表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そして捧げる月の夜に――  作者: あわき尊継
第五章(上)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

223/261

209


   ワイズ=ローエン


 血の十五分を消費した軍議での結論は、(けん)だった。


 状況は致命的ではない。

 初手でこちらを狙ってきたティリアナも、今や突出する近衛兵団と南部主力部隊へ注目している。

 時折射掛けてはくるが、初手の混乱も今では収まり、防御するに十分な体制は整った。本質的に『弓』では『盾』を貫通し得ない。前情報の通り、多少の想定外はあれど即座に防衛線が崩れることはないだろう。


 こうなれば後方のイルベール教団は問題にならない。


 内部の洗い出しもある為に時間は掛かるが、この布陣を維持したままの方が危険は少ない。


 内通者、間諜の存在が危ぶまれている中、無理に移動するのは愚挙だ。

 まず守りは緩くなるし、隙間が出来れば更に敵は内部へ入り込んでくるだろう。

 既に入り込まれているとはいえ、虫食い状態のまま行軍し始めれば総崩れの危険も考えられる。


 我らエルヴィスは今の体制を維持しつつ、内部を洗う。

 本来戦闘中に行うべきことではないが、必要とあればやるしかない。


 同時に、敵の手札が開示されるのを待とうではないか。


 未だ登場しているのは『弓』一人。


 デュッセンドルフで派手に立ち回ったティリアナ=ホークロックと目される術者は十分過ぎるほどの分析が重ねられている。

 結果、無理をしなければ、瓦解するほどの状態に陥ることはない。


 だが残る『剣』『槍』『盾』、そしてセイラムと称されている存在。


 前もってあの変事に遭遇していなければ敵の出現すら疑わしかったものだが、よもや神話に語られる聖女の名まで出てくるとは。今更ながらに悩ましいことだ。旧来の教えから脱却したエルヴィスでは聖女の名もさほど重要ではない。とはいえ、あまり出てきて嬉しい名前でもないからね。今も国内に残る旧会派がこの件を知ればどういう行動を起こすか分かったものではない。


 表向きはイルベール教団と、それが呼び出した邪心、異端の悪鬼共とは言われているが、出方次第では民も何かに気付く筈。


 さてどうする。


 我らは所詮、情報と後の世における主導権が欲しい外様だ。


 呼び集めたのも、一番に行動を起こしてきたのも、ホルノスという国、ハイリアという男が生み出した流れ。


 当人不在で始まるこの戦いに何を見出せば良いのか。


「世界がここで留まるか、先へ進むか、進む先とは何なのか、見せてもらえると思っていいんだろうね、ハイリア」


 北東からの風が続く。

 胸を押し、時に煽られるほどの強風を吹かせることもある。


 布陣の前方、一際大きな雲に陽の光が遮られ、濃くなった闇の中から人影が続々と立ち上がった。


 あれが『影』。


「迎え撃て!! 敵が崩れようと深追いはせず、防御陣地の維持に努めよ!!」


    ※   ※   ※


   ジン=コーリア


 近衛兵団へ追従し、突出した部隊の横合いへ喰らい付くようにして『槍』の術者が出現した。

 どうやら相手は用兵を行っているようだ。四属性それぞれの『影』を操り、着実にこちらの陣を崩し、分断を図ってくる。


 無茶をした自覚はある。が、同時に備えはしてあった。離れていく近衛兵団の背中が口惜しくはあるが、俺自身が突出している部隊を率いているんだ、このまま味方と切り離されればあっという間に呑み込まれるだろう。


 敵の攻勢は激しい。

 『槍』の魔術を支える一柱として呼び出されたんだから、そりゃあ真っ向勝負で勝てるとは考えちゃいなかったが。


「どいつもこいつも強いねェ……!!」


 届かない自分が腹立たしくて仕方ない。

 机上でどれだけ有効な戦術を編み出しても、単なる武勇に飲み込まれてしまう。

 悔しいけどここが今の俺の立ち位置だ。分かったろ。分かったら相応に動いてみせろ。


「横陣を形成しろ!! 左右へ広がり、防御を固め、味方の援護を待て!!」


 転進は混乱を招く。前へ進んでいた兵を逆方向へ押し戻そうとするのは味方同士での衝突に繋がってしまうだろう。そうなった時、最も喜ぶのは分断を図る敵側だ。

 だから進攻の勢いはゆっくり弱める。兵を左右へ散らし、受け入れて、少しでも厚みを増した上で敵分断を受け入れる。


 『影』による軍団は確かに形成されつつあるが、まだまだ密度は薄く、分断を図る動きには強引さもあるおかげで付いていけてない印象があった。


 加えてこちらが分断されたとして、後方の味方は十分な厚みと勢いを残している。

 突出とはいっても長方形に真っ直ぐ進んできたんじゃない。むしろ一点突破を狙って先細りの形を取っていたから根元へ行くほど厚みがある。

 学生を主体とするからこそ勢い任せの無茶が出た。その結果ではあるが、敵が分断を図るのなら後方の、より厚みと広さのある味方の攻勢に晒され続けることになる。どれだけ用兵に長けていようと、全員が『騎士』や『剣』で突破してくる訳じゃない。取り残された『盾』は処理が容易く、『槍』もまた行軍が遅い。


