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外伝・護るべき行く末 1

「ぅぅっ・・・」

「! カッツ、しっかりっ」


しばらくして服用した鎮痛剤の効力が出てきた様子で、カツキは痛んでいた頭からゆっくりと手を下ろし虚ろな目で空を見た。

それを見たドリフトはゆっくりと彼の視界に映るように顔をだし、彼の表情を見た。

少し疲れた顔をしているものの、それでもまだ元気そうな方であり行動してもおかしくない様子を見せていた。

その後軽く手を動かし起き上がろうとしていた彼を見て、ドリフトは手を貸し彼の身体を起こす手助けをした。

ゆっくりと起き上がると、カツキは再び路地から顔を出し外の様子をうかがっていた。


路地の先の公道では今でもトライムがメイリーと対峙しており、同じ手法しかないもののそれでも時間稼ぎをしてくれているのが目に見えた。

自分もそんな事が出来たら良いなと思う反面、行動出来ないほどの気持ちの欠落が彼を襲った。

しかしドリフトからしたら手足を軽く動かし何かしようとしている彼を見ると、言葉をかけたくなる様子で優しく肩に手を乗せた。


「カッツ・・・! お願いだ、助けてやってくれ!!」

「・・・」


戦う気力を持っていなかったカツキの代わりに対峙していたトライムを見て、ドリフトは必死に説得していた。

たとえ今の彼にそんな事をしてもらうなど無理であっても、それでも彼はしてほしい事だけを素直に伝えていた。

大好きな彼にそう言われ、カツキは返答に困りつつ視線をいろんな方向へと向け悩んでいた。


「・・・でも、俺は馬鹿で身勝手で・・・ 仕えないって言われるほどの無能だし。 ドリに頼まれても、俺がなんか出来るわけ・・・ない。」

「そんな事無い・・・ カッツは何時だって、俺と一緒に居たいって言ってずっと俺の事を好きでいてくれる! それだけでも出来ないなんて言えないだろ!?」

「・・・」


目の前に立ちはだかる敵を目にし、立ち向かう事すら出来ないでいる彼は呟きながらも彼にそう言った。

もちろんドリフトもその事は理解しており、それでも彼自身を『仕えない』なんて思っていない事を伝えつつ地面に置かれていた手を握った。

触れた手の感触を感じ、カツキはゆっくりと彼の顔を見た。


「お前は仕えなくなんてない。 俺はカッツが好きだし、カッツは俺の事が好きなんだろ?」

「・・・」

「それだけでも、立派に出来ている気持ちだって俺は思うぜ・・・? もし今お前自身が何も出来ていないっていうんだったら、またこれから創りだせばいいんだよ。」


必死に説得する大好きなドリフトを見て、カツキは何も言わずに彼の言葉に耳を傾けていた。

たとえ何も出来ないと言っても、現に好きな相手とそばに居られる事を知れただけでも生きる意味が見つかった。

過去は何時振り返ってもおかしくないとはいえ、それでも今その時に得られる『安心感』がそこにはあった。



彼が常に望み、この街が変わったと同時に失った願い。

それが今、自分の目の前にある。



それを知ったと同時に、カツキは彼の言った事に対し不思議そうに問いかけた。


「創る・・・?」

「ああ。 カッツは、俺達と違って何かを生み出す力を持ってる。 だから、それを使えばいいんだよ。 カッツが好きな物を、好きな時に生み出せばいいんだよ・・・!」

「・・・俺が、創りだせる力を・・・ ・・・」


懸命に励ます彼の声を聞き、カツキは四つん這いに近い体勢から正座する体制へと身体を変え、ゆっくりと自分の手を見つめた。

何時しか行動する事を止め止まってしまった手の力は、いつでも使おうと思えば破壊へと繋げることが出来る。

でもそれを変えさえすれば、彼の言う通り自分は何かを作りだすことが出来る。



気に入らなければ壊せばいいし、変えたいと思えば作り変えればいい。



言葉から徐々に勇気を貰ったかのように、カツキはしばらく手を眺めていた。

そして、彼はそのままの体制で彼にこう言った。


「・・・なぁ、ドリ。」

「何だ、カッツ。」

「・・・




俺って、本当に仕えない存在じゃないのか・・・? 不要な存在じゃないのか・・・??」


最近の会話上、再度同じことを聞いてしまう癖が抜けていない様子で彼はドリフトに問いかけた。

すると、問いかけられた事柄に関しドリフトはしばらく考え、彼に返答した。


「少なくとも、俺は不要なんて思ってないぜ。 俺の願いは『共に居るべき友』の所へ行くこと。 それはカッツ、お前自身と一緒に居る事なんだぜ。」

「俺・・・?」

「ああ。 ・・・不要なんて思ってたら、こんな願いを俺は持つ事は無かった。 この街ですぐに、消えたと思うからさ・・・ だからカッツ、俺の前でそんなことを言わないでくれ・・・!



