第20話 俺の名前を言ってみろ
はい、おはようございます。俺です。
ベレルメーゼン帝国の奴等が恥知らずにも俺の島に再度攻め込んできたようだ。
俺は戦闘や戦争は嫌いだが理不尽に自分の利権が侵される方がもっと嫌いだ。
何しろ1度それで殺されているからな。
久しく感じていなかった怒りを覚えたぜ。
端的に言えばほらあれだ。
俺は久しぶりにキレた、もう許さん。
最初から俺を知ってくれてる人達はご存知とは思うが俺は戦いが嫌いなだけで不得手ではない。
俺はさすがに気づいた。
知名度も名声も悪評もないなら抑止力なんて持てないと言う事を。
ならば国一つを傾かせれば良いのだろ?
やってやるよ。
お誂え向きに奴等の1ヶ月は報われそうだぞ。
さすがの結界も脳筋バカの力業でそろそろ破られそうだ。
俺が魚釣りの片手間で書いた第6階位、3重の魔法陣を僅か1ヶ月で攻略するのだ.
誇りに思え。
ぱりぃぃぃーーーん!!
とうとう耐えきれずガラスの割れる様な音を立てて結界が破綻してしまった。
だが、そんな事はもうどうでも良い。
結界の先からは海を埋め尽くさんとする大艦隊がこちらに向かい航行してくるのが見えた。
ほう、この時代にこれだけの戦力を集められたのは褒めてやろうじゃないか。
ほとんどが蒸気と魔力を推進力として進む魔導船でこの時代の最新鋭だろう。
だが足りないぞ。
俺を本気で葬るならこんなもんじゃ無理だね。
正直、俺は前世……生まれ変わってはいないか。
未来になるんだな、ややこしい。
とにかく、未来で殺された時は半ば自棄で負けてもいいと言う気持ちで戦ってた。
俺と運命を共にしてくれた2人が戦死したのにも関わらず俺が討ち取られなかったのはそのせいだ。
空しくなった。
2人がやられた時、俺がどんなに相手の気持ちを慮り、立場を考慮し、様々な提案を出したとてバカには通じんのだと感じた瞬間だった。
だから馬鹿馬鹿しくなった。
討ち取られるのが。
裏切られてこれまでの苦労を水の泡にされ、この上、手柄まで立てさせるのが無性に癇に触った。
だから俺は戦闘を途中で放棄した。
だが、今回は話が違う。
俺は別に世界を統治する気もないし俺の名がどれだけ汚名にまみれようとそんなの下らない。
俺の邪魔をするならこの世から消し去るのみ。
「アルビー君!! ゴーレム兵君達の装備、換装終わった、いつでも砲撃できるよ!!」
「よしっ! 正面12時の方向、距離2500! まずは前方にバカみたいに拡がってる駆逐艦から仕留めるぞ! 誘導魔法弾、水平発射、……ってぇー!!」
マリアからの声を受けた俺の号令に合わせて80体のゴーレム兵君が配備された防衛地点から光の帯が海上に浮かぶ駆逐艦に吸い込まれた。
それはまるで時が止まったかの様な瞬間だった。
駆逐艦に光の帯が吸い込まれ……1秒か、2秒か、あるいはもっとか。
どれ位の時間が経ったか分からないが駆逐艦が一斉に光に包まれ爆発し無数の水柱が海上に上がった。
「おー、1発目で大分沈められたなー。続いて行くぞ! ゴーレム兵達、準備しろっ!!」
「分かっていたつもりだったけど……凄い威力だね。それがこんなに沢山配備できるなんて……」
「へっ? 本当は少なくとも3,000体位配備しようと思ってたんだけど過剰だって言うから」
「そりゃ過剰だよ! 世界と戦争でもするつもりなの?!」
「いや、専守防衛だよ。第2射、用意っ……、ってぇーーーーっ!!」
第2射の光弾も的確に駆逐艦に着弾し全くの慈悲無く船を沈めていった。
その間に俺は破られた結界の替わりとなる魔法障壁を展開させる。
……と言うのも駆逐艦の後方に配置されていた戦闘艦が射撃の準備をしたのが見えたのだ。
あんな100年前のアナログ弾頭をいくら撃たれても今張った結界は破れないぞ。
だが、一難去ってまた一難……と言う程ではないが沈む駆逐艦の影から揚陸艇が島めがけて猛スピードで上陸を目指してかっとんできたのだ。
さすが1国の海軍、どれだけの損害を出そうが目的に向かって粛々と作戦を遂行してくる。
ただ、俺がそんな事に対策を立ててないと思ったのか?
「ドラゴン型特別仕様ゴーレム君! 通称DG第一連隊! 揚陸艇に爆撃準備! 行けぇーっ!!」
再度、俺の号令が飛ぶと頭上の空をドラゴン型特別仕様ゴーレム君、通称DG達が敵の揚陸艇めがけて飛んで行き上空から凄まじい数の火炎弾を撃ち込んでいった。
揚陸艇は上陸を第一目標としているので軽装にする為、武装などは殆どなく装甲も薄い。
予想通りに揚陸艇は一たまりもなく炎上していった。
辛うじて駆逐艦や揚陸艇から脱出できた乗組員に対しても対策は万全だ。
最初は地獄の大伯爵フールフールを撃ち込んでやろうかと思ったが、それをやるとマリアとレティが正気を失うし漁業資源にもかなりの被害が出るのだ。
こんな軍を撃退するのにこちらまで痛い目に合うのは馬鹿らしい。
俺は島の円周上に配置していた防衛拠点に誘導雷撃砲を配備しておいた。
そして駆逐艦対応部隊が駆逐艦を沈めている最中に揚陸艇対応に少々戦力を移動させたのだ。
「第2戦闘用ゴーレム兵君部隊!! 砲撃用意っ! ……ってぇーーーっ!!」
海上を稲光の様な光線が走り浮いて助けを待つ乗員達を次々と無慈悲に焼いていった。
この様な敵軍にとっては絶望的な攻防が続く。
粘り強く攻め続けてくる艦隊も突破口が見つけられずじり貧の満身創痍状態だ。
とは言えいつまでも奴らに付き合ってやる義理もない。
全員の心を折り全軍を殲滅させないとこの戦闘は終わらない。
俺は残りの戦闘艦に向け最後の呪文の詠唱を始める。
お前等のぉー寿命はぁー後何秒だぁー?
残りの艦隊全員でぇー数えてぇーみろぉー。
そう、あの呪文だ。
「我は求め訴えん 偉大なる炎は破壊と再生を司る 深淵の底より姿を現しその無限なる力で敵を薙ぎ払え ミスカナローズ・スプレンギングッ!!」
もはや健気さすら覚える程に愚直に結界へ砲撃を続けていた戦闘艦隊の残り全てが爆発撃沈した。
水柱が収まると辺りの海には静寂が戻り始めた。
俺は丸裸となった旗艦へ向かい飛んでいく。
う、きもぢわどぅくてはきぞうだ……。
なんとか旗艦の艦橋まで辿り着き中を見ると艦長らしき男が何かを喚いているのが分かった。
おおかた俺を撃ち落とせだの喚いてたしなめられているのだろう。
お前らは終わりだよ。
俺の名前を……言ってみろ。
その後、旗艦は大爆発を起こし船体を真っ二つにしてゆっくりと沈没していった。
海に完全な静寂が訪れた。
ベレルメーゼン帝国 第1、第2、第5~8艦隊 全滅
アルビット・ルクシアスと無慈悲な仲間達 損害軽微
少し長くなってしまいました。
すいません(*´Д`)