 ちょいと焦りすぎなんじゃないのかねぇ。


 とはいえ突出部を潰すなら今が限度でもあった。


 近衛兵団を見送ったなら、俺たちは素直に下がるしかない。

 挨拶代わりの攻勢としては確かにちょうど好いのかもしれないが、義勇兵団を潰すほどの威力にはならないだろう。


 加えて、こっちにだって優秀な駒は多数存在する。


 突出する中央部に呼応し、そこを狙う敵を包み込む動きとして両翼が前進を始めている。


 突出部を分断しに来た敵自身が、最終的に味方から分断されて包囲を受ける流れもあり得る。


 傷は受けるが最小限に、自分で全てを成す必要はなく、時には堂々と居直ってみるのも一つの手だ。


「さぁて、敵将の顔でも拝ませてもらおうじゃないの」


 合図を挙げさせ、後の動きに備える。


 味方は十分以上に頑張ってくれた。緩やかに勢いを弱めつつも後続の味方をどんどんと迎え入れ、遅い来る敵へは次々と配置換えを行いながら孤立した陣を形成させていく。孤立しながらも休息を取る余裕が出来る、そいつは味方の士気を維持するのに極めて有効だ。

 それだけのことが出来るだけの時間を稼ぎ出し、またこちらの意図を察した奴が居たんだろう、後方にも備える動きがあったのか、数名の伝令が俺の所へも駆け込んできた。


 さあどう動く?


 分断を果たしつつも、遠からずこちらに包囲を受けるかもしれない敵将。


 そいつは遠目にも分かった。


 なにせ、滅茶苦茶デカい男だったからだ。


    ※   ※   ※


   オフィーリア=ルトランス


 整然と進む大軍勢は大地を揺らすと言いますが、たった一人でそれを成す者が居るとは思いませんでした。


 出で立ちは歴史に語られるもの。長衣を流して着崩し、内側には金属で補強・接続された革の防具が見え隠れする。戦装束なのでしょう。金属鎧ですらない革製の防具など、『剣』や『弓』の攻撃を防ぐことさえ不可能です。なのにどうしてか、彼の人物が鎧う姿には滑稽さなどなく、独特な飾り紐などで彩られた姿は無骨さの中に品を感じるもので、一目で位ある人物なのが分かります。


 だからこそか、あの時と同じ息苦しさを感じます。

 神父。ジャック=ピエールと相対した時と同じもの。


 彼もまた大きな人でした。


 男女で身長差は生まれるものですが、だとしても彼は頭一つ抜けていました。


 ただ大きさを比べても仕方のないことでしょうけど、彼にも増して今回の敵は大きい。


 頭一つではまるで足りない。

 見上げるほどの大きさ、大きな手足は女の身くらい入り込めてしまいそうなほどに太く、間近に向き合えば視線が腰のやや上にぶつかるほど。

 そんな人物が一歩を踏み出せば、地面が揺れ動いたと錯覚してもおかしくありません。

 まして纏うは青の魔術光。

 『槍』(インパクトランス)の魔術を支える一つ柱。

 大地を奮わせ、大気を打って敵を薙ぎ払う、そういう人々の力を纏い、支えているのですから。


 突出した味方との切り離しを画策し、今まさに防陣を破り、貫き通そうとする動きの最中、かの人物はふらりと脚を止めました。

 まるで、この動きは私たちの目の前に発つ為だったとでも言うように、激しい戦闘の中で危機とした表情を浮かべて。

 怪物とでも呼びたくなるような巨体の男性は腕を広げ、太く、低く、大きく、声を響かせました。



「我が名はアーノルド=ロンヴァルディア!! 旧態依然とした世を滅ぼしッ、我らに未来を指し示さんとする者たちよ!! 次代に我こそはと名乗りを上げるのならば、まずは余に覇を示すが良かろう!! 余は歴史の破壊者よッ!! 先達として胸を貸す用意は出来ておるぞ!!」



 声にまで打撃の加護が乗っているのかと思えるほどに力強いその訴えに、思わず戦いの手が緩む。

 彼の言葉を阻んではいけないと、無意識に遠慮してしまう自分が居ました。


 この感覚は知っています。


 ハイリア様。


 私自身の信という部分で強く意識はされるものの、初めて声を聞いた、素性すら定かではない人物から同じものを感じてしまうなんて。いえ、素性は今語られた通りなのでしょうか。アーノルド=ロンヴァルディア、始皇帝とも呼ばれる歴史上の人物です。


