龍と狐は改革者 4
ズゥーン・・・
「ぇっ、何・・・? 爆音・・・??」
「何が起こったんだ、一体・・・」
アルダート達の努力が叶い、管理課であったネコSの機械兵。
彼等の攻撃に耐え切れず自爆した轟音は、街に居た人々の耳に小さくも届いていた。
それと同時に互いに争い合う事を一時止め、音の下方角を住人達は見ていた。
目を向けたその先には、爆発による煙が濛々と立ち込めていた。
「爆発・・・?」
「行ってみよう、誰かが何かしたのかもしれない。」
その光景を目の当たりにした人々は、自らの足でその場に向かって行く光景が広がっていた。
街に異変が起こって居る事を街の人々は知っており、何が起こったのかを自らの目で確かめたかったのだろう。
行動は迅速であり、歩く者もいれば走って行くものも居るほどであった。
「・・・ぁっ、立てない。」
スッ
「ぇっ・・・?」
「手を貸そう。 しっかりしろ。」
「ぁっ、ありがとう・・ございます・・・」
中には足を怪我し、手を貸す者も現れるほどだった。
先ほどまでの戦いは何処へ行ったのか、風と共に街の空気も一変するのであった。
「・・・」
一方、機械兵の爆発によって煙が立ち込める周辺。
アルダートとストレンジャーは地上で合流しハイタッチすると、壊れた機械兵を見ていた。
先ほどまで動いていたとは思えないほどに無残な姿へ変貌しており、傷すら追わない完壁なボディに切れ跡があった。
所々に氷の破片も突き刺さっており、本当に自らの流星石で倒せたことを彼等は改めて知った。
「僕達・・・ ・・・勝ったんですか? 管理課の存在に・・・!」
「・・・おそらくな。 ・・・」
未だに目の前に広がっている光景が現実とは思えない様子で、アルダートは隣に立っていたストレンジャーに問いかけた。
問いかけに対し彼は軽く答えると、機械兵を操縦していたであろうネコの姿を軽く探し、とある場所へと視線を向けた。
それは壊れた機械兵の腕パーツが転がった場所であり、どうやら大破した衝撃で宙を舞った腕にネコ自身が引っかかってしまったようであった。
軽く腕の下敷きになっており、抜けようにも抜けられない様子だった。
そんなネコを見かけ、ストレンジャーは軽く移動しネコの元へと向かって行った。
彼の動きを見て、アルダートも後に続いて歩いて行った。
「うニャー・・・ まさかニャーの作った力にニャーが捕まるとは・・・」
「・・・情けないな。 力で逆につぶされるとは。」
「ニャッ?」
ボヤキながら動くことを止めたネコを見て、ストレンジャーは軽く彼に声をかけた。
日の光がネコの前から消え暗くなったのを知ると、ネコも顔を上げ2人の事を見上げていた。
「ナポレオンになったみたいだニャ。 青き龍と狐よ。」
「その偉人に慣れたかは僕達にはわかりませんが・・・ ・・・お願いです、この街を早く元に戻してください。」
「・・・俺はアルダートの願いを聞いて行動しているだけだ。 可能なら、早めにしてもらおうか。」
特にこれと言った抵抗はせず、ネコは軽く2人に賞賛の言葉を告げた。
元より殺すつもりは微塵もない上、勝つことしか無かった機械兵を打ち負かした相手が出た事は彼にとっても面白い事だったのだろう。
2人の反応を見ながらも、自分を殺らない事を悟るといつも通りの表情でネコはその場にうつぶせになっていた。
「ニャッニャッニャッ、それは無理なのニャ。」
「ぇっ?」
互いの願いを軽く聞くと、ネコはその願望は叶えられないと言った。
彼の返答を聞き、事がこれで終息すると思っていたアルダートは驚き声をあげた。
それもそうだ。 管理課を倒しやってもらえば、それで済むだけの話だと思っていたからだ。
意外な結末を知り、アルダートは困った表情でストレンジャーを見た。
「・・・何故無理だと言うんだ。」
「それは、ニャーがプリンセスに言ったところで何も変わらないからニャ。 ニャーの権限は一番低いのニャよ?」
「一番低い存在で、こんなに強いんですか・・・?」
「ま、それはニャーだからなのニャッ 褒め言葉は素直に受け取っておくのニャ。」
心配そうに顔を見たアルダートを見て、ストレンジャーは彼の代わりに無理だと言う理由を問いかけた。
問いかけに対しネコはそう答え、元より立ち位置が一番低いため権限が無いと言い出した。
一番低いのに対し比例しない力を見せつけられたアルダートが聞くと、それに対しては否定はせず素直に言葉を受け取るネコであった。
どうやら事実の様で、まだ自体は終息しない事を彼等は知る事となった。
「しかしニャ。」
「?」
仕方なくそれ以上を言う事を止めようとした2人を見て、ネコは軽く補足とばかりに呟いた。
その場を去ろうとしていた2人は一時足を止め、ネコの発言を聞きつつ振り向いた。
