表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
224/241

Episode 223 調子が上がらない公式ウォーミングアップ

 そして、順番はあっという間に回って来て、前の奴が飛び込む直前で美咲に向けて手を上げる。

 これは確認し合うための合図。

 俺らが見てへんのに、メニューの指示をされとっても見えてへんわけや市、向こうは伝えたつもりでおっても、おられにはメニューが何も伝わってない。

 もちろん、その逆のパターンもあるわけで、俺らから美咲のことが見えてんのに、向こうから気付かへんかったら、なんも始まらへんわけやし。

 そうならんために、手をお互いに上げて、相互に見てるのか確認するツールにしている。

 っと、俺の番やな。とりあえず、今できる全力を出してみるか。

 そう思い、飛び出してみる。

 う~ん。やっぱりなんかおかしいな。スタートも深いし、そのせいか、浮き上がりもタイミングが全く合わへんし。

 とりあえず、50メートルだけ全力を出してみたものの、感覚はイマイチ。最後の砦で大野さんに助けを求めるか?


「大野さん、聞くのはちゃうかもしれへんねんけど、俺、なにがおかしいかわかるか?」

「えっ、あっ、いや。すいません。そこまでは……。咲先輩にヘルプもらいますか?」


 やっぱそうなるよな。ただ、ここも藁にすがる気持ちで美咲に聞いてみるか。

 頼む。その言葉だけが先に口から出ていた。

 それよりも先に美咲に電話をかけていたのだろうか。大野さんが俺にスマホと自分のセームタオルを渡してきた。


「すまんな」


 それだけ返して、美咲が電話に出るのを待つ。


『もしもし、どうかした?』

「あっ、美咲か?すまん、俺や。ちょっと借りてる」

『どないしたん?珍しいやん。あんたがうちに電話してくるとか』


 当たり前やん。こっちはレースに向けて藁にすがりたいんやから。とりあえず、タイムの認識をすりわせておくか。


「悪いんやけどさ、今のダッシュ、なんぼやった?浮き上がりもフィニッシュタッチもタイミング最悪やってさ。たぶん、5秒近いんとちゃうかなって思ってるんやけど」


 今の感覚を全部素直にぶつける。


『手元のストップウォッチで4秒9やった。浮き上がりのタイミングが合えへんってことは、深いんとちゃうん?』


 それもわかってる。ただ、それだけやない気もしてるって言うのも言いたい。


「それだけやないねん。今年、俺、タイムがよくないやろ?それがわからんねん。正直、中央のときは、エンジンがかかってないだけやろって思ったんやけど、それからもまったくタイムが伸びて来ぇへんやろ?やから、練習積んで、今のアップのタイミングでなんかわかるかと思ってんけど、まったくや。上から見とってなんかなかった?」

『それがわかってたら練習の時に言うてるやろ?』


 だよなぁ。やっぱりそう言われるよな。


「やっぱそうよな~。ほんまなんなんやろ。美咲、もっかい飛んで測ってもええか?」

『別にかまへんけど、そう変わらんのとちゃう?』

「そんなことわかってるわ。やけど、やってみるだけやらせてくれや」


 こんなに俺が藁にすがる思いになるとは思いもしなかった。我慢するべきか?


『わかった。ほんなら、また飛ぶときなったら手は上げてな』

「オーライ、頼むな」


 それだけ返して、スマホを大野さんに返す。


「ありがとう、助かったわ」


 なんやろうな。美咲に相談するだけで少し軽くなるな。抱え込みすぎとったんやろうか。

 とりあえず、もう一度試す。課題点が見つかればラッキーや市、見つからずに、調整できひんかったらそこまでやって話やし。

 できるところまであがいたろうや。

 そう思って、もう一度スタート練習の列に並びなおす。

 順番はあっという間に来て、美咲に向けて手を上げる。

 ……よっしゃ。ちゃんと見てくれてるな。


「いきまーす、よーい、ゴッ!」


 大佐野さんの掛け声と同時に、思い切って飛び出す。

 ……さっきは深かったから、少し浅く入水を心掛ける。……ただ、ちょっと浅すぎたかな。浮き上がりの後の一掻き目がものすごく軽かった。それ以外、今は調子がいい。……ように感じる。

 そして、そのままフィニッシュを迎えるけど、やっぱり、感覚は25秒くらい。あとスタートがほんまにどうにもならへん。

 いつも通りにプールサイドへ上がると、後ろから泳いできた大神がニコニコしながらこっちに来た。


「なんやねん。なんか言いたいことでもあるんか?」

「そういうわけとちゃうけど、悩んでる直ちゃんも珍しいなって」

「いうとくけど、中央大会のときからずっと気にしてるんやからな」


 そんな話をしていると、大野さんが俺にスマホとタオルを差し出してきた。


「咲先輩がいろいろ言いたいらしいです」


 なんか、ちょっと嫌な言い方やな……。そんなことを思いながらタオルで顔を拭いて、電話を代わる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