「それとも」


 唐突に雰囲気を変え、かの始皇帝が人好きのする笑みを浮かべました。

 まるで子どもが遊びへ誘うような気安さで、聞く者の懐へするりと上がりこむようにして。


「余と共に戦場を駆けたい者が居るのなら今すぐ列へ並ぶが良かろうッ!! しがらみなど捨て置けば良いッ、生き死にを懸けた戦場で、今感ずる想い以上に殉ずるべきものがあろうか!? カッカカカ……ッ!! それとも余へ挑む栄誉を望むのならば掛かってくるが良い!! さあ始めよ若人共よッ、余は今、過去の歴史より這いずり上がって主らの目の前に来ているぞ!!!」


 滅茶苦茶過ぎです……!!


 ですが何故か、戦いを始めた時には覚悟と高揚に染まっていた自分の胸の内が、不思議と誇らしさを覚えているのも事実。


 歴史上、最も優れた術者を呼び出すと言われる四柱。

 強大な術者であるのと同時に、彼らは紛れも無く歴史に名を残した傑物であるのだと、ようやく気付きました。


「口上は聞かせて貰ったんだがな」


 戦い始める期を見失っていたら、敵軍を挟んだ向こう側から声が掛かりました。

 よく通る声。耳に馴染ませ、聞き落とすことが無いよう訓練したからこそ、その響きを聞くことが出来たのでしょうか。


 ジン様はおそらく動きを止めつつある戦況を好機と見つつ、時間稼ぎに言葉を放りました。


「歴史の破壊者を名乗るにしては、旧態依然としたセイラムの側に立って守ってるってのはどういう了見なのか聞かせて貰いたいね」


 呼応して敵の分断に合わせて崩れつつあった布陣が緩やかに整えられていきます。

 良い反応ですね、後方で指揮を執る誰かがジン様の意図を察して動かしているのでしょう。


 私に出来ることは?


 思い、そろりと前へ出ました。

 『剣』の立つべき場所は最前線、動き出した時に誰よりも早く、敵将を狙える位置へ。


「当然の意見であるな」


 アーノルドを名乗る『槍』の術者はジン様の言葉に大きく頷き、顎へ手をやります。

 元が大柄である為、その様はどこからでも見て取れます。


 矛盾を指摘され、貶められようとしている。


 なのに彼は軽く笑い飛ばしました。


「なぁに、オグナオーレを落とした時も、切っ掛けは幼子の家へ帰りたいという望みを聞いたからだったからのう。真に破壊者であるのなら、自身の考えにすら固執するものではない。小娘が助けを求めるならば、応じるのもやぶさかではないというだけの話よ。その上で風が向けば、余自らの手で改めて滅ぼせば良い」


 そして巨大な槍を掲げ持ち、再び大地を震わせます。


 何憚ることなく宣言し、たた往くとばかりに笑い、事実それを成してきた過去の英雄が。


「さあそろそろ準備は整ったか!? 余を討ち取りッ、望みを手にする覚悟は出来たか! カカカカカ!! 敵であろうと味方であろうとッ、勝とうと負けようとッ、同じ戦場に集ったのならば存分に腕を振るいッ、余に続くが良い……ッ!! 行くぞォッ!! 戦場に華を咲かせて魅せよ!!」


 話はこれまででしょう。


 時間稼ぎに敢えて応じ、余裕すら見せてきた()へ、私はそっと息を落としました。平たく、伸ばすように。湖面へ広がる風のように。


「行きます!!」


 叫ぶと同時、『弓』隊による罠が一斉起動し、大規模飽和攻撃が敵将周辺を襲う。

 防がれる。『影』と呼ばれる黒い戦士たちがあらゆる手段で迎撃を行いました。『盾』、『剣』、あるいは自らを盾として。けれど、飛び出した『騎士』が一部の守りを破壊して、そこを足がかりに第二波、第三波と浴びせかけて傷口を広げていく。この流れにはアーノルドの口上も味方しているようです。帝王の宣言に盾は邪魔と思ったのか、広く姿を見せ付けるべしと考えたのか、こちらの攻勢が始まるまで大盾が排除されていましたからね……。


 大いなる方の思惑は計り知れない所もありますが、思わぬ無防備さについ手を止めてしまっていたのもまた事実。


 しかし敵の『影』も供回りとあって精鋭なのか、立て直しが早いです。即座に最前線を切り捨て、後方で隊伍を揃えて守りを修繕、そしてやられっぱなしではないぞと『剣』が飛び出してきてこちらの『騎士』が押さえ込まれていく。隙間から『弓』の援護が始まりました。こちらも応じ、『剣』が矢を打ち落としていきますが、数は足りずとも的確に目標を定めているのか火の粉が散っていく。


