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Episode 55 順調に進むレース

「完璧な泳ぎやったやん、咲ちゃんのタイム5秒6やってさ」


 タイムを測ってくれていた愛那が嬉々として私に言ってくる。


「香奈ぱっちと飛鳥先輩より速いタイムやん。スタートは聞いてた通りで見てられへんかったけど」

「まぁ、スタートは置いといて、なんていうか、ちょっとテンション上がって、楽しかったっていうのが理由の一つにあるんとちゃうかな。それに、たった50やから、スタミナ無視で飛ばせたってのはあるんちゃうかな。このあとの100と200が怖いけど」

「まぁ、そうやと思うで。うちかて、2個メが心配やもん。前々から言われとったとは言え、スタミナが戻りきらんわ」

「まぁ、愛那はドクターストップかかっとったもんな。しゃあないと思うで」

「泳ぐことは大好きやねんけどな。それに、水に入れたとはいえ、本気で泳ぐのはむりやったんやけどね」

「せやったね。クラゲみたいにゆったりしとったもんな。でも、復帰見込みは速なったんちゃうん?」

「そやなぁ。今は10月頭って言われてるかな。高校入る前は、何もせんかったら、来年の2月頭って言われとったけどな」


 ということは、4ヶ月くらい早くなったのか。


「本音を言うたら、9月にある新人戦には間に合わせたいんやけどな。それに、本気で泳いだらあかんって言われてるだけやったから、リハビリ程度に水中ウォーキングとか、腰に負担がかからん程度やったら泳いでもええって言われてるんよね」


 復帰を早めた理由っていうのは、練習の合間に歩いたり、泳いでたって言うのがあるのか。

 愛那も愛那で早く泳ぎたいだろうなって思う。

 私は今のままで満足なんだけどね。


 そんなことを言い合っていると、男子のレースが始まっていて、早くも、バックのターンをしていく選手たち。

 部長も、少し遅れたタイミングだけど、必死について行く。

 そして、バトンタッチしていく各校。ブレの選手は、初心者を置いているところもあるのか、スピードの差が激しい。

 女子ももちろん、初心者を置いているところもあるけど、なんていうか、スピードに差がないことがたまにあって、よくわからない。

 扇商のブレは、地区大会の時と同じく、鮎川さんが泳いで、バッタに成東さんでエントリーしている。

 それは、地区大会のための練習で、ブレを練習していたこともあって、リレメンを組むとき、タイムを見比べていたら、成東さんがブレに回って、鮎川さんがバッタに回るより、鮎川さんがブレに回り、成東さんがバッタに回るほうが速いことが分かり、部長が説得していた。


 そして、レースはブレを折り返していって、順位がジワリと変化していく。

 扇商は、6レーンからのスタートだけど、3着とまぁまぁの位置につけている。

 さらに、扇商の追撃は止まらない。

 バックでは、少し置いていかれたものの、ブレである程度追いついて、バッタの成東さんで2着に並ぶと、直哉にバトンタッチ。

 その直哉は、飛び込んだと同時に、強いドルフィンキックを打っていって、並びかけていた選手をさっと抜いていくと、前を追いかけていく。

 ひとりだけ次元の違う泳ぎでぐいぐいと進んでいく直哉は、後ろから接戦に持ち込んだものの、コンマ5秒ほど遅れてフィニッシュした。

 直哉は、納得がいかなかったのか、少しだけ天を仰いで、首を一つひねってからプールサイドに上がった。


 男女のメドレーが終わると、ここからは個人のレースが始まっていく。

 各レース2組ないし、1組だけ、場合によっては、男女が同じレースということもあり、私も、2バックで他校の男子と一緒になっている。

 もちろん、2バックのほかに、2バッタも男女が一緒のレースに組み込まれている。

 商業高校の水泳部に入る生徒が少ないことを具現化している。

 特に、女子は顕著よね。扇商は、商業高校の中でも女子の方が多い高校だけど、鶴商以外は、リレーを組めるのがギリギリくらい。むしろ、扇商からひとりリレメンとして貸しているくらいだし。


 レースは、半ブレに進み、少ししんどいだろうけど、成海先輩がレースで泳ぐことになり、そこにもうひとり。1年生の御影杏里ちゃんが出場。

 さすがに、タイム差があるせいか、組が別れての出場になるけど、成海先輩には得点を狙ってほしいし、杏里ちゃんには、自己ベストはもちろん、なんなら、得点にも絡んだら完璧なんじゃないとは思う。

 ただ、ほかの選手がどれだけのタイムで泳ぐのか。ってところかな。


「よっしゃ!このまま1フリも突っ込むで!」


 私の横で声を張り上げる遊菜は、リレーでぶっちぎってフィニッシュしたせいか、テンションが高い。このまま個人のレースも突っ込んでもらえるかな。

 そのまま、直哉も引き付けられるようにタイムを上げて優勝をかっさらってほしいかな。

 そういう私も、2バックの単独優勝はフライングさえしなかったら決まったようなものだし、1バックはちょっとだけ頑張って飛ばしきれたらってところかな。

 まぁ、1バックで優勝できなくても2バックは単独エントリーだし、成海先輩に言われたご使命の点数はそもそも稼いでいるし、気にしないで行くか。

 とりあえず、待機時間があまりないから、水分補給をして、さっさと招集に向かうか。


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