龍は子狐と出会った 1
存在の中にある心は 弱いもの
何かを支えにしなくては 絶対に生きられない
支えを失くした存在は 崩壊の道を歩むのみ
それを止める存在は はたして存在するのだろうか
人と言う種族がある中、他の種族や存在達を大まかにまとめる事が多い世の中。
格差社会は何処でも存在し、それに従う者達。
しかしそれでも、分けられたジャンルは一言で全てを丸く収めてしまう。
それが 『存在』 だ。
どこででも使われる言葉であり、誰にでも使える言葉。
相手がそこに存在し、1人の存在として認識させるためのその言葉は。
とても利便性がある中、否定されるだけで価値を失ってしまう思いコトバでもあった・・・
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ザッ・・・ ザッ・・・ ザッ・・・
「・・・」
夜の闇が徐々に明けつつある、とあるその地。
そこでは1人の存在が静かに歩いており、行く宛てや目的地が無い様子でただゆっくりと前に向かって進んでいた。
そこに居た存在は『龍』であり、二足歩行して歩く小柄な青い龍だった。
一般的に呼べる『青龍』とはまた違った雰囲気であり、威厳はあるものの大柄で力強い印象は何処か欠落しているその存在。
身にまとった服を周囲に吹き荒れる風になびかせながら、龍はただ前へ前へと進んでいた。
「・・・ ・・・朝、か・・・」
不意に足を止めた龍は、徐々に明るくなる空を見ながらそう呟いた。
夜明けを知らせるかのように、暗い空には明るさが出始め徐々に日の光に照らされた雲が優しく輝きだした。
龍の歩いていた場所にも光はやってくると、徐々に色が付きだし緑色の草原地帯に居た事を彼は知った。
朝が来た事を悟ると、龍は再び前へと向かって歩き出した。
すると、徐々に草原地帯が無くなり崖へと彼は到着し、崖の下にあった物を見た。
そこにあったのは、大きなレンガで作り上げられた壁に囲まれた巨大な都市。
とても広すぎて全てを視界にとらえきれないほどの大きさの都市がそこにはあり、龍は静かにその町を見ていた。
周りを囲っている壁は、点々と街を区分するかのように都市内部にも壁が続いていた。
不意に崖下に広がる街を見ると、龍はゆっくりと前を見た。
そこには都市の中央と思われる場所から聳え立つ『塔』があり、遠くて大きさは定かではないが小さくも天高く向かって伸びていた。
何処か不思議な雰囲気を漂わせるその都市を見て、龍は静かに空を見た。
「・・・何処に、居るんだ・・・ ・・・俺が会うべき、あの人は・・・」
空を見ていた龍は、不意にそう呟きながら目を閉じた。
閉じた先でもしっかりとした認識が出来ない存在を探している様子で、龍は何処か寂しそうな様子で再度目を開けた。
その後龍は、背後にある翼を広げ空へと飛び立ち
崖下に広がるその都市へと、踏み入ったのだった・・・