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フィオーラ=トーケンシエル
門柱に掲げられた飾り紐を見て、私は眉を落とした。
染めの鮮やかな紐は随分と前に流行したものらしく、小物とか荷物とか腰帯とか、髪なんかにも括りつける装飾品の一つだ。
最近増えている根付とは少し違う。セイラムへの信仰が広まっていく過程で潰されてきた土着の信仰とか、そういうのを由来とする儀式用服に使われていたものが原型なんだそうだ。教会への不信感が強まった時代、反教会を意味するものとして広まった背景がある。
荷物を抱えなおして扉を潜る。
風に揺れる飾り紐が、誰かの髪で揺れる光景と重なった。
「居た。どこ行ってたんだフィオーラ」
さて誰かに荷物を丸投げしようかなと思っていたら、ちょうど良く下働きの少年が寄ってきた。
日焼けしたなぁ……、来た当初は白っぽかったのに、いまや焼けた肌がはっきり分かるほどだ。
陰に入って一心地、と思ったら気持ち良いくらいに太陽の子をしてるから、お姉さんは眩しくて目を細める。
「ん、ヒースくん、ちょうどいいからコレ奥に持ってって」
強引に押し付ける。この場合、話を聞いた方が負けだ。
なんて大人のズルさこそを押し付けたら、彼はあっさり受け取って、思いの外よろめくことなくこちらへ半身を向けた。
「奥だな。急ぎじゃないけど話あるから待っててくれ」
「じゃあ厨房に用事あるからその後でいい?」
「わかった。食堂行く」
はーい、と返事を聞くや否や、少年は私が一抱えにしてえっちらおっちら運んできたものを軽々持って行ってしまった。
まだまだ小さいけど、彼もまた男の子なんだなぁとしみじみ思う。
それから食堂へ向かう途中で二度ほど呼び止められつつ到着すると、食堂のカウンターで厨房の人と話していたヒースくんが手を挙げて迎えた。早い。
「なんでお前の方が遅いんだよ」
「色々忙しいのよ、大人のお姉さんは」
言うと、ヒースくんは口を曲げて押し黙る。
彼は子ども扱いを嫌う。自分は一人前なんだってどんな仕事でも頑張ってくれるから助かるんだけど、いつだってちょっと余裕がないからまだまだ可愛らしい。
下手に口答えすると余計に子どもっぽいとでも思っているんだろう。
不満そうなのを隠せてないよ、とは言わないでおいてあげましょう。
「じゃあそっちの用事を先に聞くよ」
「わかった」
用件は今日団長らが戻ってくるって話だった。
付帯する話も幾つかあって、なるほどさっき言われたら玄関で立ち話になってただろうね。
幾つか指示を出して、ちょうど良く食堂に居たから厨房にも話を通した。欲しい品書きを受け取り、別の子を使いに走らせる。量が多くなるから支払いも受け取りも後で荷車使って回っていかなきゃいけないかな。近衛兵団の証明章を渡してあるから注文書一つで大体どうにかなる。
ここの子は状況に鍛えられてどんどんと逞しくなる。
逞しすぎて、渡した証明章を自分向けに使ったり、だれぞに利用させたりし始めるから管理が大変だ。なにせ団員のおじさんらがあれこれと入れ知恵して分け前を受け取ったりしてるから厄介過ぎる。
ホント、証明章の悪用乱用はだめだよねー。ネー。
「そういえばさ」
周りに誰も居なくなってから、ヒースくんにしては珍しく声を落として話を振って来た。
なんとなく、何を問われるかが分かる。
「誰の、か、分かるか?」
表の飾り紐のことだろう。
「俺、知ってる奴かな。だったら分かんないの、嫌でさ」
「ううん。ヒースくんが来る前に王都の偵察へ出てた人だから」
「そっか」
「うん」
彼の視線が出入り口へ向かったのが分かる。
それでも、と、少年は何かを思うんだろう。
私は彼に聞こえないようそっと息を抜き、上向いた。
なんの動きもない天井を眺めて周囲の音を聞く。
少年は飾り立てもせずため息をつき、もう一度ついて、
「よし! 俺、まだやることあるから行ってくる!」
元気か空元気か、だけど力強い一歩を踏んで食堂を飛び出して行った。
見送って、手持ち無沙汰になった私はふっとカウンター脇へと目を向けた。
※ ※ ※
最近、珈琲にハマりつつある。
というのも、私はあんまりお酒に強くなくて、その上酒宴が始まると忙しく動き回っていることが多いから、酔ってはしゃぐということを知らない。味が分からないでもないけど、酒臭い息を浴びせながら覆い被さってくる男の記憶が思い出されて気分良く酔えないだけだと思う。
珈琲は団長に教わった。
近衛兵団団長ディラン=ゴッツバックさん。
彼は酒豪ではあるけど、酒宴での豪快な振舞いは半分くらい演技だと私は最近知った。半分くらいは本気で遊んでるから、そんな良いように考えるのは癪だけどね。