お前は仕えなくなんてない、俺達を守ってくれるたった一人の友なんだから!!!」



「・・・!」


問いかけに対し返ってきた返事を聞いて、カツキは驚愕しながら急に込み上げてきた涙を目から流した。

今まで抑えていた感情そのものを開放してくれたかのようにドリフトの叫び声が周囲に響く中、涙を流しながらもドリフトに抱き着いた。

そしてそのまま涙を流しながらも、力強くも優しく彼の事を抱きしめた。

抱かれたドリフトも、それに対し優しく返答する様に彼の事を抱き返した。


「・・・本当に、ドリなんだよな・・・ 俺とずっと一緒に居てくれる、ドリなんだよな!」

「あぁ! もう絶対に離さない、お前を1人になんかするもんかぁああ!!」


泣きながら叫ぶカツキの声を聞いて、次第にドリフトも涙目になりつつ再度そう叫んだ。

その後彼等は戦いが目の前で繰り広げられている戦場に居る事も気にせず、その場で泣いていた。



大好きな相手と一緒に居る、叶えたい願いを叶えられた。

そして、今目の前に居る相手が寂しがっていた事を知ったため、両者が安心するまで抱きしめていた。

強く強く抱きしめあい、嬉しさと安心感を2人は味わっていた。






「・・・ドリ。 俺、やってみる。」


その後壊れかけた心が治った事を悟ると、カツキは静かにドリフトの身体から手を離しその場に立ち上がった。

流れていた涙を拭うように右手を動かし水気を取り終えると、路地から移動し目の前に立ちはだかる敵を一瞥し対抗する事を露わにしていた。


「もう、誰に言われても俺は構わない。 俺は俺だって、今教えてもらったから・・・! お前だけでも、絶対に守ってみせる!!」

「カッツ・・・」

「・・・こんな時が来るなんて、もうないと思ってたのにな・・・ ・・・取っておいて、良かった。」


同様にその場に立ち上がったドリフトが彼に返事を返すと、カツキは右手をズボンのポケットに入れ中を探り1つの流星石を取り出した。

それは以前改革をしようと立ち上がった際に使っていた流星石であり、彼曰く『二度と使う事のない代物』とされていた力だった。

それを使うと決めたと言う事は、彼自身が戦うと言う事を決めたと言う事でもあった。



彼の使う流星石、それは『圧力風爆(ヴェトラエミデラティ)

四代元素の1つである天下の風そのものを自らの力とし、相手にぶつけると言うシンプルな代物。

それでも威力は計り知れない物であり、誰が相手であっても彼は負ける事が無かった。



だがそれでも彼自身の力は低く、他者に認められることが無かった。

カツキはその事を一番理解しており、仕えない存在だと蔑まされても使う事を止めなかった。

そして今こそ、使うべき力だと感じた代物だった。


「ドリフト。 ・・・俺。」



スッ・・・


「ぇっ・・・」

「・・・ 俺も戦うぜ、カッツ。」


負ける可能性が高くても戦うと決めたカツキは、後方に居るであろうドリフトに下がるよう言おうとした。

すると、不意に彼の肩に温かい感触が伝わると同時に優しい声が伝わってきた。

隣にはいつしか笑顔で自分を見てくれているドリフトの姿があり、共に戦うと言ってきたのだ。


「もう1人で悩まなくたって良いんだ。 これからは俺らを頼ってくれれば、カッツは望むだけ強くなれる。 俺はその手助けをするぜ。」

「ドリ・・・」

「さ、行こう。 もう1人にしないって約束したんだから、絶対にお前を殺させたりはしない。 1人で倒せない相手だったら、2人で倒せばいいんだ!



俺達は負けない、負けるはずがない!!」


「・・・!!! あぁ!!」


そして彼の声を聞き、再度励まされた様子でカツキはそう叫んだ。

その後互いの手を握り強く握り返すと、共に流星石を手にしたまま敵の居る方角へと向かって走って行った。






『俺達の願いは叶った・・・ 今なら、この世界は俺達が変えられる!!』


2人はまるで共鳴するかのように心の中でそう叫ぶと、掴んでいた手を離し左右に別れ戦闘態勢に入った。

そんな2人の目の色を見て、メイリーは静かにステッキを振り合図を送るのだった。




 -続く-

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