 アーノルドは、敵将は笑いながら攻撃を叩き飛ばし、何かを見据えているように待ち構えている。

 何。何を見ているのですか。


 戦場は動き出しています。

 ジン様主導の元、早朝より『弓』の術者を連れ歩いて局地局地へ大量の罠を仕掛けて番号付けをしていたことで、擬似的にティリアナ=ホークロックの戦術を再現してみせたものの、完全に敵を圧するには至っていないようです。

 けれど崩れた。

 味方を切り捨て建て直しを図る速度も、その割り切りも見事でしょう。

 ですが敵中で足を止めて、突出し分断を受けつつも陣形を維持する部隊と展開する両翼によって包囲が進みつつある現状、敵の予備戦力にも限界があるのです。

 見た目に効果が出ないからといって余裕という訳ではありません。

 出血は確実に肉体を疲弊させるように、例え後続と繋がったままであろうと局地的に部隊は疲弊し、余力を失い、強張る。


 耐えられたとしても、望まぬ緊張は確実に急所へと追い込んでいける!


 そして見た。


 圧迫されつつも動き出した敵部隊の動きの中、将だけは堂々と先の位置に座し、何かを待ち構えている。

 それが動きを乱れさせ、後続との混乱を生んでいる様子。

 なら見るべきは反対側。留まる供回りと、遅れる後続、すなわち抜けていく部隊には厚みが無い。


 続く飽和攻撃に敵の隊に力が篭る。

 覚悟を膨れ上がらせるその様は脅威であることも忘れてはいけない。


 視線を振る。右へ、左へ、後方、そして敵向こうの味方。


 全神経をすり減らし、入り乱れる魔術光一つ一つを分離させ、状況を把握する。


 息を吸い、長刀の握りを確認し、汗の滲む肌に敵の視線を感じます。

 どこかに私を警戒している敵が居る。相手は……分かりませんね。ですが敵の警戒と好機をどう処理すれば良いものか。いえ、悩み過ぎてはいけない。期を見逃すことの方が重いのです。


 一番最初に飛び出した『騎士』たちが攻勢を支えきれずに下がっていく。

 同時に『剣』が増援に出されて攻撃に厚みが出る。

 放たれた何度目かの飽和攻撃に敵防衛に乱れ。

 一人の『剣』が斬りこむも、殺到した敵に討たれてしまう。

 敵が下がる。

 引くのではない。

 圧されて、設定された防衛線を引き下げたのでしょう。


「次」


 暑い。


「次の飽和攻撃、それで穴が開きます」


 頬を流れた汗が顎元へ達し、長刀を持った腕の袖口で拭う。

 手拭いでもなくそんなはしたない事をするだなんて、以前の私には出来なかったことでしょうね。


 思えば笑みが浮かび、強張っていた肩から力が抜けていきました。


 ふらりと想い人へ寄り添うように、前へ。


「参りましょう」


 躍り出る私の左右、『騎士』と『旗剣』が随伴して道を押し広げました。


 つけた道には『盾』が割って入り、後続を導き、到着した『角笛』による圧力を敵部隊へ叩き付ける。


 放たれた飽和攻撃は偶然ながら動く直前の敵部隊を直撃し、緊張した糸が限界を超えて引き千切れていく。

 守りが崩れる。通常であれば視界を埋め尽くす膨大な魔術光に全体の動きが滞る一瞬の隙間、配置換えによって移動した者と続くことの出来なかった者。敵陣奥に見て取れた小さな揺らぎは、斬り込んだ先の橋頭堡を確保する上で絶好の場と成り得る!


 そして、踏み込んだ。


 敵防衛線を突破し、空間を押し広げ、供回りへと肉薄。

 反応して出てきた一体を切り捨て、続く二体目と三体目を姿勢を調整して一振りにて行動不能にする。

 矢を捌き、乱れた盾の隙間を抜けて、後続がそれを粉砕するのを感じながら更に前へ。

 人一倍目立つ巨体の足元へ踏み込んで、目を焼くほどの魔術光に半歩ズレ、横合いからの攻撃を回避。


「失礼ながら」


 供回りは強い。けれど、対抗できる。

 軽くいなすには覚悟が要りますが、不可能ではない。

 地面を強く踏む。噛んだ。それを支えに己を蹴り放つ。


 届いた。


「既に忠誠も信も、別の方へ預けていますので」


 防ぎに入る大槍。

 否、打撃の加護を思えば十分な反撃とも言えるその流れるような反応に私は、


「至らぬ身ではありますが、その程度の言葉で揺らぐ者がこの場に居るとは思わないでいただけますか」


 深く踏み込んだその位置から、大槍を頭上高く押し上げました。


 加護は、起きない。


「ぬゥ!?」


 貴方の時代には無い業。

 恥ずかしながらも敵より学び、再現された『槍』の利点を潰す技術で以って戦場の先駆けとなりましょう。


 空いた懐、供回りに圧された随伴者たちは広がっていて間に合わない。

 私自身、あれだけ大きな槍を相手に加護抜きを行った直後では手指や腕が強張って、返す刃に乱れがある。増大する青の魔術光、そして、一合にて分かった相手の力量、この人物は次の一斬を確実に受け止めてくる。