酒宴の裏方として動き回り、潰れた馬鹿たちを整理して、残った摘まみで頑張った皆を集めて晩餐を愉しむ。下働きには小さいのが多いけど、私くらいのや、もっと上の人もそこそこ増えてきた。おばさんたちの談笑を聞きながらお腹を満たして、適当な理由をつけて席を立つというのがいつもの流れだ。
やっぱりまだまだ、こっちの人たちに馴染めてない私ははみ出し者。
来たくて来たんじゃない。
君たちは受け入れたのかも知れないけど、私は未だに怖くなる時があるし、腹の立つ時だってある。
過去は過去と流すには、血は未だに傷口から流れ続けているんだから。
宴も酣、静かになった酒宴場を一人で歩いていると、声を掛けてくるのが彼だった。
団長は最初、甘いお菓子を餌に私を誘っていたけど、その際に彼が飲んでいる独特な飲み物について尋ねると、恐る恐るといった様子で差し出してきたのが珈琲だ。
最初はただ苦くて、なんでこんなのを飲んでるんだと思った。だけど、甘いお菓子を口にして、それからブラックの珈琲を飲むと、なんとも言えないコクや香ばしさを強く感じ取ることが出来た。酸味、苦味、そういう要素があるのだと気付くと、中々に珈琲は奥深い。
これまで飲み友達が居なかったらしい団長は度々私を誘って新しい豆の味を教えてくれた。
同じ種でも産地によって味わいが変わること、炒り方一つで泥水にもなれば果実水にも負けないくらいの清涼感を出せることなんかを知ると、今度は付け合せの品についてこだわり始めた。
食事の好みなんてとうの昔に忘れたはずなのに、一つこだわり始めると別のものにまで気持ちが向くんだから不思議だ。
「団長はブランデーと一緒に飲むのが好きみたいなんだよね。ブランデーって分かる?」
果実酒を更に蒸留したお酒だ。
とんでもなく酒精がキツく、甘い。
兵団の倉庫には治療用にも使えるからって粗製品が多くあるけど、たまに酒宴で若い子を酔わせて遊ぶのに使われているのは知っている。
私は裏手にある石垣に腰掛けてサンドウィッチを齧り、珈琲を飲む。
「まあ二人とも共通してるのは、珈琲に砂糖とか牛乳入れるのは間違いだってことでね。甘くするなら最初から甘いの飲めばいいんだよ。珈琲は苦いもの。苦く愉しむことが一番大切」
甘さは外から持って来る。
お酒が肴で化けるように、珈琲だって付け合せるもので大きく変わるんだと多くの人は分かってないんだと思う。
余計なものを入れるほどに本来の深みとか、香ばしさなんかが損なわれる。
「私はコレかなぁ。白パン。ふわっとしてて、小麦を使ったパンにバター塗って、いろんなものを挟んだサンドウィッチ。ライ麦とかの黒パンとか、バケットでもいいんだけど、野菜とかパンとしての甘みを直に受け取りやすいのはやっぱり白い食パンの、ミミを落とした奴だと思うの」
ミミは揚げて砂糖を塗せば珈琲受けの菓子にもなる。
全くなんて出来の良い子なんでしょう。
デュッセンドルフからミッデルハイムへ移るにあたって、いつの間にか雑務全般を押し付けられた時は散々苦労させられたけど、程好い手抜きを覚えた今となっては経費で高額な白パンを購入できる。食堂が充実して皆喜んでるし、文句言ってた副団長だって髪に良いっていう海藻類を仕入れるようになってからは強くは出てこない。別の部分を圧迫して釣り合いを取らせても少々足が出るけど、一度美味しいを知れば中々元に戻れないのが人間だ。
最近では保存食の改良まで進んでいるから、貴族向けの会合なんかで良い食事を貰ってる団長と副団長が文句を言っても皆から睨まれるだけだ。
じゃあ面倒くさい会合任せたな、って言われたら皆して逃げ出すんだけどさ。
ともあれ士気向上にも繋がってるという大義名分を得たので、私は日々最適な珈琲のお供を求めて食材を買い漁り、団長の隠し金庫から豆を拝借する。
ミッデルハイムは素晴らしい所だ。
世界中から珍しいものが集まる。
厨房長も色んな食材や調味料を好きに使えてごきげんで、完全にこちら側である。
「こっちの人は紅茶ばっかり飲んでないで珈琲飲めばいいよね。眠気覚ましにもいいしさ」
紅茶のカップほど小洒落ていないから、持ち歩いてそこらで飲むのもそんな気にならない。
厚みがあって冷めにくい陶器のコップを探すのは苦労したけど、今ではお気に入りの一品だ。
「それで――――」
五月蝿く喋り続けていた言葉が不意に止まる。
風が吹いたからだ。
声を掛けていた相手の、くすんだ金髪が揺れる。
目元から後ろをすっぽり覆った仮面のせいで全体は見えないけど、元はもっと綺麗な髪だったんだろうなと思う。だって、今はとても荒れていて、纏めた後ろ髪を肩から前へ垂らしているけど、その括り方だって適当だ。
鼻の筋はくっきりしていて、顎元や首は痩せて見える。
まるで何年も何年も砂塵に晒されて、乾いてしまったみたいに。
呆けて見ていると、ずっと前を見詰めていた彼がほんの僅か、こちらへ顎先を向ける。
心配したのかな?
