花のあと
目が醒めたらそこは知らない天井だった。
僕の家は木造の古い家だけど、ここは白いコンクリートの建物のようだ。
ベッドに寝かされている。左手には点滴がしてあった。少し頭が痛い。
寝ている間に何があったのだろう。
考えても仕方がない。ため息をつく。
そうしているうちに看護師さんが入ってきてきて、熱を測ったり、点滴をはずしたりした。
「タケルくん、ごはん食べたい?」
僕ははっとした。
自分の名前を忘れていたからだ。
「そんなにいらないです。スポーツドリンクください。」
「わかったわ。」
「・・・僕に何があったのですか?」
おそるおそる聞いてみた。
「ほんとうは、看護師が言ってはいけないんだけど、タケルくんのおうちに、泥棒が入ってかなり暴れて、タケルくんがショックでうちの病院に運ばれたの。」
「おかあさんとおとうさんは?」
「泥棒ともみあってケガをしたけどたいしたことないわ。ただ、タケルくんは小児科で、おとうさんたちは外科にいるだけよ。」
僕は半分、うそだ、と思っていた。
看護師さんが出ていったあと、僕は泣いた。
少しずつ、思い出したんだ。
看護師さんが「泥棒」と言った男はおとうさんのおとうとで、ずっと悪い奴。おとうさんからお金を借りに来ていて、昨日とうとうおとうさんがお金を貸さないと言ったんだ。
おとうとは包丁を持ち出して暴れた。
血のしずくが見えて僕は二階に逃げて部屋にカギをかけた。そこから覚えていない。
きっとおとうさんも、おかあさんもだめなんだ、そう思った。涙が止まらなかった。
看護師さんが来た。
「タケルくん、スポーツドリンク。どうしたの?泣いちゃって。しんどい?」
「なんでもないです。」
僕はタオルで顔をふいた。
「はい。」
スポーツドリンクをもらって飲んだ。
少しすっきりした。
「9時頃におばさまが来るって聞いてますからそれまで、寝ておいてね。」
おとうさんのおとうとのおくさんだ。
おくさんは悪い人じゃない。ずっとおとうとに悪い目に遭ってる。
おくさんに会うまで寝よう。
たぶん、ぼくとおくさんと会ってもつらいことばっかりなんだろうけど、がんばるしかない。
そうおもって僕は目を閉じた。
完
悪い親戚の伯父のいる子供というものを書きたくて書いてます。この作風を続けてみてから考えようと思います。いまだにそういうものがいるので書けるだけ書ききろうなんて。他の話も書いたので投稿しようと考えています。