Episode 81 公式練習
すっかりインターハイって言う雰囲気に慣れたのか、のんびりと泳いでいる2人。
アップってことがわかってるなら、それでいいんだけど、なんかいつもと違う気もしている。
いつもとみている場所が違うからって言うのがあるからなのか?なんて思いながらも、ゆっくり泳ぐ姿を見ながら歩いた。
気付けば、アップだけで200メートルを通して泳いだ2人は一度泳ぐのをやめて、スカーリングでその場で浮いた。
その姿を見て2人に近づき声をかける。
「どう?調子は」
「悪かぁねぇよ。ただ、やっぱ、ハーフプールでやってるだけあって、気にしたら長いって感じてまうわ」
「うちも一緒やわ。1フリの時、ターンのタイミング、気ぃつけなあかんわ。アップやからって言うて、2メーターラインでブレスするとき、いつもレフトハンドが残ってんのに、今日は全部ライトハンドが残ってたから、気持ち悪かったわ。流そうかと思ったけど、ターンも届かんくなりそうやったし、やから、あとは、実際に飛ばしてみてどうなるかってところやと思う」
まぁ、これに関しては仕方ないよね。どうしtめお、環境というのかあるから、こういう大会の時で、なんとか慣れてもらうしかない。
「まぁ、しゃあないよね。やから、公式練習の昨日と今の公式アップの時間を全部使って慣れてもらおうとおもってるんやけど」
「まぁ、それはわかってるんやけどな。できたら、思いっきり飛ばしたいとは思ってるんやけど、どっかのタイミングで入れてくれや」
「はいはい。まぁ、上から飛んでタイムも適当にとるし、全力で泳ぐ場面は作るつもりやし、その時にターンも挟んでもええんちゃうかなって」
「考えてくれてるんやったらええわ。助かる。とりまどうする?スキップス行くか?」
「わけたいけど、それしかできひんから、クォーターずつ4本で」
「オーライ。ほんなら、ちょっとだけペースを上げるか」
「うちは直ちゃんのペースについていくだけやし。どんなんでもかまへんで」
「さすがにここまで来ると、出る人数が限られるから、泳ぎやすいな。それに、周りも同じようなタイムで泳ぐから、ペースもつかみやすいわ」
そう言うと、直哉は静かに潜った後、力強いドルフィンキックを打って泳ぎだす。
そこからは、普通に泳がせたり、スタート台からのスタート練習をしたりと、アップの時間でもある程度慣れてもらった。
途中、私の計測ミスだと信じたいんだけど、直哉がワンウェイを23秒9、遊菜が26秒8というタイムをたたき出していた。あえて2人には言わなかったけど。
それに、学校のプールで実際にハーフを直哉が3秒5、遊菜が6秒5で泳いでいたから、そんなこともあるかと思ったけど、それでも、ハーフプールでの3秒や6秒とロングプールでの3秒と6秒では感覚がまるで違う。そう思ったら、少し私も寒気がした。
まさか、近畿大会が終わってからの2週間でここまで成長したのか?なんて思いつつも、しっかりと泳がせた後は、メインプールが使える時間のギリギリまでドルフィンキックの確認をさせたり、フォームチェックを入れて、あとは、遊菜のご希望で、ファーストダッシュからのターンの確認もしてもらった。
たぶん、これで不安なく、明日からの本番に挑んでくれるだろうと思いながら、サブプールに移動して、もう少しだけ泳ぐ。
今日の予定は昼間で泳いだ後、静養して、明日に備えるって形になるかな。って思っているけど、昼からの自由時間も、水泳バカ2人のことだから、サブプールで泳ぐとか言いそうだけど。なんて思いつつ、スマホのメモ機能で簡単にメニューを組む。
そして、サブプールに移動してからは、踊らせるように泳がせて、しっかりと調整してもらった。
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意外と2人が平常心だったことが唯一の救いかな。とは思いつつも、内心どう思っているのかはわからない。
だからと言って、私や長浦先生をはじめ、ほかの人が直哉や遊菜に話を聞こうとしてもたぶん、本心は隠すだろう。
とは言いつつも、メンタルケアをする場面は出てくるだろうから、そのサインを見逃さないようにしないと。って思いながら、2人の様子を見ていたけど、なんだろう。無理に隠しているというよりも、自然体で楽しんでいるように見えるし、サークル間で談笑している姿を見ていても緊張しているという印象は何ひとつなかった。
ということは、私の感覚だけど、2人は本当に今までの大会通り、緊張もせず、自然体でいられているということだろうか……?
私がいろいろ言うことじゃないだろうけど、やっぱり、気になるところではあるかな。とは思いつつ、公式練習が終わった後の2人の様子を見ていても、特に変わった様子もないし、油断しているときも、「緊張した」とかの言葉も漏れていないから、大丈夫かなって思ったり。