勝手に思う。
この、背筋に鉄の棒でも入っているんじゃないかと思える仮面の人は、近衛兵団でもどういう立場なのかよく分からない。団長や副団長に聞いてもはぐらかされるし、他の人も同じか、知らないみたいだ。
日がな一日ここに座っていて、じっと景色を眺めている。
たまに姿が見えないことはあるけど、酒宴にも参加せず、兵団の誰かが声を掛けているというのを見たことが無い。
変わりにジークくんの友だちとか、偉いっぽい人が会いに来て、何かを話しているのを遠巻きに見たことはある。
大抵は長く続かず、彼が去ってしまうか追い返されるかだ。
そうだ。声。
私は殆ど彼の声を聞いたことがない。
どうしてかは分からないけど、稀に喋ったかと思えば聞き取るのがやっとみたいな小さくて掠れた声だ。
他の人とは普通に話しているっぽいのに、なんでだと追求してみたいけど、なんとなく出来ないでいる。
「ねえ」
思い付きだった。
頭の中で、門柱に掲げられた飾り紐が揺れている。
コップがぶら下げられてるのは、ちょっと違うなぁ、なんて。
「買い物行きたいんだけど、用心棒、してくれない?」
いつもより少しだけこちらを向いた顎が下へ落ちるまで、私はしつこく粘ってやった。
※ ※ ※
ミッデルハイムでは街を歩けば娯楽にぶつかる。
決められた区画ではあるけど自由市が開かれてるし、広場には三つも四つも大道芸がおり、ちょっと裏道へ入ると小額で借りることの出来る野晒しの劇場がある。そこで演奏をしていることもあれば演劇をしていることもある。神様聖女様のありがたいお話もやってるけど、それほど人気は無いみたい。珍しいのになると学者先生が講義をしていたりして、人によっては物凄い人気がある。
現在領主であるウィンダーベル家は微妙な立場だけど、だからこそとでも言うように活気で溢れている。
当主のオラント様はここでは物凄く人気があるようで、専門の肖像画を集めた画廊には興奮した奥様方が詰め掛けていた。
知識の解放者、という呼び名はよく聞かされる。
たまに、というか結構批判的な内容の演目も目にするんだけど、偉い人も含めて誰も気にしていないのが凄い。
なんでも過去、ウィンダーベル家の悪事を暴く、みたいな劇で、途中から本人が本人役で出演して観客を驚かせたことがあるとかないとか。
ジークくんのやってることを遠巻きに見てると凄いなぁとは思うけど、あの義理のお父さんも大概凄い。
そんなミッデルハイムの中央街へ足を向けると、予想以上にフーリア人の姿を見る。
どうにもこの領地では試験的に奴隷解放令が発せられ、今まで人じゃなかったらしい私たちにも身分が与えられたんだと。
あぁそうですか、という感想は置いておいて、とりあえずは当然のように風当たりが強くなった。
全部がそうじゃないにせよ、ここまで自由を標榜する場所でさえそうなんだから、ホルノス全土へ広げていくことの大変さは考えるまでも無い。そういうの、私が考えることじゃないけどね。
「うーん、コレかなぁ……でもなんか違うなぁ」
周囲から向けられる視線を感じながら小物屋を物色する。
自由市にある掘っ立て小屋にも等しい店だけど、あちこち旅してきたと別の客に自慢していた店主の言葉に嘘はないと思えるくらい、いろんなものがある。
櫛一つとっても多彩だ。素材や形状、飾りの絵や全体像としての印象、色合いなんかには土地柄が凄く出るらしい。
「ねえ、こっちとこっち、どっちが良いと思う?」
物言わぬ用心棒に話を振ってみるけど反応は薄い。
いいよ、別に期待して聞いた訳じゃないし。
引っ張りまわしておいて放置するのがいやなだけだ。
「こっちの明るいのもいいし、こっちの暗めのも味があるというか」
「触るんなら買ってってくれ」
店主から木屑みたいにざらついた声が掛かる。
私は手にしている櫛を見て口を引き結ぶ。
悩みすぎてつい暗めの方を手にとってしまった。
気を付けていたのにしまったしまった。
「んー、こっちでいいか。はいはい、コレ頂戴」
