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Episode 56 うちのエースが暴れます。

 サイドから見る半ブレのレース。さすがにそれぞれのフォームの癖がある中で、スムーズなフォームで滑るように泳ぐ成海先輩。

 さすがに、レース間隔が短くて疲れているのか、顔が上がっている気もする。それでも、なんとか前を!という意志が強いのか、少しピッチが速いような気がする。

 それでも、ストロークの数を増やして、ブレスの確保とプルの勢いで距離を稼いでいるような感じ。

 意外とストロークピッチが上がると、ブレスができるようになるけど、顔をあげている時間が長いと、そのぶん、止まるからあまり推奨はしたくない。

 それに、ブレは、進む比率がプルよりキックのほうが強いって言われていて、ストロークピッチをあげると言うことは、キックで進める距離を自分で消していることになる。

 まぁ、鮎川さんはプルにも比率を置いて、バッタに近いブレをしているから、同じことは言いにくいんだけど……。


 レースは50秒をちょっと過ぎたところで終わる。

 成海先輩は、連チャンのレースだったのにも関わらずなんとか2着フィニッシュ。

 ちょっと納得のいかなかったのか、首をひねって歯を見せた成海先輩。

 リレーがなければもうすこし行けたとでも言いたいのか。でも、仕方ないところもあるかな。

 続いて、杏里ちゃんがレースに挑むけど、杏里ちゃんのベストタイムだと、点数は難しいかな~。

 さっきのレースは体感で最後にフィニッシュしたのが53秒だった。

 で、杏里ちゃんの半ブレのベストタイムは地区大会エントリーのときに測った54秒。さすがにそのときからは伸びているだろうけど、ちょっと厳しいかなって思っている。


 ただ、そんな2組のレース。

 私の予想を裏切ることが起きて、杏里ちゃんのフォームがいつもと違っていた。

 キックで進むようなフォームから、プルでも距離を稼ぐ鮎川さんスタイルで泳ぐ杏里ちゃん。これには私も見たことがなくて、私を焦らせている。

 そして、その鮎川さんスタイルに近いフォームで泳いだ杏里ちゃんにビックリしたことで、体内時計が完全に狂い、杏里ちゃんのタイムがわからなくなった。

 そして、杏里ちゃんがこんな泳ぎができたんだと思ったときでもあった。

 ただ、さすがに腕力がいるフォームってこともあってか、プールから上がったときの顔は、ちょっと疲れていたけどね。


 そこからレースは男子の半ブレに舞台を移し、まぁ、結果は言わずも、大撃沈。

 そもそも、ひょろり先輩ひとりしかエントリーしてなかったからね。もともと半ブレは捨てていたんだと思う。

 そして、あっという間に遊菜のレース。


 かなりノリノリで、中央大会で見せていた集中力がないように見える。

 まぁ、これだけのレベルなら、遊菜もそこまで集中しなくても、楽に優勝はできるんじゃないかなって思っているけど、まだ遊菜の生態には謎が多いところがあって。どうするのかわからないところ。


 遊菜は笛がなると、中央大会のときと同じように「シャア!」と吠えてからスタート台に登る。

 やっぱり、いきなり声を出されると、こっちとしてもビックリするよね。だけど、それが遊菜の気合いの入れ方だから仕方ない。

 そんな遊菜も、スタートの合図が響くと、いつものように飛び出し、「先に行くぜ」と言わんばかりに飛ばしていく。

 飛び出してからは、過去3レースと同じようにドルフィンキックを豪快に打っていって、距離を稼ぐ。

 相変わらずのスピードだな。なんて思いながら、早々にリードを奪い、広げていく。

 ひとりだけまったく違う次元で泳いでいくから、まぁ怖いよね。

 ただでさえ、スピードに乗ると、前半から飛ばしていくようになった。もちろん、後ろの組で泳ぐなら、レース展開を見てからということを言っているけど、まぁ、基本的には早い組で泳ぐことが多いから、気にしてはいないんだと思う。

 そして、ファーストハーフを折り返していく頃には、すでに後ろとは10メートルほどの差にまで広がっている。

 たぶんだけど、ファーストハーフは27から28くらいで入ったと思う。で、たぶん、バテとかを考えると、ラストハーフは32のトータル1分ちょうど前後かなって思う。

 それでも、フィニッシュ時には15秒くらいの差が開きそうな気はしている。

 もしかすると、レベルによったら、20秒近く空くんじゃないかなとすら思うくらい、ファーストハーフの泳ぎは早く、素直にきれいだった。

 そんな遊菜のラストハーフも、圧倒的な速さを見せつけて悠々のフィニッシュ。

 涼しい顔をして、ひょいとプールサイドに上がる姿は「まだまだ行けますよ」と言わんばかりの振る舞い。

 ちょっとクールに見せた姿が新鮮で、少し格好よく見えた。


 そのあと、2組と3組のレースもあったけど、まぁね。扇商から出る選手はおらずで、男子のレースに移る。

 遊菜と性格が反対な直哉は、短い笛が鳴っても静かなまま、長い笛が鳴ってから、ゆっくりとスタート台に登る。

 頭ひとつ抜けている直哉は、ものすごく目立つね。屈んでも、まだ少し高い。やっぱり、目立っ選手は目立つよね。

 そして、笛が鳴ると同時に飛び出すと、遊菜同様、とんでもないスピードで飛んでいく。

 さらに、水中に潜った直哉は、ドルフィンキックで加速して、すでに突き放しにかかっている。

 もう本当にイルカのようよね。こう見るだけでも、直哉のスピードはとんでもない。

 ひとりハーフラインを越える前に浮き上がってきて、先に腕を回し始める。

 ハーフラインを越える場面ですでに1秒弱ほどの差が出ているように見える。

 ただ、男子も早い選手がいるみたいで、遊菜みたいに、豪快なひとり旅は難しいかなと思っている。それでも、5秒から10秒近い差ができるんじゃないかなとは思う。

 ファーストクォーターは本当にあっという間で、10秒もしないうちに直哉が回っていった。

 ファーストクォーター回ったあともぐいぐいと突っ込んでいく。すでに身体ひとつの差がついているのに、さらにぐいぐいと突き放しに行く。

 相変わらず突っ込む直哉は、ショートプールでほぼベストの23秒前半でファーストハーフを折り返していく。

 後ろとの差は、3秒ほどに広がった。それでも容赦ない直哉は、さらにさらに突き放しにいって、結局、後続とは8秒差にまで広げ、直哉自身は54秒前半でフィニッシュしたと思う。……あとでスプリットブックを確認するか。

 それより、そろそろ自分のレースに集中していくか。

 なにより、ほぼ1年ぶりなんだから。

 とは言いつつも、適当なタイムでエントリーされているみたいで、5人のレースの一番端に追いやられている。

 あっ、そうそう。リレーに間に合わなかった棚橋先輩だけど、なんとか、個人のレースが始まる前に到着して、アップもしないまま、招集の列に並んだ。


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