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Episode 77 いつも通りの日常

 そこから数日が立ち、直哉と遊菜がインターハイに出場するよ!っていう垂れ幕が学校にでかでかと飾られ、全校生徒ならびに、付近を通る人、近所の住民に広く知られることになった。

 学校がある自治体の取材があったり、新聞社からの取材があったけど、それ以外はたいてい、練習に全振りする勢いでずっとプールに浸かっている。


「次、ワンエイト、ツーセット、ワンテン、レストワン。できれば、ファーストフルパワー、ラップキープはしてほしいかな」

「またすごいこというやんけ。まぁ、オーライ」


 最近のメインメニューは、成海先輩や部長にびっくりされるほどハードメニューを繰り返しているけど、これは、直哉と遊菜のご希望通り。

 それでも、もう少し柔いメニューと思っていたのか、毎回メニューが終わるたびにヘロヘロ。

 それを見て楽しんでいる私もかなりの鬼畜だな。なんて思ったりもしている。

 ただ、少しでもフォームが乱れたりすると、早めに止めて、隣のレーンでフォームチェックさせて、少しでもタイムが伸びるように手助けをする。


「遊菜、また汚くなってる。次も汚かったら隣な」

「どこが悪い?」

「いつものとこ。またブレスの時の腕、我慢してや」

「了解。サンキュー」


 遊菜が戻って来てからまた泳ぎだすまでの10秒弱。その間に指摘してまた泳がせる。

 その指摘だけで、自分の癖がわかっているせいか、すぐに理解して、その癖をなくそうとする。

 直哉は直哉で、稀にキャッチができていないときもあり、それを指摘して隣のレーンに入れて、フォーム矯正をすることだってある。

 今日は1回もなかったけどね。


 メニューをこなした直哉たちは、肩で息をしながら、次の指示を待っている。


「ハーフフォー、フォーセット、35秒でレストワンで行こうか」

「こっちもラップキープか?」

「もち。そうやないと練習にならんやん。そのかわり、1本目はフルパワーな」

「マジかよ。マジで鬼すぎん?」

「でも、強豪校はそれくらいやってるんやろうから、それくらいはいこうや」


 正直なことを言うと、私だって手探りの状態。強豪校のメニューがどんなのかわからないけど、代表選手がSNSに上げていたメニューを参考にしている。

 さすがに、それを参考にしていはいるものの、扇商のメインメニューになるかな。なんて思ったりして……。まぁ、日本代表選手のメニューを丸々取り入れるのは無理だろうと思っているから、少しだけ変えているけどね。

 まぁ、それがどうなるかってところよね。


 ハーフプールだからって言うのもあるのか、練習メニューもさっきのメニューの距離が半分になっているから、なおのこと全力を出して、50メートルを直哉はたったの25秒弱、遊菜も27秒ちょっとで泳ぐ。

 ここから3本をキープなんて相当無理そうなことを言っているように聞こえるけど、代表選手も同じようなメニューを回している。

 ただ、ここまで必死に食らいついてくるとは思っていなかった。どこかのタイミングでサークルオーバーすると思っていたけど、その様子も今のところない。かなり力はついたんだと思う。


「直哉、またローリング、キックも4つになってる」

「おう、気ぃ付ける」

「ライ、ヨーイゴッ」


 2本目のフィニッシュから指摘して泳ぎだすまでわずか8秒。癖が出てきているところについてはしっかりと伝え、次のスタートを促す。

 そして、3本目をしっかりと隣で歩きながら、直哉のフォーム、遊菜のフォームをそれぞれ確認する。

 ……2人とも、少しずつ、癖が出ているんだよな。ちょっと、これに関しては、ルースンを入れて、フォームを見直してもらおうか。

 そのあとにもう一度ダッシュメニューを入れて行こうか。

 それを入れたとしても、午前中の練習時間はまだ1時間ほどある。まだまだメニューを入れても問題ないはず。


『h8×2 040Fly』


 記号と数字ばかりで、少しばかり私のノートは汚くなるから、誰かに見せることはほとんどないんだけど、『50メートル8本2セット40秒サークルバタフライで』って書いてある。

 正直、ものすごくきつくなることは目に見えている。だけど、パワーを足すなら、来れもいい練習になる灯っている。


 しっかりと肩で息をしている直哉と遊菜。かなりメニューは効いているみたいね。ただただきついだけのメニューになるかもしれないけど。


「ルースンワン、5分後リスタートな」

「えぐいわ。たしかにスピードメニューにしてくれとは言うたけど、ここまで一気に負荷を上げるか?」

「だって、時間ないもん。ほんまやったら、レスト30で回すところやで」

「どっから拾ってきてん、そのメニュー。きつすぎるわ」

「一応、日本代表メニューの一部を参考にしてるで。って言うても、丸々取り入れるのはまだ無理やろうからってことで、レストを増やしたり、サークルも気持ち緩くしたり。なんとか回れるように工夫は入れてんで」

「そうか。なんか、いきなりスピードに全振りしてるから怖なってさ」

「まぁ、FCはインターハイ終わるまでいったんええかなって思ってる。そのかわり、崩れだしたら、その都度言うけどな」

「それだけでも、癖が出てんのかわからんからありがたいけどな」


 感じ方は人それぞれだろう。ただ、今の泳ぎ方を見る限り、この強度で練習を続けても多分大丈夫。

 ただ、次の「ハーフエイト、ツーセット、40、オールフライ」でどうなるかだけど。


 まぁ、たぶん、直哉は後半になるにつれてバテてくるだろう。それでも、サークルはギリギリで回してくるんじゃないかって思う。で、遊菜は、パワーもスタミナも足りていないだろうから、最初は間に合うとしても、後半になるにつれて、ズルズルとタイムオーバーしてくるかなって思う。

 もしかすると、遊菜は各セットの6本目はカットしてもいいんじゃないかなって思っているし、直哉も状態次第でカットしてもいいかな。

 ここに関しては様子見するつもりだし、全部回す必要はないかなって思う。

 それに、今日の練習中の顔を見て、明日のメニューに組み込んだらいいだろうし。


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