 ですがこの隙、逃すほど甘い指揮官はここにはおりません。


 後背より感じるこの気配。


 信頼する仲間の名を私は叫びました。


「クラウド様!!」


 一途に引き続けてきた大弓より放たれた特大の一矢が、歴代の英雄へと襲い掛かりました。


    ※   ※   ※


 力は、大きさは、相手取る者との差が一定の開きを超えた時、理不尽なほどの性能を発揮するといいます。


 単純。故にその価値は強固。


 それは真っ向勝負という舞台に相手を引き上げ、強要し、一点突破の力のぶつかり合いへと発展させてしまう。

 理不尽な、という表現はハイリア様より伺ったものですが、私自身彼との戦った経験から思い知らされました。ただ一点の力。凝縮された守りへ打ち付けた直後に重心が射抜かれ姿勢を崩し、気が付けば手指が解けて武器を取りこぼしそうになっていました。技量にも優れた方。容易く越えられるとは思っていませんが、それ以上の単純な力という点で私は圧倒され、成す術無く負けてしまった。


 元一番隊では様々な戦術が開発され、研究され、進化してきました。


 私の使う加護抜き、『槍』による打撃の加護を発動させずに槍と打ち合わせる技術も、あの神父が見せたものを徹底分析して明らかになったものです。『弓』による攻撃を状況と捉え、より効率的な状況構築に向けた短弓を採用したのは、もう一年以上も前になりますか。


 多くの方が戸惑いながらも持ち替え、戦術を学ぶにつれ高揚と共に成長の実感を語り合う中、たった一人長弓に拘り続けたのがクラウド=ディスタンスという方です。


 旧来の威力重視、『弓』が一個の戦力として扱われ、単独で敵を削り取る役割を担っていた時代の武器は、一途に貫き通した努力によって爆発的な威力を獲得するに至っています。


 『槍』の打撃には劣るものの、放った矢を防ごうとした『剣』が武器を弾き飛ばされることもしばしば。


 その一矢、彼の最大威力の攻撃が、


「見ィ事也イイ!!」


 打ち上げた筈の大槍によって叩き潰された。


「っ!!」

 察知して避け始めていたのになんて威力……!


 矢を打ち落とす動きのまま地面を打撃し、遅ればせながらも襲い掛かろうとしていた仲間と共に休息退避。けれど弾け跳んだ土塊がこちらを襲い、へばりつくような重みと衝撃に姿勢を崩し、倒れるものも幾つか。


「カカ――!! しかし足りぬなァ……!! おなご一人に余を崩す力があると思うてか!!」


 頬の土を払い、長刀を握り直すも見上げる敵の姿は巨大。


 彼の、アーノルドの言った通り、私が崩し切れなかったことが原因でしょう……。どれだけ加護を抜いて槍を押し退けたとして、所詮は女の力。ハイリア様の時と同じ。どうしても届かない腕力の差がどうしようもなく大きく、越えていけない。


「しかしっ、今の業は見事である!! んーんっ! 良いのう……ッ、欲しいのう……ッ、次代の萌芽とはかように愛おしいものか。のう猛々しくも美しき『剣』よ、余の側となる気はないか?」


 呆気に取られたのも僅か、腕を振って宣言しましょう。


「私には婚約者がおります! とっても素敵で優しくてっ、その方であれば全てを委ねても良いと思えるほど包容力のある方ですからっ!!」


 気付けば帝王の問答中だからか、敵からの攻撃が手控えられていました。

 そんな中の宣言ですから、少々恥ずかしいのですが事実は事実。


「あのですね、普段からよく周囲を見て、皆を支えて下さる方なのです。ですけど私がお願いするといつもより少しだけ私を見て下さるんです。その、彼を独占してしまう罪の意識はあるのですが、そんな方だからこそ私だけを見てくれる時の嬉しさと喜びは何ものにも変え難く、とても素敵な時間となるのです」

 あぁなんだか頬が熱くなってきてしまいました。

 ですが事実ですので何憚ることがありましょうか!

