手の届きそうな場所にいると思うと手勢を動かさず静観するというのはどうだろう。

 紛れ込んでしまった姫様を安全な場所へお送りしたい気持ちで一杯なのだが、戦いの最中ではそうもいかない。

 問題なのは好機を前にガルタゴが動き、エルヴィスが動かなかったという結果が残ることだ。

 遥か南方の国とはいえ、国際連合なるものが勢力を増してくるのならば無視も出来まい。

 果敢に飛び込んだガルタゴと、臆して見守ったエルヴィス、などという勘違いを振り撒かれる訳にはいかない。


 そう威信だ。


 権威とは極めて重要なものだ。


 我が国には古くより円卓なるものが存在する。

 王も、その配下も友であり、尊卑などないぞと示し、活発な意見交換をする場として設けられる。


 あくまで個人的にではあるが、私はそれを唾棄すべき悪習だと考えている。


 確かに広く意見は聞くべきだ。

 今こうしているように、相手の身分など関係なしに有用な意見は取り入れる。


 しかし場の頂点は私だ。


 私は聞き、私が思考し、私が決定する。


 そこに平等はなく、尊き我が身が在るだけだ。

 身分差は存在する。

 私はそれを肯定しよう。


 なればこそ、上下関係を曖昧にする円卓などは責任放棄に等しい愚挙であろう。


 そもそも平等を主張する王や権力者など矛盾でしかない。


 故にこそ決定する。


「状況が見た目以上に警戒すべきだというのは分かった。しかしヨハン、命令だ。我が剣としてガルタゴの攻勢を支援し、好機あるならば敵将の首を持って来い。撤退するならば殿を務め、奴らにエルヴィスの威信を示せ」


 ハイリアに勝利したという実績はあるものの、彼は未だエルヴィスの騎士として功績を挙げていない。

 今回の戦いでどれだけのものを残せるかで今後の立場も変わってくるだろう。


「プレイン、君は遊撃部隊の指揮官としてヨハンを援護せよ。場合によってはこちらに合流できなくなる可能性もある。そうなれば君が同胞を纏め、方針を定めよ」

「話を聞くに思ってる以上にやばい筈だが、そいつはヒューイット家次男の命を懸けるべき役目なのか」

 憮然としたプレインの問いにもすぐさま声が出た。

「無論だ。この戦場は各国の将来的な力関係を示すものでもある。エルヴィスがガルタゴ風情に後れを取るなど許されない。しかし奴らの無謀さに乗って兵を損耗させることも出来ん。ならば精鋭を以って事に当たり、奴らに我らが威信を見せ付ける」


 危険があるから前に進まない、では勝利を掴むことが出来ない。


 あの鉄甲杯で、あるいは去年、もしくはハイリアが出てきた当初から、それを分かって行動出来ていれば。

 分かっているつもりで安全策にばかり逃げていた己を知った。

 準備を整え、力の底上げをし、その限界点を見極めているだけでは得られないものが世にはある。


 その決断をするのが高貴なる者の義務であり、時に我が手を死地へ送り込むことさえする。


「役目は全うしろ。その上で、生きて戻って来い。それが出来るとすればお前たちだと、私が決定する」


 準備を終えた部隊がやや離れた場所でこちらの指示を待っている。

 プレインが振り返り、生まれつきの悪人面を更に歪めて嗤う。


 ぼんやりと空を眺めていたヨハンが手を伸ばし、まるで落ちてきたソレを掴み取ったとでも言うように剣を握りこんだ。


 足元から膨れ上がった赤の魔術光が火の粉を散らして彼を包み込む。


 振り返りはしない。

 部隊を指揮するのはプレインだ。


 だからか彼は挑戦的に嗤い、


「行くぜ」


 弾け飛ぶように走り出した。


「……ッ!? のぁろう!!」

 反応の遅れたプレインらが慌てて魔術を使用した。

「クソがァ!! 野郎に遅れを取るんじゃねえぞ!!」


 儀礼も何も無い唐突な開始に、私はただ笑った。


 完成度の高い連携と水準を満たした使い手を多く揃え、磐石と呼べる場所に安住していた自分たち。

 それを掻き乱すヨハンという存在が痛快だった。


 私は彼を御してみせようなどと思っていない。


 彼が生み出す波紋を活かし、己さえも揺り動かしていく。


 時代が変わっていく今の世で最も先を行くのは我が国、エルヴィスであるのだと、そう世界へ示す為に。


「生きて帰れ」


 あぁ。


「そこまでが私の決定であり、命令だ」


 最早届かぬ呟きの先、ガルタゴの先頭部隊が突破に成功しセイラムへと肉薄していく。



 翼の先端、光が収束し、根元であるセイラムへと伝っていく。

 遠巻きながら、彼女が視線を向けたのが分かった。

 それだけだった。



 それだけで、攻勢を掛けるガルタゴの先頭部隊が音も無く崩れ去り、全滅した。





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― 新着の感想 ―
[良い点] ついにセイラム登場ですね よく考えたら、主要な敵が全然倒せていないので、どうなるのか気になります [気になる点] 主人公は、どうなったのかはもっと気になります!
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