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外伝・改革への対価 2

突如現れた黒幕と、自分達を助けるべく戦いに参戦を挑んできたトライム。

低脳だと自らを見下していた自分を守ろうとする存在達を見て、カツキは驚くことしか出来ないで居た。




「ハァ・・・ハァ・・・ ・・・良かった、間に合って・・・」


轟音と眩い閃光が落ち着いてしばらくした頃、自らが持つ流星石【放電零刃(トネレーラゼロビス)】を使って危機を脱した事を悟り、トライムは息を整えていた。

どうやら決死の覚悟と体力全てを使ってその場に入り込んだこともあり、危険もあったため焦ったのだろう。

無事に守れたことに喜びながら、彼はカツキを見ていた。


「トライム、どうして・・・」

「守りたいからに決まってるだろ。 ドリフトほどじゃないかもしれないけど、俺もお前が大切なんだ・・・ 失うなんて、考えたくもないからな。」

「・・・」


先ほどから自分を守ってくれる存在達を見て、どうしてその行動をするのかがわからない様子でカツキは呟いていた。

メイリーとの先ほどのやり取りもあり気持ちが墜ち気味だったのにも関わらず、変わらずに希望を見せるかのように行動する2人。

トライムとは街が変わった頃からの関係もあったが、やはり聞きたい気持ちでいっぱいの様だ。



そんな彼に問われ、返事の内容は変わらず笑顔も変えずにトライムはそう言った。

彼からしてもカツキを失うような事は考えたくない様子で、危険が迫れば自分の力で退ける。

出来ない時は共に果てようと、考えていた様だった。


「・・・本当、無駄な行為を行う輩が多くて困ってしまうわね・・・ 植物達を感電させるなんて、威力は対したものだけれどちょっとばかり考えが甘いのではなくって。」

「何っ?」


彼等の守ろうとする行いに見飽きた様子で、メイリーは行動すらも無意味である彼等に不満を抱いている様だった。

だが強力な一撃であるが発生させた力に問題があると言うと、トライムは完璧に決まったと思った攻撃を否定され違和感を覚えた。


「植物は大地の力を糧に生きる生命。 雷電は地と対なる力、それゆえに・・・ 私の敵ではないという事よ。」

「痩せ我慢を言うな。 落雷は天からの裁き、触れれば炎にもなる力だぞ。」

「そんな事は、触れた後に起こる事でしょ? だとしたら、触れる前に対処してしまえばいいのよ。」


違和感に対する解説をするかのようにメイリーは言い、どうやら新しく来た存在は敵ではない様だった。

しかし彼女の言い分は強がっているだけだとトライムは否定し、たとえ無力化する力で生命を作り出したものであっても触れてしまえば消えてしまうといった。

だがそれは『接触』した時であるが故の結果であり、触れなければ意味がないと彼女は言い放った。


それと同時に、彼女は軽くステッキを振り何かを呼ぶような仕草をした。

すると、彼女の背後から蔦達が集いだし何かを見せるかのように集まりだした。

集まりだした蔦の中央には、1人の存在が捕まっていた。


「・・・!! ベルミリオン!!」


蔦達によって拘束されている存在、それは先ほど彼等の危険を叫ぶ前に捕まってしまったベルミリオンだった。

すでに彼女には意識はなく、磔に近い形で拘束されており柔らかい服の外見を無視し手足を縛り付けていた。


「ウフフフ。 そう、貴方の言うように触れてしまえば無くなってしまうものよ。 でも、触れなければ意味はないわ。 ましてや貴方の持つ力は、長距離には向いていない。」

「ッ・・・ 卑怯だぞ!! そんな手を使うなんて!!」

「卑怯? あら、私にとって見ればそんなことは思ってないわ。 彼女は私の敵でもあるのだし、亡くなればそれで好都合ですもの。 彼女は私の糧となったのよ。」


やせ我慢だと言った反論とばかりにメイリーはそう言い、トライムの攻撃手段である流星石の弱点を見つけた様子で言った。

そう、彼の持つ力は『ゼロ距離』に固定し威力を高めた代物であるがゆえに、遠距離による攻撃手段を持っていないのだ。

ましてや力に『(トネーラ)』の力が入っており、下手したら壁として使用している蔦に拘束され身動きが取れないベルミリオンの命も危ない。

そんな仲間思いの関係を利用し、どちらが亡くなろうと構わないと彼女は高笑いしつつ言った。


「さぁ・・・どうするのかしら。 貴方にとって亡くなっては困る相手なのでしょう? ・・・そう、貴方の大切な大切な『時間の友人』を探す手段だものねぇ。」

「ッ・・・!」


攻撃しようにも出来ないトライムの様子を見て、メイリーは彼の会いたがっている友人の探す手段をなくしては困るだろうと言った。

それを聞いた彼は事実その様子で、他に持ち合わせている流星石がない事もあり対抗策に困っていた。


「時の・・・友人・・・ まさか、ハンメル!?」


そんな彼女達のやり取りを聞き、何かを察したかのようにカツキは不意に友人の名前をあげた。



