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街の外の仕組み 2

宮殿の敷地内であるゲートをくぐったアルダートとストレンジャーは、そのまま目の前にある宮殿に向けて歩を進めていた。

大理石で埋められた広間を通過し、何段も続く階段を彼等はゆっくりと昇って行く。

そして階段を登り終えると、彼等は不意に後ろを振り向き外の様子を見た。


「うわぁ・・・ 綺麗。」


その光景を目にしたアルダートは、見たままの光景の感想を呟いた。




宮殿を囲うようにあるゲートは、遠くから見るとまるで小さな家々の様な風景を作りだしていた。

柵に等しい代物であるのにもかかわらず、遠近法を意識して作りだしたのか。

家に見せかけた建造物として彼等の目に映っていた。

もちろんゲートの周りにはちゃんとした家々が立っており、無人ではあるがこちらも芸術的な代物には変わりはなかった。

アンティークな色合いにパステルカラーの屋根が見事にマッチしており、まるで小物の様な作品と化していた。


「凄いなぁ・・・ ココもここで、とっても素敵な場所ですね。 ・・・あれ?」


そんな風景を見ていると、不意にアルダートは隣にストレンジャーが居ない事に気づき辺りを見渡した。



しかし階段周辺には彼の姿は無く、彼は先ほどまで見ていた宮殿の中を見ようと覗き込んだ。

すると、数十メートル先に彼の姿がありアルダートが来るのを遠目でじっと待っていた。

慌てたアルダートは急いで宮殿の中へと入り、彼の隣へと向かって走って行った。

その後彼が自分の元へと来た事を確認すると、ストレンジャーは軽く彼に笑顔を見せた後再び足を前へと向け歩き出した。

彼の後をアルダートも共に歩きだし、2人は宮殿の中を散策し出した。




赤い絨毯の敷かれた宮殿内の通路は静かな空間を作りだしており、外同様人の気配は何処にもなかった。

時折甲冑を纏った置物が点々とある以外は、これと言った変わった所も無く彼等の侵入を阻害する動きもなかった。

通路を抜けると、ダンスホールに近い広い部屋へと彼等は入り込んだ。

広間の壁には点々と別の部屋へと通ずる入口があり、この奥はどれくらい広い敷地があるのだろうと彼等は思った。

だがもとより広すぎると想定していた様子で、ストレンジャーは一通り辺りを見た後目的地がある様子で部屋の奥を1つ1つ顔を向け確認していた。



そして、とある通路に目を向けその方向へと向かって歩き出した。


「・・・ストレンジャーさん。 何処へ向かって行ってるんですか?」


先ほどまで散策していた彼の様子が、今では目的地がある様子で歩いているのを悟りアルダートは彼に問いかけた。

しかしこれと言った返答は無く、しばらく彼等が歩いた先に扉が見えてきた。

それを見て、ストレンジャーは軽くアルダートを一視した後、口を開いた。


「情報収集が、出来る場所だ・・・ ・・・おそらく、あの先にあるだろうと思ってな。」

「あの部屋に・・・ですか?」


どうやら彼が向かっているのは、兵隊達に頼んだ『情報収集』が出来る場所となる部屋だった様だ。

そしておそらくそれが出来るのは、今自分達の前にある部屋であろうと彼は言った。

その後のアルダートの問いかけに彼は頷き返事を返すと、再びその部屋へと向かって歩いて行った。


数十メートル先にある扉の前に到着すると、ストレンジャーは扉に手をかけゆっくりと押し開けた。




扉の先にあった場所、それは大きな書庫であった。

先ほど彼等が見たダンスホールほどではないが、それに近い広間と2階3階へと昇る為の螺旋階段があった。

吹き抜けの書庫と思われるその部屋は5階部分にまで広がっており、どの階にも本棚と色とりどりの厚さがまばらの本達が綺麗に置かれていた。

点々と場所によって机と椅子も置かれており、1階の広間の窓辺付近にはソファとそれに合うテーブルも置かれていた。


「凄い・・・書斎ですね・・・」

「書斎と言うより、図書館だな・・・ これだけあると。」


軽く扉の先に広がっていた場所を見てアルダートが驚く中、ストレンジャーもこれまでとは思わなかった様子で感想を言いつつ近くの本棚へと向かって行った。

そして適当に1冊の本を手にし、軽く本を開いた。


そこには英語の筆記体に近い文字がずらりと並べられており、パッと見では読むのに慣れていない存在には解読に時間がかかりそうな代物だった。

軽く本を見た後彼は持っていた本を閉じると、入っていた場所に入れ直し隣から別の本を取り出し、同じように中を見た。

すると今度は漢字のみで書かれたページが広がっており、これまた読むのに慣れていないと解読しなければならない代物だった。


「・・・字は、読める物から読めない物全てがあるみたいだな・・・ 自分達が読める物もあれば、そうでない物もありそうだ。」


一通りの手にした本に書かれていた文字を見た後、ストレンジャーは自分が読める物もあれば読めない物もあると理解した様子で言っていた。

あいにく本棚に書かれている詳細はアルファベットが1つ書かれているだけであり、元より本のタイトルを意識して探していない彼にとって時間を要する様だった。

軽く彼の近くへと移動し本を隣から覗き込んだアルダートは、書かれていた文字にハテナを浮かべつつ不思議そうに見ていた。

すると、


「・・・そういえば、ストレンジャーさん。」

「何だ・・・」

「情報収集って言ってましたけど、具体的にどんなのをお探しですか? 僕も一緒に探しますっ」


不意にアルダートは、先ほどから気になっている事を問いかけた。

具体的に求めている情報が何かを知らない彼であったため、大まかにどんなことを知りたいのかを気にしている様だった。

事によっては彼も一緒に探すことが可能であり、その面でもお手伝い出来ると思ったのだろう。

軽く目を見て親身に言ってくるアルダートを見て、ストレンジャーは少し考え具体的に何が欲しいのかを彼に言った。


「アルダートが知るこの街・・・ この街で起きている事や、どうしてこうなったのか・・・ そう言った過去の事例や、流星石の事に関する本が欲しいな・・・ 君が知らない事を、きっと本は教えてくれるはずだ。」

