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終章:観測という檻

 量子論の「シュレディンガーの猫」を笑った日を思い出す。観測するまで猫は「生」と「死」の重ね合わせ、観測した瞬間どちらかへ収束。


 今は身に染みる。僕は未来を観測した。観測は未来を固定する。固定された未来は、観測者をその構成要素へと再配置する。自由意志は「順序」の別名に過ぎない。


 机の上に馬券が置かれている。赤い丸。的中額は百万円。新しい僕が輪ゴムで紙幣を束ね、財布へ押し込み、口笛を吹く。


 ガラスの内側の僕は、肺が焼けるように苦しい呼吸の合間、声のない笑いを漏らした。


 ──未来を利用したのは僕だ。だが、その未来を観測した「僕」は、一銭も受け取れない。



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