「この前なんて一緒に食事を摂っている際、私が苦手とする野菜があったのですが、つい甘えてお願いしてしまいそうになった私に彼は好き嫌いは良くないと叱り、手ずから食べさせてくれたのです。今まで苦手だったその味が瑞々しくも甘い果実のように感じられた時なんて、もしかするとあの方はセイラムのものとは違う新たな魔術を得たのかと考えてしまうもので――――」


 一生懸命説明していたら、何故か途中から胸元を掻き始めたアーノルドの下へ特大の一矢が飛来し、再び弾き飛ばされてしまいました。


 始皇帝とも呼ばれる歴史の英雄は、ああ見えてクラウド様の攻撃が効いているのか、やや疲労を感じさせる表情で問うてきます。


「その人物とは『弓』の術者か」


 あら、何故分かったのでしょうか。


 『弓』の術者は周囲をよく見て、気配りなどを忘れない方とも言われますが、彼の時代にもそういうものがあったのですね。


「その通りです」


 と、再び飛来した矢をやや辛そうに弾くアーノルド。

 流石はクラウド様。見た目には余裕そうに見えますが、あそこまで敵を疲弊させるだなんて凄いことです。


「故に、であるか。婚姻や婚約など奪ってしまえば良いとは思うのであるが、この胸を焼くものは中々耐え難いものよ」


 何故かは分かりませんが攻撃は有効なようです。

 もっともっと、ここで一気に攻め立てて頂かなければ。


 折角敵将が無防備に待ってくれているのですからと私は背を向けて手を振ります。


 自陣、後方の丘の上で長弓を構えるクラウド様へ。効いてます。効いてますよクラウド様と合図を送る。

 効果を実感出来た為か、益々撒き散らす魔術光の量を増して弓を引き絞る彼を、敵のアーノルドまでもが私に並んで興味深げに覗き込みました。


「ふむ、アレがその砂糖菓子のような話の男か。見かけで判断するものではないと言われるが、どうにも頭の固そうな奴だのう」


「? あの方は全く別の人です。とても良い友人ですが、愛などは全くありません」


 さあ今が好機ですよと合図を送ったのに、何故かクラウド様は弓を降ろしてそっぽを向いてしまいました。


「カカカッ、これはやらかしてしまったかのう!」


「何故ですかクラウド様!! 今が好機なのです! ズドンと! 敵を打ち抜いてやりましょう!!」


 両手を挙げてさあもう一発と訴えましたが、どうにもこちらを向いてくれなくなってしまいました。

 貴方の攻撃は効いているのですっ、そこでどうして諦めてしまうのですかっ、もう一度思い切っていってみれば落とせるかもしれないのですからっ!!


「諦めよ、アレは心が折れておる」


「どうしてですか!? もう少しなのにどうして諦めてしまうのですかっ!? さあこちらです! 貴方と私の友情でっ、他の何も入る余地の無い友情の力で勝利を勝ち取りましょう!!」


 頑張って訴えたのに、クラウド様は攻撃を止めてしまい、好機は失われてしまいました。

 あんなにも一途で頑張れる人が心折れるだなんて、一体何が彼を追い詰めてしまったのでしょうか。


「クラウド様の仇は取らせていただきます!!」


 やはり敵に違いありませんっ。

 なんと巧妙なっ。この場で最大級の火力を持つクラウド様の心を折る、なんらかの策を巡らせたでしょうアーノルドへ、私はあの方の悲しみをも背負って斬りかかっていきました。


    ※   ※   ※


   ベイル=ランディバート


 王城へ辿り着いて背後を振り返った時、遥か南方で交戦を続ける味方の姿が見えた。


 時間はたっぷりあったから、有効な防御陣地を複数形成出来ている。

 王城、神樹を中心としてティリアナからの直接射撃が届かない位置だが、奴自身が動けばすぐにでも攻撃をぶち込める。誘いだな。前に出るほどこちらは奴を狩り易くなる。結局引き篭もったままで、あろうことか王城の最も高い場所から射撃を続けてやがるが。


 届かない射撃は突出したガキ共に向いているが、どうにも上手く引くことが出来たんだろう、多少の乱れはあるが布陣が安定しつつある。

 次々後続が来る中で攻勢に出るのは愚作だ。人のことは言えないが、突破出来ないのなら陣を整え敵の勢いを削ぐ必要があるだろう。

 例の弾け跳んだ神樹の破片ってのも、見た目そのままの量じゃあ無いらしい。あちこちで気付いて処理を始めている。


「っは! やるじゃねえか」


 こっちはどうだ、なんて考えるまでも無い。

 既に半数が落ちた。途中、『影』に混じって『剣』の暗躍を感じた。見つけ出すには至らなかったが、貴重な隊長格を何人も削ぎ落とされ、対策を講じるまでに圧迫された指揮統制から外れた連中が次々『影』に呑まれて死んでいった。以前であればあれでも対処可能だった。だが今、引き連れているのは精鋭とは言いがたい寄せ集めだ。

