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第二章:論理的推論
反射は光速だ。遅れはない。幻覚か? 幻覚が日を追うごとに短くなる合理的理由はない。
──「過去映像説」。窓は数分前の僕を映すスクリーン。
最初は納得できた。だが遅れが縮んでいく現象を、どう説明すればいい? 過去が日ごとに現在へ迫ってくる──そんな奇妙な解釈しかできない。
ノートに「過去映像説」と殴り書きし、現在→像(過去)と矢印を引いた。矢印の先端は日に日に現在へ近づき、やがてゼロに重なるだろう。
皮肉なことに、この現象のほうが授業で聞かされる数式よりよほど筋が通って見えた。だからこそ余計に怖い。
「もしゼロを越えたら──」
口にした途端、未来を想像してしまいそうで、慌てて打ち消した。