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外伝・改革への対価 1

「・・・? 何か聞こえなかったか?」

「えっ?」


再開したことを喜んでいたカツキとドリフトは、不意に聞こえた声に疑問を抱いていた。

しかし何を言っていたかはわからなかった様子で、辺りを見渡しながら声の主を探した。


「・・・何も居な」

「っ!! 危ねえっ!!」




ガバッ!


「ふぉおおっ!」


辺りを見渡し誰も居ないと言おうとしたカツキを遮り、ドリフトは危険を察し何かから逃げるようにその場からカツキを抱え退避した。

急なことで何が起こったのかわからなかった彼ではあったが、その後に立っていた場所へとやってきた物を見て目を疑った。


「・・・!! (つた)!?」

「チッ、アイツかっ!!」


彼等が対比した場所にあったもの、それは比較的大きな蔦のような植物だった。

だがただの蔦ではない様子で自ら動いており、何かを捕獲しようとして失敗したらしくその場でうごめいていた。

急に現れた植物を見て、ドリフトは誰が来たのかを察し隠し持っていた流星石を取り出し栓を抜いた。


すると彼の手元には、手元に銃が付いた槍のような武器【超速銃剣(アスビスガンランス)】が出現し、鋼の様な材質に変化した。

武器の形状を完全に変えた事を確認すると、ドリフトはトリガーを引き槍の先端から弾丸を発射した。

発射された弾丸はそのまま蔦へと命中し、蔦の一部を引き千切る様に打ち抜いた。


「・・・」


ひとまず安全が確保された事を知り、カツキは動かなくなった蔦を見た後ドリフトを見た。

武器を構えたまま何かを警戒するように辺りを見渡し、蔦の持ち主を探している様子だった。


「何処だ・・・! 姿を現せ!!」


そんな彼を背後に隠しつつ、ドリフトは周囲に向けて言い放った。

すると、




「ウッフッフッフ・・・ やっぱり、そう簡単には貴方達は捕まらないのね。 家来達全員を、退けて来た事はあるみたいじゃない・・・?」


周囲に向けて叫んだ声に往古してか、何処からともなく薄くも響き渡る声で彼らの耳に入ってきた。

何がやってきたのかわからない様子のカツキを見つつ、ドリフトは急な攻撃にも対応できるよう警戒を怠らなかった。


「誰・・・?」

「この声に、その物の言い様・・・ お前だな、メイリー」



「ウッフッフ・・・ ア・タ・リ。」




ヒラヒラヒラ・・・


「・・・!」


動揺する彼を置いてドリフトは言うと、声の主は正解を告げる様に言いながら彼らの向いていた方角にあるビルの屋上から突如襲来してきた。

ゆっくりと重力を無視するように華麗に降りてくる妖精を見て、カツキは驚きながら彼女を見ていた。

やってきた人物、それは新緑のワンピースドレスに身を包んだ真紅の妖精だった。


「妖精・・・?」

「正しくは妖精女王(ティターニア)だ、カッツ。 ・・・メイリー」

「ウフフフ・・・ ようやく見つけましたわ、朽ちた犬に穢れた狼。 今日が、貴方達の命日みたいじゃなくって?」


メイリーと呼んだ妖精を見て言葉を失っている彼にドリフトはそう言うと、武器を持ち直しつつ2人の間に入るように対峙した。

そんな彼等を見ながらメイリーは不気味な笑みを浮かべると、小馬鹿にするように言いながら地面に足が付くか付かないかの位置を羽ばたきながら停滞していた。

妖精女王の名に恥じない身嗜みと物言いであり、ドリフトにとって一番会いたくない相手の様だった。


「何の用だ。 もうお前らが管理する場所は、すでに無いはずだ。」

「ええ、そうね。 貴方達に追いやられて身を追われた私でしたけれど、今はそのような事はどうでもいいんですのよ。 貴方達を根絶やしにすれば、それで大丈夫なのですから。」