「解りました。 じゃあ、僕は反対側の本棚から当たってみますね。 近くで別々で探せば、見つけた後も移動しなくて済みますし。」

「ああ・・・ 頼む。」


彼の知りたい事柄を把握すると、アルダートはそう言い今見ている本棚の裏側から一緒に探すと言い出した。

ご丁寧に近くには踏み台として使用できそうな備え付けの階段もあり、翼の無い彼でも高い位置にある本を探せる様だった。

一緒になって探してくれる事を知ったストレンジャーは、彼の一生懸命に行動する姿を軽く見た後、再び求める情報が書かれた本を探しに本棚へと向かって行った。









書庫で1つ1つ本を確認し、読める物を彼等が探している頃・・・




「・・・取られたのね。 見ず知らずの相手に・・・」


ゲシゲシッ


「ニャー・・・ 事実なのニャっ」

「下等が・・・」


彼等の居る場所とは違った場所、管理課の居る塔の広間では。

管理していた1つの区域を取られた事を知った『プリンセス』と呼ばれる上層部の存在は、取られた相手であるネコSを地面にヒールで彼を踏んでいた。

しかしお仕置きにしては程度が軽く、踏まれはしているが元よりプ二プ二しているネコのためそこまで痛そうには感じられない。

むしろネコはうつ伏せになって動けないだけの様子で、返事は普通に返していた。


「でも意外だよなぁ。 そういう行動をする奴が、まさかアイツの所で出るなんてさ。」


そんな仕置き風景を軽く見ていたジャッカルは、今までの環境で反逆行動をする存在が出た事に驚いていた。

力だけでは、確かにネコの流星石は4人の中で一番強く『中和』する流星石の特徴を上手くとらえて作り上げた代物だ。

それが負けると言う事は、予想をしていない行動が知らないところで起こっている事を彼等は意識せざる負えない様子だった。


「本当ね。 一応、力では私達よりは強くて取られる危険性なんてないって思ってたけど・・・」

「ニャーは現に負けたのニャ。 改革者になろうとする、龍と狐にニャ。」

「・・・の割には、苦しそうではない様ね。 いつもの事ですけど。」


ジャッカルの言った事に対し妖精はそう答えると、踏まれているネコの返答がさほど苦しそうではない事に軽く呆れていた。


「・・・嘆いて。」

「踏み心地は、いかがですかニャ? プリンセス。」

「知らない。」



「・・・」


その後姫の発言にネコはそう答え、即効で返事を返す光景に遠くに居た2人は軽く溜息をついていた。

しかしプリンセスに踏まれている現状を見た限りでは、誰かが止めに入っても不思議ではないのだが。

元より扱いがおざなりなためか、特に割って入ろうとする存在は居なかった。


1人を、除いて。






「プリンセス。 それくらいで許してやってくれないか。」

「・・・」


彼等の居たホールに、静かではあるが凛々しい声が聞こえてきた。

その声を聞き彼等が視線を向けると、そこにはホールへとやってくる1人の獣人の姿があった。

綺麗な蒼髪に暖色のバンダナをした細身の雄獣人であり、プリンセスに爽やかな笑顔を見せつつそばへと向かって行った。

するとプリンセスは、先ほどまで踏んでいたネコから足を下ろし、彼の手に触れ優しく身体に身を寄せていた。

仕置きから解放されたネコは、そのままその場に立ち上がり踏まれた場所に着いた埃を軽く払っていた。


「それで、どんな存在が区域を略奪したんだ?」


軽く抱き寄せるように姫を撫でていた獣人は、ネコに対しどんな存在がしたのかを質問した。

その質問を聞き、ジャッカルと妖精も軽く気になる様子でその問いかけの答えに耳を傾けていた。


「ニャーが見た限りだと、相手は2人ニャ。 青色の龍に、空色の狐。 どちらかと言うと、龍の方が強者だニャ。」