「そっちのもだ」
「こっちのは触ってないよ」
言ったのに、店主が要求してきたのは二つ分の値段だった。
「触ってないんですけど」
「ふん」
聞く耳持たない、って感じ。
そもそもさっき隣でやかましかった男女はべたべた触ってたのにね。
フーリア人が触ったものは売り物になりませんかそうですか。
慣れているとはいえ、変に揉めても面倒くさいだけだ。
仕事で来てるなら証明章見せてでも否定するんだけど、今は個人の時間だし、私のお金だ。
いつも通り流して財布を取り出そうとした。
「今のような押し売りは処罰される場合もあるが構わないな」
仮面の人が半歩出て、店主へ抗議した。
私は驚いて止めるのが遅れる。
こういう人はそこらの兵士にお金渡して話を纏めてしまうから、揉めると更に厄介ごとが増えてしまう。なにより自由民よりずっと下の旧奴隷階級の言い分は無視されてしまうだろう。
ただ、珍妙な仮面を付けているとはいえ、彼が身に付けているのは私でも分かるくらい質の良い服で、貴族と言われれば納得する。
「旦那……勘弁してくださいよ」
「ミッデルハイムではもう彼女は奴隷階級ではない。身分が劣るのは事実だが、あまり外聞の良い話ではないだろう」
「そうですけど、長々と居座られてるんだ、こっちだって商売なのは分かって貰いたい」
あー確かに私、結構ここで悩んでたよね。
「ごめんなさい。ほら、いいから買ってこうよ。お金はまあ、なんとかなるし」
「どちらが欲しい?」
だっていうのに二つをこちらへ差し出してくる。
思ってたより意地を張る人だ。面倒ごとを避けたい私は適当に最初言っていた暗い方を取ろうとしたけど、それより早く彼が明るい方をこちらの髪へ重ねるように掲げた。
「こちらの方が合っているな。店主、少し多めに払うから、もう一つは返させてくれ」
「…………わかりました。はぁ、今回は旦那に負けときます」
あれあれあれ、と思っていたら、支払いまでされてしまい、私は視線を彷徨わせる。
なんだか変なことが起きている。
私のものを買ったのに、私の財布からお金が出て行かない。じゃなくて、
「あ、あの、お金」
「そっちの旦那から貰ったんで、いらんよ」
「お金、私の、お金、出す」
店主に拒否されたので隣へ向くと、明るい色の櫛が差し出された。
「俺が買ったものだ。金はいい」
しばし。
しばし考えた。
これ以上喋るつもりはないのか、仮面の人は口を閉じたままこっちを見てる。
手を伸ばす。色々と考えてしまうことはあるけれど、今は一つだけで構わない。
揺れる飾り紐。
明るい色の櫛。
そういったものを望んで、まるで違う所から来たこの贈り物を、私は、
「ごめんなさい。受け取れないよ」
差し出すその手を押して、拒絶した。
だってこれは、繋がりになってしまう気がしたから。
※ ※ ※
メルトは死にとり憑かれている。
あの子が何かを振り切って、多くの人が前を向いて歩いていたとしても、いずれあの子が置き去りにされてしまうのは変わらない。
現状はなにも変わってない。
ふと思うのは、どうしてそこまで拘っているのかということだ。
私とメルトそんなに仲の良い姉妹じゃなかった。
自分より遥かに出来の良い妹を心底誇らしく思えたのならどんなに良かったか。
でも私はあの子が見出されるずっと前から厳しい鍛錬を受けさせられ、出来なければ食事だって摂らせて貰えなくて、それでも厳しさは期待なんだと信じて、父に応えられるようにって頑張ってきたんだ。父も、私に食事を摂らせない時は意地でも何も食べなかった。
あの子ほど大真面目ではなかったし、時折逃げ出して遊んだりはした。夜には物凄く怒られて、私も頑張らないとっていつもより打ち込んだりする。妹が同じ厳しさに晒されないことは不満じゃなくて、強いお姉ちゃんが守ってやろう、なんて考えて、私なりに愛情を向けていた気がする。
上から見下していたのかな?
劣っていると思っていたから愛せたのかな?
