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Episode 60 最後の種目

「成海先輩!ラスト!上げて!もっと上げて!上げて上げて上げて!」


 そんな声が聞こえてくると、

 そして、芦屋先輩は、詰められることはなく、詰めることもなく、バトンをアンカーの遊菜に繋いだ。

 遊菜は遊菜で、慣れたスタート台から飛び込むと、ドルフィンキックを派手に打ち込むんで、浮き上がると同時に全力で腕を回しはじめ、前を追いかけはじめる。

 その遊菜は、ファーストクォーターで先頭を泳ぐスイマーを捕らえると、ターンをしたあと、先頭が腕を回しはじめる頃には、遊菜は、ドルフィンキックで距離を稼ぐとともに、サクッとというような表現がぴったりなくらい、サクッと抜いていって、独走状態を取ろうとする。

 なんというか、ここまでくると、やっぱり遊菜らしい泳ぎをするなぁ。って思ってしまう。

 まぁ、どのチームがどういう組み方をしているかは、そのチームによって、変わるから、一概には言えないけど、アンカーって、順位を決める最後のスイマーになるわけで、責任重大。……だと私は思っている。

 まぁ、遊菜がどう思っているかまではわからないけど、あっという間に50メートルを泳ぎきり、扇商はトップフィニッシュ。

 遊菜も軽くうなずいてから、プールサイドに上がり、リレメン4人でハイタッチ。見ていて楽しそうで何より。

 そんな様子を見れば、今度は男子のレース。こっちはこっちでデッドヒートになるかなって思っている。


「この大会最後のレースです。プログラムナンバー53番。男子200メートルリレー、タイム決勝1組の競技を行います」


 こう言われると、まぁ、全体的にボルテージが上がるよね。

 そういえば、今さらなんだけど、チーム応援しなかったな。やっぱり、考えようとして諦めた。とかなのかな。なんて思ってしまったり。

 そんなことを思っているうちに、短い笛がなっていて、ファーストスイマーの成東さんが準備をしていた。

 久々にファーストスイマーとして泳ぐことに燃えているのか、殺気が隠れきれずにじみ出している。

 さすがにファーストスイマーだと燃えるのか、なんというか、オオカミのように見えてきた。

 こんな成東さんを見るのは初めてだな。何てともいながらも、スタートの合図が鳴ってスタートするレースを観察。

 序盤からしぶきだらけのレースで、扇商の成東さんと、鶴商の選手がわずかに出ているかなってところ。

 個人のレースでは、半バタで優勝、1フリでは3位と、かなり健闘した成東さんだけど、1フリのレースがおわったあとに「お前とワンツーフィニッシュしたかった」と直哉に話していた。その悔しさは相当なものだんだと思う。

 ひとりがたったの50メートルしか泳がないこのレース。展開が変わるのはあっという間で、レーススタートから30秒もしないうちにセカンドスイマーにバトンが渡る。

 扇商のセカンドスイマーは部長。2着でもらったバトンを必死に守ろうと攻めの泳ぎを見せている。

 ただ、じりじりと離されていく姿を見ると、女子のリレー同様、もどかしくなる。

 かといって、私ができることは何もなく、ただた応援するだけ。


 そして、なんとか部長は大きく離されることなく、後ろに繋ぎ、鮎川さんも派手に飛んでいく。

 派手に飛び出していった鮎川さんも必死に前を追いかけていく。

 中央大会にも出たことがある鮎川さんだけど、まぁ、男子はそもそも早くて差が詰まることはあまりないけど、今回は、なぜか目に見えて差が詰まっている。

 やっぱり、選手ごとのタイム差が強豪校に比べて広いから、こういうことになるのかな。って思ったり。

 その鮎川さんもじわりじわりと前を追い上げ、追い抜けはしかなったけど、直哉に繋いでいった。

 直哉は、センターライン付近までドルフィンキックを打ち込みながら浮き上がってくると同時に、腕を回しだし、折り返しのターンをしようとしたところで戦闘と並んだかと思えば、あっという間に抜いていった。

 こう見ると、やっぱり遊菜と直哉のスピードは異次元だなと感じさせられる。

 正直、これだけの逆転劇を見せてくれたら、ものすごく清々しい。

 これが商業高校だけが集まる大会のだいご味だろうか。


 直哉はあっという間に50メートルを泳ぎ切って、後ろとの差は大きく開くことはなかったけど、危なげなくトップフィニッシュ。


 これが扇商の底力か?なんて思いながらも、リレーで男女両種目ともトップフィニッシュできたのは本当に大きいと思う。


「選手並びにマネージャー、各校の先生にお伝えします。閉会式は16時30分、16時30分から行います。よろしくお願いします」


 閉会式は16時30分か。それなら、少しだけダウンの時間としてゆっくりしてもいいかもね。

 そんなことを思うと、ジャージとシャツを脱いでからスイムウェア姿になってから、そのまま飛びこむように、ターン側から入水して軽い力で泳ぐ。

 ゆったり泳ぐときって、なんというか、一番気が楽に感じる。

 ただ、明日は筋肉痛で悲鳴を上げるんだろうな。なんて考えながらも、腕と太ももに溜まった乳酸を流していく。

 これだけじゃ到底足りないこともわかり切っているけど、何もしないよりはましだよな。なんて思いながらも時間ギリギリまで泳いで、上がってから軽く体を拭いて、上からシャツとジャージを着る。

 そして、ちょっとだけ時間が過ぎてからだけど、閉会式が始まり、先に、得点合計で競う競技でもあることから、合計得点の上位3チームが発表されることに。


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