Episode 88 Naoya side New Recode
『新記録のお知らせをいたします。ただいま、第7レーンを泳ぎました原田くん、扇原商業は、22秒64、22秒64で今大会新記録ならびに、高校新記録を樹立いたしました』
「っ!」
俺が電光掲示板を見た瞬間にどうやら、並び順が、レーン順からタイム順に代わっていたみたいで、俺が見間違えていたみたい。
自分の名前も確認せずに、8人レースの7レーンやったから、下から2番目としか考えてへんかったし、パッと見た瞬間、そこにしか見えてへんかった。
なんやったら、順位も名前も見えてなかった。
アナウンスがあった瞬間、誰かが新記録やったんか。なんて思っとったけど、まさか、俺の名前がアナウンスされるとは……うん?待って。今、高校新記録とかいうた?
「はあ~!?」
とんでもない時間差ってことはわかってる。けど、理解が追いつかへん。
こんな予選から俺が高校新記録をたたき出したんか!?
「えっと、マジな話っすか?」
息切れしながらも、思わず、スタート台近くで何か言っていた役員の人に聞いてしまった。
「おめでとう。決勝も頑張ってね。上がるとき、向こうのオーバーフロー使っていいから」
なんというか、「おめでとう」とかそういう感情はなかった。
そう言われたものの、後半部分は頭の中に入ってこなかった。
とりあえず、役員の人に言われ、周りに身を任せるような感じで、6レーンから流れてきたやつの後ろをついていくようにして、コースロープの下をくぐり、オーバーフローからプールサイドに上がる。
まだ、理解が追いつかへん頭を働かせながら、フラフラと荷物置き場のところに行って、自分の荷物を回収。そのまま、フラフラとサブプールの方へ向かおうとする。
「直ちゃん、お疲れ。やるやん、高校記録とか」
そんなことを言って話しかけてくるのは、レース終わりなのに、まだレーシングウェア姿の大神。
どうやら、レースが終わった後、自分の荷物だけ持ったあと、ずっとここにおったみたいやな。足元を見たら、少し水たまりができていた。
たぶん、セームで身体を拭いて、その場で絞ってを繰り返していたんやろうな。
「服くらい着ろよ。寒ないんか」
「まだな。さすがにレース後でまだかなり身体は熱いわ。たぶん、まだアドレナリンが出てるんやろうな。それにしても、高校新記録か。ほんますごいな」
「何言うてんねん。お前かて、大会記録更新してんねんで。後ろの組がちょっとざわついとったで」
「そんなわけないやろ。2組やで。それに、なんか拍手は聞こえとったけど、うちに対してやないやろ?まぁ、うちも調子は良かったけど、なんていうか、そこまでのタイムが出てるとは思えへんし、予選落ちなんは確定してるから、あんまり気にしてへんねんけどね」
そういえば、こいつ、目が悪くて、いつもレースが終わるたびに美咲に聞いていたな。
でも、今回に関しては、そんなことはないんやけどな。なんて思いつつも、俺が何度も言ったものの、それでも信じない大神。まぁ、とりあえず、こんなことを言うててもしゃあないから、軽くダウンしてから、美咲んところに戻るか。
そこから、レーシングウェアのまま、サブプールで軽く泳いで朝のダウン。もちろん、2人ともレーシングウェアでダウンした後、決勝に備えるためにともに着替えた後、美咲のところに戻る。
まさかの勘違い。
こんな成績を残せる直哉は文字通り化け物かもしれません……。
それか、遊菜に触発され、恥ずかしいところを見せたくないって言ったところでしょうか?
まぁ、これが2人の実力でしょうか?