「ニャーが何も言わなくとも、この地区はもう変わってるのニャ。」
「ぇっ・・・ それは、どういう事ですか??」
「後ろを見るニャ。」
「・・・」
そしてネコの言った言葉を聞き、アルダートは驚きながらどういう意味なのかを聞いた。
すると問われた事に対しネコはそう答え、彼等に再び前を向くよう言った。
それを聞き2人は前を向くと、そこには今までにない光景が広がっていた。
それは、
「嘘、機械兵が・・・」
「壊れてる・・・ 力が、力に勝ったのか・・・?」
「や、やったわ・・・! 私達、もう自由なのね!!」
「ウォーーーー!!!」
彼等の倒した機械兵の残骸を目の当たりにし、この地区だけでも平和になった事を知る住人達の光景だった。
その上先ほどまで争っていたとは思えないほど他人の事を支えている存在もおり、街に静けさから希望を見出したのだと2人は悟った。
倒すと決めた相手を打ち負かし、それだけで街の雰囲気は一変したのだ。
歓喜の声を上げる者もおり、もうこの街は暗い街ではない事をアルダートは知った。
それと共に、ネコの言っていた『変わった』とは、こういう意味だったのだと。
一通りの光景を見終え知ったストレンジャーは、再びネコを見た。
「・・・変わったな。 この地区は。」
「ニャーはもう敗北者。 龍達の勝ちニャ。」
ネコの言っていた事が正しいと、ストレンジャーは軽く呟いた。
その声に相手も答え、もう彼はこの街の管理者ではない事を告げた。
彼等がこの街の管理者となり、権限は全て彼等に引き継がれたのだ。
隣で喜ぶアルダートを見て、ストレンジャーも軽く笑顔になりつつその光景を見ていた。
「・・・ネコ。 1つだけ、お前が無理だと言わない事をしてもらおうか。」
「何ニャ。」
その後街の復興に向けて行動し出す存在達の動きを見て、指示をする事となったアルダート達。
軽く指示を出し人気が無くなると同時に、ストレンジャーはネコに頼みごとを1つしていた。
「お前は確か『地区によっては賑わいのある場がある』と言っていたな・・・」
「そうニャ。 この街は幾多の地区に分かれて、ニャー達管理課が収めてるのニャ。」
「・・・この地区が平和になった。 なら、俺等は次に行くだけだ。 アルダートの願いは、この地区だけではないからな・・・」
「そう言う事かニャ。」
そばに居たアルダートも軽く手伝うために席を外していた事もあり、ストレンジャーは軽く取れた腕の上に立ちつつネコに確認を取った。
確かに彼は『ココ以外にも他に地区がある』という話をしており、平和になったのはあくまでこの場だけだと言う事も言った。
それを彼は思い出した様子で、次の場所に行くための話をネコにした。
軽く何をしてほしいのかを悟ったネコは、モゾモゾと身体を動かし腕から這い出るとその場に立ち上がった。
「龍なら、そう言うと思ってたのニャ。 ・・・もしかしたら、プリンセスが探してる存在に君はなれるのかもしれないのニャ。」
「探している・・・?」
「表向きの評価に左右されない、心優しい存在がプリンセスの元にも居たニャ。 ・・・でも、その存在はプリンセスのそばからいなくなった。 ニャーはその事がこの街の平和に欠かせない事だと思ってるのニャ。」
「・・・」
軽く悟る以前に言う気がしていた様子で、ネコはそう言いつつ余談を持ち出した。
しかし重要な事であり、管理課の上に立つプリンセスの話は誰も知る事が無いに等しい話。
貴重な話と意識しながら、ストレンジャーはその話に耳を傾けた。
「もし龍がプリンセスを倒すのではなく平和のために和解すると望むのニャら、その事も考えて行動すると言いのニャ。 龍なら、なんとなく出来るような気がするのニャ。」
「・・・わかった。 軽く、意識させてもらおう。」
「ニャニャッ」
そしてネコ自身も彼ならやりそうな気がすると補足を加え、この後の行動の道しるべにすると言いと言った。
その言葉を軽く聞き届けると、ストレンジャーはそう言い軽くうなずいた。
彼の返事を聞き返事を返すと、ネコはそう言い1つの鍵を彼に手渡した。
それは流星石を集積し固めた宝石がはめ込まれたもので、比較的小さな金の鍵だった。
「これは・・・?」
「これを持って、地区の外れにある大扉の元へ行くニャ。 別の地区へ、一度だけ門戸を開いてくれるのニャ。 あの空色狐の願いを叶えたいのなら、一緒に行くがいいニャ。」
「・・・」
鍵を受け取ったストレンジャーは使い道を聞くと、ネコはすんなりそう答え前へ向かって進むことを勧めてきた。
互いに思い合う希望は繋げ続けばいいと思っている様子で、軽く気にしながらもネコは言った。
使い道を聞き終えると、ストレンジャーは流星石の入っているポケットに同じく鍵を入れた。
その後アルダートと合流し、彼等は別の地区へ行くことを決めるのであった。