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Episode 75 ちょっとなぁ~

「ほんま、ふたりとも、張り合うようにインターハイ行きを決めてくるよな。俺がほんまに忙しいやんけ」


 そう言いながらもゲラゲラと笑い、椅子に座った。


 そこから予選のレースは続き、端折るように聞こえるかもしれないけど、4組で直哉より速いタイムで泳いだ選手が3人。5組でも5人も出ってきたことには驚いたけど、なんとか直哉も決勝に進出かな。


『ただいま行われました、男子50メートル自由形の上位20位のランキングが表示されております。上位10名は決勝進出、予選11位は補欠1番、予選12位は補欠2番となります。以上』


 ちゃんとランキングが表示され、直哉が上から9番目にいたことに安どして、プログラムを閉じる。


 そして、予選が終わっても、今回は直哉たちは戻ってこなかった。

 もしかすると、決勝は2バタの予選、4フリの決勝が男女ともにやったあとのレースになるから、あえて戻って来ずに、アッププールで調子を整えてから決勝に挑むのかなって思ったり。

 でも、時間にして2時間もないくらい。それならそう考えるのが一番かもしれないね。なんて思いながらも、続いて始まる2バタの予選競技をとほとんどレストの無い状態で4フリの決勝が続く。

 その4フリの決勝が終わると、先に女子の半フリ。

 遊菜は9レーンでの登場。

 予選でインターハイの制限タイムを切っているから、気は楽だろう。フライングでポチャにしてほしくないけど……。


『第9レーン、大神さん、扇原商業』

「遊菜~!もう1本!」


 場内通告の合間で思い切り叫び、遊菜を応援。

 集中して聞こえていないだろうけど、できる限りの声で叫び、声援を送る。

 そして、いつも通り笛が鳴り響く。

 ただ、その笛は緊張感をさらに持たせ、場内を支配していく。

 この緊張感、私が最初で最後に出た決勝のときより、ものすごく嫌だな……。って感じると同時に、この感覚、懐かしいな。と思いつつ、身体が一瞬で強張る。

 まるで、スローモーションのように、かつ、威厳を示すかのようにゆっくりと短く鳴った笛。その笛に合わせ、遊菜もゆっくりとスタート台に近づいていく。

 そして、長い笛がいつも以上に長くなってからゆっくりとスタート台に立ち、じっと前を見つめる。


『シャア!』


 いつもの咆哮をしたあとは、ゆっくりとかがみ、スタートの姿勢を取る。

 一連の流れは完璧だな。あとは、どれだけタイムを伸ばしてくるかってところ。ひとつでも順位を上げてフィニッシュしてほしいなって思っている。


「よーい」


 いつも以上に低く威厳のある声。この声が私をさらに緊張させるけど、その緊張はどうにもならなかった。

 出場する10人の選手が完全に静止した状態で鳴る電子音。それを合図に飛び出す選手10人。その中でも一番いい反応を見せたのは、遊菜で、コンマ59で飛び出している。

 リアクションタイムは文字通り一瞬だけ遅れたものの、コンマ6を切るのは相変わらずだ。

 そこからお得意のドルフィンキックを打ちながら浮き上がってくると、そこからは、ひとりだけ一定のタイミングで腕を回し続ける。他の選手は「タ・タン」というようなタイミングで泳ぐ選手が多い中、遊菜はまぁ、珍しいタイプだろう。

 といっても、私が遊菜のパワーだとこうやって泳いだほうがいい。とアドバイスしたからって言うのもあるんだけどね。

 そんな中で突っ込んでいく遊菜を含めた選手10人。

 公式レースの中で最短でもあるこのレース。レース自体は30秒もかからない。

 私がいろんなことを考えているうちにレースは終盤。

 ほとんど横一線でレースが進んでいるけど、かろうじてセンターラインを泳ぐ選手3人ほどがわずかに前に出ているのかなって思っているくらい。

 ただ、私から見ているところから差は見えなくなったところで、全選手が泳ぎ終わっていた。

 遊菜がフィニッシュした瞬間に電光掲示板を振り返る。


『9 大神遊菜 8 27.42』


 ふぅ。なんとかって感じか。でも、インターハイのタイムからは若干遅れたけど、まぁ、予選で切っていたことが一番の幸運かな。


『ただいま行われました女子50メートル自由形決勝の結果が表示されております。6位まではインターハイの参加標準記録を突破しております』


 ここでも切ってほしかったかな。と思っていたんだけど、まぁ、仕方ないか。


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