言い繕ったり、目を背けたり、良い感じの言葉で誤魔化すことは出来る。
姉妹だもん、家族だもん、年下だもん、当然じゃないって。
私はきっとメルトを下に見ていた。
だから呆気無く追い抜かれ、父の厳しい目が私からあの子へ向いたとき、今までの何もかもを放り捨てて遊びまわった。
小さい漁村だったからそういうのはあっという間に広まる。丘の上に住む都落ちの家の、妹に立場を奪われた可愛そうなお姉さん。周囲とは仲良くしていたから悪し様に言われることは稀だったけど、小さな頃に受ける憐れみとか気遣いは罵倒と同じくらいに腹立たしいし、惨めだ。
仲良くなった子といつか村を出て行こうって計画も立てたけど、結局誰もが家業を継ぐと言って離れていった。
手作りの地図を破り捨て、やることもなくなって、諦めて、大人しく家事を覚えようとしていた時に、メルトは……巫女に選ばれた。
父は、きっと精一杯の気遣いと愛情で距離を計りながら、真剣に私と向き合ってくれたと思う。
だけど私はある日、父に、母と作った食事を投げ付けて家を飛び出した。
妹に立場を奪われて、仲間と作った小さな夢すら裏切られて、なのにある日ポンと要らなくなったからと渡された昔の居場所へ促されて、大人しく収まるなんて冗談じゃないって思った。
小奇麗な服を着て、近くの大きな都へ通う妹の姿を遠目に見ていた。
巫女を輩出するというのは名誉なことだし、いずれは村付きとなって遠くの出来事や多くの言葉を聞くことが出来る。
娯楽の乏しい寂れた村からすれば、些細な時事だって十分興味深い。
皆が大喜びで送り出し、同時に、かつての場所に戻れたかわいそうな姉を見て、良かったねぇ、なんて言ってくる。
あの頃私は、メルトなんて居なければいいって思ってた。
皆と作った秘密基地で、お腹をすかせながら雨を見る。
海が荒れるとやることがないから、村はいつもより静かになる。
秘密基地って言っても、山道から少し外れた場所にある掘っ立て小屋で、稀に魚が取れないときに狩りをする用の拠点だ。あんまり使われていないから、勝手に色々持ち込んで集まる場所に使っていた。
静かに振り続ける雨の音を聞きながら、どうにもならない、どうにも出来ない自分に引き摺られるようにして俯いていた。
世界がこのまま雨に沈んでしまえばどんなに楽かと、馬鹿なことを考えていた時だった。
「姉さん……?」
開けっ放しだった扉を潜って、小奇麗なお仕着せのメルトが現れた。
あの子は服をずぶ濡れにして、結った髪を崩し、なんだか泣きそうな顔で私を見ていた。
「どうしたのそんな格好で」
「ええと、あるいてたら、雨がふってきて」
「じゃなくて! いつも送り迎えしてた人は!?」
「今日はいそいでやることがあるって言ってたから、あぶない所をこえた所で帰ってもらったの」
馬鹿じゃないかと思った。こんな、小さな子どもを山道で放り出すなんて!
「服。ずぶ濡れじゃない」
言うとメルトは顔をくしゃりと歪めて俯いた。
「ごめんなさい」
「それ、お母さんが昔着てた大切な奴でしょ」
言葉が出なかったのか、こくりと頷くだけ。
雨じゃない雫が落ちるのを見て、私はメルトに駆け寄った。
「どの道この雨じゃ戻るのも大変だから、ここで乾かしちゃお。ほら脱いだ脱いだ」
「で、でもこれ、着かたがわからなくて」
「それお母さんと着せてあげたの誰だと思ってるの。そのままだと熱出すよ、はやく」
土間から引っ張りあげて、やや乱暴に服をひん剥いていく。
下着だけになったメルトにはムシロの粗末な服を放り投げ、囲炉裏に火を熾した。
ついでに鍋を引っ掛けて、瓶にあった水を注ぐ。
その時、服を被るようにして着替えたメルトが私を見て言った。
「姉さんも、濡れて……」
「ん、あれ?」
どうやらびしょ濡れの分厚い服を抱え込んだりしていたから、私まで結構濡れてしまったらしい。滴るほどじゃないから、火に当たってれば乾くだろう。
「かわかそ?」
「このままでいいよ。大したことないし」
「かぜひくから」
ぐい、と腕を掴まれて、私も意地を張る。
「いいよ。べつに」
「でも」
「しつこい」
「だめ。きがえるの」
「うるさい」
「ねえさん……」
「私なんかどうだっていいでしょ!!」
静かな雨の音が掻き消えた。
囲炉裏で火が熾り、薪がはじけて火の粉が散る。
振り払われた手を見て、メルトは泣きそうな顔をしていた。
そこで思う。
私は多分、本当に久しぶりに、この子の顔を見た。
「アンタは大切な大切な巫女様なんだから大事にされるのが当然なの! いいからそこで火に当たっててよ! 私が風邪引こうが死のうが誰も気になんかしないじゃない! お父さんもお母さんもメルトメルトメルトって! ほっといてよ!! 私はっ、いいの! アンタとは違うんだから……っ」
