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Episode 47 本当にちょっと考えたい。

「そんなことがあったんや。バサロもすごいし、ひっくり返ってドルフィンも勢いがすごいのになんで選手とちゃうんやろうって思っとってんな。納得や」


 私の話を聞いた遊菜はすぐに納得したように、うんうん。と首を縦に振っていた。


「もっかい飛んどくか?」


 直哉がコース台に座りながら私に聞いてくる。

 もちろん、飛んどくか?というのは、


「いや、やめとくわ。たぶん、同じことになると思うし」

「やと思うわ。まぁ、これで、メドレーの可能性は残ってるけど、フリーリレーは確実になくなったな」

「元から無いわ。練習してへんうちがリレメンなったら暴動が起こるやろ」

「いやいや、そこまではいかへんやろ。それに、芦屋先輩、美咲のタイムがよかったらまじで2泳に入れようとしてるしな」

「うそやん。本気で言うてる?もしそうやったらありえへんねんけど」


 リレーはおろか、非公式と言ってもレースに出るのは1年弱ぶり。そんな状態の私にリレーを泳がせるとか、正気の沙汰じゃない。

 むしろ、引き継ぎミスで失格を誘いそうで怖いって言うのも本音。

 いろいろ迷惑かけるだろうから、フリーリレーに関しては、全力拒否だなとは思っている。というか、全力拒否することに決めた。

 そもそもの話、マネージャーをリレメン扱いするって聞いたことがない。それに、引き継ぎだって、人それぞれに癖があるから、それに合わせる時間だっている。私には到底時間が足りない。


「今日はもう適当にするか」


 なんか、考えているのが馬鹿らしくなってきた。

 今日くらいサボっても問題ないでしょ。それに、明日はほぼ1日練習ができないわけで、近畿大会前だけど、たまにはゆっくりしたい。

 それに、私だって明日に向けて泳ぐ感覚を取り戻しておきたい。


「せやな。たまにはゆっくりしてもええやろ。それに、美咲もいろいろあるやろうし」


 まさか、直哉が賛成に回るとは思っていなかった。まぁ、たまには軽いメニューを入れても文句はないだろう。そう踏んだのもある。


「一応、組んであるメニューはあるけどどうする?やるんやったら取ってくるけど」

「いや、俺はええわ。先輩らおらへんし、たまには適当に泳いでゆっくりしようや」

「直ちゃんがそういうんやったら、うちもゆったり泳ごうっと」


 遊菜も直哉の後ろをついていくように言葉を返し、ぶら下がっていたコースロープからから離れ、ぷか~っとクラゲのように浮かんだ。


「はぁ~、今日も空が青い」


 浮かびながらつぶやく遊菜。その姿はいつも以上にリラックスしていた。

 そして、そのまま仰向けになりながら頭から水中に潜り、バサロでスピードをつけて浮き上がってくると、そのまま背泳ぎで50メートルを泳いだ。

 遊菜のバックは私とまるで違う。

 もしかすると、バックの時はローリングの意識が抜けているのか、腕が身体の中心より内側に入ることなく、プッシュした後はまっすぐに引き上げてきて小指から入水。

 私の場合は、内側に入った腕をそのままにローリングで入水する距離を遠くして、キャッチをしっかりとするために、中指から入水するイメージで泳いでいる。


「やることやんちゃやな。何でもできるから自由なんやろうけど」

「ほんまに。水中で自分の身体を操れるんやったら自由やで。そんなこと言うあんたもやけどな」

「まぁな。部活をガチで1年やるだけでできることは馬鹿みたいに増えるんやから」

「あんたは中学に入るときはもう4泳法できとったし、なんなら、春先から自由に泳げるときは自由やったやん」

「まぁな。それでも、渋柿がおったから、ここにおるときの方より控えめやったやろ?」

「知らんやん。うちとあんた、泳ぐコースちゃうかったのに。言うとくけど、女子の中では速いほうやったけど、あんたが異次元なだけやからな」

「まぁ、せやったな。近畿出たのは俺だけやったもんな」


 直哉はそう言うと、持っていたストップウォッチを近くの机に置くと、コース台の横に立ち、ゴーグルをすると、そのまま飛びこんでいった。

 さすが直哉で、スプラッシュもなく入水。そのままビューンと飛んでいくようにドルフィンキックを打っていく。

 何て言うか、自由(・・)。その2文字に限るよね。

 さて。私は私で遊びを入れながら泳ぐ感覚を取り戻して、明日に備えようか。


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