 分かっていて組み込んで、捨て駒として外装部へ配置した。

 作戦としての囮や、やむを得ず切り捨てることはあるが、これは戦う前の準備という点で俺の無能が証明されたってことだ。


「副団長っ!! また一発カマしやがったぜ! クソアマはまだ屋上にいるってことだよな!?」

「ここまで来ればこっちのもんよ! やられた分はたっぷり返してやるぜえ!!」


「若ぇのは元気だねぇ。だがま、悪くはねえ」

「この大戦で先駆けを務め、見事敵将を討ち取ったとなればな」


「っははー! まだろっこしいからこっからは『剣』で先行しようぜ!?」

「壁上ってけばすぐだって!! 俺出来ねえけど!!」


 だってのに馬鹿は馬鹿を隠しもせず景気良いこと言いやがる。


 くそったれの死に損ない共が。


「テメエら優先順位間違えんな! そこらでキンタマ震え上がらせてる腰抜け野郎が先だ!! 『盾』の術者を探せ!! 見つけ次第ぶち殺せ!!」


 だがティリアナを抑えるのも悪くねえ。

 精鋭十人を近接戦で返り討ちにした奴だが、情報収集を捨て、仕留めるより抑えることを優先するなら出来なくは無い。

 『旗剣』と『角笛』、二つの上位能力を投入すればいけるか……?


「うむ。では隊を分けるのが良かろうな」


「クソ団長、こっちの疲弊っぷり分かってて言ってんだろうな」


 ディランへいつもの調子で言うと、デカい図体を震わせて笑う。

 何故か、愉しそうなのに悲しそうに聞こえた。


「我らの役割を全うするまでだ」

「あぁ、そうだな」


 考えるのは副団長、決断するのは団長。


 そういうもんだよな。


 あぁ。


「王都は広い。固まって動いてるようじゃどれだけ時間が掛かるか分かりやしねえ。いくつか候補を選出してはいるが、臆病者ってのは時に呆れるほど大胆にもなるもんだ。痕跡を見逃さず、徹底して追い詰め、容赦なくぶち殺せ。邪魔する奴は誰だろうと斬り捨てろ。いいな!!」


 素早く再編を追え、敵を一度蹴散らした上で一斉に散開。

 敵の『剣』が追従しているんだとしても、全てを刈り取るのは容易じゃない筈だ。

 団長は捜索部隊及び打撃部隊を、俺は三個小隊を率いてティリアナの抑え。中隊落ちの戦力だが、あくまで奴はおまけ、ツマミみてえなもんだ。


 複雑な王城の内部を駆け抜け、『影』を始末し、あるいは無視し、時に逃げ、無茶と無謀を重ねて突破する。


 構造は頭に入ってる。

 屋上から放たれる矢を確認し、嫌な予感を覚えるも、今は行くしかないと決め付けて走った。


    ※   ※   ※


 団長が死んだと聞いた時、自分を繋ぎ止めていたものが一斉に解けたのを感じた。


 依存していたつもりはなかった。

 近衛兵団は属する国の統制からも離れた組織だ。

 激しい戦闘で指揮官を失うことは珍しくない。誰よりも声を張り上げ、味方に守られる指揮官というのは、敵から狙われやすい。そうやって指揮官が死んでも近衛兵団は当たり前の顔で戦闘を続けられた。全員が一度は指揮経験を積むっていう決まりがあったのもあるが、基本的に誰かへ頼って生きるような可愛げのある奴らじゃない。指揮が確かなら従うが、駄目と思えば従わないし、失敗したフリして修正するとか、まあ色々やる。


 だからマグナス=ハーツバースが死んだ所で何も変わらないと思っていたのに、どうにも俺だけじゃなく、近衛兵団全体が腑抜けの集団に成り下がろうとしていたんだ。


 俺たちは本来居るべき場所に居られなかった、はみ出し者の集団だ。

 賊上がりってのも、要するに軍とか村落から飛び出した連中が主体で、一般に食い詰めた平民が旅人を襲うのとはまた違う。

 貴族社会の面倒くささから飛び出して、あるいは命の危険を抱えて逃げ込んできた阿呆共も居れば、敵から引っ張り込んだ変わり者や、前副団長なんかが口説き落とした間諜崩れなんてのも居たな。暗殺者を叩き伏せて命が惜しければ従えなんて言って、他国からの刺客まで利用するんだから本当になぁ。


 陽の下で胸を張って生きていける奴は少ない。


 なのにあの時、俺たちは栄光の中に居た。


 敵から畏怖され、味方からも怖れられて、なのに勝利を重ねるほど称賛の声が増えていった。


 勝利は、俺たちが存在を証明出来る唯一の手段だ。


 だからまだやっていけた筈だ。団長一人が居なくなったって、少々戦力が傾いていたって、勝ち続けることは出来た筈なんだ。


 結局俺らは皆して、あの馬鹿に惚れ込んでたんだろう。

 称賛を浴びることだけじゃなく、その先で誇らしげに笑うあの姿と共に在る、それが堪らなく嬉しかった。

 あの内乱だって結構準備に時間が掛かったんだ。団長の望みなら、故郷が戦火に飲まれてもいいかと思った。俺はそう長い方じゃなかったが、数回戦場を共にしただけでああだったんだ、他の連中ならどれほど肩を落としたんだろうな。