見る見る内に涙を流し、嗚咽する姿にたじろぐまいと、殊更強く叫んだと思う。
出来が良くて、明るくて皆から好かれるメルトじゃあ、滅多なことで怒鳴られたりはしないんだろう。
慣れてないから過剰に反応する。こんなの私はいつものことだ。男の子と喧嘩して殴られたこともある。絶対にやり返してやったけど。
吐く息荒く、肩を揺らす私に怯えながらも、まだ手が伸びてくる。
「やだ」
なにを、と問おうとした。
「姉さん、しんじゃやだ……」
息が詰まった。
意地を張って堪えようとしたけど、なんでか涙が零れていって、両手を出して抱きつくような動きを見せたメルトに、私は顔を覆うようにして手を出し留めた。
「……くっついたらまた濡れるでしょ。わかった。着替えるからそっち向いてて。火当たってなさい」
まだも寄ってこようとしてくるから、強引に後ろを向かせて囲炉裏へ座らせた。
メルトがじっと火を眺めて膝を抱えているのを確認してから、私はこっそり涙を拭いて鼻を啜った。
お仕着せとは違い、こんな村での普段着なんてみんな引っ掛ける程度のものだ。
勢い良く脱ぎ捨てて、着替えになる服を探していたら、後ろからぽつりと声がする。
「姉さんのむね、お母さんみたいになってる……」
「ちょっと!? なんでこっち見てるの止めてよ!?」
悲鳴みたいに叫んで胸を隠した。
振り向くとメルトがしまったって顔をして囲炉裏へ向き直るけど、私は熱くなった顔とか荒くなった呼吸を落ち着かせるのに必死だった。そしてなんとか一着、大人向けのぶかぶかなのを見つけて被ると私は素知らぬ顔で囲炉裏へ座る。最近気付くまでは丸見えで泳いでたりしたのに、今や胸元が見えてるのが恥ずかしい。指摘された直後だから尚更だ。
どうしても隙間の出来る服の前を掻き抱いて息を落とすと、入れた水が沸騰し始めていた。鍋と水面、触れ合う縁の部分がふつふつと泡立ってる。
何か器無かったっけと視線を周囲へ向けた所で、
「どんなかんじなの」
自分のぺったんこなのに触れながら、異様に興味津々といった様子で問い掛けられた。
「うるさいだまって」
「こう、ぷくーって、ふくらむの?」
「アンタもその内分かるから、そん時知りなさい」
ついでに身体が変わり始めた時期にそれを指摘される恥ずかしさを思い知るといい。
コイツの時は徹底的に苛めてやろう、そう誓いながら縁の欠けた茶碗を見つけてお湯を掬った。
「ほら、白湯だけど、濡れた身体あったまるから、飲んでなさい」
素直に受け取ったメルトはそれでも、
「さわってみていい?」
「だめ。お母さんに頼んでよ」
手で顔を仰ぐ。
私、火に当たってる意味無いよね。
立ち上がって外を見る。一時弱まった気がしたけど、まだまだ雨は止みそうにない。メルトもここまで濡れたまま歩いてきて疲れただろう。止むか、なんとなれば朝まで休んで山を降りればいい。戻るはずの妹が戻らなければ、心配して探しに来るかもしれないし。
近くに茸とかあったよなぁ、なんて考えつつ視線を戻したのと、白湯をちびちび飲んでいたメルトが倒れるのは同時だった。
不安になって駆け寄ると、明らかに呼吸が熱い。
額に手をやり、思わぬ熱さに驚いた。
たった今、急に熱があがったんだろうか。
そんな訳ない。
落ち着いて状態が悪くなったにせよ、不調は感じ取っていたはずだ。
ここへ来て私は不平不満を言うのを止めた。
意地を張ったりはしてない。腹が立ってたし、焦りもあった。山を降りていって人を呼ぶことも考えたけど、かなり距離があるからこの子を長時間放置することになってしまう。雨の中を背負って降りていくなんて論外だ。
小屋中を駆け回り、食べられそうなものと着れるもの、寝床を作れそうなものを探した。
けど子どもらが基地にして遊んでいても気付かれなかったような場所に、目ぼしいものは殆ど無かった。精々が持ち込まれた玩具や工具になる短剣とか、その程度。
私はムシロの服を何枚もメルトへ着せ、薪と水を追加して小屋を飛び出した。
周辺は皆で何度も探索したから、欲しいものはすぐ集まった。
小屋へ戻るとメルトが同じ格好で横になっていて、そっと息を落とす。
「ちょっと待っててね。茸とか山菜とか取ってきたから、簡単に作っちゃう。あと最初にコレ飲んで」
葉を器に入れて、白湯で軽く煮出しただけの汁。
本当は干して薬草にするんだけど、少しはマシになる筈だ。
「にがい……」
「我慢して飲みなさい。ほら、こぼしてる」
結局身体を支えてやって、器までこっちで持って飲ませてやった。
「んふふ」
甘えたな奴だ。
「はい、残りは自分で飲むように」
沸騰してきたので急いで具材を切って鍋へ放り込む。
裏手に干し肉があったのを思い出したおかげで、それなりに精が付きそうではある。
