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街の外の仕組み 1

アルダートが住んでいた区内の平和を取り戻し、街は再復興ムードへと包まれているその頃。

ストレンジャーからの話を聞いたアルダートは、住み慣れ平和になりゆくその街を後ろに新たな場所へ移動しようとしていた。

ネコSから受け取った、小さな鍵を使って。




「・・・ココだな。」


再び2人で行動する事となったアルダートとストレンジャーは、区内を取り囲む高い壁に沿って移動しとある場所へと到着していた。

それは壁だけであった場所に1つだけある大扉であり、前には数人の兵隊が見張りとしてその場に立っていた。

軽く兵隊達の視線を気にしつつも、2人は大扉の近くへと歩み寄って行った。


「・・・」

「ココから、別の場所へ行けるんですか?」


しかし数人の兵隊達が取り囲むその扉を、難なく突破できるのかと彼は気にしていた。

元よりこんな場所に近づいたことのない彼にとって、こういった新たな一歩への行動はとても新鮮だ。

今では共に行動してくれる存在が居るため、さほど怖くはないがそれでも恐れはどこかにあるようだった。


「ネコの話が、正しければな・・・ ・・・」


アルダートからの問いかけにストレンジャーはそう答えると、彼よりも一歩前に出つつ上着のポケットに手を入れた。



スッ


中に入っていた鍵を手にすると、ストレンジャーは前に差し出すようにその鍵を兵隊に向けて見せた。

すると、兵隊達は少し驚いた様に顔を動かし、アイコンタクトで隣の兵隊達に合図を送っていた。


「・・・この区内の管理課を倒した証だ。 別の場所へ行きたい、通してくれ・・・」

「・・・」


そんな兵隊達の様子を見つつ彼はそう言うと、兵隊達は軽く足をそろえ敬礼し大扉を開けようと行動してくれた。

しかし、1人だけその行動を取ろうとしない者がおり、そのままストレンジャーのそばへと歩み寄ってきた。


「鍵コード、確認。 指定場所はあるか。」


そして彼の持っていた鍵を軽く受け取り、本物である事を確認しつつ低い声で行き先を聞いてきた。

元より扉のためその隣に行くものだと思っていた2人は軽く驚き、場所指定が出来る事に軽く驚いた。

とはいえまだよく知らない街のため、ストレンジャーはこう言った。


「・・・いや、ない。 ・・・ココよりも、もし何かを得られる場所があるのなら・・・ そこへ通してくれ。」

「場所指定無し、注文受注。 了解。」


すると、そんな適当ではあるが求める場所がある事を告げられ兵隊はそう答え耳に手を当てるようなしぐさをした。

その後そう言い、彼等の前に立っていた位置から少し横へとずれ、道を開けつつこう言った。


「検討を祈ろう。 改革者の龍、狐。」

「・・・ああ、ありがとう。」


特に彼等のする行動に口出しすることなく、2人の行き先での安全を膝をつきつつ祈っていた。

そんな兵隊の行動にストレンジャーは返事をすると、アルダートを見た後共に前へと歩きだし扉の開いた先へと向かって歩き出していった。


軽く光で先が見えないものの、彼等は前へ向かう事を止めずそのまま進んで行ってしまった。



そして2人の姿が見えなくなると、兵隊達は他に了解を得ずに通ろうとする存在が居ない事を確認しつつ、扉を閉めた。


『・・・改革者、か・・・』


扉が完全に閉まると、鍵を受け取った兵隊は軽く呟きつつ扉の先を見つめるように遠くを見ていた。










「・・・ぅーん、前が見えませんね・・・」

「そうだな・・・」


そんな兵隊達の管理する扉を抜け、視界が白い場所を黙々と歩いていた2人。

不意にアルダートは何処まで歩いて行くのだろうと心配になり、ストレンジャーに声をかけた。

問いかけに対し彼はそう答えると、離れ離れにだけはならないようにしようと思ったのか、アルダートが居るであろう方向に向けて手を向けた。


「・・・ぁっ、ありがとうございます。」


見ていた先から優しく差し出された手を見て、アルダートは軽くお礼を言いつつ優しくその手を握った。



ギュッ


「・・・ああ。」


お礼を聞き手を握られたことを確認すると、ストレンジャーは静かにそう答え歩調を合わせるように歩いて行った。

次第に互いの距離が近くなり、着ている衣服の色が見えるほどの距離になっていた。


どうやら視界が白いのは『濃霧(のうむ)』によるものの様だった。

光は少なく乱反射する事は無いが、それでも視界を遮るには十分すぎる霧の量であった。




その後しばらく彼等が歩いていると、次第に霧は晴れだし視界に色が追加されていった。

そして霧が完全に晴れると、今自分たちが居る場所を知ろうと2人はそれぞれで周囲を見渡した。


いつしか彼等は、灰ビルの多い区域からアンティークな建物の多い街へと移動していた。

レンガ造りの家が点々と立ち並び、人気は無いものの先ほどよりは良い雰囲気の街だった。

何処からともなく水の流れる音も聞こえ、自然もありそうな街であった。


「うわぁ・・・ なんか、可愛い街に来ましたね。」

「そうだな・・・ ・・・」


軽く周囲に立ち並ぶ家を見つつ、アルダートは住んでいた場所とは違う雰囲気驚いていた。