「背丈はどれくらいだ。」

「ニャーよりもちょっと大きい位ニャ。 丁度、そこに居る2人とプリンセスに似た感じだニャ。」


答を聞き再度質問を返すと、ネコは2人の特徴を聞かれた範囲でいろいろ教えていた。

しかしこれと言って名前を言う事はなく、出会った時で良いと判断したのだろう。


「ぇっ、俺達とか?」

「それもまた意外だわ。 似た存在は、大抵屈伏してひれ伏してるか外へ逃げたと思ってたのだけれど。」

「だな。」


だが最後の返答に驚いたのは、質問した本人ではなく外部の存在達だった。

元より彼等と似た存在が少ないのがこの街であり、昔英雄と呼ばれていた存在達も彼等と似た存在達ばかりだった。

そのため、外へ出て行ったか無力でこの地にひれ伏す存在となっていると彼等は認識しており、それが改革者になるとは思わなかったのだろう。

普通に驚くジャッカルに対し、妖精は静かに悩むようにそう言っていた。


「・・・龍に狐、か。」

「ニャニャッ」



スッ


「プリンセス。 少し、俺は席を外します。 俺の管轄内に似た存在を見かけたから、調査してきます。」


ネコへ対する質問を終えた様子で、獣人はそう言い軽く姫の手を取り膝を付きながら相手に一言いいつつ許可を取っていた。

元よりこういう仕草をするのもここでは当たり前の事であり、姫はその事を好んでおり彼の言った事に対し頷き、許可を与えた。


「ぉっ、なら俺も行こうか? 可能性が高いなら、早めに潰した方がいいだろ。」

「それは名案ね。」


彼の管轄内にその存在が居ると言う話を聞き、ジャッカルと妖精も行動に同行しようかと提案した。

危険な芽は早めに摘んだ方がいいと言うのが彼等の考えの様子で、ネコの力を負かした相手に対し興味もある様子だった。


「いや、調査段階だから無暗に俺等の姿を見せない方がいいだろ。 俺の代わりに、プリンセスのそばに居てやってくれ。」

「・・・まぁ、そう言うなら仕方ないっか。」

「いいわ。 貴方の案を順守してあげる。」


だが獣人にも考えがある様子で、彼等の案には乗らず1人で行ってくると言った。

元より謎の存在として扱われているのが管理課であり、姿を見せない方が賢明だと判断したのだろう。

調査と言う事を口実に動いているため、と彼等に念を押しプリンセスのそばに居て欲しいと頼んだ。


その後姫の手を離し、再び元来た道を戻り外の街へと向かって出て行ってしまった。





2人は彼の考えに乗り、静かに獣人を見送りつつプリンセスのそばへと移動した。


「・・・」

「なぁプリンセス。 歌、また歌ってくれよ。 俺好きなんだ、あの歌。」

「・・・分かったわ。」


その後彼の考えがある事を知りつつも、ジャッカルに頼まれプリンセスはそう言いつつ、テラスへと移動しつつ詩を口ずさみだした。

姫の詩を軽く聞きながら2人も移動し、妖精はテラスの節に腰かけつつその歌を聞き。

変わってジャッカルは、テラスの節を背にその歌を聞いていた。




『ニャニャッ、やっぱりお主は頭のまわり方が違うみたいだニャ。 あーは言っても、元より倒すつもりは無いのにニャ。』


そんな3人を見つつ、ネコは先ほどの獣人とのやり取りを思い出しつつそう悟っていた。

彼は戦う事は望んでおらず、力として姫から貰っている流星石も乱用する事は無い。

そうした生き方をする彼をプリンセスが好んでいる事もあってか、今回も2人の提案に乗らなかったのはそういう考えがあるからであろうとネコは思っていた。


しかし気づいたとしても、ネコは決して目の前に居る存在達には言う事は無かったのだった。


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