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Episode 26 直哉のレースと大会終了後

「和海さんでやっと0やで。遊菜っちがどんだけ速いかようわかるな」

「言うてる間に直哉の番になるし、また驚かさせてもらおうか」


 愛那の言葉に私は「せやね」と軽く言うけど、正直、どれくらいのタイムで突っ込んでいくのかがわからない。まぁ、フライングしない限り大丈夫と見てるけど。


『プログラムナンバー十八番。男子50m自由形1組の競技を行います』

「直哉、1本~!」

「直ちゃん、ファイト~!」


 私と愛那の声が聞こえたのか、直哉は一瞬こっちを見た。とっさに、右手の親指をくっと立てた。その姿を見た直哉は安心したように薄笑いを浮かべて前を向いた。

 いつも通り笛を待ち、台に上る直哉。いつもより集中しているようにも見える。めちゃくちゃ集中してるわけじゃないけど、やっぱり顔が笑ってない。


「よーい」


 この声で、相撲の立会いのような状態から、左手をシュッとスタート台の前の縁に持ってくること以外は、本当に動かない。号砲が鳴ったのを聞いてから動き出し間ではものすごく速かった。

 スタートから浮き上がりの間ですでに体ひとつのリードを奪い、恐ろしいスピードで泳いでいく。周りが少しざわつくのもある程度わかる、直哉がほんの少し前に出てる以外は、ほんとにほぼ横1線。そんな状態であっという間に折り返し。


 最初の25mはたったの11秒。さすがに10秒を割りはしなかったけど、それでも体ひとつ離してるんだから相当なもの。これが校内の記録会だったり、もっと小さな大会ならよくわかる。だけど、強豪の海宮、将星高校がいるなかで、ここまで差をつけると、なかなかすごいと感じてしまう。遊菜でさえ、体ひとつ離してフィニッシュがやっとだったのに。

 直哉は、後半もほとんど落とすことなく突っ込み、終わってみれば、後ろとの差は2秒ほどつけてしまうくらいの圧勝。タイムは24秒65と自己ベストを更新。もちろん、次の大会の制限タイムはクリアしている。

 これで次の中央大会に出られるのは3人か。去年は誰も出場してないことを考えたら、相当成長したよね。

 でも、これ以上は出てこないかな。あとの種目にタイムを切れそうな選手はいないし。あとは、マネージャーの仕事をしつつ、レースを静観しようか。


 夕方の四時ごろ。やっとというような感じで最後の種目に入った。最後の種目は、4×200mリレー。扇原からは力不足ということで男女ともに出場しない。今、控え室では、自身が出場するレースが終わった人から部屋でまったりとをしている。らしい。

 らしい。というのは、愛那に『すぐ戻るな』って送ったら、『みんなまったりしてて帰る気ないからゆっくりでええで』って帰ってきたから。

 レースが終わった分、気分は楽。ゆっくりと控え室の戻ると、やっぱりみんなまったりしていた。これがこの部の日常なんだろうな。とか思いながら自分の荷物を片付ける。


「ほな帰ろうか。また明日からしばらく通常通りで、またゆっくりやっていきましょう。お疲れ様でした」


 場内にいる永浦先生を待たなくてよかったのかな、なんて思ったりしたけど、3年生が帰るところを見ると、別にいいんだと思った。


「美咲、帰るか?」

「う、うん。帰るで」

「ちょっくら寄り道して帰るか」

「またプール行くん?」

「もう今日はええわ。そのかえり明日は調整にしてくれや」

「はいはい。わかったよ。で、どこ行くん?」

「この辺に駄菓子屋があるらしいねんけど、昔みたいに駄菓子食ってから帰らへんかって思って」

「なんか、懐かしいな。全中と3年のときの市大会以外はずっとそんなんしてたもんな。たまごアイスやったっけ?まだあるんかな」

「ほんまそれ好きやな。毎回それ食うやん」

「レースのあとはアイスでしょ。お決まりとちゃうん?」

「いや、しらんやん。まぁ、あるかどうかわからんけど、1回見てみるか。あったらラッキーやし、無かったら残念やけど」


 そんなことを言いながら学校の門を出た。


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