 国の憂いはまだ残ってるが、正直興味も湧かなかった。


 勝手にやってくれと、王からの要請すら断った。



 そして、アイツがやってきた。



 ハイリアだ。先日出された近衛兵団の再編案を引っ提げて、ダレて怠ける連中へ片っ端から声を掛けていった。皆、最初の内は相手にしなかった。確かにマグナスが信任して、それを受け継いだ男だが、俺たちからすれば次代の人間。内乱でも戦うガキ共には羨望みたいのを持ったが、やっぱり俺たちとは違う。

 むしろ補佐なんて立場で俺たちとこれ以上繋がりを持つのは経歴を汚すことになるって思って、喧嘩腰に煽ったり、挑発したり、拒絶した奴も多かった。

 だがしばらくすると何人かが手伝いを始め、次に裏方連中が尋ねに来た。仕方なく話を聞いてみたら、ハイリアの話を受けた一部がアレコレ仕事を回したらしい。

 勝手をするなと文句を言いに行けば、やっときたのかと纏めた仕事の確認を頼むと書類を詰まれる。

 クソガキが粋がるなと見てみれば意外なほどよく出来ていたし、なんというか俺たち好みの案も多く提出されていた。


 ゆっくり俺たちは活力を取り戻していった。


 夜は酒を飲み明かし、昼は働いて、たまに腕試しや訓練を一緒して怒鳴り合う。


 別にマグナスが、あのクソ団長が信じたからだけじゃねえんだ。


 アイツが腑抜けた俺らを蘇らせた。


 ずっと蹴ってた守備隊や見習いからの人員補充も議題に上げ始め、教導隊なんてご大層なものにまで俺たちを持ち上げやがった。


 上手くはなかったが、初めて近衛らしいこともやった。

 軋轢は生んだが、ちょっとくれぇご愛嬌だろ。

 いつも戦場を駆け回って殺すの殺されるのを繰り返していた俺たちに、平穏って呼べるような時間が出来た。


 ある時、仕事上で付き合いのあった事務官の女と一人の馬鹿が結婚するとか言い出した。そいつはすぐに子ども作って、近衛兵団を抜けていった。今は女の故郷へ行って田畑を耕しているって話だ。そういう道があるんだと、そういう道が生まれたんだと、その時初めて気付いた。


 未来が見えた。

 俺たちにも、そういう生き方が出来るんだと分かった。


 十分だ。


 十分なんだよ。


    ※   ※   ※


 王城の最上階へと駆け上がり、屋上へと飛び乗って、ようやくその可能性に気付けた。


「チッ!! 全員下へ逃げろ!! 全力で――――」


 屋上にティリアナは居ない。

 設置された罠だけが遠隔で発射され続けていて、俺たちがアホ面下げて飛び乗ったことも何処かで見ている筈だ。だったら、この状況はあまりにも致命的。


「んあ? 副団長、これぁ何がどうなって」

「クソがァ……!!」


 間抜けの首根っこを掴んで跳び下りようとするが、既に起動した罠が膨大な魔術光を撒き散らし始めていて、それが眼下の王城全てに広がっていることにさえ、見てからようやく気付く始末。


 誘き寄せられた。


 最初から王城に陣取って、主だった場所全てに部隊を配置していればこうはならなかった。


 甘い手と嗤いながら安住し、最善を怠って、挙句ガキ共にまで狙いを読まれて負担を被らせ、最後にゃ敵の罠に掛かって守るべき王城を吹き飛ばされる。


 ヤキが回るにも程があんだろ俺ァよお!

 間抜けの選別もせずに連れ込んで判断を鈍らせ、どうにかする時間さえも浪費して、それが近衛兵団の副団長って呼べるのかよ!!


 落ちていく。

 落下していく。

 どれだけ優れた『剣』だろうと、空中で取れる手なんて限られてる。

 折角の古参兵まで道ずれにして。


 どうにも毎回、最後の最後で下手打っちまうんだよな……。


「…………これで終わりか」


 眺めた丘陵地帯より飛来した馬鹿みたいにデカい一矢が、あっという間に視界を埋め尽くしていった。


「先逝ってるぜ」


 振り返った先、南部平原のど真ん中に、馬鹿みたいに巨大な翼持つ化け物が、姿を現していた。

 あれが敵。

 ハイリアが越えていくべき相手。


 あぁ、まあ、後はお前らの番って、ことだよな……。


「あばよ」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