彼の反応に軽く応答した後、ストレンジャーはその街が異様であるところを探す様に再度ゆっくりと街を見渡した。



街の雰囲気自体は、確かに先ほど居た場所に比べて良い雰囲気に包まれていた。

しかし先ほど同様に人気はあまりなく、この街を管理するネコと同じ行動を取る存在がどんな存在なのか。

いつ襲撃されてもおかしくない静けさを心配しつつ、ストレンジャーは前へと向かって歩き出した。


不意に歩かれ手が離れてしまい、慌てたアルダートは手は掴まず彼の後を再び着いて行くように走り出した。





「・・・ ・・・先ほどと同じで、静かだな。 この街も・・・」

「ぁ、そう言われると・・・ そうですね。」


特に目的地は無いものの、ストレンジャーは街を散策する様に誰かに出会わないかと辺りを歩いていた。

彼の呟きに軽く同意しながら、アルダートも周りの様子をうかがっていた。


彼等の歩いている場所自体は比較的舗装された場所であり、道路と言うよりは石畳に近い場所だった。

しかし綺麗に整えられているためつまずく心配は無く、石畳特有の足音が周囲に響いていた。

彼等の履く靴は普通のスニーカーなのに対し、響く足音はまるでハイヒールを履いているかのような音だ。

それだけ、周囲に敷かれている石自体も特殊な物なのだとストレンジャーは悟っていた。



「・・・」

「どうしまし・・・ ・・・うわぁ・・・」


しばらく歩いていると、不意に彼は歩くのを止めた。

前を歩いていたストレンジャーの足が止まった事を見て、アルダートはどうしたのかと彼の隣に移動しながら視線の先を見ながら驚き声を上げた。

彼等の視線の先には、大きな宮殿の様な立派な建物がある広間へと通ずるゲートがあった。

ゲートの大きさもさる事ながら、そのゲートすらも越えて見える宮殿はとても大きいものだと彼等は悟った。

先ほどまであった街並みの家々とは格が違う様子で、こちらはレンガ造りではあるが大理石で作られているかのように白く輝いていた。

日の光を遮る雲は無い様子で、日光に照らされ軽く光っているかのように彼等の前に立ちはだかっていた。


「・・・ココは、こういう街なのか・・・ 自然よりも、人工物の多い街・・・」


軽くその街の大まかな雰囲気を見た様子で、ストレンジャーはそう呟いた。

先ほどまでの地区は、壊れかけた建物や廃棄されたビルが点々と立ち並ぶ場所だった。

しかし今いる地区は違い、比較的舗装が施され普通に住むにも格が違うかの様に訴えてくる場所だった。

そして何より人工物が多く、自然と言えるものはあまりない事を同時に知らせるような場所であった。


「でも、凄い芸術的ですね。 驚いちゃいましたけど、とっても立派な宮殿です。」

「そうだな・・・」


そんな彼の考えはさておき、アルダートは無邪気にそう言いながら先を歩くように軽くゲートを抜けようとかけて行った。

アルダートの変わらぬ様子を見て、ストレンジャーは軽く無表情だった顔から少し笑みを取り戻したかのように微笑み、彼の後をゆっくりと着いて行った。



2人がゲートを抜けると、外で見た外見通りの広さがある広場がそこにはあった。

外同様の地面舗装が施されたその場所は、宮殿を取り囲むかのように柵に見せた壁が連なっていた。

壁の先には白い宮殿があり、何の建物かは分からないが中もとても広そうな外見をしていた。


「でも、なんの建物なんでしょうね。 こんな場所があるなんて、僕聞いたことありませんでした。」


いつしか隣通しで歩いていたアルダートは、初めてこの場所を知ったかのようにそう呟いた。

外から聞く噂等で情報収集するのが基本であった彼なのに対し、話を聞いたことが無い建造物はこれが初めての様だった。

その証拠に軽く燥いでいる様子で、背後の尻尾が小刻みに左右に揺れており心なしか楽しそうな雰囲気を出していた。


「誰かの家か、はたまた資料を保管する様な場所なのか・・・ ・・・資料・・・?」

「? どうかしましたか、ストレンジャーさん。」


そんな彼の言葉を聞きながら返事をしていたストレンジャーは、不意に自ら発言した単語に違和感を感じていた。

それと同時に歩が止まった事を知り、アルダートは振り返りながら彼に問いかけた。


「資料・・・ ・・・まさか、な。」

「?」

「・・・いや。 ・・・兵隊達に頼んだ内容で、受注したって言っていた意味はここにあるのかと、思っただけだ・・・」

「頼んだ内容・・・」


不意に彼はそう呟き、1つの仮説に行き着いたかのような仕草を取っていた。

そんな自分を見ながら不思議そうに見ているアルダートを見て、ストレンジャーは軽くそう言いもしかしたらこの場に何かあるのかもしれないと言った。

彼の発言を聞き、アルダートは再び前を向き宮殿を見ながら何かがあるのだろうか、と考えていた。



「・・・行こう。 行ったら、何があるかが分かるはずだ。」

「ぁ、はいっ」


その後宮殿に向かう事を決めた様子で、ストレンジャーはそう言い再び歩き出した。

彼の様子を見てアルダートも返事を返し、共に行動する様に再び隣を歩きながら宮殿へと向かって行くのであった。


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