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Episode 69 3日目に向けて準備しています

 そして、時間の8時になり、一か所ずつドアが開けられる。

 その瞬間に後ろからの圧力を感じたけど、できるだけ無視。そうでもしないと、入場順を取られそうな気がしたから。

 私は私でどこから見るかいろいろ考えている。そんな場所を取られるわけにもいかないからね。

 そんなことを思いながら、周りを少しだけけん制した。


 さすがに役員さんが腕を広げて「まだだよ」と言っている間は中に突っ込むようなことはしない。

 そして、扉が全部空けられると、役員の人がそれぞれ「ゆっくり歩いて~」と言いながら選手たちを中に入れる。

 もちろん、私たちもテクテクと場内に入り、決められたエリアの一番上に3席を陣取り、プール内を眺める。

 ……うん。ここなら全体がよく見えるから、ここでいいや。

 それに、今から動いても中途半端な場所しか取れなくなるんだから、もうここでいい。


「いつも通りやな」


 私の性格をわかりだした遊菜が私に声をかけてくる。

 私は「もちろんな」とだけ返し、自分の準備を始めると、それを見た遊菜たちもウォーミングアップに行く準備をし始める。


「アップはどうする?自分たちでどうにかする?それともうちが指示出そうか?」

「う~ん。せやな。感覚だけ掴ませてくれへんか?ほんで、感覚が悪く感じたら手を上げるわ」

「了解。ほんなら、うちは簡単に組み上げるから、泳ぎだす前に、手を上げてくれへん?場所だけ確認したいし」

「オーライ。まぁ、どうにかなるやろうとは思っているけど、よろしくな」


 直哉はそういって、遊菜を連れて階段を下りて行った。

 とりあえず、私は、メニューを簡単に組み立てて、直哉たちが場内に姿を現すのを待ちますか。

 それだけ思うと、ノートを開いて、今日の朝から見せていた直哉と遊菜の言動を思い出しながら、簡単にメニューを組み立てていく。

 ふたりの様子は、いつもと変わらないように見えたけど、足取りは、いつもよりふわふわしているようにも感じた。

 そして、昨日、調整のために泳いだけど、見せていた泳ぎも、力が変に抜けて、少し上の空って感じだった。

 おそらく、本当に自分がインターハイに進めたことが夢なんじゃないかと思っている節があるのかもしれないな。

 レースに関しては、昼を過ぎて少ししてからなわけだし、思い切ってダッシュメニューを多く入れていいかなって思っている。

 理由としては、ハーフレースなんだし、スタートと浮き上がりの感覚を掴ませたほうがいいかなと思っているから。それに、ちょっと疲れさせた方がいいと思っている節もある。

 ただ、スタートと浮き上がりの感覚をつかんでもらおうと思うなら、私もプールに降りて、スタートの様子を近くで見たい。

 だけど、さすがに荷物番替わりがいないことには、盗難のリスクを考えると、むやみに離れられない。

 それなら、もう少しで合流するだろう長浦先生に荷物番をお願いするつもりでいるから、そこまで待つか。

 まぁ、直哉たちのアップに私が必要ならって話なんだけど。

 そこから数分くらい直哉たちの姿を探していると、階段の下から長浦先生が上がって生きているのが見えた。


「おはようございます」

「おはようさん。今日も今日で高いところを陣取るんやな」

「ここが一番見やすいところですからね。それに、ここからなら、周りの様子もばっちり見えますし」

「やること全部がマネージャーを超えて、コーチのように感じるわ。なんていうか、急に強豪校に転勤した感覚やわ」


 まぁ、そう思うのも仕方ないだろう。それだけのことを直哉も遊菜もやっているんだから。

 ましてや、大阪府大会まで出る選手はいただろうけど、近畿大会に出る選手やインターハイに出る選手を受け持ったことはないだろう。いろいろ手探りなところがあるんじゃないかなって思う。


「先生、直哉たちの姿が確認出来たら、直哉たちのアップを見てくるんで、荷物番をお願いしてもいいですか?」

「あぁ、行って来いよ。今日はなんもすることないし、ずっとここで見といたるわ」


 快諾してくれて本当にありがたい。

 たぶん、ほかのチームならほかにも選手やマネージャーがいるはずだから、こういうことにはならないんだろうけど、うちは、選手層も薄いから仕方がない。

 仕方ないことをいつまでもあぁだこうだは言ってられない。

 とりあえず、今は直哉たちの姿を探すのが一番だ。話はそれからになるだろう。


 そこから数分して、ようやく直哉たちの姿を見つけることができた。

 3レーンで手を上げているピンク色のスイムキャップが2人。

 あんなことをするのは直哉と遊菜しかない。

 とりあえず、2人の様子を見たあと、どうするのか聞いて、サポートがいるって言うなら、考えているメニューに切り替えようか。

 そんなことを思いながら、私も手を上げて、2人に気づいていることをアピール。それを見た直哉たちはゆっくりと邪魔にならないスピードでアップを始める。

 ここからこうやって見てみると、スーッと泳ぐ2人のフォームはきれいだな。と相変わらず思っている。

 そこから身体を動かす2人の様子を見ていたけど、何本かハーフを泳いだ後、遊菜と少し話したのか、顔を合わせたあと、私を見て、両手で糸を巻くしぐさをした。

 うん?あれは、私を呼んでいるってことで認識してもいいのかな?……たぶんそうだよな。


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