それはまだ街が変わる前、カツキが捨てられた集団の中で唯一彼との関係が良好であり信じていた相手。

それが『ハンメル』であり、普段着ている服装や持ち物から『時間の友人』と呼ばれる事が多かった相手だ。

カツキが唯一集団内で頼っていた相手であり、捨てられた時に戸惑いながらも自分の元を去った光景は今でもカツキの中に残っていた。


しかしメイリーの言う『人情』によって捨てられたのであれば、彼が一番苦しい思いを背負ってその場を去ったのだと彼は思った。


「ウフフッ、さぁ。 おしゃべりはここまで。 これからはどんな舞踏会を繰り広げてくれるのかしら。 とっても・・・楽しみだわぁあ!!」


一通りの話を終えると、メイリーはそれ以上話すつもりは無いと宣言し再び攻撃を開始した。

彼女の持つステッキの指示を聞き、再び待機していた周囲の蔦達はカツキ達目がけて特攻を仕掛けてきた。


「クソッ・・・! アイツは死んでなんかいない!! 俺はアイツに会うまでは、俺は死ぬわけには行かないんだぁああ!!!」


先ほどの会話によって希望が失せかけているのか、トライムは叫びながらも再び持っていた流星石を使って攻撃の無力化を図った。

幸い襲ってくる蔦達はベルミリオンを拘束している蔦とは違う位置から生えている事もあり、たとえ電撃が地面に伝わったとしてもそのまま大地に逃げると思われた。

しかし威力調整を間違えれば確実に彼女の元にも電気が流れるため、本気で行けないのもまた事実だった。


「・・・ ・・・仕方ない。 トライム、行けっ!!」

「! ドリフト!?」

「防御に徹しても、ここじゃあ俺達が不利だ! 公道の広い所へ!」


そんな彼の攻撃に迷いが見えたのか、ドリフトはそう言い持っていた槍である程度の蔦を切り裂き彼のために道を作った。

彼等の今いる場所では日の光も少なく、ましてや広い場所ではない事もあり不意に背後から来られては避ける手段もない。

そのため裏道を抜けた先の『道路』へ移動する事を提案したのだ。



それを聞いたトライムは彼の考えに賛同し、切り裂かれた蔦の間を抜け彼女の横を通り過ぎた。

すれ違いざまに思い切り蔦を踏み付け、近くに落ちていた石を拾い彼女目がけて投げ放った。


パシッ!



「ッ!」


投げられた石はそのまま彼女の頬に直撃し、軽く痛みに表情を崩した。

幸い小さい石だと言う事もありそれ以上の威力は無いものの、女性の顔に傷をつけると言う事は反感を買うと言う事でもあった。


「・・・良いわ、なら貴方から苗にして差し上げる・・・!! 私の顔に傷をつけただけでなく、植物達に怪我を負わせる愚か者があぁあ!!!」


怒りを身に覚えたのか、彼女はそう叫び蔦達の攻撃の手を一斉にトライムへと向けた。

すると蔦達は狭い路地を這い巡り彼の行く先々から強襲を駆け、彼の動きを止めようと試みた。


「ヘヘッ、それくらいなら避けられるっつーのっ!!」


しかし普段からこう言った行動には慣れている様子で、トライムは強襲を駆けてくる蔦達を華麗に避けそのまま行動へと移動した。

その後を集合体となりベルミリオンを拘束していた植物も移動をはじめ、狭い路地を強引に抜けて行動へと向かって行った。

それによってビルは強力な圧力で触れた場所から粉々に砕け始め、周囲に轟音を響かせ始めた。



ゴゴゴゴゴッ・・・!!!


「逃がさないわよっ!! やっておしまい!!」


そんな植物達を一度外へと出すと、メイリーは背後の羽根を羽ばたかせ空から彼の逃げた公道へと向かって行った。




「・・・」


半ば囮に近い形でその場を去ったトライムとメイリーを見届けると、ドリフトは一度槍を元の形に戻しカツキを見た。

背後で守られていた彼は不安な感情に何度も何度も襲われた事もあり、俯き暗い顔を見せながらその場で震えていた。

過去に信じた仲間は訳があって自分を捨てたとはいえ、今になってもう一度戦う事を望まない彼にとって苦しいのだろう。

ましてや心の傷が深すぎる事もあり、たとえ切欠が多くても蔑まれた彼女の言動もあり病んでいる様だった。


「カッツ・・・ カッツ!」

「・・・?」

「こっちっ!」



グッ!


そんな彼を見ていてもたっても居られなくなった様子で、ドリフトは彼に声をかけ強引に手を取りその場を走り出した。

掴まれた手の力が強かったこともあり、強制的にその場から動かされ足がもつれつつもカツキは彼の後姿を見た。


「ぁっ・・・ドリ・・・」

「良いからっ! 早く!!」


走りたくない気分だった様子でカツキが言う言動も遮り、ドリフトはその場を駆け出しトライムの向かった道路の方角へと向かって行ったのだった。


その場に居ては駄目だと感じ、何処かへ連れて行くかの様に。

ドリフトは走る事も手を離す事も、やめないのだった。



 -続く-

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