前にたまたま、蔦に絡まって動けなくなってる奴を皆で仕留めた分だ。皮はお金になったし、持って帰った肉は喜ばれた。一部を、いつか旅立つ時の食料に、なんて言って干してたのを忘れてたんだ。ぶら下がってた下の方は齧られちゃってたけど、上の方は無事だ。
いまいちな鍋を二人で食べて、というか食べさせつつ食べて、寒がるメルトを仕方なく抱いて火の番をした。
気付けば辺りは真っ暗だった。
うっかり暗くなるまで居た事はあるけど、朝まで過ごしたことはない。
自分の家とは違う場所、親の居ない、助けてくれる人の居ない場所で眠るというのは、夜に見る森の中みたいな不安をかき立てる。
泣き出さずにいられたのは、メルトを助けなきゃと思っているからだ。
私は、メルトが嫌いだ。
自分より優れた妹を手放しで歓迎出切るような、そんな意地の無い姉では居られない。
なにも出来ない癖に意地だけは張るんだ。メルトは私の妹で、私はメルトのお姉さんなんだから。熱でしんどい時くらい、なんの損得もなく助けるんだ。
髪を解いて楽にしてやると、それだけで血の巡りが良くなったような気がする。
今度両親と話す時にでも、もう少し楽な結い方にしてやってと訴えよう。
「ねえ」
「んん」
「修行する都って、どんな感じ?」
「んん、きれいで、人がいっぱいいる」
もっとあるだろう、もっと。
「あっちで何日か泊まることあるよね。大丈夫なの」
返答はしばらく無かった。
最初は母と一緒に行ってたけど、修練の場には巫女以外入れないから、都で高いお金を払って泊まることになってしまう。没落したウチの家には負担が大き過ぎて、送り迎えもあちらへ頼むことになった。
だからこの子は、こんな歳で家族から離れて過ごす時があるんだ。
「……寂しいよね。メルト、甘えんぼだし」
「甘えてないもん」
甘えてるよ。
だって、と、熱のある妹を抱いてやりながら思う。
「アンタさっきからずっと胸触ってるし」
「んん」
「ねえ」
「ん……」
「揉むのはやめてくれない?」
「……やだ」
発育に興味津々の妹から胸を玩具にされつつ、出来の悪い姉はため息をつく。
最近、小奇麗な格好をしたメルトばかり見過ぎていたんだろう。
家の中では顔を合わせなかったし、というか私があんまり家に居なかったし、村を出て行くこの子を遠巻きに見てばかりいた。
髪を解いて粗末な格好をすれば、まだまだチビで甘えんぼの、もっと幼かった頃のメルトと変わらないって思える。首の後ろについた印だけが、もう違うってことを教えてくれるけど、それだけだ。
結局朝になって血相変えた大人たちが探しにくるまで、私たちは抱き合ったまま眠りこけていた。
姿の見えなかった私も心配されていたようで、村の人たちからいろいろと声を掛けられた。
ただ、お父さんとお母さんは、私を心配するよりも、
「よくやった」
「熱出したこの子を一人で面倒診たのね。さすが、お姉ちゃんね」
褒めて、認めてくれたことが何よりも嬉しかった。
「とーっぜんでしょーっ」
それからは仕方なく、たまーにお父さんの鍛錬へ付き合うようになり、勉強も少しだけ頑張った。
「姉さん、すごかった」
ついでに、妹から謎の尊敬を勝ち取り、姉としては仕方なく相手をすることが増えた。
相変わらず距離はあったけど、メルトは村を出て行く時、遠巻きに眺める私の方を見て、小さく手を振るようになった。
嫌いだ。
嫌いだけど、お姉さんだから。
あの子を想うのに、それ以上の理由は要らない。
言い訳でも、拠り所でも、なんでもいい。
そういう心だけが自分の中に、たった一つだけ残っているんだから。
※ ※ ※
夜だ。
近衛兵団の拠点となっているお屋敷は、陽が落ち切っても人の出入りがある。
食堂の火は常に維持されていて、簡単だけど食事を摂ることも出切る。
私たち下働きも朝から夕方、そこから夜、更に朝までと交代制で誰かが起きたまま待機してる。
誰も来ない日もあるけど、同じように見張りをしている人は居るから、たまに飲み物とか、摘めるものを差し入れたりする。
実際に数度、侵入者が居て血が流れたりしたから、こんな遅くまでとは言っていられない。今はどうにも、ミッデルハイムや周辺村落の利権を巡って柄の悪いのや貴族様とかと暗闘の真っ最中らしい。そんな余裕があるのかと思うけど、セイラムとやらに勝とうと負けようと明日は続いていくんだから、お金を得る為の手段は変わらず必要なんだろう。彼らの場合は習性と呼んでもいいと、私は思うけどさ。
「昼間暑いのに、夜は冷えるよねぇ」
「それはほら、山の方から吹き降ろしがあるからね」
「急に風も強くなるんだからさ。こないだなんて洗濯物まで飛ばされちまって大慌てさ」