相手を警戒するような口調でドリフトは言うと、彼女は笑みを崩さず彼等の言った事に返事を返した。

どうやら昔から敵対している相手の様子で2人は話しており、地区が変化した今でも敵同士の様だった。


「さぁ、貴方が背後に隠している彼を渡していただけます? その子は私達の行動に一番相応しくない考えを持つ子なのですから。」

「俺・・・が?」


そんな彼女に言われ、背後に居たカツキは意外な言葉に疑問を抱いていた。

彼からしたら彼女は見た事のない相手であり、何故自分に会いたいのか検討も付かなかったのだろう。

自分を守るように立っているドリフトならまだしも、狙われる理由がわからないようだった。


「クーデターの行動を共にし、今でも息永らえている貴方は危険な芽。 不要なの。 お分かり?」

「・・・」


しかし彼女が狙う理由を聞き最終的に付け加えられた言葉を聴いて、カツキは落胆するように表情を曇らせた。

味方だと思っていた存在達にも必要だとは言われず、対峙する敵にもそう言われてしまってはどうしようもない。

自分の存在価値は何処にあるのか、彼は再度考えてしまうようだった。


「まぁ、もっとも。 そんな行動を後々気付いた集団が人情を捨てて貴方を退かしたのは、少しばかり予想外ではあったのだけれど・・・ 今となっては、そんな努力も無駄に終わるのだけれどもね。」

「えっ・・・ 人・・・情・・・?」

「お馬鹿ねぇ、貴方。 それだけ強い意志と調合し得た力があるのに、何故貴方が捨てられなければならないのかしら? 考えたことはなくって?」


気分を暗くしていた彼を気にせず話を続けていたメイリーは、すでに処分したのであろう過去の改革者達の行動に一部予想外の事が起こった事に不満を抱いていた。

今までの状態であれば集団全員で街を取り戻し、平和に浸っている所を一気にたたみ掛け崩壊させる。

それを彼女は望んでいたのにも関わらず、その行動を起こした時に彼1人だけがその場に居なかった事は驚いたのだろう。

すでに終わっていることではあるが今でも不満を持っていると、彼女は笑みを消し冷酷な表情で言っていた。



しかしそんな彼女の言った言葉に予想外の単語が含まれていたことに、カツキは意外そうに呟いた。

だがそんな事はどうでもいい様子で彼女はいい、自分のステータスが高いのにもかかわらず何故そんな事が起こったのか。

考えた事はないのかと、再度小馬鹿にするように言い放った。


「・・・不要、だから・・・ 俺は、皆に必要とされない・・・ 差別すら・・・仲間でもするような奴だから・・・」

「下らないわねぇ、本当。 全然魅力を感じないわ、貴方って。 こんなのが殿方だって言うのかしら?」

「・・・」


考えるよう言われたカツキは思った事を口にすると、完全に彼女から否定されてしまい再度口を閉じてしまった。

元々今の彼には自分に自身を持つ事は出来ない事もあり、考えそのものを根本的に否定されてしまっては自信の自の字も沸かない。

寂しそうな表情をするカツキを見て、ドリフトは苛立ちを覚えつつも彼を座らせないよう右手を彼の肩に置き少しでも安心してもらえるよう配慮していた。

その手を見て、彼は顔色を暗くしつつもその手のぬくもりを感じ両手を優しく彼の手に合わせていた。


「まぁ・・・ そんな低脳な魅力の貴方なんて、早急に苗になってしまえば・・・ 文句はないのだけれどねぇえ!」




バシュッ!


「クッ!!」


軽く2人の友情に近い光景を見つつも、彼女は何も気にせず自らが行っていた事を終らせるべく攻撃を再開させた。

手にしていたステッキを前に振ると、背後で待機していたのであろう植物達がいっせいに巨大化し彼等に襲い掛かった。

それを見たドリフトは自分と彼を守るべく再度槍を構え、攻撃を払うように動かそうとした。

だが、



雷撃(らいげき)・・・! 水晶波(すいしょうは)ぁあーー!!!」




バキュウゥーーンッ!!


「ッ!!」


不意に彼らの元に1つの影が入り込み、言葉を言い放ちつつ持っていた流星石を振り放った。

すると、周囲に眩い閃光が放たれ周囲一帯に落雷の轟音が響き渡った。

その音と光を目にし、カツキとドリフトは目を強く瞑り耳を押さえた。

メイリーも急な事に驚きを隠せず、同様に目と耳を押さえていた。



「何事っ・・・ ・・・!!」

「・・・!! トライム!」


光と轟音が落ち着き、その場に居た存在達は目を開けると新たに介入した存在の姿を目にした。

そこに立っていた存在、それはドリフトが居ない間ずっと彼を見守っていた存在。

トライムだったのだった・・・


 -続く-


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