起き出して用を済ませた後、水でも飲もうかと思ったけど、食堂で夜番のおばちゃんたちが愉しくおしゃべり中だった。
「あーあったあった。副団長のパンツが見付からないって探し回った奴」
「汚ったないパンツなんてどうでもいいじゃないって言うと、勝負パンツだかなんだかって」
「うんうん。大きな戦いの時に穿いてて上手くいったとか? パンツ一つで変わりゃしないってのにさ」
入り辛いなぁ、これでも責任者らしいしなぁ、あっちにとっても面倒だろうし、私はもっと面倒だし、どうしようかなぁなんて悩みながら入り口で立ち往生していた。
しかも夜中にパンツパンツって、どんどんあれな方向へ話は進んでいく。やれ誰が上手そうだ下手そうだ、ねちっこい自分勝手、大きい小さい、右か左か、よくまあそんなに話が尽きないねってくらいに語り合ってる。
もういいか、水は諦めよう。
思って踵を返した所で何かにぶつかった。
人だ。
暗がりの中でよく見えないけど、私みたいなフーリア人には無い明るい色の髪が見える。
それが不意に、重なった。のしかかってくる体重と、熱すぎる肌と、気持ちの悪い息。寒気がした。
「ごめんなさーい……」
なんとか我慢して隣をすり抜けていこうとしたら、押し留めるように手が出されてまた息が詰まる。
足を止め、息も止め、強張った身をなんとかしようとするけど上手く行かずに顔を背けた。
最近は結構慣れて来て予め分かってれば大丈夫なことも増えたと思う。ただ不意打ちは駄目だ。特に暗がりに見る金髪は怖ろしい。相手の顔が真っ黒に塗り潰されていて、正体の分からない化け物に食べられていくような気がする。いっそ丸呑みにして殺してくれればいいのに、その気持ちの悪い化け物は私の中に得体の知れないものを植えつけていく。どれだけ洗っても落ちることは無い、膿のようななにか。
失敗した。誰かは知らないけど、こんな夜中に歩き回るんじゃなかった。
「えーっと、ちょっと急いでるのでまた朝にお願いしまーす」
「待ってくれ」
声がしたけど無視して進む。
手を避けて、壁際へ張り付くようにして逃げる。
相手の顔を見るのが怖かった。真っ黒な顔から幾つもの牙が生えて私のお腹に喰らいついてきそうだ。掛かる声もザラついて聞こえ、近くに感じる身体が怖ろしくて堪らない。
「ごめんねー、ちょっと余裕が無いと言うか、無理だから、明日にしてね」
「話がしたいだけだ」
多分、そのつもりは無かったんだろうけど、私の足がもつれて姿勢を崩した。暗がりから伸びる手が支えようとして、肩を掴む。
悲鳴があがった。
遅れて、私のだと気付く。
いつの間にか座りこんでいた。手足が震える、止まらない。
「あ……あの、っ、…………は……」
なんとか言い訳を。取り繕わないとと思うのに、どうしても言葉にならず、お腹が笑って呼吸も上手く出来なくなる。
「どうしたんだい!?」
ここまでになるとおばちゃんたちも気付いた様で、食堂から飛び出してきた。
灯りを持ち出し、私たちを照らす。
息苦しかったけど、なんでもまだ取り繕おうとしていたからか、灯りに照らされた相手をようやく知る。
仮面の、昼間、一緒に買い物をした、人。
私が突き飛ばしたんだろう。反対側の壁で尻餅をつき、固まっている。
この状況は駄目だ。思い、まず灯りを持つおばちゃんへ手を伸ばし、何度も失敗しながら言った。
「らんぼうとかは、されて、ないから。ごめん、私――――」
「いいよ。大体はアンタの事情とか、今のこととか、察してるから。こんなでも女だからね」
良かった。
変な誤解とかで、傷付けないで済む。
「そっちのアンタ、悪気は無かったんだろうけどさ、この子には無闇に触れないでやっておくれ。事情は察しな。悪気が無いなら尚更だよ。それと、口外しないように」
彼は身を起こして一度俯き、すぐに此方を向いた。
足を揃えて折り畳む。こちらの人としては珍しいくらい、綺麗な正座だった。
「すまなかった」
深く下げる頭に私は首を振る。
「だ、だいじょーぶだいじょーぶ。なんていうか、転んだ痛みが忘れられないとか、そんな程度のことだから、だから……」
「アンタは無理しない。ほら、男は行った行った。今は何もしないのが正解だよ。何かしたがるのは男の勝手さ」
「分かった。後を……お願いします」
ついでに騒ぎを聞きつけて顔を出す兵団員らをおばちゃんが追い散らす中、私は暗がりに去っていく仮面の人を眺めていた。
余裕が無くて、今でも頭が混乱してるけど。
「やっぱり、あの声」
お待たせしました。
新章開始です。
おかげさまで一万ポイントの大台に乗る事が出来ました。
なんだかそわそわしてます。今後とも、どうぞお付き合いください。
まだ更新はゆっくりになると思いますが、ご了承ください。
 




